大盛況に終わったMTB五輪テスト大会。男女エリート共にスイスが優勝を収める結果となったが、この大会にどのチームよりも手厚いメンバーを整えたのが自転車大国フランスだった。その代表コーチおよびフランス期待のエースらのコメント、そしてフランスチームのリアルを伝えるレポートが、レース前後でチームと深く関わった鈴木禄徳(PAXPROJECT)さんから届いた。



過去、ジュリアン・アブサロンの牽引により、金メダル2回、世界選手権4連覇の栄光を経験した自転車大国フランス。2020年東京五輪、そして2024年のパリ五輪を見据え、次なるスターの育成に力を注いでいる。今回は、フランス代表のコーチ、次世代のエース候補の2名のコメントをご紹介すると共に、今回彼等との縁に恵まれ、スタッフ・選手と一緒に過ごす機会を頂戴した著者目線でのフランスチームの取組みをお伝えする。

フランスチーム エリートコーチ イバン・クロサス氏 インタビュー

ポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)にアドバイスを送るイバンコーチ(右)ポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)にアドバイスを送るイバンコーチ(右) photo:So.Isobe
― クロサス氏:今回の日本遠征は概ね成功だったと考える。

女子では、U23一年目かつ、エリートクラスに今回初めて参加した20歳のロアーナが8位で完走という結果を収めることができた。今の彼女にとっては大きな成功で手応えを得られたのではと考える。また、今日のレースで大きく成長したはずだ。

ポリーヌについては、この1週間は日本で良い合宿を過ごすことができたと考えている。日本の雰囲気、ロードワーク環境、日本の人々と出会えたこと、コースの確認ができたこと……。レース自体は1周回目で不幸なクラッシュに見舞われてしまい残念な結果となったが、世界中のレースを転戦する彼女の順応性を考えれば、多くの情報を得、経験しただけでも十分な成果だったと考える。

ポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)をスタートラインに送り出すイバンコーチポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス)をスタートラインに送り出すイバンコーチ photo:So.Isobe
男子については、全体としてとても良い結果が得られた。金曜、土曜の試走の段階から選手達はコースとの相性に手応えを掴んでいたようで、レースでは序盤からニノ、カルシュバーナ、アバンチーニと言った強力なメンバーが牽引する先頭集団の動きに積極的にチーム一団となって参加することができた。結果的にヴィクトール選手が2位、ヨルダン選手が4位となったこの結果には素直に喜んでいる。

ただし、我々の目標……いや、ミッションはニノやマチューを倒しての金メダルだ。課題はまだまだ沢山ある。一方で世界選手権に次いで、チームの総合力としてのパフォーマンスを再確認できた部分もあり、2020年の東京五輪に向けて良い方向に進んでいると実感している。

― フランスチームは、他チームと比べても大きな予算をこの五輪テスト大会に投入していると感じている。それは、2024年のパリ五輪を見据えた上でのことですか?

今回の遠征については、まず2020年の東京五輪でメダルを獲得することを目的にフランス車連からとても大きな予算が投入されている。なので、レースの結果もそうだが、今回収集した様々な情報を整理して、我々が何が強くて、弱いのか、日本で生活を行う上でどういった事に注意する必要があるのか、いろいろな角度から検証をする必要がある。その上で来年の五輪本戦において、チームとしてより強く、よりベターに、選手達に何が提供できるか、彼等のパフォーマンスが引き出せるようにするのが今回の私に与えられたミッションだ。

ヴィクトール・コレツキー(左)、ステファン・テンピエール(中央)、ヨルダン・サルー(右)ヴィクトール・コレツキー(左)、ステファン・テンピエール(中央)、ヨルダン・サルー(右) photo:So.Isobe
一方で私の裁量となる選手編成については、パリ五輪も見据えて、今回の遠征は選手の世代交代を少し意識した。男子では、25歳前後のヴィクトール選手、ヨルダン選手、ティトゥアン選手と女子のロアーナ選手らの起用は経験を積ませる意図が大きい。経験豊富でフランスではスター選手であるステファン選手とマキシム選手と世界チャンピオンであるポリーヌと共に1週間過ごすことで、選手達間で色々な事をシェアすることができ、有意義な時間を過ごせた。

特に女子のロアーナ選手についてはこの様な経験は今までに無いことで、彼女自身本当に多くのことを学べたと思う。また彼女のテクニックは素晴らしく、ポリーヌ選手の良きトレーニングパートナーにもなってくれた。今後ポリーヌ選手の経験をロアーナ選手に引き継いでいくことが、我々にとって非常に大きな課題であり、丁寧に対応していきたい。

フィニッシュ直後にレースを振り返るロアーナ・コムテ(フランス)とイバンコーチフィニッシュ直後にレースを振り返るロアーナ・コムテ(フランス)とイバンコーチ photo:So.Isobe
― 東京五輪のコースは想像以上にテクニカルでした。また、近年のワールドカップや世界選手権は年々難易度を増してきています。何かフランス代表として難化するコースへの対策は実施されているのでしょうか

我々のチームの選手達は既に相応の高いスキルを有しており、代表としてのワークアウトはそこまでやっていなかった。それでも、東京五輪のコースについては、とてもテクニカルかつ急峻であった為、これから更に順応していく必要があると感じた。この冬は合宿を行う予定であり、よりハイスピードに走ることと、ドロップオフへの対処等への全てのスキルについてハードに取り組みを行う予定だ。

当初想像していた以上に難易度が高かったが、ワールドカップのスノーシュー大会の様に厳しいコースの方が選手達の成績も良いので、私としては難易度が高いコースとなってくれる方が良いことだし、個人的にこういったコースは好みだ。

― 今回のコースでは日本選手たちは大分苦戦したようです。何か日本の選手達にアドバイスがあれば

日本にもいくつかバイクパークであったり、岩場や木の根が張り巡らされたトラックがある事は聞いているし、自分も以前に視察に行った松本でも、そう言った場所を見かけた。すごく基本的な事になるが、そういった場所を走り込むことと、パンプトラックやBMXトラックで写真、ビデオ等を撮りながら基本動作を徹底して繰り返して身体に覚えさせるしかない。どんなに難しいエリアも基礎的なスキルが身についていないと始まらない。

ある程度のレベルになったら、フランスに修行しにくる事がベター。トレイルやパーク等が郊外にはそれなりに存在し、より身近にそういったエリアでトレーニングが出来る。我々はいつもオープンなので、何かあれば相談して欲しい。

「東京五輪本戦での男女での金メダル獲得がミッション」「東京五輪本戦での男女での金メダル獲得がミッション」 photo:So.Isobe
― 改めてフランスチームの目標、野望を

東京五輪本戦での男女での金メダル獲得。とても難しい課題、目標であることは間違いないが、私は選手とスタッフを信じている。



ヨルダン・サルー(テストレース男子4位/ワールドカップランキング総合5位)

ヨルダン・サルー(フランス)ヨルダン・サルー(フランス) photo:So.Isobe
― フランスチームはヴィクトール選手の2位、貴方の4位をはじめ、チームとしてのパフォーマンスを発揮した様に見えます。何か作戦はあったのですか

特にこれといった作戦は無かったです。フランスチームは全員がワールドカップ、世界選手権で表彰台を獲得し、いつも一緒に活動しているメンバーです。全員で協力して先頭集団に入り、それぞれが得意なパートで攻めた結果が、チームで動いている様に見えたのかもね。ただ先頭集団にメンバーが多くいるのは心強かったし、他のチームもプレッシャーには感じたはず。

― コースがかなりテクニカルでしたが、フランスチームは全員かなり高いスキルを有しており、優位にレースを進めてた印象です。日頃どういったトレーニングをしているのでしょうか

11歳の頃、マウンテンバイクに乗り始めた時期に、地元のスクールのトレーニングカリキュラムにトライアルのスキルが組み込まれており、ジャンプやウイリー、ダニエルといった技術を教わった。幼い頃に遊びながら行ったトレーニングが、今の僕のテクニックに役立っていると感じるよ。

今はマウンテンバイクのインターバルトレーニングを行った後は必ずトレイルを走ってテクニック感覚を養う様にしている。トレイルをハイスピードで走って、ジャンプしたりね。住んでるエリアの周りにダウンヒルに向いたトレイルに恵まれてる事もあり、トレーニングには困らないかな。

ロックセクションを越えるヨルダン・サルーロックセクションを越えるヨルダン・サルー photo:So.Isobe
― 今回の東京五輪コースやワールドカップではジャンプ等が設定されるようになってきていますが、あまりトレイルではありませんよね?何か特別な練習はしていますか?

ジャンプ等の人工的なセクションのトレーニングはそんなに行っていないんだ。ただ、子供の頃からレース会場やパークで出会うジャンプやバンクで走るのが本当に楽しくて、その経験を重ねるうちにこなせるようになったという感じかな。意外に感じるかもしれないけど、特別な事はしていない。いつもマウンテンバイクを楽しんで、それがスキルに繋がっている。

― 今回のご自身のパフォーマンス、結果についてはどうお考えですか

ワールドカップや世界選手権を経ての今大会だったので、なんとも言い難いね……、ただ段々と疲労が蓄積していく中で、今大会を4位で終えられたこと、そしてシーズンを通じてワールドカップランキングを5位で終えられたことは良かったと思うし、成長出来たという手応えを実感している。

― 来年若しくは中長期的な目標についてお聞かせください

東京五輪でメダル獲得……、なんだけどフランスチームは3つか2つの代表枠に対して、候補選手が5人もいる。そして全員がワールドカップや世界選手権で表彰台を争うメンバー。来年のワールドカップのNoveMesto大会が代表選考にあたっての重要なレースになるので、ここに集中して臨みたい。中長期的に見れば、パリ五輪でメダルを獲得することが選手としてのビッグゴールだ。



ロアーナ・コムテ (女子8位 / 現フランスU23チャンピオン)

世界屈指の強豪勢に食らいつくロアーナ・コムテ(フランス)世界屈指の強豪勢に食らいつくロアーナ・コムテ(フランス) photo:So.Isobe
― 本日のレースはどうでしたか?

プレ五輪レース後にインタビューに応じてくれたロアーナ・コムテ(フランス)プレ五輪レース後にインタビューに応じてくれたロアーナ・コムテ(フランス) photo:Yoshinori.Suzukiとても長いシーズンの終盤だったので、かなり疲れを感じており、まさか初めて走る女子エリートを8位で終えられるとは思っていなかった。東京五輪のコースはかなりテクニカルで、それが私にとっては良い方向に働いた。今まで経験した中でもベストなコースだと思う。

― テクニックが印象的でしたがどの様にして身に着けたのですか?

子供の頃からスキーの滑降競技を行っていたので、スピードが大好きだったの。今もダウンヒルが好きなのはその影響がとても大きい。MTBに乗り始めたのは9才頃から。私の出身地のアヌシーには沢山のトレイルが張り巡らされていて、基本的なスキルの練習を行うにはすごく良い環境だわ。フィジカルなトレーニングについては、シーズン中はロードバイクで行うことが多くて、週に2回程度テクニックに特化したトレーニングを行っている。バイクパークを走ったり、ダウンヒルトレイルを走る事が多く、仲間と楽しんでいると言った感じです。

ウインターシーズンについては、ラン、スイム、スキーなど自転車以外のスポーツを行って身体を色々な側面から鍛える様にしています。バイクをコントロールするにも基礎的な体力、筋力、持久力と言った身体の強さが必要になると思うので、大事だと考えている取組みです。

― 今後の目標についてお聞かせください

U23の2年目になるが、まず来年については東京五輪に選ばれること。今回のテストイベントでの結果は良い材料になったと信じたい。シーズンを通じては、ワールドカップU23で3位以内で終えること。世界選手権でアルカンシェルを獲得したい。

― 今後の成功を心からお祈りしています

ありがとう。テストレースでの上り坂での声援は力になりました。日本のレースファンの皆さんに名前を覚えてもらえるとうれしいです。



今回のフランスチームは五輪本戦でのシミュレーションを徹底的に意識して、日本合宿兼テストレース遠征に臨んでいた。選手7名は参加した外国勢の中での最多、かつスタッフ10名超。一般的な遠征サポートを行うコーチ、メカ、マッサージャー以外に、医師と研究機関からのスタッフを派遣した。

フランスよりメカニックも派遣されてきているフランスよりメカニックも派遣されてきている ホテルにてパフォーマンス測定するヨルダン・サルー(フランス)ホテルにてパフォーマンス測定するヨルダン・サルー(フランス) (c)www.instagram.com/absolute_absalon彼らのミッションは時差がパフォーマンスに与える影響に始まり、日本式の和室・布団での宿泊環境と日本食への順応等の本戦で与えうるネガティブな点について、選手へのヒアリング調査、脳波測定、パフォーマンス測定等を行い、可能な限りデータ収集、解析を行うこと。

その先進的な取組みに「ここまでやるのか」と、彼らの自転車大国であることの矜持と、本気でニノとマチューを倒すと言う覚悟を垣間見た。

そういったプロフェッショナルな一面も見る中で、ポリーヌ・フェランプレヴォ選手とロアーナ選手は伊豆の典型的な日本のカントリーサイドの風景と温泉をかなり気に入った様子で、今回の遠征を楽しんでおり、ホテル内で浴衣姿ではしゃぐ二人の姿に筆者は目を奪われた。(写真を撮らなかった事が生涯の後悔)

また、男子選手達についても2位を獲得したヴィクトール選手は「海沿いのコーストライドで富士山がきれいに見えて最高だった!このあたりにMTBトレイルはないのか?」といった具合に伊豆の自転車環境に心から満足している様子で、テストレースと五輪本戦に向けた合宿でありながらも、1週間の日本滞在をとても楽しんでいた。

当初、オリンピックのMTB種目を東京ではなく静岡の修善寺サイクルスポーツセンターで行うことに対して、一部のMTBファンからは落胆の声があり、筆者もその一人であった。だが、今回の遠征を楽しんでいるフランスチームの姿を見て、「彼らはそもそも、自然とMTBが大好きなのだ」ということに改めて気づかされた。

そして、筆者も頻繁に伊豆界隈にサイクリングに出かける立場として、日本を代表する素晴らしいサイクリングフィールドを世界最高峰のトップアスリートである彼らに紹介し、喜んでもらえたことを本当に嬉しく誇らしく感じる。



著者プロフィール:鈴木禄徳(PAXPROJECT)

鈴木禄徳(PAXPROJECT)鈴木禄徳(PAXPROJECT) オフロードが特に大好きな雑食系アマチュアサイクリスト。幼少期からMTBを中心に、アニメ聖地巡礼から海外レース遠征まで幅広い自転車の楽しみ方を経験。

現在はアマチュアMTB/CXチーム「PAXPROJECT」のキャプテンとして、「明るく、楽しく、でも競技はガチで」をモットーにレース参戦と仲間と一緒にレベルアップすることに没頭。誰も観ていないジャンプで、数少ない観客(ほぼ友人のみ)を魅了する走りが信条。

PAXPROJECT https://paxproject.com
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