ジロにも登場する巡礼地サントゥアリオ・ディ・オローパにフィニッシュする第103回グラン・ピエモンテ(UCI1.HC)で、イバン・ソーサ(コロンビア)のアシストを受けたエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)がライバルを圧倒。第二の故郷イタリアでの初勝利を手にした。
スタートを待つリチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)とエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:CorVos
グラン・ピエモンテ2019 photo:RCS Sport
グラン・ピエモンテ2019 photo:RCS Sport
ミラノ〜トリノの翌日、イル・ロンバルディアの2日前というタイミングで開催された第103回グラン・ピエモンテ(元ジロ・デル・ピエモンテ)。その名の通りピエモンテ州を走る183kmのワンデークラシックで、スペルガ聖堂にフィニッシュした前日のミラノ〜トリノと同様に、キリスト教の聖地であるサントゥアリオ・ディ・オローパにフィニッシュ地点が置かれている。
ユネスコ世界遺産に指定されている巡礼地サクロモンテ(聖なる山)の一つで、1963年、1993年、1999年、2007年、2015年、2017年のジロ・デ・イタリアにも登場しているサントゥアリオ・ディ・オローパは登坂距離11.8km/平均勾配6.2%/最大勾配13%の登り。中でも1999年ジロ第15ステージ/オローパ山頂フィニッシュでのマルコ・パンターニ(イタリア)の走りが有名なエピソードとして語り継がれている。当時、残り8km地点でチェーンを落としたパンターニはチームメイトにアシストされてポジションを上げ、実に49人をごぼう抜きにしてステージ優勝を果たした。
秋晴れのこの日、UCIプロコンチネンタルチームのメンバーを中心に構成された6名による逃げをチームイネオスやUAEチームエミレーツが追いかける展開。ジロ覇者リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)やラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)といった有力選手は、2日後のイル・ロンバルディアに向けて温存するため中盤の補給ポイントでレースを降りている。
ピエモンテ州の平野部を走る photo:RCS Sport
強力なペースを刻むイバン・ソーサ(コロンビア、チームイネオス) photo:RCS Sport
フィニッシュまで40kmを切り、標高775mのネルヴァ(登坂距離13.0km/平均勾配3.5%)の登りに差し掛かると逃げグループは崩壊。最後まで逃げていたステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス)をイネオストレインが追い抜いていく。チームイネオスはそのままメイン集団の先頭に陣取り、隊列を組んでオローパの登坂を開始した。
サントゥアリオ・ディ・オローパ(登坂距離11.8km/平均勾配6.2%/最大勾配13%) photo:RCS Sportチームイネオスのヨナタン・カストロビエホ(スペイン)やサルヴァトーレ・プッチョ(イタリア)が牽引するメイン集団からマティアス・フランク(スイス、アージェードゥーゼール)がアタックしたもののリードは奪えない。ディエゴ・ローザ(イタリア、チームイネオス)の集団牽引によってフランクが引き戻されると、イバン・ソーサ(コロンビア、チームイネオス)の一本引きが始まった。
ソーサのハイペース牽引によってライバルたちはまた一人また一人と為す術なく千切れていく。粘っていたダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア、アスタナ)やダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ)、エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)も脱落。最後まで食らいついていたナンス・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール)も遅れ、残り1.5km地点でソーサの後ろからベルナルが加速した。
チームプレーの末にアタックし、独走に持ち込んだベルナル。ツール・ド・フランス総合優勝後、ジロ・デッラ・トスカーナ2位、ジロ・デッレミリア9位、ミラノ〜トリノ6位という成績を残していたベルナルがサントゥアリオ・ディ・オローパの聖堂前に独走フィニッシュした。
独走に持ち込んだエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:RCS Sport
オローパ頂上にフィニッシュするエガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) photo:RCS Sport
Velonの公開データによると、ベルナルは勾配10%の区間で1分28秒にわたって平均460Wを出力してライバルたちを引き離した。ベルナルのフィニッシュ手前7.5km(平均勾配7.7%)の登坂タイムは19分52秒。1999年にパンターニが記録した最速タイム18分33秒や、2017年トム・デュムラン(オランダ)の19分17秒には届いていない。
チームイネオスの若きコロンビア人クライマー(22歳と21歳)がワンツー勝利。「今日はイバン・ソーサが最高のアシストをしてくれた。もしかしたら今日は彼が最強だったかもしれない」と、ベルナルは2位に入ったソーサを讃えている。
「かつてパンターニが勝ったこの登りでイタリア国内初勝利を飾ることができた。ヨーロッパに移住して初めて住んだ場所から10kmほどしか離れていないこのオローパでの勝利は様々な感情をもたらしてくれる。このピエモンテ州には友人が多く、地元のように感じることができるんだ」。2016年にイタリアに移り住み、流暢なイタリア語を操るベルナルは第二の故郷での勝利を喜ぶ。「ロンバルディア前のコンディションに満足しているし、最高の成績を収めたいと思う。でもその前に、この勝利のおかげで落ち着いてシーズンを締めくくることができる。来年はジロ・デ・イタリアに出場したいけど、まずはコース発表を見てからチームと相談して決めたい」。
2位のソーサに続いて3位に入ったピーターズはジロ・デ・イタリアでステージ優勝を飾るとともに3日間マリアビアンカ(ヤングライダー賞ジャージ)を着用した25歳。7月の東京2020テストイベントで3位に入ったピーターズは「ジロでのステージ優勝と合わせて、今年はステップアップの1年になった。残り2kmを切ってからソーサがペースを上げて、最も勾配があるところでベルナルがアタック。そこからは3位を狙うことしかできず、自分のペースを保って走ったんだ」とコメントしている。
この日は127名がスタートして19名が途中リタイア。108名がフィニッシュにたどり着いたものの、23名がタイムリミット外のため完走扱いは108名。前日のミラノ〜トリノから連戦出場となった中根英登(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)は55位でヨーロッパ最終戦を終えている。また、これまで17回グランツールに出場して全て完走しているアマエル・モワナール(フランス、アルケア・サムシック)がこのグラン・ピエモンテを最後に現役を引退。レース距離だけで17万キロ以上を走っている37歳が15年間のキャリアにピリオドを打った。
2位イバン・ソーサ(コロンビア、チームイネオス)、1位エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)、3位ナンス・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール) photo:RCS Sport



ミラノ〜トリノの翌日、イル・ロンバルディアの2日前というタイミングで開催された第103回グラン・ピエモンテ(元ジロ・デル・ピエモンテ)。その名の通りピエモンテ州を走る183kmのワンデークラシックで、スペルガ聖堂にフィニッシュした前日のミラノ〜トリノと同様に、キリスト教の聖地であるサントゥアリオ・ディ・オローパにフィニッシュ地点が置かれている。
ユネスコ世界遺産に指定されている巡礼地サクロモンテ(聖なる山)の一つで、1963年、1993年、1999年、2007年、2015年、2017年のジロ・デ・イタリアにも登場しているサントゥアリオ・ディ・オローパは登坂距離11.8km/平均勾配6.2%/最大勾配13%の登り。中でも1999年ジロ第15ステージ/オローパ山頂フィニッシュでのマルコ・パンターニ(イタリア)の走りが有名なエピソードとして語り継がれている。当時、残り8km地点でチェーンを落としたパンターニはチームメイトにアシストされてポジションを上げ、実に49人をごぼう抜きにしてステージ優勝を果たした。
秋晴れのこの日、UCIプロコンチネンタルチームのメンバーを中心に構成された6名による逃げをチームイネオスやUAEチームエミレーツが追いかける展開。ジロ覇者リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)やラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)といった有力選手は、2日後のイル・ロンバルディアに向けて温存するため中盤の補給ポイントでレースを降りている。


フィニッシュまで40kmを切り、標高775mのネルヴァ(登坂距離13.0km/平均勾配3.5%)の登りに差し掛かると逃げグループは崩壊。最後まで逃げていたステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス)をイネオストレインが追い抜いていく。チームイネオスはそのままメイン集団の先頭に陣取り、隊列を組んでオローパの登坂を開始した。

ソーサのハイペース牽引によってライバルたちはまた一人また一人と為す術なく千切れていく。粘っていたダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア、アスタナ)やダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ)、エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)も脱落。最後まで食らいついていたナンス・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール)も遅れ、残り1.5km地点でソーサの後ろからベルナルが加速した。
チームプレーの末にアタックし、独走に持ち込んだベルナル。ツール・ド・フランス総合優勝後、ジロ・デッラ・トスカーナ2位、ジロ・デッレミリア9位、ミラノ〜トリノ6位という成績を残していたベルナルがサントゥアリオ・ディ・オローパの聖堂前に独走フィニッシュした。


Velonの公開データによると、ベルナルは勾配10%の区間で1分28秒にわたって平均460Wを出力してライバルたちを引き離した。ベルナルのフィニッシュ手前7.5km(平均勾配7.7%)の登坂タイムは19分52秒。1999年にパンターニが記録した最速タイム18分33秒や、2017年トム・デュムラン(オランダ)の19分17秒には届いていない。
チームイネオスの若きコロンビア人クライマー(22歳と21歳)がワンツー勝利。「今日はイバン・ソーサが最高のアシストをしてくれた。もしかしたら今日は彼が最強だったかもしれない」と、ベルナルは2位に入ったソーサを讃えている。
「かつてパンターニが勝ったこの登りでイタリア国内初勝利を飾ることができた。ヨーロッパに移住して初めて住んだ場所から10kmほどしか離れていないこのオローパでの勝利は様々な感情をもたらしてくれる。このピエモンテ州には友人が多く、地元のように感じることができるんだ」。2016年にイタリアに移り住み、流暢なイタリア語を操るベルナルは第二の故郷での勝利を喜ぶ。「ロンバルディア前のコンディションに満足しているし、最高の成績を収めたいと思う。でもその前に、この勝利のおかげで落ち着いてシーズンを締めくくることができる。来年はジロ・デ・イタリアに出場したいけど、まずはコース発表を見てからチームと相談して決めたい」。
2位のソーサに続いて3位に入ったピーターズはジロ・デ・イタリアでステージ優勝を飾るとともに3日間マリアビアンカ(ヤングライダー賞ジャージ)を着用した25歳。7月の東京2020テストイベントで3位に入ったピーターズは「ジロでのステージ優勝と合わせて、今年はステップアップの1年になった。残り2kmを切ってからソーサがペースを上げて、最も勾配があるところでベルナルがアタック。そこからは3位を狙うことしかできず、自分のペースを保って走ったんだ」とコメントしている。
この日は127名がスタートして19名が途中リタイア。108名がフィニッシュにたどり着いたものの、23名がタイムリミット外のため完走扱いは108名。前日のミラノ〜トリノから連戦出場となった中根英登(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)は55位でヨーロッパ最終戦を終えている。また、これまで17回グランツールに出場して全て完走しているアマエル・モワナール(フランス、アルケア・サムシック)がこのグラン・ピエモンテを最後に現役を引退。レース距離だけで17万キロ以上を走っている37歳が15年間のキャリアにピリオドを打った。

グラン・ピエモンテ2019結果
1位 | エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス) | 4:24:16 |
2位 | イバン・ソーサ(コロンビア、チームイネオス) | 0:00:06 |
3位 | ナンス・ピーターズ(フランス、アージェードゥーゼール) | 0:00:08 |
4位 | エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:00:10 |
5位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ) | 0:00:11 |
6位 | マティアス・フランク(スイス、アージェードゥーゼール) | 0:00:40 |
7位 | ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア、アスタナ) | 0:00:46 |
8位 | ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、ネーリソットリ・セッレイタリア) | 0:00:47 |
9位 | クレマン・シャンプッサン(フランス、アージェードゥーゼール) | |
10位 | カルロス・ベローナ(スペイン、モビスター) | 0:00:49 |
55位 | 中根英登(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) | 0:08:57 |
text:Kei Tsuji
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