6月1日までのUCIレース開催中止が発表された翌日の4月2日、その期間には該当しないツール・ド・スイスの開催中止が主催者より発表。同時にインドアトレーナーを用いた代替レース「デジタル・スイス5」の開催が告知された。



1933年から始まったこのレースの中止は、1940、1943〜1945年の戦争による中断以来5度目、戦後としては初となる。公式サイトには、物流面や財政的にも困難となるため、今季後半への延期もないと記されている。

ツール・ド・スイス2019を制したエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)ツール・ド・スイス2019を制したエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:CorVos
「新型コロナ感染拡大の中、この決断は心を重くするものでした。しかし、参加者、ファン、パートナーに確実性と安全性を提供するためには、これが最善の解決策であると確信しています。ツール・ド・スイスにとっても、このイベントを将来にわたって継続させるための重要な一歩です。スポンサー、開催都市、サプライヤー、スタッフのサポートと連帯に感謝します。」と、ツール・ド・スイス共同マネージング・ディレクターのオリヴィエ・センは述べている。

開催中止の理由としては、以下の点が挙げられている。

  • 新型コロナの発生以来、レース開催自体が不確実性を帯び、より詳細な計画をほぼ不可能にしている。この不確実性は、イベントを安全に実施するために必要な軍隊や警察のサポートにも大きな影響を与える。
  • 各国個別の対策により、屋外でのサイクリングが完全に禁止されている国もあり、全ての選手がこのレースに参加するための準備が出来るとは考えられない。そのため、主催者は公平な競技を保証することができない。適用される移動制限も考慮しなければならない。
  • レース中起こり得るクラッシュにより、スイスの医療システムにさらなる負担を課す危険性がある。事故が発生した場合には、参加者と観客のために最善の医療を確保することが最優先されるが、現在の状況において、このような事態は避けなければならない。
  • 2月末にスイスでウイルスが発生して以来、スポンサーの獲得やホスピタリティパッケージの販売がほぼ不可能となっている。レースを開催することは、多額の金銭的損失をもたらす。
  • 中止の決定がさらに遅れることで、コストの増加に繋がる。これはツール・ド・スイスの組織のみならず、関係する全てのスポンサー、開催都市、サプライヤーにも当てはまる。

主催者は、2021年のツール・ド・スイスは、今年のレースプランからほとんど変更なく開催されるだろうと記し、今年と同じ開催地を辿ることで、来年の計画に必要な時間と労力を大幅に削減することが可能であるとの予測を立てている。なお、2021年の開催日は東京オリンピックの延期に絡み、UCIワールドツアーの2021年度日程が確定していないため、現時点では未定。例年通り6月中の開催を目指すとしている。

ツール・ド・スイス2020コースマップツール・ド・スイス2020コースマップ (c)Tour de Suisse


ツール・ド・スイスに代わり、デジタルレースシリーズ「デジタル・スイス5」を開催

ツール・ド・スイス2019第7ステージのゴールへと独走するエガン・ベルナル。このような光景が「デジタル・スイス5」でも見られるかツール・ド・スイス2019第7ステージのゴールへと独走するエガン・ベルナル。このような光景が「デジタル・スイス5」でも見られるか photo:CorVos
ツール・ド・スイス2020は中止となったが、主催者はインドアトレーナーを用いたデジタルレースシリーズ「デジタル・スイス5」の開催を発表した。この仮想空間におけるレースは、2020年4月22日から26日までの5日間で、スイス国内のコースで開催されると言う。パートナーとしてSRF、Velon、ROUVYが名乗りを上げている。現在すでに今季ツール・ド・スイスに招待されていた17のワールドツアー、プロチーム、スイス代表チームがこのレースに参加登録しており、スイスの放送局であるSRFによる生中継が決まっている。

また、このレースが成功すれば、デジタル・ツール・ド・スイスの開催に繋がる可能性があると主催者は述べている。日程は2020年6月7日〜14日を予定しており、開催の決定は5月初旬までになされると言う。

text: Yuichiro Hosoda