2020/07/29(水) - 01:00
2017年の「SL6」から3年、スペシャライズドの旗艦モデルTARMAC(ターマック)が新世代「SL7」へとフルモデルチェンジを遂げる。Rapide CLXホイール装備で6.7kg。機敏な運動性能はそのままに空力性能を大幅に向上し、「VENGEを過去に追いやる」新型オールラウンドモデルに迫る。
振り返れば、いつもTARMACはトップ選手の活躍と共にあった。ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)のツール・ド・フランス制覇を筆頭に、ペテル・サガン(スロバキア)のアルカンシエル獲得、クラシックレースやグランツールで挙げた勝利は枚挙にいとまなく、それはSL6世代となっても尚、ジュリアン・アラフィリップ(フランス)らドゥクーニンク・クイックステップや、サガンを筆頭にするボーラ・ハンスグローエなどの快進撃、女子最強チームであるブールス・ドルマンスに所属するアンナ・ファンデルブレヘン(オランダ)のアルカンシエル獲得を筆頭に変わることなく、常勝チームの常勝バイクたる地位を確固たるものとしてきた。
スペシャライズドは数日前からAR(拡張現実)でのプロモーションなどを行ってきたが、本日2020年7月29日の日本時間午前1時、TARMACの新世代モデル「SL7」が正式デビューを飾る。エアロ、剛性、そして軽さと全てを兼ね備えた軽量オールラウンダーが姿を現した。
VENGEを過去に追いやる「軽量オールラウンダー」
スペシャライズドが掲げるモットー、Pedaling the planet forward(サイクリングを更なる高みへ)の下で生み出されたTARMAC SL7。プレゼンテーションの言葉を借りればSL7は「旗艦であるTARMACの性能を底上げすることで、他社よりも一層進んだ、より上質なサイクリングライフを目指し実現した」モデルであり、ドゥクーニンクやボーラ、そしてブールスといった男女を代表するトップチームによるテストを経て製品化にこぎつけている。
激坂や未舗装路の組み込みなど山岳区間が激しさを増す一方、戦術変化やディスクブレーキの普及に伴い下りや平坦区間も高速化の一途を辿る現代のグランツール。従来スペシャライズドサポートチームはTARMACとVENGEの2本柱でレースを戦ってきたが、開発陣はTARMACを真のオールダウンダーへと進化させることで、VENGEをラインアップから消すという決断を下した。スペシャライズドによれば、「空力もしくは軽さのどちらか一方のみを重視したバイクはもう時代遅れ」だ。
完成車重量6.7kg。SL6から45秒短縮するエアロ性能
結果から見ればTARMAC SL7は56サイズのDURA-ACE Di2+Rapide CLXホイール完成車で6.7kg(フレーム重量800g)という軽さを維持しつつ、SL6比で距離40km走行時に平均45秒速いというVENGEに迫る空力性能を身につけた。その礎となったのは、スペシャライズドが誇る「FreeFoil Shape Library」だ。
スペシャライズドのFreeFoil Shape Libraryとは、2018年に発表された現行VENGEに初投入された設計手法。スペシャライズドの説明によれば「エンジニアたちは最適化アルゴリズムを書き、本物のスーパーコンピューターを用いて、重量と表面積と構造的目標の異なるさまざまな新しい翼断面形状を作り出しました。多様なアスペクト比を持つ数多くの形状を収めたライブラリーをもとにバイクの各部を設計し、Win Tunnelでの多くのテストを経て、最も空力に優れ、最も速い形状を割り出しました」とある。
つまりTARMAC SL7のフレーム形状は、単に空力を突き詰めるのではなく、第3世代VENGEが第2世代のViasから大幅なシェイプアップを遂げたように剛性や軽さなど様々な要素を高レベルで掛け合わせ、検証した末に導き出されたもの。一見、前三角はVENGE、リアバックはTARMACに見えるものの、実際は中身も含め大きな変化を遂げている。なお公表データではないが、空力性能だけで見ればVENGEに軍配が上がるものの、その差は40km走行時にトータル2.5ワットほどに留めているとプレゼンテーションにおいて語られた。
空力に大きく影響するハンドル周りはTARMAC史上初の専用開発品を用いて完全フル内装を実現するが、VENGEと同じくシフトケーブルやブレーキホースをステム下側に添わせるステム/ハンドル別体式を採用することでメンテナンス性をキープする。ハンドルはS-Works Aerofly IIだが、ステムはVENGEよりも45g軽量化した新規開発品となる。基本的にはシマノDi2、スラムeTap、カンパニョーロEPSで組むことを前提としているものの、アダプターを介して機械式シフトやノーマルステム/ハンドルにも対応するなどユーザビリティは健在だ。
当然フレームサイズ間の性能差を調整する「Rider-First Engineered」も投入されているほか、SL6と比べてフレーム前後の剛性バランスを調整し、定評あるハンドリングを維持しながらより乗りやすくなるチューニングが施されたという。ROUBAIXと同じく男女共通プラットフィーム化を果たしており、ジオメトリーはスペーサーが異なるためスタックハイトのみ僅かに異なるが、基本的にはVENGEやSL6と共通だ。
ボトムブラケット規格の変更も大きな話題だ。長らく採用されてきたオリジナルプレスフィット規格「OSBB」は、MTBのEPIC(エピック)やSTUMPJUMPER(スタンプジャンパー)、TTバイクのSHIVと同じくシェル幅68mmのスレッド式(BSA)に変更される。これはメンテナンス性向上もさることながら、シマノクランクを使う場合、アダプターが不要になるため軽量化に繋がるというメリットもある。ドゥクーニンクなどサポートチームからの要望でもあるというが、一般ユーザーが享受する利点も大きい。
フレームバリエーションはスペシャライズドが誇るFACT 12rカーボンを使うS-WORKSグレードと、FACT 10rカーボンを使うセカンドグレード(フレーム重量920gで、剛性値はS-WORKSと同じ)の2種類が用意される。
S-WORKS完成車はロヴァールのRapide CLXホイールがセットされ、コンポーネントはシマノDURA-ACE Di2とスラムRED eTap AXS(いずれも税抜132万円)の2種類展開。6カラー展開となるフレームセット(税抜55万円)と併せ合計3バリエーションで発売される。
FACT 10rモデルのフレームセット販売はなく、上級仕様のPROグレード完成車、そしてボトムグレードのEXPERT完成車が用意される。PROグレードはS-WORKS同様のハンドル+ステムのほか、ロヴァールのRapide CLホイール(リムはCLXと共通)を採用したハイコストパフォーマンスモデルであり、シマノULTEGRA Di2、もしくはフロントシングル仕様のスラムFORCE eTap AXS搭載モデル(価格はいずれも税抜き77万円)が用意される。EXPERT完成車はシマノULTEGRA Di2とDTスイスのアルミホイール、そしてアルミハンドルをセットし55万円というプライスタグを下げる。
また、TARMAC SL7は情報公開と同時に全国のプロショップで発売開始(一部店舗には在庫あり)され、スペシャライズド新宿店では即日試乗車が設置される。また、カミハギサイクル名城店などでも8月中旬より試乗プログラムが開始されるという(なお運用開始時期は予定。詳細はHPをチェック、もしくは各店舗に問い合わせのこと)。
振り返れば、いつもTARMACはトップ選手の活躍と共にあった。ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)のツール・ド・フランス制覇を筆頭に、ペテル・サガン(スロバキア)のアルカンシエル獲得、クラシックレースやグランツールで挙げた勝利は枚挙にいとまなく、それはSL6世代となっても尚、ジュリアン・アラフィリップ(フランス)らドゥクーニンク・クイックステップや、サガンを筆頭にするボーラ・ハンスグローエなどの快進撃、女子最強チームであるブールス・ドルマンスに所属するアンナ・ファンデルブレヘン(オランダ)のアルカンシエル獲得を筆頭に変わることなく、常勝チームの常勝バイクたる地位を確固たるものとしてきた。
スペシャライズドは数日前からAR(拡張現実)でのプロモーションなどを行ってきたが、本日2020年7月29日の日本時間午前1時、TARMACの新世代モデル「SL7」が正式デビューを飾る。エアロ、剛性、そして軽さと全てを兼ね備えた軽量オールラウンダーが姿を現した。
VENGEを過去に追いやる「軽量オールラウンダー」
スペシャライズドが掲げるモットー、Pedaling the planet forward(サイクリングを更なる高みへ)の下で生み出されたTARMAC SL7。プレゼンテーションの言葉を借りればSL7は「旗艦であるTARMACの性能を底上げすることで、他社よりも一層進んだ、より上質なサイクリングライフを目指し実現した」モデルであり、ドゥクーニンクやボーラ、そしてブールスといった男女を代表するトップチームによるテストを経て製品化にこぎつけている。
激坂や未舗装路の組み込みなど山岳区間が激しさを増す一方、戦術変化やディスクブレーキの普及に伴い下りや平坦区間も高速化の一途を辿る現代のグランツール。従来スペシャライズドサポートチームはTARMACとVENGEの2本柱でレースを戦ってきたが、開発陣はTARMACを真のオールダウンダーへと進化させることで、VENGEをラインアップから消すという決断を下した。スペシャライズドによれば、「空力もしくは軽さのどちらか一方のみを重視したバイクはもう時代遅れ」だ。
完成車重量6.7kg。SL6から45秒短縮するエアロ性能
結果から見ればTARMAC SL7は56サイズのDURA-ACE Di2+Rapide CLXホイール完成車で6.7kg(フレーム重量800g)という軽さを維持しつつ、SL6比で距離40km走行時に平均45秒速いというVENGEに迫る空力性能を身につけた。その礎となったのは、スペシャライズドが誇る「FreeFoil Shape Library」だ。
スペシャライズドのFreeFoil Shape Libraryとは、2018年に発表された現行VENGEに初投入された設計手法。スペシャライズドの説明によれば「エンジニアたちは最適化アルゴリズムを書き、本物のスーパーコンピューターを用いて、重量と表面積と構造的目標の異なるさまざまな新しい翼断面形状を作り出しました。多様なアスペクト比を持つ数多くの形状を収めたライブラリーをもとにバイクの各部を設計し、Win Tunnelでの多くのテストを経て、最も空力に優れ、最も速い形状を割り出しました」とある。
つまりTARMAC SL7のフレーム形状は、単に空力を突き詰めるのではなく、第3世代VENGEが第2世代のViasから大幅なシェイプアップを遂げたように剛性や軽さなど様々な要素を高レベルで掛け合わせ、検証した末に導き出されたもの。一見、前三角はVENGE、リアバックはTARMACに見えるものの、実際は中身も含め大きな変化を遂げている。なお公表データではないが、空力性能だけで見ればVENGEに軍配が上がるものの、その差は40km走行時にトータル2.5ワットほどに留めているとプレゼンテーションにおいて語られた。
空力に大きく影響するハンドル周りはTARMAC史上初の専用開発品を用いて完全フル内装を実現するが、VENGEと同じくシフトケーブルやブレーキホースをステム下側に添わせるステム/ハンドル別体式を採用することでメンテナンス性をキープする。ハンドルはS-Works Aerofly IIだが、ステムはVENGEよりも45g軽量化した新規開発品となる。基本的にはシマノDi2、スラムeTap、カンパニョーロEPSで組むことを前提としているものの、アダプターを介して機械式シフトやノーマルステム/ハンドルにも対応するなどユーザビリティは健在だ。
当然フレームサイズ間の性能差を調整する「Rider-First Engineered」も投入されているほか、SL6と比べてフレーム前後の剛性バランスを調整し、定評あるハンドリングを維持しながらより乗りやすくなるチューニングが施されたという。ROUBAIXと同じく男女共通プラットフィーム化を果たしており、ジオメトリーはスペーサーが異なるためスタックハイトのみ僅かに異なるが、基本的にはVENGEやSL6と共通だ。
ボトムブラケット規格の変更も大きな話題だ。長らく採用されてきたオリジナルプレスフィット規格「OSBB」は、MTBのEPIC(エピック)やSTUMPJUMPER(スタンプジャンパー)、TTバイクのSHIVと同じくシェル幅68mmのスレッド式(BSA)に変更される。これはメンテナンス性向上もさることながら、シマノクランクを使う場合、アダプターが不要になるため軽量化に繋がるというメリットもある。ドゥクーニンクなどサポートチームからの要望でもあるというが、一般ユーザーが享受する利点も大きい。
フレームバリエーションはスペシャライズドが誇るFACT 12rカーボンを使うS-WORKSグレードと、FACT 10rカーボンを使うセカンドグレード(フレーム重量920gで、剛性値はS-WORKSと同じ)の2種類が用意される。
S-WORKS完成車はロヴァールのRapide CLXホイールがセットされ、コンポーネントはシマノDURA-ACE Di2とスラムRED eTap AXS(いずれも税抜132万円)の2種類展開。6カラー展開となるフレームセット(税抜55万円)と併せ合計3バリエーションで発売される。
FACT 10rモデルのフレームセット販売はなく、上級仕様のPROグレード完成車、そしてボトムグレードのEXPERT完成車が用意される。PROグレードはS-WORKS同様のハンドル+ステムのほか、ロヴァールのRapide CLホイール(リムはCLXと共通)を採用したハイコストパフォーマンスモデルであり、シマノULTEGRA Di2、もしくはフロントシングル仕様のスラムFORCE eTap AXS搭載モデル(価格はいずれも税抜き77万円)が用意される。EXPERT完成車はシマノULTEGRA Di2とDTスイスのアルミホイール、そしてアルミハンドルをセットし55万円というプライスタグを下げる。
また、TARMAC SL7は情報公開と同時に全国のプロショップで発売開始(一部店舗には在庫あり)され、スペシャライズド新宿店では即日試乗車が設置される。また、カミハギサイクル名城店などでも8月中旬より試乗プログラムが開始されるという(なお運用開始時期は予定。詳細はHPをチェック、もしくは各店舗に問い合わせのこと)。
TARMAC SL7試乗車設置店舗
店舗名 | 稼働日 | ショップURL |
---|---|---|
スペシャライズド新宿店 | 7月29日 | https://specialized-store.jp/store/shinjuku/ |
カミハギサイクル名城店 | 8月12日 | https://kamihagi.com/shop-meijyo/ |
ラビットストリート本店 | 8月19日 | https://rabbit-street.com/store/186/ |
SBC厚木店 | 8月中旬〜末を予定 | https://www.sbcbicycle.com/shop-atsugi.html |
スペシャライズド S-WORKS TARMAC - DURA ACE DI2完成車
サイズ:44、49、52、54、56
カラー:2種類
コンポーネント:シマノ Dura-Ace R9170 Di2
ハンドル:S-Works Aerofly II
ステム:Tarmac integrated stem, 6-degree
サドル:S-Works Power
ホイール:ロヴァール Rapide CLX
タイヤ:Turbo Cotton(26mm)
税抜価格:1,320,000円
スペシャライズド S-WORKS TARMAC - RED ETAP AXS完成車
サイズ:44、49、52、54、56
カラー:2種類
コンポーネント:スラム RED eTap AXS
ハンドル:S-Works Aerofly II
ステム:Tarmac integrated stem, 6-degree
サドル:S-Works Power
ホイール:ロヴァール Rapide CLX
タイヤ:Turbo Cotton(26mm)
税抜価格:1,320,000円
スペシャライズド S-WORKS TARMAC フレームセット
サイズ:44、49、52、54、56、58
カラー:6種類
ステム:Tarmac integrated stem, 6-degree
税抜価格:550,000円
スペシャライズド TARMAC PRO - ULTEGRA DI2完成車
サイズ:44、49、52、54、56、58
カラー:2種類
コンポーネント:シマノ Ultegra R8070 Di2
ハンドル:S-Works Aerofly II
ステム:Tarmac integrated stem, 6-degree
サドル:Power Pro
ホイール:ロヴァール Rapide CL
タイヤ:S-Works Turbo(26mm)
税抜価格:770,000円
スペシャライズド TARMAC PRO - FORCE ETAP AXS 1X完成車
サイズ:44、49、52、54、56、58
カラー:1種類
コンポーネント:スラム Force eTap AXS(フロントシングル)
ハンドル:S-Works Aerofly II
ステム:Tarmac integrated stem, 6-degree
サドル:Power Pro
ホイール:ロヴァール Rapide CL
タイヤ:S-Works Turbo(26mm)
税抜価格:770,000円
スペシャライズド TARMAC EXPERT - ULTEGRA DI2完成車
サイズ:44、49、52、54、56、58
カラー:2種類
コンポーネント:シマノ Ultegra R8070 Di2
ハンドル:Expert Shallow Drop
ステム:Tarmac integrated stem, 6-degree
サドル:Power Expert
ホイール:DTスイス R470リム+スペシャライズドハブ
タイヤ:S-Works Turbo(26mm)
税抜価格:550,000円
「Innovate or die(革新か、死か)」、「Aero is everything(エアロこそ全て)」を掲げるスペシャライズドが、満を持してリリースする新型TARMAC SL7。インプレッションは次章でお届けする。
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