2020年1月16日、南オーストラリア州アデレード近郊で女子ロードレースシーズンが開幕。ウィメンズ・ツアー・ダウンアンダー第1ステージでクロエ・ホスキング(オーストラリア、ラリーサイクリング)が圧倒的なスプリント勝利を飾ってみせた。


スタート前は恒例のカンガルーやワラビーのだっこ大会スタート前は恒例のカンガルーやワラビーのだっこ大会 photo:Kei Tsuji
4連覇を狙うオーストラリアチャンピオンのアマンダ・スプラット(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)4連覇を狙うオーストラリアチャンピオンのアマンダ・スプラット(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) photo:Kei Tsuji
ウィメンズ・ツアー・ダウンアンダー2020第1ステージウィメンズ・ツアー・ダウンアンダー2020第1ステージ photo:Santos Women's Tour Down Under今年22回目の開催を迎える男子UCIワールドツアーレースであるツアー・ダウンアンダーの併催イベントとして2016年に初開催され、2018年からUCI2.1、そして今年からUCIプロシリーズ(2019年までのHCレース)に組み込まれているウィメンズ・ツアー・ダウンアンダー。オーストラリア初のUCIウィメンズワールドツアーレースの座は2月1日のカデルエヴァンス・グレートオーシャン・ロードレースに奪われたものの、同国最大のステージレースとして確固たる地位を築いている。

男子レースに先駆けて4日間の日程での開催となる女子レースは登りの少ない平坦基調のステージレース(最終日は男子レース初日のアデレード市内周回コース)。年末から連日40度を超えるほどの記録的な暑さに見舞われたオーストラリアだが、ブッシュファイヤー(山火事)が多発した南オーストラリア州を含めて今週は気温が低め。第1ステージの舞台となるアデレード東部の丘陵地帯は最高気温20度ほどの、むしろ肌寒い風が吹いた。

8つのUCIウィメンズワールドチームのうち、アレBTCリュブリャナ、キャニオン・スラム、FDJヌーヴェル・アキテーヌ・フチュロスコープ、ミッチェルトン・スコット、サンウェブ、トレック・セガフレードの6チームが出場。過去2年間出場し、2018年総合42位、2019年総合34位の成績を残している與那嶺恵理は出場していない。

序盤はアタックがかからないままレースは進む序盤はアタックがかからないままレースは進む photo:Kei Tsuji
単独逃げをゆっくりと追いかけるメイン集団単独逃げをゆっくりと追いかけるメイン集団 photo:Kei Tsuji
カテゴリー山岳に向かって逃げるマリーケ・ファンヴィツェンブルグ(オランダ、ドルチーニ・ファンエイクスポート)カテゴリー山岳に向かって逃げるマリーケ・ファンヴィツェンブルグ(オランダ、ドルチーニ・ファンエイクスポート) photo:Kei Tsuji
平坦ステージがメインのレース構成だけに総合争いに重要な役割を果たすのが、ボーナスタイム(3秒、2秒、1秒)が設定された3つの中間スプリント。大会5連覇がかかったミッチェルトン・スコットやサンウェブ、トレック・セガフレードが序盤からボーナスタイム獲得の動きを見せ、落ち着いたところで単独アタックしたマリーケ・ファンヴィツェンブルグ(オランダ、ドルチーニ・ファンエイクスポート)が山岳賞ジャージを手にしている。

グレーシー・エルヴィン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)やリア・キルヒマン(カナダ、サンウェブ)が中間スプリントでボーナスタイムを稼ぎながらステージが後半に差し掛かると、残り40kmを切ったところでニコル・ハンセルマン(スイス、ドルチーニ・ファンエイクスポート)とブローディー・チャプマン(オーストラリア、FDJ)の2人がアタック。ステージ終盤にも関わらず3分近いリードを稼ぎ出すと、そこからチャプマンが独走に持ち込んだ。

元MTBダウンヒル選手で、2018年のヘラルド・サンツアーで総合優勝を飾っているチャプマンの力走。集団スプリントに持ち込みたいトレック・セガフレードやラリーサイクリングの集団牽引によってタイム差は縮まったものの、残り10km地点で依然としてその差は1分。逃げ切りの可能性に会場のアナウンスは沸いたが、残り5kmを切ってタイム差は急速に縮まった。

最終コーナーでチャプマンが捕まると、好位置からスプリントしたロッタ・ヘンッタラ(フィンランド、トレック・セガフレード)の後ろからクロエ・ホスキング(オーストラリア、ラリーサイクリング)が発進。他を寄せ付けない加速力を見せたホスキングが完全に抜け出す形で勝利した。

大きな登りのないコースで集団一つのまま後半へ大きな登りのないコースで集団一つのまま後半へ photo:Kei Tsuji
終盤に逃げるニコル・ハンセルマン(スイス、ドルチーニ・ファンエイクスポート)とブローディー・チャプマン(オーストラリア、FDJ)終盤に逃げるニコル・ハンセルマン(スイス、ドルチーニ・ファンエイクスポート)とブローディー・チャプマン(オーストラリア、FDJ) photo:Kei Tsuji
スプリントで先頭に立つクロエ・ホスキング(オーストラリア、ラリーサイクリング)スプリントで先頭に立つクロエ・ホスキング(オーストラリア、ラリーサイクリング) photo:Kei Tsuji
第1ステージを制したクロエ・ホスキング(オーストラリア、ラリーサイクリング)第1ステージを制したクロエ・ホスキング(オーストラリア、ラリーサイクリング) photo:Kei Tsuji
レース全体の平均スピードは35km/hだが、ラスト10kmの平均スピードは45.5km/hまで上がっている。ステージ3位に入ったマチルダ・レイノルズ(オーストラリア、スペシャライズド・ウィメンズ)のSTRAVAログによると、登り基調の最終ストレートでの最高スピードは56.2km/hだった。

4年連続となるステージ優勝を飾ったピュアスプリンターのホスキングは「わざわざ遠くからオーストラリアまで私をサポートするためにやってきてくれたチームに感謝したい」と、アメリカ人とカナダ人のチームメイトたちに感謝する。「残り1.5kmから始まるテクニカル区間で集団前方のポジションを守ってくれて、最後は他チームのトレインに乗っかった。UCIレース勝利という形で報いることができてよかった」。

與那嶺恵理と同じアレ・チポッリーニから今季アメリカのラリーサイクリングに移籍したホスキングが合計11秒のボーナスタイムを獲得して総合首位に。チームカラーそのままのオレンジ色(正しくはオーカー色)リーダージャージを獲得した。ホスキングの総合優勝の可否は翌日第2ステージの残り11km地点に登場するカテゴリー山岳を越えることができるかにかかっている。もちろんミッチェルトン・スコットやトレック・セガフレード、サンウェブがホスキングを脱落させるために攻撃を仕掛けてくるだろう。

移籍後初勝利を飾ったクロエ・ホスキング(オーストラリア、ラリーサイクリング)移籍後初勝利を飾ったクロエ・ホスキング(オーストラリア、ラリーサイクリング) photo:Kei Tsuji
チームカラーと同色のリーダージャージを手にしたクロエ・ホスキング(オーストラリア、ラリーサイクリング)チームカラーと同色のリーダージャージを手にしたクロエ・ホスキング(オーストラリア、ラリーサイクリング) photo:Kei Tsuji
ウィメンズ・ツアー・ダウンアンダー2020第1ステージ結果
1位 クロエ・ホスキング(オーストラリア、ラリーサイクリング) 3:17:02
2位 ロッタ・ヘンッタラ(フィンランド、トレック・セガフレード)
3位 マチルダ・レイノルズ(オーストラリア、スペシャライズド・ウィメンズ)
4位 グレーシー・エルヴィン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)
5位 ペタ・ミュレンス(オーストラリア、ロックスソルト・アタッカー)
6位 リア・キルヒマン(カナダ、サンウェブ)
7位 リアン・リペット(ドイツ、サンウェブ)
8位 ローレン・キッチン(オーストラリア、FDJ)
9位 アルレニス・シエラ(キューバ、アスタナ)
10位 アレクシス・ライアン(アメリカ、キャニオン・スラム)
個人総合成績
1位 クロエ・ホスキング(オーストラリア、ラリーサイクリング) 3:16:51
2位 ロッタ・ヘンッタラ(フィンランド、トレック・セガフレード) 0:00:04
3位 リア・キルヒマン(カナダ、サンウェブ) 0:00:06
4位 マチルダ・レイノルズ(オーストラリア、スペシャライズド・ウィメンズ) 0:00:07
5位 グレーシー・エルヴィン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) 0:00:08
6位 ブローディー・チャプマン(オーストラリア、FDJ)
7位 ニナ・ケスラー(オランダ、ティブコSVB) 0:00:09
8位 アナスタシア・チュルジナ(ロシア、アレBTCリュブリャナ)
9位 ジュリエット・ラボー(フランス、サンウェブ) 0:00:10
10位 ペタ・ミュレンス(オーストラリア、ロックスソルト・アタッカー) 0:00:11
その他の特別賞
ポイント賞 クロエ・ホスキング(オーストラリア、ラリーサイクリング)
山岳賞 マリーケ・ファンヴィツェンブルグ(オランダ、ドルチーニ・ファンエイクスポート)
ヤングライダー賞 ジュリエット・ラボー(フランス、サンウェブ)
チーム総合成績 サンウェブ
text:Kei Tsuji in Adelaide, Australia