ラファスーパークロスの翌日、初開催の野辺山グラベルチャレンジに約300人がエントリー。美しい秋の八ヶ岳山麓のオフロードを走り、大自然のなかでのライドを楽しんだ。注目を集めたグラベルイベントを実走取材と動画でレポートしよう。

スタートを待つ滝沢牧場には霧雨が降っていたスタートを待つ滝沢牧場には霧雨が降っていた photo:Makoto.AYANO霧雨のなか朝7時のスタートを待つ霧雨のなか朝7時のスタートを待つ photo:Makoto.AYANO


初開催となった野辺山グラベルチャレンジ。昨年まで2日間開催だったラファスーパークロス野辺山のシクロクロスレースが今年は土曜のみの1日開催になった代わりに、日曜に用意された弟分的イベントとしてのグラベルライドイベントだ。「野辺山クロス」が10周年の節目を迎えたことをきっかけに、本場アメリカ等で盛りあがっているグラベルライドを取り入れて始まった第1回大会だ。

まずはグラベルレース部門参加者たちがスタートするまずはグラベルレース部門参加者たちがスタートする photo:Makoto.AYANO
土曜日にはシクロクロスレースで競い、翌日曜日にはグラベルレースかツーリングか、自分の脚に合ったカテゴリーを選択して八ヶ岳の自然を満喫しようという趣旨。土曜は友人のレースサポートに回ったが、日曜は自分が走る番、という人も。スタート/フィニッシュ地点も同会場の滝沢牧場。レース、ロングツーリング、ショートツーリングの3クラスが用意され、ステージ1とステージ2の、ふたつのループが用意された。

霧雨のなか長い長いグラベルのヒルクライムをこなす霧雨のなか長い長いグラベルのヒルクライムをこなす photo:Makoto.AYANOSTRAVA区間では自身のサイコンで区間データをセルフ計測するSTRAVA区間では自身のサイコンで区間データをセルフ計測する photo:Makoto.AYANO


グラベルレースやイベントは今、特に北米では一大ブームとしてプロのロードレーサーも参加するほどの人気を誇る。ラファがスポンサードするEFエデュケーションファースト プロサイクリングチームでも「オルタナティブ(代替)カレンダー」としてグラベルイベントへ選手を積極的に送り込んでおり、レースとしての注目度も上がっている。

SS1スタート地点。ここからチップによる計測が始まるSS1スタート地点。ここからチップによる計測が始まる photo:Makoto.AYANOローラーで踏み固められ締まったグラベルを上るローラーで踏み固められ締まったグラベルを上る photo:Makoto.AYANO


日本でも今年グラインデューロが開催されるなど、伸びることが期待されるジャンルだ。初モノながら何よりオフロードに慣れ親しんでいるシクロクロスレーサーたちには親和性が高く、バイクも同じものでも共用が可能なことから、これをきっかけに比較的スムーズにグラベルの世界に入ってもらえると踏んでの併催だ。実際、レポートする筆者(CW編集部・綾野)も、土曜はマスターズクラスでCXレースを走り、筋肉痛を感じつつロングツーリング部門を実走することにした。

よく締まったフラットダートの登りを行くよく締まったフラットダートの登りを行く photo:Makoto.AYANO
レースとロングツーリングは、メイン会場の滝沢牧場を起点にした第1ステージ(27.7㎞)と第2ステージ(23.1㎞)の、同じ2ループのルートを走る。レース部門はそのなかでそれぞれ設けられた2つのSS区間の合計タイムで争う。これはクルマのラリーやグラインデューロと同様のラリー形式だ。

レース部門にエントリーした選手たちが朝いちばんの7時スタート。続いてロングツーリング部門の参加者、そして2時間差をおいてステージ1のコースのみを走るショートツーリングの部の参加者たちがコースに出ていく。

決めの細かいフラットダートの上りが続く。晴れ間もでてきた決めの細かいフラットダートの上りが続く。晴れ間もでてきた photo:Makoto.AYANOMTB的なグラベルバイクで参加。とにかく面白いバイクが多いMTB的なグラベルバイクで参加。とにかく面白いバイクが多い photo:Makoto.AYANO


参加者はゼッケンをバイクに、チップを脚につけて走り、SS区間の通過をチェックすることでレースのタイム計測が行われたほか、サイクリストにはポピュラーな存在となったSTRAVA(ストラバ)によるセルフ計測も同時に行われた。レース参加者であっても計測区間以外は頑張って速く走る必要は無いので、ツーリング的にも楽しめる。

この日は朝のうち霧雨が降っていて、視界も効かなかった。第1ステージは標高1900m近くまで登るコースプロファイルで、走り出してからは延々と上りが続いた。走り出してから1時間ほどで雨が止み、徐々に晴れ間が見え始めると、雄大な八ヶ岳の山容と高原の風景が望めるようになる。

SS1のフィニッシュ地点に着く頃に雨が上がり、晴れてきたSS1のフィニッシュ地点に着く頃に雨が上がり、晴れてきた photo:Makoto.AYANO
第1ステージの登りのグラベルは走りやすい林道が選択されていた。砂利道ではあるが、ロードローラーで踏み固められたような平滑な道が続き、シクロクロスバイクの33Cタイヤでも苦もなくこなせるものだった。ダケカンバなどの高山帯独特の植生を楽しみつつ、朝陽を浴びてのヒルクライム。SS1は下りを一部含む上り基調の長いヒルクライムだった。

タベルナ・エスキーナとキャニオンのコラボブースタベルナ・エスキーナとキャニオンのコラボブース photo:Makoto.AYANO多摩湖朝練部の皆さんと、クラブメンバーでもあるCW編集部・磯部多摩湖朝練部の皆さんと、クラブメンバーでもあるCW編集部・磯部 photo:Makoto.AYANO


SS1のフィニッシュである頂上地点ではシクロクロッサーにはお馴染みタベルナ・エスキーナとキャニオンのコラボによる私設エイドがホット&コールドレモネードを用意してくれていた。参加者がここに到着する頃には雲はどこかへ消え、眩い朝陽に虹がかかる幻想的な風景も見ることができた。

逆光に輝く落葉松林のなかグラベルを走る逆光に輝く落葉松林のなかグラベルを走る photo:Makoto.AYANO
荒れていないフラットダートはグラベルロードで走り易かった荒れていないフラットダートはグラベルロードで走り易かった photo:Makoto.AYANO
高原風景を楽しみながら広々とした舗装区間を走る高原風景を楽しみながら広々とした舗装区間を走る photo:Makoto.AYANO

頂上からは締まったジープロードが10km以上続くダウンヒル。舗装路でも距離を稼ぎ、滝沢牧場へとフィニッシュ。筆者で約3時間弱の行程だった。滝沢牧場では昨日のCXレースでも好評だった飲食ブースが継続して出店中で、ここで軽めのブランチ。気温も上がり、雨に濡れたウェアを着替えて第2ステージへ走り出す準備を整えた。

SS2を走り出す前に滝沢牧場でブランチをとるSS2を走り出す前に滝沢牧場でブランチをとる photo:Makoto.AYANO
ブランチをとるバルバの皆さん。奥には井上和郎さんもブランチをとるバルバの皆さん。奥には井上和郎さんも photo:Makoto.AYANOバイクはドロドロになったがSS1をフィニッシュすると天気は晴れてきたバイクはドロドロになったがSS1をフィニッシュすると天気は晴れてきた photo:Makoto.AYANO


第2ステージはまず滝沢牧場から北東へ下っていくルート。10時過ぎには太陽も出て、野辺山の11月とは思えないほど温かくなった。八ヶ岳の高原風景が見渡せ、温度差から田畑からは水蒸気が立ち上る幻想的な風景に。田舎道を進みつつ高度を下げ、佐久海ノ口あたりからグラベルへと入っていく。下りきったところから始まる上りの、土道の林道への入り口がSS2のスタートだ。

澄み渡った空と八ヶ岳をバックにマイナールートを走る澄み渡った空と八ヶ岳をバックにマイナールートを走る photo:Makoto.AYANO
紅葉した落葉松林を感じながら走る紅葉した落葉松林を感じながら走る photo:Makoto.AYANO
スタートしてすぐ、走りの軽い舗装路から一転、ウェットな土とぬかるんだ泥の上りが始まる。タイムを狙おうと勢いよく飛び出していったレース部門参加者も、すぐに失速。そこからはパワーが必要な重い走りを強いられる。木漏れ日の差し込む林間のトレイルを抜けると、芝の牧草地が広がる。進行方向には八ヶ岳の山容が見事。そして、この開けた高原の牧草地がSS2のフィニッシュ地点だった。

SS2スタート地点。二人揃ってのスタート!SS2スタート地点。二人揃ってのスタート! photo:Makoto.AYANO湿った土のトレイルの上りは走りが重いこと湿った土のトレイルの上りは走りが重いこと photo:Makoto.AYANO


見渡す限り広がる広大な牧草地。天上の庭のような場所にラファの移動式カフェ「ルイゾン」カーが待機し、フィニッシュ地点で淹れたてのコーヒーを振る舞ってくれる。地元の商工会からはバナナ、そしてエナジーバーのMANA barの振る舞いも。仲間たちと談笑しながら陽を浴びてまったり休憩すれば、これ以上無いほどの贅沢な時間。ここでは皆が大休止。

山並みをバックに開けた牧草地を走る。SS2のフィニッシュ地点はもうすぐ山並みをバックに開けた牧草地を走る。SS2のフィニッシュ地点はもうすぐ photo:Makoto.AYANO
広々とした牧草地で一休み。コーヒーの振る舞いも広々とした牧草地で一休み。コーヒーの振る舞いも photo:Makoto.AYANO牧草地ではラファのモバイル「ルイゾン」が淹れたてコーヒーを振る舞ってくれた牧草地ではラファのモバイル「ルイゾン」が淹れたてコーヒーを振る舞ってくれた photo:Makoto.AYANO


実は麓の佐久海ノ口までにご一緒した男女4人のグループのうち2人は新婚さん。じつはこのライド中に、コースから少し離れた南牧村役場に婚姻届を提出してきたのだという! 居合わせた皆が幸せそうなお二人から幸福感のおすそ分けを頂き、ますます最高なライドとなった。

グラベルライドの途中に南牧村役場に婚姻届を提出したという新婚のふたりグラベルライドの途中に南牧村役場に婚姻届を提出したという新婚のふたり photo:Makoto.AYANO
SS2フィニッシュから滝沢牧場までは舗装路基調で、第1ステージともルートはかぶっていた。13時過ぎには参加者のほとんどがフィニッシュしたため表彰式も早められての開催となった。筆者の走行データで、走行距離49.2km、獲得標高1,110m、走行タイム3時間18分、平均時速約15km/hだった。ストラバのログはこちら

SS2フィニッシュ! 最高の天気で最高のグラベルが楽しめたSS2フィニッシュ! 最高の天気で最高のグラベルが楽しめた photo:Makoto.AYANO女子トップは赤松綾さん(SimWorks)。賞品は特製の「グラウラー」女子トップは赤松綾さん(SimWorks)。賞品は特製の「グラウラー」 photo:Makoto.AYANO


レース部門の女子トップは前日のシクロクロスUCIエリート女子でも3位になった赤松綾さん(SimWorks)。男子トップはキャノンデール・ジャパンの山本和弘さんが獲得。賞品は特製の「グラウラー」で、なんとこの日に有名レストラン&ブリュワリーの「萌木の村Rock」に持ち込めば、このグラウラー一杯にビールを注いでくれるという特典付きだった。

男子トップはキャノンデール・ジャパンの山本和弘さん男子トップはキャノンデール・ジャパンの山本和弘さん photo:Makoto.AYANO
グラインデューロでの「1秒差の2位」の雪辱を晴らしたキャノンデール・ジャパンの山本和弘さんグラインデューロでの「1秒差の2位」の雪辱を晴らしたキャノンデール・ジャパンの山本和弘さん photo:Makoto.AYANO特製の「グラウラー」には「萌木の村Rock」のタッチダウンビールが注がれる特製の「グラウラー」には「萌木の村Rock」のタッチダウンビールが注がれる photo:Makoto.AYANO


レース派もツーリング派も同じように楽しめた第1回野辺山グラベルチャレンジ。天気の良さもあって最高の体験ができたと参加者には大好評で、事故もゼロだった。滝沢牧場の周辺でも十分に自然を感じていたと思っていたが、いざグラベルで外の世界へと範囲を広げて走り出してみれば、そこには驚くほど豊かで感動的な大自然が広がっていた。

第2ステージの開けた牧草地と見晴らしの良い風景が今回のハイライトだった第2ステージの開けた牧草地と見晴らしの良い風景が今回のハイライトだった photo:Makoto.AYANO
2ステージを通して、総じてグラベルバイクや細めタイヤのシクロクロスバイクでも走りやすいオフロードがルートとして選ばれていたところは入門者にも易しかった。しかし上りの多さと厳しさは八ヶ岳山麓一帯ならではで、距離以上に走り応えがあった。筆者は実走撮影取材のためにあえて走破性にマージンのある29erのフルサスMTBをチョイスして走ったが、MTBの太いタイヤとフルサスは少々オーバースペックで、グラベルバイクで走ってこそ楽しい(速い)ルートであると感じた。推奨は40Cタイヤだが、ガレた箇所は無かったため、それより細くてもなんら問題なかったはず。

ぬかるんだ土道もグラベルのひとつ。タイヤがとられ、走りは重かったが雰囲気は最高!ぬかるんだ土道もグラベルのひとつ。タイヤがとられ、走りは重かったが雰囲気は最高! photo:Makoto.AYANO
主催のラファジャパン代表・矢野大介さんによれば、今年は第1回目としてグラベルライドの楽しさをまずは知ってもらうことを考えての併催としたが、今後、いずれはシクロクロスレースとは別日に設定して、夏頃にグラベルイベント単独での開催を目指し、シクロクロスレースも元の2日間開催に戻すつもりだという。

グラベルチャレンジを走りきった参加者たちの充足度がたくさんの笑顔に表れているとすれば、まずはその試みは大成功だったと思えた。



photo&text&movie:Makoto.AYANO