世界最古のレースとして知られるミラノ〜トリノ(UCI1.Pro)が開催。ミラノ〜サンレモを見据えスプリンターレースに変化した第101回大会で、アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)が圧勝した。
スプリント勝負を狙うペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) (c)CorVos
プレゼンテーションを受けるマチュー・ファンデルポール(オランダ、アルペシン・フェニックス)ら (c)CorVos
ミラノ〜トリノ2020 コースプロフィール (c)RCS Sport
ツール・ド・ポローニュが開催されているその裏で、イタリアではミラノ近郊のメーゼロからトリノ近郊にあるサヴォイア王家の住居「レアーレ邸」を目指す第101回ミラノ〜トリノ(UCI1.Pro)が開催された。
1892年初開催のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュよりも古い歴史を持ち、何度かの中断を含め昨年第100回大会を迎えた本大会。例年ジロ・デル・ピエモンテとイル・ロンバルディアとともに『トリッティコ・ディ・アウトゥンノ(秋の3連戦)』を構成してきたが、今年はシーズン再開後の過密スケジュールにより、8月初頭に時期をずらした上で開催されている。
ここ近年は名物登坂「スペルガ登坂距離4.9km/平均勾配9.1%/最大勾配14%」を駆け上がってフィニッシュするクライマー/パンチャー向きワンデーレースとして開催されてきたが、今年は週末に控えるミラノ〜サンレモを見据え、難関登坂が一つもない超フラットなスプリンターレースに模様替えを果たした。パダノ・ベネタ平野を駆け抜け、中盤に通過する丘陵地帯ですら最高標高地点は264mと低い。
ミラノ〜サンレモの予行練習とすべく14ものワールドチームが揃い、昨年2位のオリバー・ナーセン(ベルギー、AG2Rラモンディアール)を筆頭に、好調のフェルナンド・ガビリア(コロンビア)とアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー)のUAEチームエミレーツコンビ、アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)、カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)、サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)、ナセル・ブアニ(フランス、アルケア・サムシック)といった豪華布陣がミラノに集結。
ストラーデビアンケで優勝したワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)や、そのライバルであり、不運なパンクで「白い道」のチャンスを失ったマチュー・ファンデルポール(オランダ、アルペシン・フェニックス)もスタートラインに並んだ。
ミラノとトリノを結ぶ平坦区間を走る (c)CorVos
ストラーデビアンケを制したワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) (c)CorVos
エスケープしたマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、アスタナ)ら6名 (c)CorVos
晴天のイタリア北部。この日逃げたのはマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、アスタナ)とハイス・ファンフック(ベルギー、CCCチーム)、ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア、モビスター)、アレッサンドロ・トネッリ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ)、そしてサムエーレ・リーヴィ(イタリア、イタリアナショナルチーム)、アンドレア・ガロシオ(イタリア、ヴィーニザブKTM)という6名だった。イタリア人選手多数で構成された逃げグループは序盤の1時間を平均速度46.9km/hで飛ばし、最大7分強のタイム差をつけて巡航した。
スプリンターチームがコントロールするメイン集団が着実にタイム差を削り取る中、150kmを過ぎた地点でマッテオ・ペルッキ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ)がリタイア。残り10kmを切ってグルパマFDJやトレック・セガフレードが唯一生き残っていたボアーロを視界に捉えた場面で集団内に大きな落車が起こった。
中央分離帯に差し掛かるタイミング。密集した集団先頭で隊列を組んでいたボーラ・ハンスグローエ内で接触が起こり、落車しかけたサガンに弾かれる形でイヴ・ランパールト(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)が、クッションが巻かれた構造物に肩から激突してしまう。これによって2分割された集団はボアーロを飲み込み、ボーラ・ハンスグローエらの牽引でフィニッシュ目掛けて突き進んだ。
強力なリードアウトを得たアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)が勝利 (c)RCS Sport
スピードが乗る広いストレートでチーム力を見せつけたのはグルパマFDJだった。一番後ろにデマールを連結したグルパマ列車は他チームを一切寄せ付けずに突き進み、ジャコポ・グアルニエーリ(イタリア、グルパマFDJ)先行で緩い最終左コーナーをクリア。早掛けしたサガンの背後に滑り込んだデマールが、残り150mを切ってから力強いスプリントを開始した。
先行するサガンと並びかけるユアンの間をこじ開け、ストレート中央を突き進んだデマール。行き場を失ったガビリアが足を止め、後方からはファンアールトが追い上げたものの伸びるデマールには届かない。2016年に続くミラノ〜サンレモ2勝目を目指すデマールが強豪スプリンターを相手に価値ある1勝を収めた。
「好調である自信を持って、かつて無いほど戦力を付けたチームとともにこのレースに乗り込んだ。ブルゴスの時点で僕らが積み重ねてきた合宿の成果が出ていると感じていたんだ。このレースで勝つということはつまり、ミラノ〜サンレモに向けて大きな意味を持つ。(ミラノ〜サンレモに)新しく加えられた丘がどういう展開を生み出すかは分からないけど怖くない。誰にとっても"冒険"になるはずだ。誰もがアグレッシブなこの状況では、ただスプリントを待つのではなく自ら動くことが求められるだろう」と、デマールはレース再開後初となるモニュメントを見据えている。
ミラノ〜トリノ2020表彰台 (c)RCS Sport
シャンパンを振り回すアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) (c)CorVos
「強豪スプリンターひしめく今日のゴール勝負での3位に満足しているよ。位置取りを改善すればもう少し上を狙えたかもしれないけれど、それも一つのゲームだ」と語るのは、ユアンに次ぐ3位に食い込んだファンアールト。ストラーデビアンケでの勝利に続き、集団スプリントでも戦えることを今一度示している。
また、終盤の落車で激しく落車したランパールトは病院に搬送され、左鎖骨骨折の診断が告げられている。ドゥクーニンク・クイックステップとしてはポローニュのヤコブセンに続き、主要選手2人を戦線から失う最悪な1日となってしまった。



ツール・ド・ポローニュが開催されているその裏で、イタリアではミラノ近郊のメーゼロからトリノ近郊にあるサヴォイア王家の住居「レアーレ邸」を目指す第101回ミラノ〜トリノ(UCI1.Pro)が開催された。
1892年初開催のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュよりも古い歴史を持ち、何度かの中断を含め昨年第100回大会を迎えた本大会。例年ジロ・デル・ピエモンテとイル・ロンバルディアとともに『トリッティコ・ディ・アウトゥンノ(秋の3連戦)』を構成してきたが、今年はシーズン再開後の過密スケジュールにより、8月初頭に時期をずらした上で開催されている。
ここ近年は名物登坂「スペルガ登坂距離4.9km/平均勾配9.1%/最大勾配14%」を駆け上がってフィニッシュするクライマー/パンチャー向きワンデーレースとして開催されてきたが、今年は週末に控えるミラノ〜サンレモを見据え、難関登坂が一つもない超フラットなスプリンターレースに模様替えを果たした。パダノ・ベネタ平野を駆け抜け、中盤に通過する丘陵地帯ですら最高標高地点は264mと低い。
ミラノ〜サンレモの予行練習とすべく14ものワールドチームが揃い、昨年2位のオリバー・ナーセン(ベルギー、AG2Rラモンディアール)を筆頭に、好調のフェルナンド・ガビリア(コロンビア)とアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー)のUAEチームエミレーツコンビ、アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)、カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)、サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)、ナセル・ブアニ(フランス、アルケア・サムシック)といった豪華布陣がミラノに集結。
ストラーデビアンケで優勝したワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)や、そのライバルであり、不運なパンクで「白い道」のチャンスを失ったマチュー・ファンデルポール(オランダ、アルペシン・フェニックス)もスタートラインに並んだ。



晴天のイタリア北部。この日逃げたのはマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、アスタナ)とハイス・ファンフック(ベルギー、CCCチーム)、ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア、モビスター)、アレッサンドロ・トネッリ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ)、そしてサムエーレ・リーヴィ(イタリア、イタリアナショナルチーム)、アンドレア・ガロシオ(イタリア、ヴィーニザブKTM)という6名だった。イタリア人選手多数で構成された逃げグループは序盤の1時間を平均速度46.9km/hで飛ばし、最大7分強のタイム差をつけて巡航した。
スプリンターチームがコントロールするメイン集団が着実にタイム差を削り取る中、150kmを過ぎた地点でマッテオ・ペルッキ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ)がリタイア。残り10kmを切ってグルパマFDJやトレック・セガフレードが唯一生き残っていたボアーロを視界に捉えた場面で集団内に大きな落車が起こった。
中央分離帯に差し掛かるタイミング。密集した集団先頭で隊列を組んでいたボーラ・ハンスグローエ内で接触が起こり、落車しかけたサガンに弾かれる形でイヴ・ランパールト(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)が、クッションが巻かれた構造物に肩から激突してしまう。これによって2分割された集団はボアーロを飲み込み、ボーラ・ハンスグローエらの牽引でフィニッシュ目掛けて突き進んだ。

スピードが乗る広いストレートでチーム力を見せつけたのはグルパマFDJだった。一番後ろにデマールを連結したグルパマ列車は他チームを一切寄せ付けずに突き進み、ジャコポ・グアルニエーリ(イタリア、グルパマFDJ)先行で緩い最終左コーナーをクリア。早掛けしたサガンの背後に滑り込んだデマールが、残り150mを切ってから力強いスプリントを開始した。
先行するサガンと並びかけるユアンの間をこじ開け、ストレート中央を突き進んだデマール。行き場を失ったガビリアが足を止め、後方からはファンアールトが追い上げたものの伸びるデマールには届かない。2016年に続くミラノ〜サンレモ2勝目を目指すデマールが強豪スプリンターを相手に価値ある1勝を収めた。
「好調である自信を持って、かつて無いほど戦力を付けたチームとともにこのレースに乗り込んだ。ブルゴスの時点で僕らが積み重ねてきた合宿の成果が出ていると感じていたんだ。このレースで勝つということはつまり、ミラノ〜サンレモに向けて大きな意味を持つ。(ミラノ〜サンレモに)新しく加えられた丘がどういう展開を生み出すかは分からないけど怖くない。誰にとっても"冒険"になるはずだ。誰もがアグレッシブなこの状況では、ただスプリントを待つのではなく自ら動くことが求められるだろう」と、デマールはレース再開後初となるモニュメントを見据えている。


「強豪スプリンターひしめく今日のゴール勝負での3位に満足しているよ。位置取りを改善すればもう少し上を狙えたかもしれないけれど、それも一つのゲームだ」と語るのは、ユアンに次ぐ3位に食い込んだファンアールト。ストラーデビアンケでの勝利に続き、集団スプリントでも戦えることを今一度示している。
また、終盤の落車で激しく落車したランパールトは病院に搬送され、左鎖骨骨折の診断が告げられている。ドゥクーニンク・クイックステップとしてはポローニュのヤコブセンに続き、主要選手2人を戦線から失う最悪な1日となってしまった。
ミラノ〜トリノ2020結果
1位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | 4:18:57 |
2位 | カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) | |
3位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) | |
4位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
5位 | ダニー・ファンポッペル(ベルギー、サーカス・ワンティゴベール) | |
6位 | セル・ブアニ(フランス、アルケア・サムシック) | |
7位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | |
8位 | マヌエル・ベレッティ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ・シデルメク) | |
9位 | ディオン・スミス(ニュージーランド、ミッチェルトン・スコット) | |
10位 | ベン・スウィフト(イギリス、チームイネオス) |
text:So.Isobe
photo:CorVos
photo:CorVos
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