5月20日、2006年のツール・ド・フランスに優勝した直後にドーピング陽性が発覚し、マイヨジョーヌを剥奪されたフロイド・ランディス(アメリカ)が、禁止薬物の使用を認めたと、アメリカの新聞ウォールストリート・ジャーナルが報じた。

この報道はランディスがUCI国際自転車競技連合の関係者やメディアなどに送ったEメールの中で、過去に薬物を使用していたと明かす内容のもので、ツール・ド・フランス7連覇のランス・アームストロング(レディオシャック)とヨハン・ブリュイネール監督、そして当時チームメイトだったジョージ・ヒンカピー、リーヴァイ・ライプハイマー、デーヴィッド・ザブリスキーらもランディスとともにドーピングしていたとする内容だった。

ツール・ド・フランス2006を制した直後にドーピングが発覚したフロイド・ランディス(アメリカ)ツール・ド・フランス2006を制した直後にドーピングが発覚したフロイド・ランディス(アメリカ) (c)MakotoAYANOEメールを入手したウォールストリートジャーナルの記事によれば、ランディスはUSポスタルサービスに所属した2002年から恒常的にドーピングしていたことを認めている。

記事には、ランディスとともにドーピングしていた選手として、当時チームをともにしたアームストロング、ヒンカピー、リーヴァイ・ライプハイマー、デーヴィッド・ザブリスキーの名前が挙げられている。
ランディスはブリュイネール監督とアームストロングの指導のもとドーピングを行い、フォナックに移籍してからはチームオーナーのアンディ・リース氏(現BMCレーシングチームの実質的オーナー)に同じようなドーピングプログラムを導入することを依頼し、ツール・ド・フランスに優勝するときまでドーピングを行っていたと明かしている。

またランディスは2003年にスペイン・ジローナにあるアームストロングのアパートで血液ドーピングに使用するための採血法をアームストロングに指導され、そのクローゼットにある冷蔵庫にはアームストロングとヒンカピーの血液が保管されていたと主張している。

また、過去にツアー・オブ・カリフォルニアに参戦する前に、ライプハイマーとザブリスキーがEPO(エリスロポイエチン=禁止薬物)を使用する手助けをしたとも主張している。

そして2006年ツール・ド・フランス第17ステージの検査サンプルからテストステロンの陽性が出たことについては、「当時はテストステロンは使用していなかったため、検査結果はおかしい」と主張。しかし同時に「テストステロンを使ったことはあるし、2006年以外のツールで使ったこともあるが、当時使ったのは成長ホルモン等だった」と明かしている。

4月30日から5月6日の間に、上記のような内容の書かれた3通のメールがアメリカ自転車競技連盟の理事長や、ウォールストリートジャーナルなど数メディアに送られた。送信者は第3者であると言われている。

ランディスはこれまで、ドーピングの事実については否定を続けてきており、自身の潔白を証明するための法廷闘争を続けてきた。裁判費用を捻出するための寄付を募り、自著『Positively False』を出版・販売するなどしてきた。

2年間の出場停止処分が明けた2009年には、アメリカのコンチネンタルチーム、アウチに所属し、ツアー・オブ・カリフォルニアにも出場。2010年はバハティ・ファウンデーションに移籍したが、現在開催中のツアー・オブ・カリフォルニアにはチームが招待されなかった。

UCIはこの件に関して
「ランディス氏が関係機関に十分な調査時間を与えずに個人を告発したのは残念だ。ランディス氏は争いが起こることを理解するべきだ。過去の2年間は彼の違反の証明だ。UCIはランディス氏の今回の行動を個人のものとして帰す」などと非難する声明を出している。

またランディスはEメールのなかで自転車競技からドーピングがなくならないのは取り締まる側の責任だとして不満を表明。そしてアームストロングがUCIの関係者と結託してドーピング検査を操作していたとし、2002年のツール・ド・スイスでアームストロングにドーピングの陽性反応が出たにもかかわらず、それをUCIと共謀して隠蔽したと主張。
しかしUCIは続く声明でアームストロングは2002年のツール・ド・スイスには出場もしていないと主張を退けている。

アームストロングは翌21日、ツアー・オブ・カリフォルニア第5ステージのスタートの朝にチームバスの前で簡易的な記者会見を開き、ランディスのとった今回の行動に対して、「彼は今までもその度に違うことを言い、違う方法で何度も我々に対して嫌がらせを行ってきた」「時間と金をかけてまで訴えるつもりはない」「隠すことはない」と、取り合わない態度を強く表明している



text&photo:MakotoAYANO

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