ドイツのタイヤブランド、シュワルベがリリースした新グラベルタイヤ、G-ONE ULTRABITE(ジーワン ウルトラバイト)をインプレッション。路面状況に合わせたラインアップを誇るG-ONEシリーズにおいてもっともオフロードに特化した走行性能を追求した上位モデルだ。

シュワルベ G-ONE ULTRABITEシュワルベ G-ONE ULTRABITE photo:Makoto.AYANO
ドイツに本拠を置くシュワルベはオートバイ、自転車、車椅子用タイヤを製造する総合タイヤメーカーで、欧州のスポーツバイシクルタイヤ界をリードするマーケットリーダー的な存在だ。とくにマウンテンバイクを始めとしたオフロードバイシクル用タイヤにおいて大きなシェアを持ち、高い評価を得てきた。

シュワルベ G-ONE ULTRABITE シュワルベ G-ONE ULTRABITE
同社のグラベルバイクタイヤのハイエンドライン「G-ONE」シリーズに加わったのがG-ONE ULTRABITE(ウルトラバイト)だ。その名が示すようにオフロードを走ることに特化したモデルであり、シリーズ中もっともアグレッシブなノブ形状をもつことで走破性を高めたことが特徴だ。

サイズは700 × 38C。ベースとなるトレッドは素直なラウンド形状サイズは700 × 38C。ベースとなるトレッドは素直なラウンド形状 サイドに大きく張り出したノブがコーナリング時に効くサイドに大きく張り出したノブがコーナリング時に効く


今までのラインナップにあったG-ONEグラベルタイヤは3種。小さな丸型のノブが密に並んだG-ONE ALLROUNDはオフロード50%:オンロード50%の割合を想定した設計。そしてショルダーのノブが間引かれ、間隔の空いたG-ONE BITEはオフロード70%:オンロード30%を想定。そして低く・鱗状のノブでスリックに近いモデルのG-ONE SPEEDはオフロード30%:オンロード70%の割合で設計、それぞれ狙った路面ごとに最適化した3つのラインナップを揃えてきた。

シュワルベ G-ONEシリーズ ラインアップシュワルベ G-ONEシリーズ ラインアップ
今回紹介する新製品 G-ONE ULTRABITEは、BITEよりもさらにノブが高く、オフロード85%:オンロード15%のバランスで設計された。センター部の「テープノブ」が強力なグリップとトラクションを生み出し、サイドに張り出したノブがコーナリング時の安定性を生み出すトレッドパターン。シリーズの中で最もオフロードを走ることに特化したモデルとなり、舗装路はもちろん土混じりの未舗装路や砂利の林道といったダートロードでも喰い付くようにグリップを稼ぎ出し、安全に走ることができるグラベルタイヤに仕上がっている。

細かな円盤状のノブをベースプレートがつなぐ「テープノブ」細かな円盤状のノブをベースプレートがつなぐ「テープノブ」
そしてシュワルベのスポーツバイク用ハイエンドタイヤでユニークなのは、コンパウンド別に2ラインが用意されること。「エヴォリューションライン」はADDIX Speedgripコンパウンドを採用し、軽量で耐久性に優れ、転がりとグリップのバランスが優れる上位モデル。もういっぽうの「パフォーマンスライン」は舗装路での転がりも良好なコストパフォーマンスを重視したモデルとなる。

エヴォリューションライン、パフォーマンスラインともにシーラントを併用するTLE:チューブレスイージー(=チューブレスレディ)タイプとなり、パンクに強く転がり抵抗の少ない快適な走行性能を実現。エヴォリューションラインはタイヤサイドまでブラックカラーで、パフォーマンスラインはサイドがナチュラルなクラシックスキンカラーとなる。サイズはともに700 × 38C、29 × 2.00の2種。

G-ONEグラベルタイヤのラインナップにおいて最もオフロード性能を重視したというG-ONE ULTRABITEを、様々な路面状況で実走テストした。

インプレッション

砂利のジープロードをハイスピードで走ればタイヤの強い弾力にサスペンション効果を感じる砂利のジープロードをハイスピードで走ればタイヤの強い弾力にサスペンション効果を感じる photo:So.Isobe
G-ONEシリーズは多くのバイクブランドがグラベルバイクの完成車に採用してきた定番的存在のオフロードタイヤだ。とくにスタンダードなG-ONE ALLROUNDが人気で、モデルによってはG-ONE BITEを前輪にセットしてコーナリンググリップを稼ぐコンビネーションで用いられるケースも多い。今回のテストの前には改めてG-ONE ALLROUNDとBITEを使ったうえでULTRABITEに乗り、比較しながらインプレッションを行った。

既存モデルのG-ONE BITE&ALLROUNDとのトレッド比較
ショルダーのノブが間引かれ、間隔の空いたG-ONE BITEはオフロード70%:オンロード30%を想定ショルダーのノブが間引かれ、間隔の空いたG-ONE BITEはオフロード70%:オンロード30%を想定 ノブが密に並んだG-ONE ALLROUNDはオフロード50%:オンロード50%の割合を想定ノブが密に並んだG-ONE ALLROUNDはオフロード50%:オンロード50%の割合を想定


シュワルベ G-ONE ULTRABITE  700 × 38C  オフロード85%:オンロード15%のバランスを想定して設計されたシュワルベ G-ONE ULTRABITE 700 × 38C オフロード85%:オンロード15%のバランスを想定して設計された
エヴォリューションラインの700✕38Cサイズをチョイス。走ったのは筆者のホームコースである湖畔のグラベル。舗装、コンクリート簡易舗装、砂利のジープロード、石のガレ場、土のトレイルなど、様々な状況がミックスしたルートで、天候の違う日ごとに複数回走った。

実測重量は552gとカタログデータより重かった実測重量は552gとカタログデータより重かった コルナゴGRV-Prestigeにシュワルベ G-ONE ULTRABITE 700 × 38Cをセットした状態コルナゴGRV-Prestigeにシュワルベ G-ONE ULTRABITE 700 × 38Cをセットした状態


まずチューブレスの懸案であるリムとの嵌合について。今回はシマノGRXホイール(WH-RX570)と、WTB Frequency Team i23 TCSリムを使用したホイールの2パターンで装着をテスト。両方ともに簡単に嵌めることができ、ビード上げもフロアポンプで一発で可能だった。そして実測重量は552g、549gと、2本ともカタログデータより重かった。

シュワルベのTLE(チューブレスイージー)はチューブレスレディと同義で、シーラントを使用することが前提だ。ビード上げが完了した状態で、まずシーラント未注入で放置してみるが、数日してもエア圧の低下がほとんど無く、シーラント無しでも運用が可能と思えるほどの空気保持性があった。試した2セットのホイールともにそうだったため、ETRTO規格に正確な相性の良いリムなら好条件で使用が可能だと思われる。ただしパンクが高確率でつきまとうグラベルライドでは自己修復のためのシーラントはパンク対策としても併用すべきだろう。

円盤型のノブをつないだ「テープノブ」が特徴的。強力なトラクションを生み出す円盤型のノブをつないだ「テープノブ」が特徴的。強力なトラクションを生み出す
指定空気圧は3.0〜5.0気圧との表示がタイヤサイドにある。体重60kgの筆者の場合で3気圧ほどがベスト。ウェットな土系の路面やクッション性を重視する場合は2.5気圧ほどに下げれば感触は良好で、この場合は指定空気圧の範囲外になるが、メーカー推奨空気圧とはタイヤが外れない安全マージンをとった数値であるので、あくまで自己責任での設定になる。

濡れた舗装路でもグリップが高いのはADDIX Speedgripコンパウンドの賜物だろう濡れた舗装路でもグリップが高いのはADDIX Speedgripコンパウンドの賜物だろう
リールに巻いたテープをつないだような独特な形状の「テープノブ」。そのノブ形状による効果か、舗装路では転がりが良く、見た目からは意外なほどにスムーズに走れる。これはノブに高さがありながらもベース部をつなぐことによってヨレの発生を抑えているからだろう。そして使用されるADDIX Speedgripコンパウンドはウェット路面でも滑りが少ないようで安心だ。

砂利のジープロードを走るような際にはタイヤの強い弾力にサスペンション効果を感じるほどで、高級タイヤ特有の快適な乗り心地を味わうことができる。

砂利の良く締まったフラットダートではテープノブが路面によく喰いついてくれる。タイヤ全体のコシが強く、空気圧を低めにセットしても腰砕け無く走ることができる。岩や石でのリム打ちパンクのリスクを避けるためには空気圧をなるべく高めたいが、タイヤ全体が弾むように良く変形してくれるため、路面の凹凸にも跳ねないしなやかさがある。

砂利のジープロードをハイスピードで走る。タイヤの強い弾力はサスペンションのようだ砂利のジープロードをハイスピードで走る。タイヤの強い弾力はサスペンションのようだ photo:So.Isobe
多くのグラベルタイヤが苦手な土系のトレイルでも喰い付きが良く、バイクを倒し込んだときにサイドに張り出したノブが刺さることでスリップしにくい。1✕1のギア比を使うような土の急坂上りでもスリップダウンせずに登りきれた。テープノブが路面に喰い付くようなトラクションを生み出しているようで、縦・横に踏ん張りが効く。

走行抵抗の軽いグラベルタイヤでは、スムーズな路面の上り坂やルーズな箇所でトルクをかけた際にスリップしてしまったり、下りコーナーでグリップが足りずにオーバーランしそうになるケースがあるものだが、G-ONE ULTRABITEはいずれも路面に良く喰い付いてくれる。

濡れた土や木の根っこでも滑ることが少ない濡れた土や木の根っこでも滑ることが少ない
ウェットでも土や砂の捌けが良く、ノブが活かせるウェットでも土や砂の捌けが良く、ノブが活かせる
サイドに張り出したノブとフレームのクリアランスをチェックしたいサイドに張り出したノブとフレームのクリアランスをチェックしたい 雨の影響が残るウェットな状況で、泥や土を含んだ路面でもグリップが効き、ノブ同士のすき間が大きくとられているため土や泥の捌けが良く、詰まりにくい。ノブに高さがあるにも関わらず、シリーズのなかでもっともノブ間が空いているため、泥や土の排出性能はもっとも高いと感じた。

700 × 38Cという太さは絶妙で、例えばフレームにクリアランスが少ないシクロクロスバイクにも使用できる可能性が高い。サイドノブの横方向への張り出し量大きいが、筆者のレースモデルのシクロクロスバイクにもリアのチェーンステイ部のクリアランスがややキツめながらセットすることができた。グリップ感も十分で、グラベルライド入門としてまずはCXバイクを流用する際にも使用しやすいタイヤだと言えるだろう。

濡れた落ち葉の上でもスリップしにくい濡れた落ち葉の上でもスリップしにくい
また、このULTRABITEの登場で、G-ONEシリーズには4種ものトレッドパターンが出揃ったことになる。いずれもグラベルレースにも向く高性能タイヤだけに、スピード域に応じて使い分けたり、前輪にコーナリンググリップが高いノブが高めのモデル、後輪には走行抵抗の低いノブの低いモデルを組み合わせるなど、G-ONEシリーズを揃えたうえで路面状況にあわせてチョイスしていくのはパーフェクトな使い方だと思う。


シュワルベ G-ONE ULTRABITE 製品データ

■エヴォリューションライン
カラー:ブラック
サイズ:700 × 38C、 29 × 2.00
コンパウンド/仕様:
ADDIX Speedgrip/MicroSkin、TLE(700 × 38C)
ADDIX Speedgrip/SnakeSkin、TLE(29 × 2.00)
価格(税抜):9,800円+税(700 × 38C、29 × 2.00)

クラシックスキンを採用したパフォーマンスラインのG-ONE ULTRABITEクラシックスキンを採用したパフォーマンスラインのG-ONE ULTRABITE (c)ピーアールインターナショナル■パフォーマンスライン
カラー:クラシックスキン
サイズ:700 × 38C、 29 × 2.00
コンパウンド/仕様:
ADDIX/RaceGuard、TLE(700 × 38C、29 × 2.00)
価格(税抜):7,800円+税(700 × 38C)、6,800円+税(29 × 2.00)  

ともにE-BIKE対応

製品詳細ページURL:
http://www.g-style.ne.jp/item.php?brand_id=16&item_category_id=148




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