シマノDEORE XTシリーズに加わった完成ホイール WH-M8120をインプレッション。オールマウンテンやエンデューロライドに対応する内幅30mmワイドリムを採用したMTBホイールは、前後セット価格アンダー5万円のリーズナブルさでトレイルの定番ホイールとなりそうだ。



シマノ DEORE XT トレイル チューブレスホイール WH-M8120シマノ DEORE XT トレイル チューブレスホイール WH-M8120 photo:Makoto.AYANO
昨年5月に発表されたシマノDEORE XTシリーズ(M8100)系のコンポーネントを追うかたちでリリース、今春からすでに発売開始されているDEORE XTホイールは、最小ギア歯数10TのMICRO SPLINEフリーハブを搭載した、シマノの最新の12Sコンポ対応のマウンテンバイク用コンプリートホイールだ。前後セット42,040円(税抜き)の手頃な価格を実現している。

オフセットリムにあしらわれたXTロゴオフセットリムにあしらわれたXTロゴ
外幅34.7mmオフセットリムとチューブレスバルブ外幅34.7mmオフセットリムとチューブレスバルブ フロントに外側リム幅:34.7 mmのワイドリムを採用するフロントに外側リム幅:34.7 mmのワイドリムを採用する


新DEORE XTホイールの特徴とディテールをみてゆこう。外側リム幅:27.9 mmのクロスカントリー向けと、外側リム幅:34.7 mmのフリーライド向けモデルの2系統があり、それぞれに27.5、29インチの2サイズがラインアップされる合計4モデル。O.L.D.はF:110mm、R:148 mmのB(=ブースト)タイプ。

ここでは外側リム幅:34.7 mm・29インチのトレイル/エンデューロ向けモデルで紹介する。まず流行のワイドリム化(前モデルWH-M8020よりも)したことで、更なるワイドタイヤに対応できる設計となった。リム高:19.8、外側リム幅:34.7 mmのワイドリムは2.25~2.60のタイヤに対応した形状。ハブはノーマル(丸)フランジを採用し、Jベンドの28本スポークで組み上げられ、デフォルトでチューブレスバルブ、貼り付け式TLリムテープがセットされたチューブレス対応ホイールとなる。

MICRO SPLINEフリーハブを採用、10-51T 12スピードカセットに対応するMICRO SPLINEフリーハブを採用、10-51T 12スピードカセットに対応する
リムはオフセット設計で、スポークのオチョコ量が「0」のゼロディッシュ設計になったことで左右のスポークテンションの差を少なくすることに成功している。ハブはDEORE XTコンポの単体ハブと同等品が使用され、リアハブのカセットにはMICRO SPLINEフリーハブを搭載。XTR、DEORE XT、SLX、DEOREと出揃ったシマノの新コンポーネントとリア12Sに対応する規格となる。

フロントハブ。ディスクローターはセンターロック式だフロントハブ。ディスクローターはセンターロック式だ Jベンドスポークで組み上げられるリアハブ部Jベンドスポークで組み上げられるリアハブ部


最小ギア歯数10TのMICRO SPLINEフリーハブはアルミ製ボディで軽量。より小型で広く分散したスプラインをもつ軽量アルミ製フリーハブは歯の破損が少なく、フェイスラチェット式になったフリーボディが実現させた最大7°のクイックエンゲージメントによる素早い駆動でペダリングロスが少なくできる。

過去モデルをみてもXTホイールはマウンテンバイキングにおいては定番的存在。前後セットでアンダー5万円というリーズナブルプライスを実現した新XTホイールは、シマノの12Sコンポとの同時導入や入門MTB完成車からのアップグレードにはもってこいの存在となるだろう。

インプレッション

シマノ DEORE XT トレイル チューブレスホイール WH-M8120シマノ DEORE XT トレイル チューブレスホイール WH-M8120
すでにMTB系ショップでは完組ホイールの売れ筋ナンバーワンとなりつつあるDEORE XTホイール。主流となった30mmワイドリムをXTハブで組み上げた仕様で、何より42,040円(税抜き)のプライスは驚きだ。

XCモデルはストレートプルスポーク対応ハブで組まれるが、このトレイルモデルに採用されるのは丸フランジのJベンドスポーク式ハブ。DEORE XTの単体ハブ(FH-M8110)とデザイン違いながら同じように見えるが、シマノに問い合わせたところ、完組みホイールとしての最適化のためにハブフランジの寸法を1mmほど広げているとのこと。オフセットリムにあわせて設計されたこのハブとの組み合わせにより「セロディッシュ(オフセット量ゼロ)」のホイール設計を実現しているのだ。これにより左右のスポークテンションと剛性バランスを最適化することができるが、WH-M8120の専用リムだからできる設計であるとの回答を得た。逆に言えば、単体ハブの場合は様々なリムを使うことを想定し、そこまで攻めた寸法にはしていないということ。このあたりは完成ホイールならではの設計利点と言える。

フロントホイールの実測重量は945gフロントホイールの実測重量は945g リアホイールの実測重量は1,104gリアホイールの実測重量は1,104g


オーソドックスなJベンドスポークで組み上げられ、幅広リムにはツートンカラーでXTのロゴをあしらったデザインが入る。初期段階からチューブレス仕様で出荷され、テープやバルブを取り替えること無くチューブレスタイヤを装着できる。29インチ、ブースト版のホイール重量の実測値はF:945g、R:1104g(バルブ、リムテープ込み)と、カタログデータよりやや重めの数値だった。

大きくXTロゴがあしらわれたカラーデザイン大きくXTロゴがあしらわれたカラーデザイン
2.35サイズのIRC TANKENタイヤを装着したタイヤ太さの実測値は62.2mmだった2.35サイズのIRC TANKENタイヤを装着したタイヤ太さの実測値は62.2mmだった ワイドリム仕様のため2.3以上の太さのタイヤをセットすることでエンデューロや里山ライドなど、下り系のトレイルライドには最適なセットアップにすることができる。MICRO SPLINEフリーハブ採用のシマノの最新12スピードコンポーネントに共通の規格となるため、今回はXTR M-9100シリーズの12Sコンポで組み上げたWサスのクロスカントリーバイクにセットしてテストを行った。フリー歯数は10-51Tだ。

セットしたタイヤはIRCのTANKEN 29✕2.35サイズ。内幅25mmのリムにセットした状態に比べてトレッドの断面形状が異なり、幅が広がることでサイドノブが立ち上がり、より自然なラウンド形状になる。走ったときの印象ではタイヤの撓みが少なく、剛性感が上がるようだ。空気量も増し、サイドのノブがより有効に使えるようになるため、トレイルでのコーナリングがよりグリッピーで楽しくなる。

オフセットリムと専用ハブでオチョコ量「0」を実現したゼロディッシュホイールオフセットリムと専用ハブでオチョコ量「0」を実現したゼロディッシュホイール photo:Makoto.AYANO
細かなラチェットによるエンゲージメントは7°。これはXT単体ハブと同じで、マイクロスプラインの内部機構のラチェットも同一のものであることが分かる。この数値は小さいほどコーナーの立ち上がり(ストップ&ゴー)などの踏み始めで素早い漕ぎ出しが可能になるのだ。

XTのロゴが入る専用ハブXTのロゴが入る専用ハブ オーソドックスなJベンドスポークで組み上げられるFハブオーソドックスなJベンドスポークで組み上げられるFハブ


前後セットで2kgオーバーと重量自体はやや重めであることで、上りで重さを感じてしまうことは確か。リム素材はアルミのため、カーボンリムに比べればコーナリング剛性やシャキシャキ感はやや劣るものの、レースでないトレイルライドや下り系ライドなどには十分なパフォーマンスを発揮してくれる剛性感だ。入門モデルのマウンテンバイクはもちろん、中〜上級のMTBにセットしても見劣りしない十分な基本性能と言えるだろう。XTハブ単体の価格なども考えると、ホイール前後ペアで4万2千円というプライスはまさに驚異的だ。



製品データ
リアホイール
モデル番号:WH-M8120-TL-R12-B-29(トレイル)
ホイール形式:チューブレス、148x12mm Eスルーアクスル、センターロック
O.L.D.:‌148mm
スポーク:28本Jベンド(2.0-1.8-2.0ダブルバテッド)
外側リム幅:34.7mm
リム高:19.8mm
タイヤ推奨サイズ:29 x 2.25~2.60
平均重量:1,061g
ホイールサイズ:622 x 30C (29インチ)
製品情報:https://bike.shimano.com/ja-JP/product/component/deore-xt-m8100/WH-M812…

フロントホイール
モデル番号:WH-M8120-TL-F15-B-29(トレイル)
ホイール形式:チューブレス、110x15mm E-Thruアクスル、センターロック
スポーク:28本Jベンド(2.0-1.8-2.0 ダブルバテッド)
外側リム幅:34.7mm
リム高:19.8mm
タイヤ推奨サイズ:29 x 2.25~2.60
平均重量:941g
製品情報:https://bike.shimano.com/ja-JP/product/component/deore-xt-m8100/WH-M812…


impression& photo:Makoto.AYANO
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