ユンボ・ヴィスマが早くも2020年のチームプレゼンテーションを行った。サンウェブから移籍したトム・デュムランも新ジャージに身を包み登場、そしてツール・ド・フランス出場メンバーも発表という異例のプレゼンテーションとなった。その最強の布陣に熱い注目が注がれる。

ユンボ・ヴィスマ2020 選手&監督陣ユンボ・ヴィスマ2020 選手&監督陣 (c)CorVos
12月20日、ユンボ・ヴィスマの2020年チームプレゼンテーションがオランダ、アムステルダムにおいて行われた。同チームのスポンサーである雑貨店「HEMA」の本社にて行われたこのプレゼンには来季の新ジャージに身を包んだ選手たちが出席。移籍加入したトム・デュムランも登場し、そして同時にこのタイミングでツール・ド・フランス2020出場メンバーも発表されるというサプライズも。

2019年に獲得した賞典ジャージの数々2019年に獲得した賞典ジャージの数々 (c)CorVos
2019年はじつに通算52勝を挙げる活躍をしたユンボ・ヴィスマ。ブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝、ジロ・デ・イタリア総合3位の&2019年UCIランキング首位のプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)、ツール・ド・フランス総合3位のステフェン・クライスヴァイク(オランダ)、そしてチームタイムトライアルの勝利とディラン・フルーネウェーヘン(オランダ)、ワウト・ファンアールト(ベルギー)、マイク・テウニッセン(オランダ)らによるステージ優勝によりツール・ド・フランスでは大活躍、その強さが光った2019シーズンとなった。

トム・デュムラン(オランダ)の電撃移籍加入でさらなるパワーアップトム・デュムラン(オランダ)の電撃移籍加入でさらなるパワーアップ (c)CorVos
チームは2020年に4人の新加入選手を迎えことになるが、最も注目すべきはチームサンウェブからトム・デュムラン(オランダ)が移籍加入したことだろう。ジロ・デ・イタリア2017覇者&ツール・ド・フランス2018総合2位のデュムランは、チームサンウェブとの契約を破棄してユンボ・ヴィスマに電撃加入。チームの総合力をより高める大型移籍となった。

他に移籍と新規加入選手は、ボーラ・ハンスグローエよりクリストフ・フィングステン(ドイツ)、今年のツアー・オブ・ジャパンの総合優勝者クリス・ハーパー(オーストラリア、チームブリッヂレーン)、そしてネオプロとなるトビアス・フォス(ノルウェー、ウノエックス・ノルウェジアンディベロップメントチーム)の3人。

この充実のラインナップによりスプリント、ワンディレース、ステージレース、そしてグランツールとすべてのレースに勝てる最強の布陣を揃えたかに見えるユンボ・ヴィスマ。なかでもチームが来季目指すのはツール・ド・フランスの総合優勝だ。ログリッチ、クライスヴァイク、そしてデュムラン。3人のリーダーがどう主導権を分け合うのか? 内部の主導権争いさえ心配される充実過ぎた選手ラインナップに対し、チームはこのタイミングでなんと7月のツール・ド・フランスの出場メンバーを発表するという方法に出た。

クライスヴァイク、デュムラン、プルッへGM、ログリッチ、ファンアールト、フルーネウェーヘンクライスヴァイク、デュムラン、プルッへGM、ログリッチ、ファンアールト、フルーネウェーヘン (c)CorVos
プレゼンテーション、そしてチームサイトおよびチーム公式SNSにより発表されたツール出場メンバーは、ログリッチ、デュムラン、クライスヴァイク、トニ・マルティン(ドイツ)、セップ・クス(アメリカ)、ローレンス・デプルス(ベルギー)、ロベルト・ヘーシンク(オランダ)、ワウト・ファンアールト(ベルギー)の8人。

「イエロー(マイヨジョーヌ)を勝ちとるためにすべてを賭ける」として選ばれた3人のエースと、それを支える最強のチームメイトという布陣だ。ステージ4勝を挙げたスプリンターのフルーネウェーヘンの名はメンバーに無く、そのセレクションは極端に山岳指向の高い2020年ツールでの総合争いに特化したものであることが伺える。

チームサンウェブから移籍加入したトム・デュムラン(オランダ)チームサンウェブから移籍加入したトム・デュムラン(オランダ) (c)CorVos
3人のエースのうち、ログリッチとデュムランはツールに加えて東京オリンピックでの勝利も狙う。そしてクライスヴァイクはブエルタ・ア・エスパーニャを狙う。5月のジロ・デ・イタリアではジョージ・ベネット(ニュージーランド)がエースとなる。またツールに出ない代わりに「3つのグランツールすべてでステージ優勝を挙げることを目標にする」と言うフルーネウェーヘンは、ジロ・デ・イタリアとブエルタ・エスパーニャにフォーカス、同時にミラノ〜サンレモを狙う。

デュムランは「ゴールは絶対にツール・ド・フランス。3人のリーダーですべてを賭けて戦う。3人が一緒になれたのは本当に素晴らしいことだ。一人の絶対リーダーでなく、複数リーダー制のほうがプレッシャーも少なく、性に合っている」と話す。

ワウト・ファンアールト(ベルギー)は昨ツールでの落車・負傷のリハビリ中だがシクロクロスも始めているワウト・ファンアールト(ベルギー)は昨ツールでの落車・負傷のリハビリ中だがシクロクロスも始めている (c)CorVosクライスヴァイクは「我々はチームとしてツールに勝利したい。もっとも強い選手たちがいてはじめてそれは可能になる。トム、プリモシュ、そしてこのメンバーをみて欲しい。この男たちとならやれると思う。このチームは世界最強だ」と言う。

ログリッチは「我々のゴールはツール・ド・フランスに勝つこと。僕はその一部になりたい。このチームなら! 」と、3人エースの体制を歓迎。「チームに3人のエースライダーが居ることが複雑な事態を招くのでは?」「デュムランの加入が自身のチャンスを奪うのでは?」といった声に対しては「そうはならない。3人とも勝ちたいとは思っているけれど、同時に『勝つチームになりたい』とも思っている。僕は彼のために働くことは問題ないし、彼が僕のために働いてくれるのも問題ない。僕が良くなくても誰かが勝つならそれでいい。彼の加入がチーム力の底上げをしてくれる」と語っている。

ユンボ・ヴィスマ2020 選手&監督陣ユンボ・ヴィスマ2020 選手&監督陣 (c)Bianchi用意されたスプリントステージがあまりに少ないことからもツール・ド・フランスを回避することに異論のないフルーネウェーヘンは「ジロ・デ・イタリアの開幕からの数ステージにはより多くのチャンスが有る。ツールのコース発表をみたとき、すぐにジロとブエルタに出るべきだと理解したんだ。とくに今年のブエルタは(母国)オランダスタートでもある。3つのグランツールすべてで勝ちたい。それができれば素晴らしい年にできると思う」と語った。

ツール・ド・フランスおよびグランツールにおけるチームイネオスの支配が続く近年。チーム力では同等とも言える強力な布陣を揃えたユンボ・ヴィスマの2020年に期待だ。

動画によるプレゼンテーションの模様は以下から観ることができる(1時間27分)。


photo:CorVos,Bianchi
text:Makoto.AYANO

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