2020/02/13(木) - 10:27
アタックに次ぐアタック。終盤に先行した中根英登(日本、NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス)がランカウイ6日目に逃げ切り、マッチスプリントを制して欧州4年目にして悲願のプロ初勝利。NIPPOにとってもプロチームをサポートして以来初となる日本人選手の優勝となった。
マレー半島を舞台に開催中のツール・ド・ランカウイ(UCI2.Pro)は、2日前にクイーンステージを終えてもなお難易度の高いステージは終わらない。「永遠に平和の街」という意味を持つタイピンからマラッカ海峡に浮かぶペナン島に渡る第6ステージは、山がちなペナン島に入ってから残り50km地点で2級山岳(距離2km/平均4.3%)を、残り30km地点で1級山岳(距離5km/平均4%)を越える。序盤に中間スプリントポイントが設けられていたことも重なり、逃げがなかなか決まらない激しいレース展開が続いた。
およそ70km以上、時間にして1時間半以上にも渡るアタック合戦の末、ピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)を含む4名が先行。3分半ほどのリードを得て逃げ続けた。
最初の2級山岳で活性化したメイン集団は、分裂しながらも1級山岳の手前で再び合流。個人総合ジャンプアップを狙う選手たちがアタックを仕掛けるものの決定的な動きには繋がらず、総合7位につける中根英登(日本、NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス)も問題なく難所を乗り越えた。
1級山岳の下り区間で逃げグループは捕らえられ、各チーム共にアシストを欠いた状態となったことで再びアタック合戦が活性化した。総合4位のピエルパオロ・フィカーラ(イタリア、チームサプラサイクリング)や同10位フランチェスコ・ボンジョルノ(イタリア、ヴィーニザブKTM)などのアタックも決まらず残り10km地点を通過すると、総合2位のイェフゲニー・フェドロフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース)がアタックを仕掛けた。
第1ステージに逃げ切り総合首位に立っていたフェドロフの攻撃は失敗し、続いてチームメイトのグレブ・ブルッセンスキー(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース)が先行。ここに中根英登(日本、NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス)が飛びついた。
「メイン集団には、スプリンターのミナーリとドゥシャン・ラヨヴィッチが待機していたため、逃げが捕まり、集団ゴールスプリントの展開となっても問題なく区間優勝を狙えると中根は判断。思い切りよく、快調に、また2選手でのスプリントとなった場合も考えながら、冷静に残り距離を減らしていきます」。-NIPPOデルコ・ワンプロヴァンスのレースレポートより
メイン集団からはU23世界王者サムエーレ・バティステッラ(イタリア、NTTプロサイクリング)やフェドロフ、総合4位カンタン・パシェ(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)らを含む11名の追走集団が生まれたが、追走、そしてメイン集団共に牽制が入ったため、思うように逃げる中根とブルッセンスキーとのタイム差が縮まらない。結果的に先頭2名の逃げ切りが決まった。
トラックレースのような牽制合戦から仕掛けたのはブルッセンスキー。しかしその背後から踏み込んだ中根が左側から並びかけ、パス。ハンドルを投げ合う接戦の末、中根が待ち望んだプロとしての初勝利を挙げた。
ランカウイでの日本人選手の優勝は、2010年に西谷泰治(現在愛三工業コーチとしてランカウイ帯同中)が、2011年に綾部勇成(当時愛三工業所属)が勝利して以来9年ぶり兼5人目。NIPPOがスポンサードするプロチーム(昨年までプロコンチネンタルチーム)としても、6年目にして初めての日本人選手初勝利となった。
「ようやく勝てたという気持ち。これまで何度となく2位、3位という結果で沈んでいた。チームメートの期待に応えることができて本当に嬉しい。ヨーロッパのプロカテゴリーで4年目。日本人選手として優勝したいと思い続けていたけど、いつももうちょっとで届かなかった。このカテゴリーのチームに所属し、勝つことができてホッとしている。スポンサーやチームメート、チームスタッフ、みんなに支えてもらった。今回も大会前に体調を崩し、ダメだと思っていたけど、気負わないことが逆に良かったかもしれない。今回のチームは初めてとは思えないくらい雰囲気がよく、みんな強くて本当に頼もしい。チームメートたちに支えられ、自分たちは他のチームよりも一人少ない状態だけど、石上も二人分くらいの仕事をし、ここまで無駄脚を使うことがなかったのも今日の結果につながった。本当にみんなに感謝をしている」と、中根はチームレポートの中で語っている。
UCIポイントを20点獲得することになった中根は集団に差をつけたままフィニッシュしたため、総合順位を6位に上げることにも成功している。以下は水谷壮宏監督のコメント。この他にも現在ランカウイ参加中の各日本人選手、監督らからも勝利を祝う言葉が贈られた。
「今日は本当に素晴らしいレースだった。今日のステージはゲンティンハイランド以上に重要になると考えていたが、まさか中根が「勝つ」とまでは思っていなかったので、何も言うことがないくらい完璧なステージになった。
前半からルカやラジョビッチがアタックをマークし、最後は石上が中根を好位置まで連れていき、最後は作戦通りに中根はタイミングをみて自信をもって自らアタックを仕掛けた。チームとして最後まで諦めないという精神がこの成績につながった。
中根のことを去年から見ていたが、調子が良くてもなかなか結果を残せなかったり、肝心なところで体調を崩すなどうまくいかないことが多かった。しかし、今回はしっかりとコンディションを合わせ、第二のクイーンステージといえる今日のステージについても良く研究し、勝ちにいった。まさに彼がやりたかった勝ち方。勝利を経験したことで勝ち方を覚え、今後さらに多くの勝利を挙げてくれると期待している。とにかくあきらめなかったことも大きな勝因だろう。残りのステージで中根は総合成績を守ること。そしてスプリントでも区間優勝を狙いたい。
中根も言っていたが、この環境でレースができることは簡単ではない。支えていただいているスポンサーの皆さま、ともに戦うチームスタッフや選手たち、全ての人に感謝するとともに、この先も勝利をめざしたい」。
マレー半島を舞台に開催中のツール・ド・ランカウイ(UCI2.Pro)は、2日前にクイーンステージを終えてもなお難易度の高いステージは終わらない。「永遠に平和の街」という意味を持つタイピンからマラッカ海峡に浮かぶペナン島に渡る第6ステージは、山がちなペナン島に入ってから残り50km地点で2級山岳(距離2km/平均4.3%)を、残り30km地点で1級山岳(距離5km/平均4%)を越える。序盤に中間スプリントポイントが設けられていたことも重なり、逃げがなかなか決まらない激しいレース展開が続いた。
およそ70km以上、時間にして1時間半以上にも渡るアタック合戦の末、ピエール・ロラン(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)を含む4名が先行。3分半ほどのリードを得て逃げ続けた。
最初の2級山岳で活性化したメイン集団は、分裂しながらも1級山岳の手前で再び合流。個人総合ジャンプアップを狙う選手たちがアタックを仕掛けるものの決定的な動きには繋がらず、総合7位につける中根英登(日本、NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス)も問題なく難所を乗り越えた。
1級山岳の下り区間で逃げグループは捕らえられ、各チーム共にアシストを欠いた状態となったことで再びアタック合戦が活性化した。総合4位のピエルパオロ・フィカーラ(イタリア、チームサプラサイクリング)や同10位フランチェスコ・ボンジョルノ(イタリア、ヴィーニザブKTM)などのアタックも決まらず残り10km地点を通過すると、総合2位のイェフゲニー・フェドロフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース)がアタックを仕掛けた。
第1ステージに逃げ切り総合首位に立っていたフェドロフの攻撃は失敗し、続いてチームメイトのグレブ・ブルッセンスキー(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース)が先行。ここに中根英登(日本、NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス)が飛びついた。
「メイン集団には、スプリンターのミナーリとドゥシャン・ラヨヴィッチが待機していたため、逃げが捕まり、集団ゴールスプリントの展開となっても問題なく区間優勝を狙えると中根は判断。思い切りよく、快調に、また2選手でのスプリントとなった場合も考えながら、冷静に残り距離を減らしていきます」。-NIPPOデルコ・ワンプロヴァンスのレースレポートより
メイン集団からはU23世界王者サムエーレ・バティステッラ(イタリア、NTTプロサイクリング)やフェドロフ、総合4位カンタン・パシェ(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)らを含む11名の追走集団が生まれたが、追走、そしてメイン集団共に牽制が入ったため、思うように逃げる中根とブルッセンスキーとのタイム差が縮まらない。結果的に先頭2名の逃げ切りが決まった。
トラックレースのような牽制合戦から仕掛けたのはブルッセンスキー。しかしその背後から踏み込んだ中根が左側から並びかけ、パス。ハンドルを投げ合う接戦の末、中根が待ち望んだプロとしての初勝利を挙げた。
ランカウイでの日本人選手の優勝は、2010年に西谷泰治(現在愛三工業コーチとしてランカウイ帯同中)が、2011年に綾部勇成(当時愛三工業所属)が勝利して以来9年ぶり兼5人目。NIPPOがスポンサードするプロチーム(昨年までプロコンチネンタルチーム)としても、6年目にして初めての日本人選手初勝利となった。
「ようやく勝てたという気持ち。これまで何度となく2位、3位という結果で沈んでいた。チームメートの期待に応えることができて本当に嬉しい。ヨーロッパのプロカテゴリーで4年目。日本人選手として優勝したいと思い続けていたけど、いつももうちょっとで届かなかった。このカテゴリーのチームに所属し、勝つことができてホッとしている。スポンサーやチームメート、チームスタッフ、みんなに支えてもらった。今回も大会前に体調を崩し、ダメだと思っていたけど、気負わないことが逆に良かったかもしれない。今回のチームは初めてとは思えないくらい雰囲気がよく、みんな強くて本当に頼もしい。チームメートたちに支えられ、自分たちは他のチームよりも一人少ない状態だけど、石上も二人分くらいの仕事をし、ここまで無駄脚を使うことがなかったのも今日の結果につながった。本当にみんなに感謝をしている」と、中根はチームレポートの中で語っている。
UCIポイントを20点獲得することになった中根は集団に差をつけたままフィニッシュしたため、総合順位を6位に上げることにも成功している。以下は水谷壮宏監督のコメント。この他にも現在ランカウイ参加中の各日本人選手、監督らからも勝利を祝う言葉が贈られた。
「今日は本当に素晴らしいレースだった。今日のステージはゲンティンハイランド以上に重要になると考えていたが、まさか中根が「勝つ」とまでは思っていなかったので、何も言うことがないくらい完璧なステージになった。
前半からルカやラジョビッチがアタックをマークし、最後は石上が中根を好位置まで連れていき、最後は作戦通りに中根はタイミングをみて自信をもって自らアタックを仕掛けた。チームとして最後まで諦めないという精神がこの成績につながった。
中根のことを去年から見ていたが、調子が良くてもなかなか結果を残せなかったり、肝心なところで体調を崩すなどうまくいかないことが多かった。しかし、今回はしっかりとコンディションを合わせ、第二のクイーンステージといえる今日のステージについても良く研究し、勝ちにいった。まさに彼がやりたかった勝ち方。勝利を経験したことで勝ち方を覚え、今後さらに多くの勝利を挙げてくれると期待している。とにかくあきらめなかったことも大きな勝因だろう。残りのステージで中根は総合成績を守ること。そしてスプリントでも区間優勝を狙いたい。
中根も言っていたが、この環境でレースができることは簡単ではない。支えていただいているスポンサーの皆さま、ともに戦うチームスタッフや選手たち、全ての人に感謝するとともに、この先も勝利をめざしたい」。
ツール・ド・ランカウイ2020 第6ステージ結果
1位 | 中根英登(日本、NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス) | 3:29:15 |
2位 | グレブ・ブルッセンスキー(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース) | |
3位 | サムエーレ・バティステッラ(イタリア、NTTプロサイクリング) | 0:04 |
4位 | カンタン・パシェ(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト) | |
5位 | カルロス・キンテロ(コロンビア、トレンガヌInc.TSGサイクリングチーム) | |
6位 | マイケル・ヴィンク(ニュージーランド、セントジョージコンチネンタルサイクリングチーム) | |
7位 | ピエルパオロ・フィカーラ(イタリア、チームサプラサイクリング) | |
8位 | ミトケル・イョブ(エリトリア、トレンガヌInc.TSGサイクリングチーム) | |
9位 | アハメドヨガ・イルハムフィルダウス(インドネシア、Pgnロードサイクリングチーム) | |
10位 | フランチェスコ・ボンジョルノ(イタリア、ヴィーニザブKTM) |
個人総合成績
1位 | ダニーロ・セラーノ(イタリア、チームサプラサイクリング) | 21:17:33 |
2位 | イェフゲニー・フェドロフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース) | 0:30 |
3位 | アルテム・オベチキン(ロシア、トレンガヌInc.TSGサイクリングチーム) | 0:35 |
4位 | ピエルパオロ・フィカーラ(イタリア、チームサプラサイクリング) | 1:07 |
5位 | カンタン・パシェ(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト) | 1:09 |
6位 | 中根英登(日本、NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス) | 1:34 |
7位 | クリスティアン・ライレアヌ(モルドバ、チームサプラサイクリング) | 1:36 |
8位 | ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、ヴィーニザブKTM) | 1:56 |
9位 | カルロス・キンテロ(コロンビア、トレンガヌInc.TSGサイクリングチーム) | 1:59 |
10位 | フランチェスコ・ボンジョルノ(イタリア、ヴィーニザブKTM) | 2:12 |
その他の特別賞
ポイント賞 | マキシミリアン・ヴァルシャイド(ドイツ、NTTプロサイクリング) |
ヤングライダー賞 | イェフゲニー・フェドロフ(カザフスタン、ヴィノ・アスタナモータース) |
山岳賞 | モハメドザリフ・ムハンマドヌルアイマン(マレーシア、チームサプラサイクリング) |
チーム総合成績 | チームサプラサイクリング |
text:So.Isobe
photo:www.ltdlangkawi.my
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