「砂地獄」コクサイデで開催されたシクロクロスワールドカップ第5戦。第1コーナーの落車に巻き込まれながらも、1周を要さず先頭に上がったマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)が圧勝。女子レースではセイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス)が接戦を制した。



名物の砂区間を連なって走る選手たち名物の砂区間を連なって走る選手たち (c)CorVos
アメリカ2連戦、スイス、そしてチェコで開催されてきたUCIシクロクロスワールドカップが、いよいよシクロクロス大国ベルギーに帰ってきた。舞台は西フランダース、フランドル地方の海に面した街コクサイデ。砂地獄を特徴とする、世界で最も象徴的なシクロクロスコースには数万人もの観客が詰め掛けた。

男子エリートレースは、ホールショットを決めたヨリス・ニューウィンハイス(オランダ、サンウェブ)の背後で大落車が発生する波乱の幕開けでスタート。ニコラス・クレッペ(ベルギー、テレネット・バロワーズ)とティム・メルリエ(ベルギー、クレアフィン・フリスタッズ)が地面に倒れ、中盤スタートの世界王者マチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)は足止めによってほぼ最後尾に転落。痛みをこらえながらメルリエもレース復帰し、有力勢2名は追い上げを強いられることとなる。

先頭で最初の長い砂区間に入るヨリス・ニューウィンハイス(オランダ、サンウェブ)先頭で最初の長い砂区間に入るヨリス・ニューウィンハイス(オランダ、サンウェブ) (c)CorVos
ライバル勢を次々と交わしていくマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)ライバル勢を次々と交わしていくマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) (c)CorVos
トーン・アールツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ)が大人数の2番手グループを率いるトーン・アールツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ)が大人数の2番手グループを率いる (c)CorVos最後尾から追い上げたティム・メルリエ(ベルギー、クレアフィン・フリスタッズ)は9位フィニッシュ最後尾から追い上げたティム・メルリエ(ベルギー、クレアフィン・フリスタッズ)は9位フィニッシュ (c)CorVos

圧倒的な走りで先頭を突き進むマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)圧倒的な走りで先頭を突き進むマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) (c)CorVos
しかし「追走せざるを得ない状況だったけれど、ペースを上げた直後から調子の良さを感じたんだ。自分のリズムでレースを進めたけれど、砂レースではそれが一番大切で、簡単な方法だ」と言うファンデルポールは破竹の追走劇を見せた。圧倒的なパワーとスキルを武器に、乗車・降車を問わず次々と選手をパスし、1周目完了時には独走状態にあったローレンス・スウィーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)に合流。その圧倒的な速さにワールドカップリーダーのエリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)たちは太刀打ちできなかった。

2周目に入るとファンデルポールはすぐさま独走を築き上げ、リードを確認して巡航ペースに切り替える。最終的にこの日2位となるスウィークも「彼(ファンデルポール)が迫ってくるのが見えて、すぐさま先に行ってしまった。2位狙いに切り替えた」とファンデルポールの強さを語っている。

2位争いを繰り広げたトーン・アールツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ)とローレンス・スウィーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)2位争いを繰り広げたトーン・アールツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ)とローレンス・スウィーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) (c)CorVosワールドカップリーダーのエリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)はトップ10圏外に転落ワールドカップリーダーのエリ・イゼルビッド(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)はトップ10圏外に転落 (c)CorVos

また一つ勝ち星を挙げたマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)また一つ勝ち星を挙げたマチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) (c)CorVos
2位ローレンス・スウィーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)、1位マチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)、3位トーン・アールツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ)2位ローレンス・スウィーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)、1位マチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス)、3位トーン・アールツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ) (c)CorVos
スウィークはテレネット・バロワーズ勢(ファンケッセル、ファンデルハール、アールツ、ヘルマンス)やイゼルビッド、マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール)、マルセル・マイセン(ドイツ、コレンドン・サーカス)らと共に大きな2番手グループを形成する。1コーナーで落車したメルリエは最終的に9位にまで追い上げた。

ファンデルポールは終始リードを保ち、独走勝利。11月3日のスーパープレスティージュでCXシーズンインしてから負けなしの7勝目を納めた。2位は最終周回に得意の砂区間でライバルを置き去りにしたスウィーク、3位にはベルギー王者アールツが入った。ランキング首位はイゼルビッドが守っている。



砂の処理に長けるルシンダ・ブラント(オランダ、テレネット・バロワーズ)が乗車する砂の処理に長けるルシンダ・ブラント(オランダ、テレネット・バロワーズ)が乗車する (c)CorVos
U23世界王者インゲ・ファンデルヘイデン(オランダ、CCC・リブ)が先頭グループをリードU23世界王者インゲ・ファンデルヘイデン(オランダ、CCC・リブ)が先頭グループをリード (c)CorVosサンヌ・カント(ベルギー、IKO・クレラン)は先頭争いに加われず7位でフィニッシュサンヌ・カント(ベルギー、IKO・クレラン)は先頭争いに加われず7位でフィニッシュ (c)CorVos


45分間の女子レースではオランダ王者のルシンダ・ブラント(オランダ、テレネット・バロワーズ)が先行し、セイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス)やアンマリー・ワースト(オランダ、777)が続く展開でスタート。ワールドカップリーダーのカテリーナ・ナッシュ(チェコ、クリフレーシング)やサンヌ・カント(ベルギー、IKO・クレラン)は終始リズムを掴むことができなかった。

先頭ではブラントに代わったアルバラードが積極的にリードし、欧州王者ヤラ・カステライン(オランダ、777)とU23世界王者インゲ・ファンデルヘイデン(オランダ、CCC・リブ)、そしてワースト、ブラントがトップグループを形成。この日もオランダ勢がレースを掌握した。

好調アルバラードによる2周目のアタックでトップグループが分裂したが、3周目には再び合流。砂の処理に長けるブラントとアルバラードを先頭に、各選手が激しく火花を散らしながら最終周回に突入した。

積極的にリードするルシンダ・ブラント(オランダ、テレネット・バロワーズ)積極的にリードするルシンダ・ブラント(オランダ、テレネット・バロワーズ) (c)CorVos
熾烈な勝負を制したセイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス)熾烈な勝負を制したセイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス) (c)CorVos
2位ルシンダ・ブラント(オランダ、テレネット・バロワーズ)、1位セイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス)、3位ヤラ・カステライン(オランダ、777)2位ルシンダ・ブラント(オランダ、テレネット・バロワーズ)、1位セイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス)、3位ヤラ・カステライン(オランダ、777) (c)CorVos
ブラントは苦しみながらも先頭を牽き続け、耐えきれずにワーストとファンデルヘイデンが脱落。砂区間の入り口では毎回ブラントとアルバラードが熾烈なスプリントを繰り広げる。すると砂の登り区間で2番手のブラントが脚をつき、先行アルバラードは乗車でクリア。ここが勝負の分け目となった。

ブラントを振り切ったアルバラードが、初のワールドカップエリートカテゴリーの勝利を獲得。以降ブラント、カステラインと続き、5位までをオランダ勢が独占した。
男子エリート結果
1位 マチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンドン・サーカス) 59'58"
2位 ローレンス・スウィーク(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) +25"
3位 トーン・アールツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ) +35"
4位 ラース・ファンデルハール(オランダ、テレネット・バロワーズ) +40"
5位 クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、テレネット・バロワーズ) +50"
6位 コルヌ・ファンケッセル(オランダ、テレネット・バロワーズ) +1'02"
7位 マルセル・マイセン(ドイツ、コレンドン・サーカス) +1'05"
8位 マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) +1'19"
9位 ティム・メルリエ(ベルギー、クレアフィン・フリスタッズ) +1'28"
10位 トーマス・ピッドコック(イギリス、トリニティレーシング) +1'33"
女子レース結果
1位 セイリン・デルカルメンアルバラード(オランダ、コレンドン・サーカス) 47'09"
2位 ルシンダ・ブラント(オランダ、テレネット・バロワーズ) +06"
3位 ヤラ・カステライン(オランダ、777) +08"
4位 インゲ・ファンデルヘイデン(オランダ、CCC・リブ) +21"
5位 アンマリー・ワースト(オランダ、777) +24"
6位 ラウラ・フェルドンショット(ベルギー、パウェルズサウゼン・ビンゴール) +1'00"
7位 サンヌ・カント(ベルギー、IKO・クレラン) +1'24"
8位 アリーチェマリア・アルツィッフィ(イタリア、777) +1'25"
9位 エヴァ・リヒナー(イタリア、クレアフィン・フリスタッズ) +1'47"
10位 シリン・ファンアンローイ(オランダ) +1'48"
text:So.Isobe
photo:CorVos