コーナーが続く市街地コースを舞台にしたスピード勝負。ドゥクーニンク・クイックステップの奇襲攻撃をUAEチームエミレーツが凌ぎ、僅差のスプリントでフアン・モラノ(コロンビア)がハットトリックを達成。UAEは今季最速で勝利数を10に乗せている。



明日のクイーンステージを見据えるエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)明日のクイーンステージを見据えるエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) (c)CorVos地元ファンの応援を受けるフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)地元ファンの応援を受けるフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ) (c)CorVos

リーダーチームのEFプロサイクリングがメイン集団をコントロールリーダーチームのEFプロサイクリングがメイン集団をコントロール (c)CorVos
3日連続でスタート地点となっているパイパから南下し、同じく3日連続で登っている4級山岳アルト・モラルを通過して180km先の街シパキラを目指すツアー・コロンビア2.1の第5ステージ。序盤こそ標高3,000mに迫る山岳地帯を通過するが、後半に平坦路が用意されているのはこれまでのスプリントステージ同様だ。

レース序盤から逃げたのは山岳ポイントリーダーのシモン・ペロー(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)やミルコ・マエストリ(イタリア、バルディアーニCSFファイザネ)、ファビオ・ドゥアルテ(コロンビア、チームメデジン)ら8名。総合成績を脅かすメンバー不在のため、リーダーチームのEFプロサイクリングは最大5分のタイムギャップを許した。

山岳賞キープを狙ったペローだったが、この日用意された3つのカテゴリー山岳(46.7km地点の4級山岳アルト・モラル、74km地点の4級山岳アルト・ベンタケマダ、そして115.5km地点の4級山岳アルト・シスガ)でドゥアルテが軒並み先頭通過を果たす。かつてジロ・デ・イタリアに3回、ブエルタ・ア・エスパーニャに2回出場し、山岳ステージでファビオ・アルやヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、当時アスタナ)を相手に3度ステージ2位に入っているコロンビアンクライマーは、山岳ポイントを荒稼ぎしランキング首位に急浮上した。

無数のファンが集まった山岳ポイントを越えていく無数のファンが集まった山岳ポイントを越えていく (c)CorVos
レース終盤に入ると逃げグループはあっさりと捕まり、EFプロサイクリングに代わりドゥクーニンク・クイックステップやUAEチームエミレーツ、そしてモビスターなどが集団を牽引。フィニッシュまで5kmを切ってテクニカルなコーナーが続く市街地に入ると地元選手がアタックを繰り出したが、勢いづく集団を振り切ることは叶わず引き戻される。すると、先頭を固めていたドゥクーニンク勢が一味違うチームプレーを繰り出した。

鋭角コーナーの立ち上がりを3名が横並びとなって塞ぎ、その前で昨年大会で1勝ずつ挙げているジュリアン・アラフィリップ(フランス)とボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)が加速する。ウルフパックの奇襲攻撃を受けたプロトンはパニックに陥りながらも、UAEチームエミレーツのコントロールで2人を射程圏内に引き戻す。最終リードアウト役のマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、UAEチームエミレーツ)とエドウィン・アヴィラ(コロンビア、イスラエル・スタートアップネイション)がアラフィリップから発射されたユンゲルスを捉え、一呼吸置いてからスプリント勝負が始まった。

アルバロホセ・ホッジ(コロンビア、ドゥクーニンク・クイックステップ)とフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)、ヨナタン・レストレポ(コロンビア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)がハンドルを投げるアルバロホセ・ホッジ(コロンビア、ドゥクーニンク・クイックステップ)とフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)、ヨナタン・レストレポ(コロンビア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)がハンドルを投げる (c)CorVos
アルバロホセ・ホッジ(コロンビア、ドゥクーニンク・クイックステップ)を下したフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)アルバロホセ・ホッジ(コロンビア、ドゥクーニンク・クイックステップ)を下したフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ) (c)CorVos
ベルト・ファンレルベルフ(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)が外れ、アヴィラを押し退けつつフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)の背後からアルバロホセ・ホッジ(コロンビア、ドゥクーニンク・クイックステップ)がスプリントを開始する。フィニッシュラインに向かって先行したホッジだったが、パワフルに追い込むポイント賞リーダーのモラノが並びかけた。

ロングスプリントで逃げ続けるホッジと、追い込むモラノ、そして最終盤に急加速したヨナタン・レストレポ(コロンビア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)が横一列でスプリント。3人横1列でハンドルを投げ込む接戦の末、モラノが第2、第3ステージ続く今大会3勝目をもぎ取った。

3勝目をアピールするフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)3勝目をアピールするフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ) (c)CorVos今大会のスプリントステージを総ナメにしたフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)今大会のスプリントステージを総ナメにしたフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ) (c)CorVos

数千人もの大観衆の前で記念撮影に臨む各賞ジャージ着用者たち数千人もの大観衆の前で記念撮影に臨む各賞ジャージ着用者たち (c)tourcolombiauci.com
「テクニカルなコースレイアウトで混沌としたスプリント勝負だった。経験豊富なエナオやリケーゼのチームワークは素晴らしく、そのおかげで勝つことができたんだ。特にマックス(リケーゼ)のリードアウト無くしては勝者になんてなれていない。ホッジものスプリントも凄かったけど、脚、そしてチームの連携プレーというアドバンテージを得た僕が今日も勝った。文句のつけ難いスプリントだったよ」と、フェルナンド・ガビリア(コロンビア)、アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー)、そしてジャスパー・フィリプセン(ベルギー)に続くチーム第4のスプリンターとして名を挙げたモラノは言う。UAEチームエミレーツはワールドチーム中最速で勝利数を10に載せており、現時点での勝利数ランキングでもドゥクーニンク・クイックステップ(7勝)を引き離した。

総合上位陣は軒並み集団内ゴールしており、トップ10成績に変動は無し。ツアー・コロンビア2.1は翌日、終盤に標高3016mの3級山岳を越え、ダウンヒルを経て標高3290mの2級山岳頂上を目指すクイーンステージでフィナーレを迎える。
ツアー・コロンビア2.1 2020 第5ステージ結果
1位 フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ) 4:06:00
2位 アルバロホセ・ホッジ(コロンビア、ドゥクーニンク・クイックステップ)
3位 ヨナタン・レストレポ(コロンビア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
4位 トラヴィス・マケイブ(アメリカ、イスラエル・スタートアップネイション)
5位 コリン・ジョイス(アメリカ、ラリーサイクリング)
6位 フアン・ロサレス(メキシコ、カネルスプロサイクリング)
7位 リチャル・カラパス(エクアドル、チームイネオス)
8位 エドウィン・アヴィラ(コロンビア、イスラエル・スタートアップネイション)
9位 ラース・ソーグスタッド(ノルウェー、ウノエックス・ノルウェージャンデヴェロップメントチーム)
10位 ディエゴ・オチョア(コロンビア、EPMスコット)
個人総合成績
1位 セルジオ・イギータ(コロンビア、EFプロサイクリング) 15:31:47
2位 ダニエル・マルティネス(コロンビア、EFプロサイクリング) 0:12
3位 ヨナタン・カイセド(エクアドル、EFプロサイクリング) 0:14
4位 エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) 0:50
5位 リチャル・カラパス(エクアドル、チームイネオス) 0:58
6位 フレディ・モンターニャ(コロンビア、EPMスコット) 1:14
7位 アルデマール・レイス(コロンビア、EPMスコット) 1:28
8位 ギャビン・マニオン(アメリカ、ラリーサイクリング) 1:30
9位 セルジオ・エナオ(コロンビア、UAEチームエミレーツ) 1:31
10位 ディエゴ・オチョア(コロンビア、EPMスコット)
その他の特別賞
ポイント賞 フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)
山岳賞 ファビオ・ドゥアルテ(コロンビア、チームメデジン)
ヤングライダー賞 セルジオ・イギータ(コロンビア、EFプロサイクリング)
チーム総合成績 EFプロサイクリング
text:So.Isobe
photo:CorVos