男子はニノ・シューター(スイス)、女子はヨランダ・ネフ(スイス)の勝利で幕が降りたMTB五輪プレ大会。「本戦に向けて良いイメージを掴めた」と言うシューターら男女上位陣、そして山本幸平ら日本勢の言葉を紹介する。



ニノ・シューター(スイス、優勝):「来年に向けて良いイメージを掴むことができた」

観客とのハイタッチで勝利を喜ぶニノ・シューター(スイス)観客とのハイタッチで勝利を喜ぶニノ・シューター(スイス) photo:So.Isobe
最終周回にアタックしようと決めていて、スタートラインを抜けてすぐアタック。少しリードを得たのでアタックを続け、最後はコレツキーとのスプリントを待つだけだった。序盤からバラけるかと思っていたのでレース展開的には少しサプライズ。先頭集団の力が拮抗していたので序盤でリードを得るのは難しかったと思う。

オフシーズンに入っているので、レースがどう動くか、そしてどう自分のカードを切っていくかを考えるばかりで、序盤は特に作戦というものはなかったんだ。ここ最近はイベントにゲスト参加することが多くて本来の練習を積めていなかったのも大きい。なるべく上手にレースをこなし、どうなるか見極めることが自分には大切だったんだ。

来年を見据える上で重要なプレ大会で勝つことができたので、すごく良いイメージをつかむことができた。コースレイアウトはかなり厳しく、そしてテクニカルなスーパーチャレンジングなものだった。

ヴィクトール・コレツキー(フランス、2位):「いつかニノを超えられると信じている」

先頭グループで走るヴィクトール・コレツキー(フランス)先頭グループで走るヴィクトール・コレツキー(フランス) photo:So.Isobe
とにかく速いレースだった。世界選手権とワールドカップが終わっているので全員のコンディションが下がっているけれど、それでもニノは強かった。テクニカルセクションの前には位置取り争いのスプリントがあったし、とにかく今日のレースで重要なのは先頭に残ることだった。

今日は中盤でシフト操作をミスして15秒ほど失った場面もあったけれど、先頭に復帰するのは難しくなかったんだ。レース中盤は誰もが疲れを溜めていたので決定的な差が生まれることもなく集団のままレースが進んだ。

ただ最後のスプリントでは中盤のミスで脚を削ったことが響いてしまった。それでも銀メダルを獲得できた。ニノのスプリントは非常に強いけど、いつか彼を超えられると信じているよ。

ルカ・ブライドット(イタリア、3位):「次々とアタックがかかるレースだった」

岩場を越えるルカ・ブライドット(イタリア)岩場を越えるルカ・ブライドット(イタリア) photo:So.Isobe
非常にテクニカルな難しいレースだった。次々とアタックがかかる状況だったのでレース中はとにかく集中力を切らさないように、先頭グループから遅れないように最大限注意を払った。オフシーズンに入っているので、最初はどれだけ走れるか分からなかったけれど、結果的に自分のパフォーマンスには満足しているよ。観客の応援も大会の雰囲気もすごく良かった。

山本幸平(35位):「来年までに必要なことを考えながら走った」

集中した表情でウォームアップを行う山本幸平集中した表情でウォームアップを行う山本幸平 photo:So.Isobe
ほぼオフシーズンに突入しているのでトップコンディションではなく、成績というよりも自分のペースで走った時に何を感じるか、何を感じて練習に取り入れていくかというのを考える時間に充てようと考えていました。その意味では自分自身最後までしっかり追い込めました。

このコースでは短時間で登り切る急勾配が何度も続くので、そこに対するインターバルと、下りへの対応力が必要です。今日のレースはドライコンディションでしたが、金曜日の午前中は雨でスリッピーでした。本番でもひとたび雨が触ればライン取りなどはかなりシビアになるでしょう。

「何度も続く短いインターバルとテクニック面の向上が必要」「何度も続く短いインターバルとテクニック面の向上が必要」 photo:So.Isobe
日本では雨の中山を走ることは禁忌ということになっていますが、本番を考えればレインコンディションでスキル対策もしなければなりません。例えばどこかの施設などと協力して、そうした雨のスキル練習も行う必要がありますし、そうでなければ世界とは戦えず、蚊帳の外に追いやられるばかりです。しかし、インターバルと下りへの対応力を鍛えれば、しっかりと世界と戦うことはできると思います。今は当然世界との差があるのは確かですが、ここから如何に(自分自身を)少しずつ高めていくのかというのが課題です。

コースはとにかく休み所のなく、テクニカルな部分が盛りだくさんなレイアウト。普段のワールドカップコースであればもう少し"流れる区間"があるのですが、今回は短い急勾配の直後にハードな下りがやってくる。

来年の本番は真夏ですから、暑さと湿度は今回とは全く違う、もっともっとタフなコンディションになることが予想できますよね。身体をいかに冷やすかという面も考えなければいけません。今現在はどこで引退、とは決めていませんが、本気で取り組むのは東京五輪が最後になるでしょう。

ヨランダ・ネフ(スイス、優勝):「コースはワールドカップ・スタンダード」

1位ヨランダ・ネフ(スイス)、2位シーナ・フライ(スイス)、3位アン・テルプストラ(オランダ)1位ヨランダ・ネフ(スイス)、2位シーナ・フライ(スイス)、3位アン・テルプストラ(オランダ) photo:So.Isobe
今日は本当に調子が良くて予想以上に良いレースになった。コースには厳しい登りが連続するので(他人のペースに惑わされず)自分のペースでレースを進められたことがプラスに働いた。最後まで何が起こるか全く分からないので気を抜かずに走り続けた。コースのテクニカルセクションは楽しみながら走れた。

このコースは私たちが普段走っているワールドカップコースと同じで、スタンダードと言えるものだった。オリンピックコースはかなり特殊なレイアウトが多いけれど、修善寺のコースは自然の地形を上手く使った完成度の高い、リアルなMTBコース。コンパクトな会場に見所を詰め込んでいるので観客にとっても良い作りだと思う。

「スイスの強さは全員が互いに高め合っていること」「スイスの強さは全員が互いに高め合っていること」 photo:So.Isobe
(スイスチームが上位を独占したことに対して)私たちの強さは団結力の強さ。シーズン中なんどもトレーニングキャンプを行っているし、ナショナルチームのコーチは技術面も含めて素晴らしいレクチャーをしてくれる。お互いが敵視しあうのではなく、お互いのために協力しながら全体レベルの底上げができているのが強さの秘訣。

とにかく今日勝てたことが本当に嬉しい。リオ五輪の時はテストイベントをスキップしたけれど、今回はここにいて、しかも最高の結果を出すことができた。来年の本戦に向けて良い感触を掴めたのが何よりも嬉しい。

アン・テルプストラ(オランダ、2位):「来年に向けて必要なことがわかった」

アン・テルプストラ(オランダ)アン・テルプストラ(オランダ) photo:So.Isobe
スタートはとにかくカオス。最初のロックガーデンで目の前の選手がミスをしたので降車を強いられてしまい、次のセクションでも同じ選手がミス。それを見て「例え脚を使ってでも順位を上げなきゃいけない」と感じて前に上がった。1周目の、2箇所あるロックガーデンの間にある急勾配の登りで3番手に。そこからシーナが追いついてきて二人でランデブーしたけれど、最終ラップで先行されてしまった。

今シーズンはとてもハードで、ここ2週間ほど良いレースができていなかったので、正直に言えば今日走るのはかなり不安だった。それでもレース中は予想よりもコンディションが戻ってきた。モチベーション的にはワールドカップシーズン中と比べて下がっていることは事実だけど、それでもなお3位に入れたことは大きな意味がある。

でも今日一番の収穫は、来年の五輪本戦に向けて準備することを洗い出せたこと。例えば今回のコースに長い登りは無いので、3分、4分ほどの登坂に対する練習を積んでもあまり意味がない。大切なのはテクニックはもちろん、数十秒の登りを何度も何度もこなす能力。それとシクロクロスにも似たオフキャンバーセクションはあまりワールドカップコースにはないので、そこでスムーズな走りができれば決して少なくない差がつくと思う。本戦までに楽しみながら自分のコンディションを上げていきたい。

松本璃奈(マイナス1ラップ34位):「まだまだ。本番の見据えて練習を重ねる」

集団内で急勾配の登りを走る松本璃奈集団内で急勾配の登りを走る松本璃奈 photo:So.Isobe
まだまだですね。完走まで本当にあと少しだったので、もっともっと練習を重ねて本番で差を埋めていきたいと思います。今日走って感じたのはテクニック面の差。下りはもちろんですが、登りでも石や砂が浮いていたのでとても難しかった。上手くトルクを使って激坂を登る練習を重ねないといけません。あと1年、本番を見据えて練習を重ねていきます。

text&photo:So.Isobe
photo:Gakuto Fujiwara