前日の落車の影響で総合首位ログリッチがスタートしなかったクリテリウム・デュ・ドーフィネ第5ステージで、チームメイトのセップ・クス(ユンボ・ヴィスマ)が逃げ切り勝利。ログリッチに代わって総合首位に立ったピノはリードを守りきれず、ダニエル・マルティネス(EFプロサイクリング)が逆転で総合優勝に輝いた。


ソーシャルディスタンスを取りながらの新しい取材方法ソーシャルディスタンスを取りながらの新しい取材方法 photo:CorVos
クリテリウム・デュ・ドーフィネ第5ステージに設定されたカテゴリー山岳は8つ。前半から超級山岳ロム峠や1級山岳コロンビエール峠が登場し、残り30kmを切ってから2級山岳が3つ連続。最後は前日と同じメジェーヴの飛行場にフィニッシュする。

クリテリウム・デュ・ドーフィネ2020第5ステージクリテリウム・デュ・ドーフィネ2020第5ステージ photo:A.S.O.獲得標高差が3,800mに達する最終ステージの朝、ここまでライバルたちを圧倒していた総合首位プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)が前日の落車の影響でスタートしないというニュースがプロトンの中を駆け抜けた。骨折などの大怪我を免れたものの、ログリッチは2週間後に迫ったツール・ド・フランスを優先して怪我の療養に集中することに。これにより総合成績は暫定的にティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)が首位に立ち、10秒差でギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ)が追いかける展開となった。

ログリッチのいない最終ステージは前半からハイスピードな展開を見せる。アタックと吸収を繰り返しながら峠を登るメイン集団からは脱落者が続出。山岳賞ジャージを守りたいダビ・デラクルス(スペイン、UAEチームエミレーツ)を先頭に通過した超級山岳ロム峠でメイン集団は大きく分裂した。24人で構成された精鋭集団の中に総合4位ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・マクラーレン)や総合5位リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)の姿はなく、さらに総合7位ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)は膝の痛みでリタイアした。

1級山岳コロンビエール峠通過後に、先頭ではジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)とパヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス)の逃げがスタート。精鋭集団から1分前後のリードをもって逃げた2人は、途中シヴァコフが下りで落車するトラブルに見舞われながらも、先行したまま最後の3連続2級山岳へと入っていった。

前半から逃げたパヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス)とジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)前半から逃げたパヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス)とジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:CorVos
落車したパヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス)が再スタート落車したパヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス)が再スタート photo:CorVos
残り25km地点に位置する2級山岳ドマンシー(距離2.5km/平均9.4%)で、精鋭集団から総合5位ダニエル・マルティネス(コロンビア、EFプロサイクリング)、総合6位ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)、総合9位タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)の3人がアタック。ピノを突き放すことに成功した3人は先頭アラフィリップとシヴァコフに合流。遅れてセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)も先頭へのブリッジに成功した。

先頭6人は1分15秒リードで次なる2級山岳コルドン(距離4.6km/平均8.2%)へ。先頭グループはアタックと牽制によってペースが安定しないものの、ピノ自ら牽引するメイン集団とのタイム差は縮まらない。脱落したアラフィリップを除く5人が最後の2級山岳メジェーヴ(距離9km/平均4.6%)の登坂に取り掛かると、残り9km地点の急勾配区間を利用して飛び出したクスに誰も反応できず。ログリッチのアシスト任務から解放されたクスがフィニッシュまで独走した。

先頭グループを率いるダニエル・マルティネス(コロンビア、EFプロサイクリング)先頭グループを率いるダニエル・マルティネス(コロンビア、EFプロサイクリング) photo:CorVos
メイン集団ではティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)が懸命にペースを上げるメイン集団ではティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)が懸命にペースを上げる photo:CorVos
ピノ、ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)、ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)、ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ)というフレンチオールラウンダー4人で構成された追走グループはロペスを吸収したものの、先頭クスはおろか、マルティネスやポガチャルらの背中は見えてこない。

先頭ではクスが独走でメジェーヴ飛行場のフィニッシュに飛び込み、27秒遅れてマルティネスとポガチャル、シヴァコフがフィニッシュ。追走グループの中から飛び出したレナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)とトム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)が続いて入り、ピノは1分2秒遅れのステージ7位に。ピノは総合リードを守り切ることができず、最終的に29秒差でマルティネスの総合優勝が決まった。

先頭グループから抜け出したセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)先頭グループから抜け出したセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
独走でステージ優勝を飾ったセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)独走でステージ優勝を飾ったセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
「今日はスタートから全開走行。サドルの上で過ごした最も過酷な1日だった」と語るクスは、平均スピード35.8km/hで獲得標高差3,800mの山岳ステージを走り切っている。STRAVAログによるとクスの約4時間のレース中の平均出力は287W。最後の2級山岳メジェーヴを平均出力356Wで19分間踏んでステージ優勝を掴んだ。

2019年ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝を飾り、ジャパンカップで5位の成績を残したクス。アメリカ期待の25歳は「(ログリッチのリタイアに)全員がショックを受けたけど、同時に攻撃的にレースを展開するチャンスがやってきた。ライバルたちは疲れていて、自分が総合下位だったことが味方した。キャリアの中で最も厳しいトレーニングをこなしてきたので今はとにかくバイクに乗るのが楽しい。この勝利を起爆剤にして、ツール・ド・フランスに集中していきたい」と語る。クスは総合でも10位に入り、ユンボ・ヴィスマのチーム総合成績トップにも貢献した。

「コロンビアから出てきて、世界有数の大きなレースで勝利したことに大きな喜びを感じている」と語るのは逆転で総合優勝に輝いたマルティネス。今回のEFプロサイクリングの出場メンバーの中ではリゴベルト・ウラン(コロンビア)とセルジオ・イギータ(コロンビア)の影に隠れがちだったが、攻撃的な走りでビッグタイトルを掴んだ。

「今朝ログリッチがスタートしないと聞いて、スタートから混沌としたレースになるとわかっていた。勝負のかかる後半に備えて、チームメイトのおかげで前半から力をセーブできたよ。限界を迎えながらも最後までやり遂げる気持ちで走り続けた」。エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)の1歳年上にあたる24歳のマルティネスはヤングライダー賞も同時に獲得。個人TTコロンビアチャンピオンはツールでも注目の存在になりそうだ。

総合表彰台、2位ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)、1位ダニエル・マルティネス(コロンビア、EFプロサイクリング)、3位ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ)総合表彰台、2位ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)、1位ダニエル・マルティネス(コロンビア、EFプロサイクリング)、3位ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ) photo:CorVos
チーム総合成績トップに輝いたユンボ・ヴィスマのデュムランとファンアールトチーム総合成績トップに輝いたユンボ・ヴィスマのデュムランとファンアールト photo:CorVos
クリテリウム・デュ・ドーフィネ2020第5ステージ結果
1位 セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) 3:58:39
2位 ダニエル・マルティネス(コロンビア、EFプロサイクリング) 0:00:27
3位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 0:00:30
4位 パヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス) 0:00:45
5位 トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) 0:00:51
6位 レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
7位 ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) 0:01:02
8位 ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ) 0:01:04
9位 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) 0:01:06
10位 ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)
個人総合成績
1位 ダニエル・マルティネス(コロンビア、EFプロサイクリング) 21:44:58
2位 ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) 0:00:29
3位 ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ) 0:00:41
4位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 0:00:56
5位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) 0:01:38
6位 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) 0:01:43
7位 トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) 0:02:07
8位 レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 0:02:14
9位 ワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック) 0:02:49
10位 セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ) 0:02:55
その他の特別賞
ポイント賞 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)
山岳賞 ダビ・デラクルス(スペイン、UAEチームエミレーツ)
ヤングライダー賞 ダニエル・マルティネス(コロンビア、EFプロサイクリング)
チーム総合成績 ユンボ・ヴィスマ
text:Kei Tsuji

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