本来のシーズン・インから2ヶ月以上が経過した現在、国内チームはどのようにしているのか?。第4回は、シマノレーシングとチームブリヂストンサイクリング。レースが無い期間が続く一方で、練習や生活の中で普段は出来ないことが出来るようになったようだが・・・?




国内各チームの現状について以下の質問を送り、メールでご回答頂いた。

監督への質問
・チームの現状を教えてください。(選手への練習内容や普段の行動についての指示、現在チームとして取り組んでいること、新たに始めたことなど)
・緊急事態宣言以降、それまでと変えたことはありますか?
・6月までのレース開催が絶望的となった現在、今後の見通しをどのように考えていますか?
・UCIが各国選手権を8月に指定しました。全日本選手権の開催が8月で決まった場合、どのような事を予想しますか?(レースに向けての準備やレース展開など)
・所属している外国人選手の状況と、自国の状況について聞かれていることはありますか?

選手への質問
・普段の練習はどのように行っていますか?。特に緊急事態宣言以降、気をつけていることや、変えたことはありますか?
・この先6月までレースが開催されないことについて、何か思うこと、考えることはありますか?
・全日本選手権が延期になったことについて、思うこと、考えることはありますか?
・練習以外で力を入れていること、新たに始めたことなどありますか?
・練習のことなど、ホビーレーサーにアドバイスはありますか?
・ファンやサポーターに一言お願いします。




シマノレーシング

今年からジャージデザインを改めたシマノレーシング 今年からジャージデザインを改めたシマノレーシング ©️Shimano Racing
野寺秀徳監督「レースのための移動が無い分、ミドルパワー領域でのトレーニング時間が増えた」

現状、選手のトレーニング内容に関する詳細な指示はしていません。感染拡大防止に最大限の注意をはらいながら活動する事、免疫を落すような激しいトレーニングを控える事等を踏まえ、単独でのトレーニングを基本とし、具体的な内容は個々の判断に任せる形です。各団体が出している行動指針を参考に、細心の注意をはらい屋外でのトレーニングもしています。

チームとしてはオンラインサービスを利用し選手のトレーニングを管理し、監督と選手のコミュニケーションをとっている状況です。選手間でもSNSサービスでの映像通話等を利用し情報交換を行っています。

これらに関しては、以前から使用していたオンラインツールを、より実用的に活用することで、今後の組織強化に繋げられる事と考えています。

2月前半に沖縄で行われた強化キャンプには、今年のメンバー10名全員が揃った(レポートブログより)2月前半に沖縄で行われた強化キャンプには、今年のメンバー10名全員が揃った(レポートブログより) ©️Shimano Racing目標とするスケジュールが立たない現状で懸念されている選手のモチベーションですが、確かにレースへ向けた最大限のモチベーションは作れませんが、基本的な体力を構築するための屋内外でのライドに関しては、その行為自体を選手は好み積極的に行う傾向にあり、著しいトレーニング量の低下、競技力の低下は心配していません。むしろ、毎週末のレース&長距離移動が続く通常のシーズン中には疎かになりがちなミドルパワー領域でのトレーニング時間が増え、有酸素能力の向上が見られる傾向も見られます。

対外的な取り組みに関してですが、可能な社会貢献が何かを検討しつつも具体的な行動へ繋げるためには様々な想定も含めなくてはならず、大きな行動をはじめることはできていません。

緊急事態宣言以降は、チームの団体行動を無くし、トレーニングは個々、クラブハウスで行っていた選手への食事提供も停止し、チーム内での接触を極力避けるようにしています。緊急事態宣言、というラインだけでなく、刻一刻と変わり続ける状況に日々対応し行動を変化している状況が続いています。

2月に沖縄で行われたキャンプの模様(レポートブログより)2月に沖縄で行われたキャンプの模様(レポートブログより) ©️Shimano Racing2月に沖縄で行われたキャンプでのミーティングの模様。今はオンラインで行なっているという(レポートブログより)2月に沖縄で行われたキャンプでのミーティングの模様。今はオンラインで行なっているという(レポートブログより) ©️Shimano Racing

行動の見通しは、チーム個々の判断で決定する事は現実的でないと考えています。しかしながら、UCIや、その他競技団体が可能性を示す再開の日程(現状であれば8月)を意識し、最低限の体力ベースとモチベーションを維持する活動を行います。

仮に全日本選手権が夏季の開催となった場合、日本の高温多湿な環境では非常に厳しいレースとなる筈です。ベースとなる200㎞オーバーでの開催は危険すら伴いますので、距離も短くなるであろうと推測できます。しかしながら、消耗が激しい分しっかりとした体力ベースと当日の健康レベルが高い選手のみが生き残るレースにもなる筈です。

加えて、それ以前の長期チームキャンプ等の開催も難しい事が予想されますので、何らかのトレーニング対策を練る必要があると考えています。

木村圭佑「全日本選手権延期でも、チームのモチベーションは変わらない」

1月には長女が誕生したキャプテンの木村圭佑(チームブログより)1月には長女が誕生したキャプテンの木村圭佑(チームブログより) ©️Shimano Racing普段の練習は免疫力を落とし過ぎないことを念頭に置いて、レース再開に向けての体力ベースを可能な限り維持することを考えています。自宅でのローラートレーニングの時間が増えましたが、外でのロードトレーニングをする時は、基本的にソロライドで行い、以前よりも補給食を多めに持ち、休憩でコンビニなどの使用をできるだけしないようにしています。外でのトレーニング時間も3時間以内でベース強化を中心のメニュー内容にしています。

レースが無い時期が長く続いていることで、安心してレースが開催されることへの喜びや、応援してくださる方々の前で走れることはとても恵まれていることだと今まで以上に強く感じています。

全日本選手権の延期は残念ではありますが、今の状況的には仕方がないと思います。選手は大会に向けて数ヶ月のトレーニングを積んで挑むので、現状ではレースに対応するハードトレーニングを行うことは大きなリスクが伴います。それでも、延期であり、現状では中止にはなっていないので、全日本選手権に向けるチームのモチベーションは変わることはありません。

2月に沖縄で行われた強化キャンプで(レポートブログより)2月に沖縄で行われた強化キャンプで(レポートブログより) ©️Shimano Racing練習以外では、自宅での時間を利用し、SNSでの発信頻度を増やすことや、読書や家族との時間を大切にしています。

ホビーレーサーの皆さんも、こういう状況の中でストレスを感じることが多くなってきていると思いますが、、自転車の楽しさを出来る範囲で楽しんでもらえればと思います。レース志向の方には、FTPなどベース強化がおすすめです。今まで取り組まなかった苦手分野のトレーニングにチャレンジできる機会かもしれませんね!

ファンの皆さんが応援してくださる前で走れることはとても幸せなことだと感じています。笑顔でお会いできる日を楽しみにしています!

シマノレーシング公式サイト:https://www.shimano.com/jp/company/shimano_racing/index.html
ツイッター:https://twitter.com/SHIMANO_Racing
インスタグラム:https://www.instagram.com/shimano_racing/




チームブリヂストンサイクリング

ロード、トラック、MTB合わせて13名が所属するチームブリヂストンサイクリングロード、トラック、MTB合わせて13名が所属するチームブリヂストンサイクリング ©️Team BRIDGESTONE Cycling
六峰亘監督「来たるシーズンに向けてもう一度仕切り直すイメージで」

はじめに、現在このような状況の中、最前線でご尽力いただいている医療従事者の皆様、本当に有り難うございます。またこれまで当たり前のようにレースを開催し、またそういった環境をご準備頂いていた自転車業界に携わる多くの皆様、チームを支援、応援して頂いている多くのファン、スポンサーの皆様へ改めて感謝致します。

先日延期となっていたUCIワールドツアーのカレンダーが発表になりましたが、国内レースに関しては未だ未定のままですし、まだまだ気を許せない状況です。引き続き不自由な生活が続くといは思いますが、もう少しだけSTAY HOMEで新型コロナウイルスの感染を拡大させないよう、チームで出来る事、個人が出来る事を取り組んで参ります。

チーム公式サイトでは、オンライン会議などで使える「ANCHOR壁紙」が配布されているチーム公式サイトでは、オンライン会議などで使える「ANCHOR壁紙」が配布されている ©️ Team BRIDGESTONE Cycling現在チームとしての活動は停止している状況です。ミーティング等含めコミュニケーションに関しても全て電話やWEBを利用しています。トレーニングに関しても屋内でのトレーニングに切り替え、ホームトレーナー等の機材を各自宅に設置できるようにチームより支給しています。

我々のチームの場合、シーズンインを迎えていない状態で現在の状況に至りました。未だ確信の持てるスケジュールが見えてない状況ではありますが、来たるシーズンに向けてもう一度仕切り直すイメージで準備しています

不要不急の外出をしない等はもちろんですが、行動以外で言えばやはり意識でしょうか。緊急事態宣言が正式に出される前からチームとして、意識から変えていく方向にシフトしています。

UCIレースがいつ始まるのかは、世界の情勢が大きく影響もしていくと思いますし、まずは国内のリーグ等、あるいは全日本選手権で再開を迎えるのではないかと、予想はしています。このような事は、全ての選手、チームとしても初めて経験して向かえるシーズンインとなることは間違いありません。

前述にもあった通り、準備に関しては急を要する形は避けられないと考えています(正式決定次第)。少なくとも現時点で持っている情報の中で準備するのであれば、8月(と想定される)の全日本選手権に今年の照準を置くつもりです。今後の状況次第にはなりますが屋外のトレーニングを以前のように取り組めることが一番いいですが、最悪の想定は常に持って動くつもりです。

レースに関しては、準備ができているか、そうでないかが如実に出ると考えます。そして、現在の情勢で最も選手に影響が出た部分はモチベーションだと考えています。そのモチベーションの差が、準備とレース当日に大きく影響すると考えられます。勝利の鍵は、チーム全体のモチベーションをいかにあげられるかにかかっていると思います。




近谷涼「スパイスカレーを試行錯誤しながら作っています」

トラック世界選手権に出場したメンバー(中央が近谷涼 チームブログより)トラック世界選手権に出場したメンバー(中央が近谷涼 チームブログより) ©️Team BRIDGESTONE Cycling今まで当たり前に出来ていた事が出来なくなっている現状で、今の自分の環境を大切に、多くの方へ感謝して練習に取り組んでおります。練習内容の変化としては、複数人で練習することはなく、個人トレーニングに取り組んでいます。道具を使用した自宅でできるウエイトトレーニングや、ズイフトも始め、自宅のトレーニング環境を整えました。また、起床時の検温、食事前の手洗いうがい、規則正しい生活を心掛けております。

レースの開催、大会の運営は関わる関係者の方々、自治体の協力、応援してくださる皆さん、レースを走る選手のすべてが揃って行われることなので、今の情勢の中では、自分自身の準備をしっかりとして行きたいと思っております。選手としてレースが開催されたときに、そのレースを盛り上げられるように最善の対応ができるように考えております。

全日本選手権を含む、どんなレースでも現状可能な最大の範囲でトレーニングに取り組み、来るべき日に向けて、チーム全員で臨めることを考えております。

練習以外では、家にいる時間を有効活用して、以前に購入して読めていない書物を読んでいます。また、選手として大事な「食事」の部分で自炊力を高めています。カレーが大好物なので、スパイスカレーを試行錯誤しながら作っています。

今年2月のトラック世界選手権では、チームパーシュートの日本記録を更新した今年2月のトラック世界選手権では、チームパーシュートの日本記録を更新した (c)JCFホビーレーサーの皆さんは、普段は自転車に乗る練習がメインだと思いますが、家でできるコアトレーニングなど、自転車に乗る以外のトレーニングでアプローチしていくのが良いかなと思います。また、今後のトレーニングプランや食事などを考える時間に充てるのも良いと思います。

外出自粛で制限されることも多く大変ですが、1日でも早く終息するようにみんなで協力して行きましょう。チーム、選手の情報は、SNSを通して発信していきます。みんなで行動に気をつけながら、体を鍛え、レベルアップしてレース会場でお会いできる日を楽しみにしています。


チーム公式ブログ:https://www.bscycle.co.jp/anchor/blog/
Facebook:https://www.facebook.com/Team.Bridgestone.Cycling/
ツイッター(チームブリヂストン):https://twitter.com/teambridgestone
インスタグラム(チームブリヂストン):https://www.instagram.com/teambridgestone/


text:Nodera Hidenori,Keisuke Kimura,Wataru Mutsumine,Ryo Chikatani
edit:Satoru Kato

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