逃げるトラトニクをフィニッシュ寸前で追い抜き、ライバルたちに大きな差を付けたニッコロ・ボニファツィオ(トタル・ディレクトエネルジー)がパリ〜ニース第5ステージ勝利。マキシミリアン・シャフマン(ボーラ・ハンスグローエ)がイエロージャージを着たまま山岳決戦が始まる。


オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏を走る227kmの最長ステージオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏を走る227kmの最長ステージ photo:CorVos
フランス中部のガナからオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏を横断し、アルプスの入り口に位置するラ・コート=サン=タンドレまで227kmを駆けるパリ〜ニース第5ステージ。ニュートラル区間を含めると走行距離が235kmに達する平坦ステージはスプリンターにとってのラストチャンスとなる。

3月12日(木)第5ステージ ガナ〜ラ・コート=サン=タンドレ 227km3月12日(木)第5ステージ ガナ〜ラ・コート=サン=タンドレ 227km photo:A.S.O.新型コロナウイルス感染拡大防止のためにアメリカがヨーロッパからの入国を3月13日から30日間停止する措置を取ることから、ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、EFプロサイクリング)は急遽レースを離れて帰国した。チームメイトのローソン・クラドック(アメリカ)はスタートしたものの途中リタイア。さらにマイケル・ウッズ(カナダ)はステージ後半の落車で大腿骨を骨折する重傷を負っている。逆転を目指す総合5位セルジオ・イギータ(コロンビア)は思わぬ形で重要なアシストを失ってしまった。

フランス南部のオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏まで南下したこともあって、前日までよりも気温は高め。世界チャンピオンのマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)も加わったアタック合戦の末に4名の逃げが決まった。

逃げグループを形成した4名
ライアン・ミューレン(アイルランド、トレック・セガフレード)
アレクシー・グジャール(フランス、アージェードゥーゼール)
ヤン・トラトニク(スロベニア、バーレーン・マクラーレン)
アントニー・テュルジス(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)

総合で18分10秒遅れのトラトニクを含む逃げは約7分のリードを保ったまま先行を続けた。山岳ポイントを量産したテュルジスはチームメイトのジョナタン・イヴェール(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)に次いで山岳賞2位に。イヴェール23ポイント、テュルジス19ポイントで、トタル・ディレクトエネルジーが山岳賞上位を独占している。

メイン集団を苦しめたアレクシ・グジャール(フランス、アージェードゥーゼール)らメイン集団を苦しめたアレクシ・グジャール(フランス、アージェードゥーゼール)ら photo:CorVos
集団スプリントを狙うコフィディスやNTTプロサイクリングが集団牽引集団スプリントを狙うコフィディスやNTTプロサイクリングが集団牽引 photo:CorVos
ロット・スーダルやNTTプロサイクリング、コフィディス、サンウェブがメイン集団を牽引したものの、強力なルーラー揃いの逃げとのタイム差が縮まらない。ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、NTTプロサイクリング)とトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)という世界二大ルーラーの集団牽引によって、残り19km地点でようやくタイム差は1分を切った。

「もっとイージーなステージを予想していたけど、とてもハードだった。逃げが強力だったので残り60〜70kmから常にハイスピード。誰もが苦しんでいたと思う」と総合首位マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が振り返るほどの高速な展開。残り15km地点からフィニッシュまでの平均スピードは58.6km/hに達している。

テュルジスとミューレンの脱落によって先頭はトラトニクとグジャールの2人に。残り17km地点のスプリントポイントでは、3番手通過のボーナスタイム1秒をかけてディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・マクラーレン)とイギータが全開スプリントを繰り広げ、前者が僅差で先着している。

追走グループを形成したボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ)ら追走グループを形成したボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ)ら photo:CorVos
残り7km地点から独走に持ち込んだヤン・トラトニク(スロベニア、バーレーン・マクラーレン)残り7km地点から独走に持ち込んだヤン・トラトニク(スロベニア、バーレーン・マクラーレン) photo:CorVos
連日果敢に動くジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)はこの日も残り16km地点でアタック。アラフィリップが吸収されると今度はカウンターアタックでボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ)、ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)、カスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)、ニキアス・アルント(ドイツ、サンウェブ)、ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・マクラーレン)が飛び出すも、スプリンターチームの集団牽引によってこの強力なグループも引き戻されている。

グジャールをふるい落としたトラトニクが独走のまま25秒リードで残り5kmを切った。メイン集団はロット・スーダルが牽引したものの、チームメイトの健闘も虚しくカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)はタイミングの悪いメカトラでメイン集団から脱落してしまう。

10秒リードのままフラムルージュ(残り1kmアーチ)を通過した2度のスロベニアTTチャンピオンと、猛烈な勢いで追い上げるスプリンターチーム。最終ストレートに入ると、およそ20m前を走るトラトニクに向かって、残り200mの標識からニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、トタル・ディレクトエネルジー)が加速した。

一気にライバルたちを引き離すとともに、スピード差を付けてトラトニクを追い抜いたボニファツィオ。迷うことなく先に仕掛けたボニファツィオがイバン・ガルシア(スペイン、バーレーン・マクラーレン)やペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)に2車身の差を付けて勝利した。

逃げ続けたヤン・トラトニク(スロベニア、バーレーン・マクラーレン)を追い抜いたニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、トタル・ディレクトエネルジー)逃げ続けたヤン・トラトニク(スロベニア、バーレーン・マクラーレン)を追い抜いたニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、トタル・ディレクトエネルジー) photo:CorVos
逃げ吸収とともに抜け出したニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、トタル・ディレクトエネルジー)が勝利逃げ吸収とともに抜け出したニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、トタル・ディレクトエネルジー)が勝利 photo:CorVos
「チームにとって重要な目標であるパリ〜ニースでの勝利。今シーズンはレース出場数が少ないので大会前半は苦しんでいたけど、後半に入って調子が上がってきていたんだ」と、ランプレ・メリダ時代の2014年と2015年にツアー・オブ・ジャパン東京ステージを連覇しているボニファツィオは語る。

イタリア生まれのボニファツィオはこれまでランプレ・メリダやトレック・セガフレード、バーレーン・メリダを経て2019年からフランスのトタル・ディレクトエネルジーに所属する。2月のサウジツアーでのステージ優勝に続く今シーズン2勝目を飾った26歳のスプリンターは「イタリアにいる家族や自宅を出ることできないイタリア人たちへの小さな贈り物になればと思う」と、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を大きく受ける母国を憂いた。

総合成績に変動はなく、シャフマンがイエロージャージを着たまま3連続山岳ステージに挑むことに。総合優勝を目指すシャフマンは「総合成績が最も近いピュアクライマーのセルジオ(イギータ)が最大のライバルであることに変わりはない。明日からは彼を警戒しないといけない」とコメントしている。

パリ〜ニース2020第5ステージ結果
1位 ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、トタル・ディレクトエネルジー) 5:18:02
2位 イバン・ガルシア(スペイン、バーレーン・マクラーレン)。
3位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)
4位 ナセル・ブアニ(フランス、アルケア・サムシック)
5位 ユーゴ・オフステテール(フランス、イスラエル・スタートアップネイション)
6位 アンドレア・パスクアロン(イタリア、サーカス・ワンティゴベール)
7位 ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、ロット・スーダル)
8位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)
9位 ブライアン・コカール(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)
10位 マルク・サロー(フランス、グルパマFDJ)
個人総合成績
1位 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 18:49:00
2位 セーアン・クラーウアナスン(デンマーク、サンウェブ) 0:00:58
3位 フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) 0:01:01
4位 ニルス・ポリッツ(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション) 0:01:05
5位 セルジオ・イギータ(コロンビア、EFプロサイクリング) 0:01:06
6位 ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・マクラーレン) 0:01:09
7位 ティシュ・ベノート (ベルギー、サンウェブ) 0:01:11
8位 マッズウルス・シュミット(デンマーク、イスラエル・スタートアップネイション)
9位 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、NTTプロサイクリング) 0:01:15
10位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) 0:01:16
その他の特別賞
ポイント賞 マキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
山岳賞 ジョナタン・イヴェール(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)
ヤングライダー賞 セルジオ・イギータ(コロンビア、EFプロサイクリング)
チーム総合成績 ボーラ・ハンスグローエ
text:Kei Tsuji