翌々日にも再び登場する標高1,025mの岩山ジュベルハフィートの山頂フィニッシュでアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)が圧勝。7月のツール・ド・フランスを見据える27歳のオールラウンダーがUAEツアー総合首位の証であるレッドジャージを手にした。



砂漠を貫く平坦コースを走る砂漠を貫く平坦コースを走る photo:LaPresse
UAEツアー第3ステージの終盤に佇むのは、2018年までアブダビツアーの名物フィニッシュだったジュベルハフィート。起伏の少ない半島の真ん中に位置する標高1,025mの岩山に向かって、平均勾配6.6%の登りが10.8kmにわたって続く。前半は8%前後の勾配を刻み、残り3km地点で勾配が11%に達する難所だ。

UAEツアー2020第3ステージ(距離184km/獲得標高差1,300m)UAEツアー2020第3ステージ(距離184km/獲得標高差1,300m) photo:LaPresse本来第3ステージは標高208mのラファイサダムにフィニッシュする予定だったが、道路工事の影響でフィニッシュ地点がジュベルハフィートに移された。第5ステージにもジュベルハフィートが登場するため、選手たちは1大会で2度この岩山を登ることになる。

ジュベルハフィートの登り口までひたすら平坦路が続くコースで逃げたのは4名。UCIワールドチームライダー3名を含むこの逃げは砂漠道でタイム差を7分20秒まで広げることに成功する。この日ばかりはスプリンターチームではなくUAEチームエミレーツやミッチェルトン・スコットといった総合系チームがメイン集団の牽引を担った。

逃げグループを形成した4名
ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、NTTプロサイクリング)
ジャスパー・デブイスト(ベルギー、ロット・スーダル)
ステイン・ステールス(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)
ウンベルト・マレンゴ(イタリア、ヴィーニザブKTM)

リラックスした表情でステージ前半を走る新城幸也(バーレーン・マクラーレン)リラックスした表情でステージ前半を走る新城幸也(バーレーン・マクラーレン) photo:CorVos
逃げるジャスパー・デブイスト(ベルギー、ロット・スーダル)ら4名逃げるジャスパー・デブイスト(ベルギー、ロット・スーダル)ら4名 photo:CorVos
道幅のあるジュベルハフィートを徐々に人数を減らしながら進むメイン集団道幅のあるジュベルハフィートを徐々に人数を減らしながら進むメイン集団 photo:LaPresse

好位置でエースを登坂させたいチームがひしめき合うように集団先頭でペースを上げたため、左手に岩山ジュベルハフィートが見えてくる残り15kmでついにタイム差は1分を割り込む。ジュベルハフィートの麓に向かって、UAEチームエミレーツやボーラ・ハンスグローエ、モビスター、バーレーン・マクラーレン、ミッチェルトン・スコット、イスラエル・スタートアップネイションがトレインを形成して猛進。登坂開始を意味するゲート通過後すぐ、猛烈な勢いのメイン集団は逃げる4名を捕らえた。

勾配が増したところでマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、バーレーン・マクラーレン)やレッドジャージのカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)に続いて、この日もクリストファー・フルーム(イギリス、チームイネオス)は早々に遅れていく。西陽に照らされた山肌に沿って、蛇行しながら高度を上げていく登りでカンタン・ジョレギ(フランス、アージェードゥーゼール)が先陣を切ってアタックしたものの、CCCチーム率いるメイン集団がこれを吸収。2017年ジュベルハフィート2位のイルヌル・ザカリン(ロシア)擁するCCCチームが麓からペースを作った。

UCIワールドチームの中で唯一シーズン未勝利のCCCチームはビクトル・デラパルテ(スペイン)をアタックさせて先行させる作戦に。徐々に人数を減らすメイン集団からは、まだ7kmを残してワウト・プールス(オランダ、バーレーン・マクラーレン)やジェームス・ノックス(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が脱落。エース級選手が相次いで遅れる中、残り6km地点で本命が動いた。

残り7km付近でメイン集団から飛び出すビクトル・デラパルテ(スペイン、CCCチーム)残り7km付近でメイン集団から飛び出すビクトル・デラパルテ(スペイン、CCCチーム) photo:CorVos
残り5km地点から独走に持ち込んだアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)残り5km地点から独走に持ち込んだアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:LaPresse
地元チームとしてのプレッシャーを背負い、単独追走を仕掛けるタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)地元チームとしてのプレッシャーを背負い、単独追走を仕掛けるタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:LaPresse
ダンシングで加速したアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)とアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)、ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)が、すぐに先頭デラパルテまで追いついてパスしていく。UAEチームエミレーツ率いるメイン集団からは、1年前にジュベルハフィートを制したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が脱落。

残り5km地点でもう一段ペースを上げたAイェーツが独走に持ち込んだ一方で、ペースの上がらないメイン集団を飛び立ったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が単独でルツェンコとゴデュまでブリッジに成功する。残り4kmで先頭Aイェーツと追走グループのタイム差20秒。ルツェンコとゴデュの後ろで一旦息を整えてからポガチャルが追走体制に入ったものの、Aイェーツとのタイム差は縮まらなかった。

アタックから7分5秒間にわたって平均400Wで踏み続けた体重58kgのAイェーツ。VAM(平均登坂速度)1,706を記録する走りを見せたAイェーツが、ポガチャルに1分3秒差、ルツェンコやゴデュに1分30秒差をつけてジュベルハフィート頂上にたどり着いた。

2度のアタックでライバルたちをふるい落としたアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)2度のアタックでライバルたちをふるい落としたアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:LaPresse
独走でジュベルハフィートの頂上に近づくアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)独走でジュベルハフィートの頂上に近づくアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:LaPresse
ライバルたちに1分以上のタイム差をつけてフィニッシュするアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)ライバルたちに1分以上のタイム差をつけてフィニッシュするアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:LaPresse
「シーズン初戦なので自分の状態も分からないし、他の選手の状態も、特に若い選手の状態も分からない。だから今日は脚を試したくて、そして誰が反応するのかを確認したくてアタックしたんだ。結果的に絶好調で、誰もついてこなかった。気温37度ほどの暑さが続く厳しいステージだったけど、早めのアタックが功を奏したよ」と、ジュベルハフィートで圧勝を飾ったAイェーツは語る。

プロ1年目の2014年に総合優勝したツアー・オブ・ターキーを除くとAイェーツは中東レース初出場。「浮き足立つことなく総合優勝に向かって走りたい」と語るAイェーツは2020年ツール・ド・フランスへの出場を予定している。双子の兄弟サイモンはジロ・デ・イタリアに出場予定だ。

2日後に再び登場するジュベルハフィートでAイェーツは再びライバルたちに1分以上の差をつけるのか、それともライバルたちが挽回するのか。ステージ2位に入ったポガチャルは「ステージ優勝に手が届かなくて残念だけど、今日はアダム(イェーツ)の状態がすこぶる良かった。もう少し食らいつくことはできたかもしれないけど、最後に勝つのは彼だった。それほどまでに強かった。自分にできることと言えば、タイムロスを最小限にすること。もちろん明後日ここに戻ってくる際には必ずアタックを仕掛けるよ」とリベンジを誓っている。

この日もアシストに徹した新城幸也(バーレーン・マクラーレン)は7分42秒遅れのステージ55位で第1回ジュベルハフィート決戦を終えている。エースのプールスがAイェーツから3分54秒遅れたためバーレーン・マクラーレンは目標をステージ優勝にスイッチすることになりそうだ。

レッドジャージを手にしたアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)レッドジャージを手にしたアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:LaPresse
10分以上遅れてフィニッシュしたクリストファー・フルーム(イギリス、チームイネオス)10分以上遅れてフィニッシュしたクリストファー・フルーム(イギリス、チームイネオス) photo:CorVos
UAEツアー2020第3ステージ結果
1位アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)4:42:33
2位タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)0:01:03
3位アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)0:01:30
4位ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)
5位ラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)
6位ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)0:01:56
7位パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)
8位ゴルカ・イサギレ(スペイン、アスタナ)
9位ヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス)
10位エディ・ダンバー(アイルランド、チームイネオス)
55位新城幸也(日本、バーレーン・マクラーレン)0:07:42
個人総合成績
1位アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)12:30:02
2位タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)0:01:07
3位アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)0:01:35
4位ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)0:01:40
5位ラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)
6位ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)0:02:06
7位ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
8位パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)
9位ヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス)
10位エディ・ダンバー(アイルランド、チームイネオス)
その他の特別賞
ポイント賞カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)
ヤングライダー賞タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)
中間スプリント賞ヴェリコ・ストイニッツ(セルビア、ヴィーニザブKTM)
チーム総合成績UAEチームエミレーツ
text:Kei Tsuji
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