世界最大のタイヤメーカーの一つ、グッドイヤーが満を持して自転車業界に参入。昨年のユーロバイクで発表された高性能レーシングロードタイヤ「EAGLE F1(イーグルF1)」がリリースされる。国内代理店は塩野自転車が務める。編集部インプレッションとともに紹介しよう。



グッドイヤー EAGLE F1&EAGLE F1 SuperSportグッドイヤー EAGLE F1&EAGLE F1 SuperSport
自動車の大手タイヤメーカーとして世界的な知名度を誇るアメリカのグッドイヤー。1898年に創業し120年以上にもなる歴史を持つ老舗ブランドであり、モータースポーツの世界で長きに渡り活躍を続けてきたノウハウを投入し自転車業界に参入したのが2018年。ロード、ツーリング、グラベル、MTBと全てのカテゴリーを網羅するラインアップを一気にリリースし話題を呼んだ。

翌2019年のユーロバイクで、ウルトラハイパフォーマンス(UHP)カテゴリーとしてレーシングロードタイヤ「EAGLE F1(イーグルF1)」を発表。今回、新たに塩野自転車が国内代理店となり日本上陸を果たした。モータースポーツファンなら知っている人もいるだろう、同社のフラッグシップを表すモデル名が与えられた製品だ。

グッドイヤー EAGLE F1グッドイヤー EAGLE F1
タイヤ表面の水気を外に逃がす斜めに溝を切ったトレッドパターンタイヤ表面の水気を外に逃がす斜めに溝を切ったトレッドパターン チューブレス非対応のクリンチャータイプチューブレス非対応のクリンチャータイプ

高性能オールラウンドタイヤとして生み出されたEAGLE F1は、1つのモデルであらゆる路面やシチュエーションに対応する優れた走行性能を追求した。タイヤの核とも言えるコンパウンドには新開発された”Dynamic:GSR”を採用。グラフェン・シリカ・ロードの頭文字を取ったネーミングで、天然ゴムと合成ゴムにグラフェンとシリカを独自のバランスで配合させ、低い転がり抵抗とドライ&ウェットの両方で優れたグリップを発揮するよう性能を煮詰めている。

しなやかな120TPIのケーシングが乗り心地を良くするとともに、トレッド下には”R:Shield”と呼ばれる耐パンク層も挿入し、小石の突き刺しなどからタイヤを保護。R:Shieldはタイヤのサイズに応じて最適な幅となるよう細かく作り分けられている。また、センター部分をスリックとしながらも、ショルダー部分に斜めに溝を切ったトレッドパターンを採用することで、コーナーでの安定性を確保したり、雨天時などにタイヤ表面の水分を外に排出したりする効果を持たせている。

グッドイヤー EAGLE F1 SuperSportグッドイヤー EAGLE F1 SuperSport
浅い縦溝を入れたのみのトレッドパターンで転がり抵抗の低減を狙う浅い縦溝を入れたのみのトレッドパターンで転がり抵抗の低減を狙う
タイムトライアルやトライアスロンなど、より極限のタイム短縮を狙うライダーに向けて「EAGLE F1 SuperSport」もラインアップ。タイヤ表面には浅い縦溝のみを配し、その他のトレッドパターンをなくすことで転がり抵抗の低減を実現している。Dynamic:GSRコンパウンドや耐パンクベルトのR:ShieldなどはEAGLE F1と同様。その上でトレッドを若干薄くすることで軽量化を図り、究極のスピードを追求している。25Cで200gを切る190gをマークしており、ヒルクライマーにもオススメのタイヤとなるだろう。

タイヤタイプはどちらもクリンチャーでチューブレスには非対応。EAGLE F1は23~32Cまでの豊富な5サイズ展開で、23/25/28Cが7,000円(税抜)、30/32Cが7,500円(税抜)。EAGLE F1 SuperSportは23/25/28Cの3サイズ展開で価格は7,300円(税抜)だ。

今回、EAGLE F1とEAGLE F1 SuperSportの両方を、国内Jプロツアーを走るCW編集部員・高木がインプレッションした。体重60kgで6.5気圧にて約400kmほどテストした感触をお伝えする。

EAGLE F1 重量203g(25C)EAGLE F1 重量203g(25C) EAGLE F1 SuperSport 重量184g(25C)EAGLE F1 SuperSport 重量184g(25C)




― 編集部インプレッション

クルマ好きの筆者(高木)としては、グッドイヤーと聞けばやはりモータースポーツのイメージが強い。F1ではアイルトン・セナやミハエル・シューマッハがグッドイヤーのタイヤを使用し数多くのタイトルを獲得。デイトナ24時間耐久レースでは、ケン・マイルズが操るフォードGT40にグッドイヤーのタイヤが装着されており、フォードの国際レース初優勝に貢献したことでも有名だ。超スピードで駆けるF1でも安定した走りを実現するコントロール性、耐久レースで長時間トラブルなくパフォーマンスを発揮し続ける耐久性、この2つの性能に関しては絶対的な信頼を置けるブランドと言えよう。

「EAGLE F1は全体的にバランスの良い性能を見せてくれる印象」「EAGLE F1は全体的にバランスの良い性能を見せてくれる印象」
自転車業界への初参入となったグッドイヤーだが、モータースポーツで培ったノウハウを結集しているとあって、EAGLE F1の完成度は非常に高いというのが第一印象。有名ロードタイヤと遜色ない高性能オールラウンドモデルといった仕上がりだ。他社ブランドで例えるなら、ピレリ P ZERO VELOに近い乗り心地で全体的にバランスの良さが際立つ印象だ。

手にとった時からすでにしなやかさが感じられ、タイヤレバー等を使わずともホイールへの装着は容易であった。そのしなやかさが路面追従性の良さに寄与しており、荒れた路面でも突き上げは少なく高い快適性を実現している。どちらかと言えばモチモチした感触の乗り心地で、路面をしっかり捉えてくれる安心感があった。

「よりスピードを追求したSuperSportの方が転がりの軽さは顕著」「よりスピードを追求したSuperSportの方が転がりの軽さは顕著」
転がりも非常に軽く、スピードを上げていく過程でストレスなく加速することができる。レースレベルの高速巡航でも不満に思うことはないだろう。コーナーでバイクを倒したところから、さらに倒し込むような攻めた走りをしてみてもグリップが抜けるような感触は一切なかった。左右の動きがとても軽快で、連続コーナーでもテンポよく切り返すことができ気持ちの良い走りを演出してくれる。雨天のトレーニングでも使ってみたが滑るような素振りもなく、まさにあらゆるシーンで使えるレーシングタイヤだと感じた。

しなやかなタイヤとあって路面の小石を拾いやすいという心配はあるものの、しっかりと耐パンク層を備えているので安心感は十分にある。コンパウンドが柔らかめなのでおそらくタイヤの減りは早そうだが、レーシングタイヤらしい乗り味を考えれば許容範囲内だろう。

「各性能が上手くバランスしているタイヤ、レース向けの速さを体感できた」「各性能が上手くバランスしているタイヤ、レース向けの速さを体感できた」
また、軽量TTモデルの”SuperSport”はトレッドが薄い分さらにしなやかさが増している。通常モデルとの違いは顕著で、ホイールへの装着が更に簡単になっているほど。柔軟なトレッドが路面からの振動をいなしてくれる感覚で、乗り心地は更に良くなっている。そしてもちろん、タイヤ自体の軽量性が走り出しの軽さに繋がっているのは間違いない。明らかに通常モデルより転がり抵抗も低いフィーリングで、数ワットのパワー削減を求めるライダーにオススメだ。トレッドパターンが省略されているもののグリップ感も良く、コンパウンド自体の出来の良さも改めて感じることができた。

新規参入ブランドと言えど性能に破綻はなく、他社トップモデルのタイヤと比べても十分に渡り合える製品で、普段のライドからレースまで幅広く使えるだろう。サイズも23Cから32Cまで選ぶことができ、様々なユーザーのニーズに応えてくれるタイヤとなってくれるはずだ。(CW編集部:高木三千成)

グッドイヤー EAGLE F1
タイヤタイプ:クリンチャー
コンパウンド:Dynamic:GSR
プロテクション:R:Shield
サイズ(重量):23C(195g)、25C(210g)、28C(235g)、30C(250g)、32C(260g)
価格:
23/25/28C 7,000円(税抜)
30/32C 7,500円(税抜)

グッドイヤー EAGLE F1 SuperSport
タイヤタイプ:クリンチャー
コンパウンド:Dynamic:GSR
プロテクション:R:Shield
サイズ(重量):23C(180g)、25C(190g)、28C(205g)
価格:7,300円(税抜)

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