マリア・ローザ争いに加えて注目なのが、ポイント賞、山岳賞、新人賞を懸けた闘い。今年はポイント賞ジャージがマリア・チクラミーノから真っ赤なマリア・ロッサに変更。赤・白・緑のイタリア国旗カラーが揃った。

マリア・ロッサ(ポイント賞ジャージ)

イタリアンスプリンターの主砲アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)イタリアンスプリンターの主砲アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ) photo:Cor Vos集団スプリントはステージレースの華。昨年までポイント賞ジャージはシクラメン色の「マリア・チクラミーノ」だったが、今年から真っ赤な「マリア・ロッサ」に変更。マリア・ローザを除く3ジャージを合わせると、イタリア国旗になる仕掛けだ。

今年のジロには、スプリンター向きのステージが合計7〜8ステージ用意された。しかし、仮にスプリントで無敵を誇ったとしても、最終日のヴェローナに辿り着かない限り、ポイント賞は獲得出来ない。スプリンターも山岳ステージを制限時間内に走り切る登坂力が要求される。

アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア)アンドレ・グライペル(ドイツ、チームHTC・コロンビア) photo:Kei Tsujiステージ上位入賞者の獲得ポイントは1位25ポイント、2位20ポイント、3位16ポイント・・・15位1ポイント。中間スプリントポイントは1位8ポイント・・・6位1ポイント。スプリンターが太刀打ち出来ない山岳ステージでも同ポイントが与えられるため、スプリントが混戦の場合は総合上位のオールラウンダーがポイント賞に輝く可能性もある。

長年イタリアのトップスプリンターに君臨し、今年のジロでも主役になり得るのが、これまでステージ通算21勝(ドーピング疑惑により5勝が取り消し)を飾っているアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)だ。

タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ) photo:Cor Vos相棒のロレンツォ・ベルヌッチ(イタリア)はドーピング疑惑によって欠場するため、ダニーロ・ホンド(ドイツ)が「アレ=ジェット」の発射台を務める。ペタッキ不調の場合は、ホンドがステージ優勝を狙うことも可能だ。

イタリアンスプリンターとしてはサーシャ・モードロ(コルナゴ・CSFイノックス)やアルベルト・ロッド(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)の活躍に期待。ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)は故障の影響で残念ながら欠場する。

グレゴリー・ヘンダーソンとクリストファー・サットン(チームスカイ)グレゴリー・ヘンダーソンとクリストファー・サットン(チームスカイ) photo:Kei Tsuji昨年ステージ4勝を飾ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)は、同時期にアメリカで開催されるツアー・オブ・カリフォルニアに出場するために欠場。代わって現在シーズン通算勝利数トップ(11勝)のアンドレ・グライペル(ドイツ)がHTCコロンビアトレインの恩恵を受ける。

この筋肉隆々のジャーマンスプリンターは、2008年のジロでステージ1勝。ツールに出場しない分、このジロに懸ける想いは強いはず。チームには総合狙いのオールラウンダーがいないため、グライペルのスプリントに力を注ぐことが出来る。

ジロに初出場する新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)ジロに初出場する新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) photo:Makoto Ayano他にもタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)やロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)、バーデン・クック(オーストラリア、サクソバンク)ら、英語圏出身のスプリンターも勢揃い。チーム1年目のチームスカイはグレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド)とクリストファー・サットン(オーストラリア)の2枚看板でジロのスプリントに挑む。

オランダをスタートするだけに、オランダチーム所属のオスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)のジロ初出場に期待が集まったが、今年のミラノ〜サンレモ覇者はアレルギーによる呼吸系のトラブルのため欠場。ラボバンクは目玉選手を欠いてスタートすることになる。

そして、忘れてはいけないのが新城幸也(Bboxブイグテレコム)の存在だ。昨年ツールのスプリント勝利で上位に絡む走りを見せたユキヤは、このジロでグランツールのステージ初優勝を狙っている。Bboxブイグテレコムからはウィリアム・ボネ(フランス)という有力スプリンターも出場するが、展開によってはユキヤをエースに立てる可能性も。ジロに初挑戦するユキヤに大きな声援を送りたい。

歴代ポイント賞受賞者
2009年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2008年 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)
2007年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2006年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2005年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2004年 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)
2003年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2002年 マリオ・チポッリーニ(イタリア)
2001年 マッシモ・ストラッツェール(イタリア)
2000年 ディミトリ・コニシェフ(ロシア)


マリア・ヴェルデ(山岳賞ジャージ)

ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ) photo:Kei Tsujiグランツールの中で最も山岳の難易度が高いジロ・デ・イタリア。それだけに、山岳王の証マリア・ヴェルデには大きな価値がある。

獲得ポイントが最も大きいのはチーマ・コッピ(ガヴィア峠)で、先頭で通過した選手には20ポイントが与えられる。以下、頂上ゴール(テルミニッロ、ゾンコラン、コロネス、トナーレ)が15ポイント、1級山岳10ポイント、2級山岳5ポイント、3級山岳3ポイント。つまり、どれだけ無名選手たちが序盤からカテゴリーの低い山岳でポイントを加算しても、終盤の難関山岳で簡単にひっくり返ってしまう可能性は高い。

ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス) photo:Cor Vos昨年はステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)がマリア・ヴェルデ争いを席巻。下位を大きく引き離す圧勝だった。今年もガルゼッリの第一目標はマリア・ローザだが、途中で山岳賞に狙いをスイッチすることも考えられる。

ジロ・デル・トレンティーノの最終頂上ゴールでライバルを蹴散らしたドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)は要チェック。ブエルタ・ア・エスパーニャで山岳賞に輝いたダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)や、“ゲンティン・ハイランド(ランカウイの名物山岳)の征服者”の異名をもつホセ・セルパ(コロンビア、アンドローニ・ジョカトーリ)も山岳賞候補だ。

他にも昨年のジャパンカップ覇者のクリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)やダニエル・モレーノ(スペイン、オメガファーマ・ロット)、マウリシオアルベルト・アルディラ(コロンビア、ラボバンク)らの動きにも注意したい。

歴代山岳賞受賞者
2009年 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)
2008年 エマヌエーレ・セッラ(イタリア)
2007年 レオナルド・ピエポリ(イタリア)
2006年 フアンマヌエル・ガラーテ(スペイン)
2005年 ホセ・ルハノ(ベネズエラ)
2004年 ファビアン・ウェーグマン(ドイツ)
2003年 フレディ・ゴンザレス(コロンビア)
2002年 フリオ・ペレスクアピオ(メキシコ)
2001年 フレディ・ゴンザレス(コロンビア)
2000年 フランチェスコ・カーザグランデ(イタリア)


マリア・ビアンカ(新人賞ジャージ)

フランチェスコ・マシャレッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)フランチェスコ・マシャレッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ) photo:Cor Vos若手選手を対象とした新人賞。トップの選手には純白のホワイトジャージが与えられる。長らくブルーの複合賞ジャージに座を奪われていたが、3年前に復活した。対象となるのは誕生日が1985年1月1日以降の選手だ。

マリア・ビアンカの有力候補に挙げられているのが、昨年ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー、クイックステップ)と最後までデッドヒートを繰り広げ、惜しくも新人賞2位に甘んじたフランチェスコ・マシャレッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)。

ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・トランジションズ)ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・トランジションズ) photo:Cor Vosマシャレッリ兄弟の三男フランチェスコは生粋のクライマーとして知られ、2007年TOJ(ツアー・オブ・ジャパン)の美濃ステージと富士山ステージ(優勝タイム41分38秒)で優勝。下位を2分近く引き離す圧倒的な走りで総合優勝を飾った。今年はツール・メディテラネアンの最終頂上ゴールで優勝。ジロではエースのガルゼッリをアシストしながら昨年の雪辱を誓う。

余談として、マシャレッリが総合優勝した2007年のTOJで総合2位に入ったヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン)と総合3位のアレクサンドル・ディアチェンコ(カザフスタン)はアスタナチームでグランツールデビューを飾る。

ジュニア時代から好成績を収め、昨年プロツアーレースのボルタ・ア・カタルーニャで総合2位に入ったダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・トランジションズ)も、将来を嘱望されるオールラウンダーの一人。昨年のブエルタ・ア・エスパーニャに出場し、グランツールのデビュー戦を総合53位で終えた。

ロードレースの登竜門として知られるツール・ド・ラヴニールで2007年に総合優勝を飾ったバウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)は、エースを欠くチームの若頭。今年のブエルタ・ア・アンダルシアでは総合5位に入っており、初めてのグランツールでどんな走りを見せるかに注目。他にもクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)やエロス・カペッキ(イタリア、フットオン・セルヴェット)、ヤン・バケランツ(ベルギーオメガファーマ・ロット)らが新人賞対象選手だ。

歴代新人賞受賞者
2009年 ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー)
2008年 リカルド・リッコ(イタリア)
2007年 アンディ・シュレク(ルクセンブルク)
1995年〜2006年 ジャージ設定されず

text: Kei Tsuji in Amsterdam
photo:Cor Vos, Makoto Ayano, Kei Tsuji

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