全4回の連載でお送りしている海外ロードレースのシーズン振り返りシリーズ第3弾。フランスやスイスでマイヨジョーヌ候補が火花を散らした前哨戦や真夏のツール・ド・フランスまで、まさにシーズン最盛期を振り返ります。
6月
サンテティエンヌ病院のベッドでサムアップするクリス・フルーム(チームイネオス) photo:Team INEOS
5月のジロ・デ・イタリアが終わると7月のツール・ド・フランスに向けてカウントダウンがスタート。前哨戦として知られるフランスのクリテリウム・デュ・ドーフィネでは、衝撃なニュースが飛び込んできた。個人TTのコースの試走を行っていたクリストファー・フルーム(イギリス、チームイネオス)が、下りでコントロールを失って壁に激突。大腿骨、肘、肋骨の骨折という大怪我を負ってしまったという。34歳のフルームは5勝目を狙っていたツール・ド・フランスの欠場を含めてその後のレースを活動を休止、治療に専念することになる。
小集団スプリントを制したエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) photo:CorVos
スプリントでギヨーム・マルタン(フランス、ワンティ・グループゴベール)を下したディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ) photo:A.S.O.
ステージ優勝に輝いたワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) photo:A.S.O.
ポイント賞リーダーのワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)がスプリント勝利 photo:A.S.O.
レースの方は個人TTでワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィズマ)が優勝するサプライズ。「WVA」は第5ステージでも集団スプリントを制するなど元シクロクロスレーサーとしてマチュー・ファンデルプールに続くサプライズを披露。「シクロクロッサーはロードレースでも活躍する」というキーワードが流行する。総合争いはヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)が自身2度めのドーフィネ制覇を成し遂げた。
総合2位ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、EFエデュケーションファースト)、総合優勝ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)、総合3位エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) photo:A.S.O.
スイスに舞台を移し、9日間のステージレースであるツール・ド・スイスでは初日の個人TTをローハン・デニス(オーストラリア、バーレーン・メリダ)が制する。総合争いでは第6ステージで躍進、そして第7ステージの超級山岳ゴッタルド決戦でライバルたちを制したエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)ががイエロージャージに袖を通し、その後の個人TT、クイーンステージの最終ステージでも危なげなく守り切る。落車リタイアしたゲラント・トーマス(イギリス)に代わってチームイネオスのエースを務め上げたベルナルは負傷したフルームの代わりとしてツールに向かうことになる。当初目的のレースだったジロ・デ・イタリア前には鎖骨を骨折、レースプログラムは状況により変わっていくが、運がベルナルに味方をしはじめていた。
優勝:ローハン・デニス(オーストラリア、バーレーン・メリダ) (c)CorVos
登りスプリントを制したペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
超級山岳ゴッタルド峠を独走するエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:CorVos
超級山岳ゴッタルド峠を制したエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:CorVos
最後の超級山岳フルカ峠でアタックしたローハン・デニス(オーストラリア、バーレーン・メリダ)とエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:CorVos
独走勝利を飾ったヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーションファースト) photo:CorVos
デニスとコンラッドとともに総合表彰台に登るエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:CorVos
7月 ツール・ド・フランス
セレモニーを終えブリュッセルのグランプラスを走り出していく選手たち photo:Makoto.AYANO
グランプラスに詰めかけた観客の声援に応えるエディ・メルクス photo:Makoto.AYANO
ミュールを登るメイン集団 photo:Makoto.AYANO
『マイヨジョーヌ100周年記念』と銘打つ第106回ツール・ド・フランスはベルギーの首都ブリュッセルで開幕。ロンド・ファン・フラーンデレンにオマージュを捧げ、ミュール・ド・グラモン(カペルミュール)やパヴェ区間などが登場した第1ステージは伏兵マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) が勝利。翌日のチームタイムトライアルもユンボ・ヴィズマがマイヨジョーヌを守り切りステージ優勝する活躍。
マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)がペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)を交わす photo:Makoto.AYANO
チームTTでステージ優勝を飾ったユンボ・ヴィズマ photo:Luca Bettini
そして『シャンパーニュ』の丘陵を走る第3ステージではアタックしたジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がセンセーショナルな独走勝利でフランスに5年ぶりのマイヨジョーヌをもたらした。アラフィリップの強さはワンデイ的なものにあらず、第13ステージの27.2km個人TTでも「ここまで」という下馬評を覆してトップタイムで優勝。マイヨジョーヌを着続ける。難関山岳の続く第18ステージでも持ちこたえたアラフィリップはマイヨジョーヌをキープ。「Bイノー以来のフランス人ツール優勝者の誕生か?」と、フランスじゅうの期待が膨らむことに。
勝利の雄叫びを上げるジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Makoto.AYANO
第13ステージの27.2km個人TTでもマイヨジョーヌを着て勝利したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Makoto.AYANO
第5ステージ 超人ハルクポーズを決めたペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Makoto.AYANO
第6ステージ ディラン・トゥーンス(バーレーン・メリダ)とジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード)が競り合う photo:Makoto.AYANO
第7ステージ スプリント1勝目を飾ったディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) photo:Luca Bettini
第11ステージ 接戦を制したカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:Luca Bettini
第12ステージ ミュールベルガーとビルバオを下したサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:Luca Bettini
第14ステージ 超級山岳トゥールマレー峠を先頭で駆け上がるティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) photo:Kei Tsuji
第17ステージ 3級山岳サンティネル峠で飛び出したマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット) photo:Kei Tsuji
第18ステージ 他の選手たちを置き去りにしたナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Kei Tsuji
マイヨジョーヌをめぐる争いが決着を見たのは第19ステージ。積雹と土砂崩れにより急遽ステージ短縮となる珍しい事態に。新人賞ジャージを着たエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) が超級山岳イズラン峠を独走、アラフィリップはついに遅れを喫するが、その峠を下る先の「下界」で雹が短時間のうちに集中的に降って路面を覆い、かつ地すべりによって発生した土砂がコースに流れ込んで自転車レースの集団が通ることが不可能な自体になる。レースはキャンセル。峠を先頭通過したベルナルのステージ優勝が確定。そしてマイヨジョーヌもそのタイム差を持ってベルナルのものに。
超級山岳イズラン峠を独走するエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:CorVos
波乱の第19ステージを終えて総合首位に立ったベルナルは、総合2位アラフィリップに48秒、総合3位トーマスに1分16秒のタイム差をつけてマイヨジョーヌを着たのだ。フィニッシュ地点のティニュにはチームカーで到着。表彰式でマイヨジョーヌが授与された。
エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)に状況を説明するクリスティアン・プリュドム氏 photo:CorVos
マイヨジョーヌに初めて袖を通したエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:Makoto.AYANO
ベルナルはその後の第20、21ステージでもゲラント・トーマスらの鉄壁のサポートを受けて崩れること無くシャンゼリゼに到達。コロンビア人初となるツール優勝者となった。
お互いを讃えあうゼスチャーでフィニッシュするエガン・ベルナルとゲラント・トーマス(チームイネオス) (c)CorVos
総合トップ3表彰 優勝はエガン・ベルナル、2位ゲラント・トーマス、3位ステフェン・クライスヴァイク photo:Makoto.AYANO
スプリントではカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) が3つ目のステージ優勝。総合2位に前回覇者ゲラント・トーマス、3位にステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) 、マイヨヴェールはペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)、マイヨアポワはロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) 、マイヨブランはエガン・ベルナル、そしてチーム総合成績1位はモビスター、総合敢闘賞はフランスと世界を熱狂させた立役者であるアラフィリップの手に。
シャンゼリゼを制したカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:Makoto.AYANO
総合敢闘賞を獲得したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Makoto.AYANO
4賞ジャージの表彰。エガン・ベルナルは個人総合と新人賞のダブル優勝だ photo:Makoto.AYANO
チーム総合成績1位に輝いたモビスター photo:Luca Bettini
text:Makoto.AYANO
6月

5月のジロ・デ・イタリアが終わると7月のツール・ド・フランスに向けてカウントダウンがスタート。前哨戦として知られるフランスのクリテリウム・デュ・ドーフィネでは、衝撃なニュースが飛び込んできた。個人TTのコースの試走を行っていたクリストファー・フルーム(イギリス、チームイネオス)が、下りでコントロールを失って壁に激突。大腿骨、肘、肋骨の骨折という大怪我を負ってしまったという。34歳のフルームは5勝目を狙っていたツール・ド・フランスの欠場を含めてその後のレースを活動を休止、治療に専念することになる。




レースの方は個人TTでワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィズマ)が優勝するサプライズ。「WVA」は第5ステージでも集団スプリントを制するなど元シクロクロスレーサーとしてマチュー・ファンデルプールに続くサプライズを披露。「シクロクロッサーはロードレースでも活躍する」というキーワードが流行する。総合争いはヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)が自身2度めのドーフィネ制覇を成し遂げた。

スイスに舞台を移し、9日間のステージレースであるツール・ド・スイスでは初日の個人TTをローハン・デニス(オーストラリア、バーレーン・メリダ)が制する。総合争いでは第6ステージで躍進、そして第7ステージの超級山岳ゴッタルド決戦でライバルたちを制したエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)ががイエロージャージに袖を通し、その後の個人TT、クイーンステージの最終ステージでも危なげなく守り切る。落車リタイアしたゲラント・トーマス(イギリス)に代わってチームイネオスのエースを務め上げたベルナルは負傷したフルームの代わりとしてツールに向かうことになる。当初目的のレースだったジロ・デ・イタリア前には鎖骨を骨折、レースプログラムは状況により変わっていくが、運がベルナルに味方をしはじめていた。







7月 ツール・ド・フランス



『マイヨジョーヌ100周年記念』と銘打つ第106回ツール・ド・フランスはベルギーの首都ブリュッセルで開幕。ロンド・ファン・フラーンデレンにオマージュを捧げ、ミュール・ド・グラモン(カペルミュール)やパヴェ区間などが登場した第1ステージは伏兵マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) が勝利。翌日のチームタイムトライアルもユンボ・ヴィズマがマイヨジョーヌを守り切りステージ優勝する活躍。


そして『シャンパーニュ』の丘陵を走る第3ステージではアタックしたジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がセンセーショナルな独走勝利でフランスに5年ぶりのマイヨジョーヌをもたらした。アラフィリップの強さはワンデイ的なものにあらず、第13ステージの27.2km個人TTでも「ここまで」という下馬評を覆してトップタイムで優勝。マイヨジョーヌを着続ける。難関山岳の続く第18ステージでも持ちこたえたアラフィリップはマイヨジョーヌをキープ。「Bイノー以来のフランス人ツール優勝者の誕生か?」と、フランスじゅうの期待が膨らむことに。










マイヨジョーヌをめぐる争いが決着を見たのは第19ステージ。積雹と土砂崩れにより急遽ステージ短縮となる珍しい事態に。新人賞ジャージを着たエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) が超級山岳イズラン峠を独走、アラフィリップはついに遅れを喫するが、その峠を下る先の「下界」で雹が短時間のうちに集中的に降って路面を覆い、かつ地すべりによって発生した土砂がコースに流れ込んで自転車レースの集団が通ることが不可能な自体になる。レースはキャンセル。峠を先頭通過したベルナルのステージ優勝が確定。そしてマイヨジョーヌもそのタイム差を持ってベルナルのものに。

波乱の第19ステージを終えて総合首位に立ったベルナルは、総合2位アラフィリップに48秒、総合3位トーマスに1分16秒のタイム差をつけてマイヨジョーヌを着たのだ。フィニッシュ地点のティニュにはチームカーで到着。表彰式でマイヨジョーヌが授与された。


ベルナルはその後の第20、21ステージでもゲラント・トーマスらの鉄壁のサポートを受けて崩れること無くシャンゼリゼに到達。コロンビア人初となるツール優勝者となった。


スプリントではカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) が3つ目のステージ優勝。総合2位に前回覇者ゲラント・トーマス、3位にステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) 、マイヨヴェールはペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)、マイヨアポワはロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) 、マイヨブランはエガン・ベルナル、そしてチーム総合成績1位はモビスター、総合敢闘賞はフランスと世界を熱狂させた立役者であるアラフィリップの手に。




text:Makoto.AYANO
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