9月初旬にドイツで開催された世界最大規模の自転車ショー「ユーロバイク」。1400社ものブランドが集結するこの展示会の中から、エディ・メルクス、3T/THMカーボネス、ジロ、コラテック、マックオフをピックアップして紹介しよう。



エディ・メルクス 525がモデルチェンジ、ツールでデビューしたスチールフレームも

ロメン・バルデがツール第21ステージで使用したマイヨアポア仕様の特別バイクロメン・バルデがツール第21ステージで使用したマイヨアポア仕様の特別バイク
ツールの第21ステージでオリバー・ナーセンが使用したCorsaツールの第21ステージでオリバー・ナーセンが使用したCorsa
アージェードゥーゼール・ラモンディアールのバイクサプライヤーを今年から務めるベルギーのエディ・メルクス。ツール・ド・フランスでは新しくラインアップされたStockeu69をメインバイクとして使用。Stockeu69はリムブレーキ仕様のみ展開という潔さがあり、まさにヒルクライマーのために用意したといっても過言ではないバイクとなっている。

ラインアップから伝わる意志に応えるようにして、ロマン・バルデ(フランス)はStockeu69を使用してツールの山岳賞を獲得。ユーロバイクでは第21ステージで用意されたマイヨアポア仕様のチームバイクを展示した。

新型525のリムブレーキモデル。シフトケーブルなどがフル内装とされている新型525のリムブレーキモデル。シフトケーブルなどがフル内装とされている
新型525のディスクブレーキモデル新型525のディスクブレーキモデル ケーブルは一切露出されていないケーブルは一切露出されていない


また、アージェードゥーゼールはツール第21ステージで別のバイクでも話題を呼んでいた。それはベルギーメイドのスチールバイク「Corsa」をオリバー・ナーセン(ベルギー)が使用していたのだ。そのバイクもユーロバイクブースに並べられており、こちらはゼッケン付きであるため実際に使用したマシンだと思われる。

バイクのニュースは既に国内でも発表されているが、フラッグシップの1つ「525」のモデルチェンジだ。新型525は従来型よりルックスに大きな変化は無いが、リムブレーキモデルは15%もの軽量化を実現していることが特徴。ケーブルの内装化を進めており、リムブレーキモデルはシフト系統とリアブレーキケーブルを内装化、ディスクブレーキモデルはフル内装を可能としている。

エディ・メルクスより登場したスチールグラベルロードのHAGELANDエディ・メルクスより登場したスチールグラベルロードのHAGELAND


ジロ  オフロードやグラベル用ヘルメットとシューズが多数登場

ロード、オフロードどちらのカテゴリーでも存在感を示すジロロード、オフロードどちらのカテゴリーでも存在感を示すジロ
ロード、オフロードどちらのカテゴリーでも存在感を示すジロ。ロードでは今シーズン供給先を増やし、ディメンションデータ、グルパマFDJ、トタル・ディレクトエネルジーの選手たちがAETHER MIPSなどを着用中。一方で、グラインデューロの仕掛け役であったり、アメリカのグラベルカルチャーを牽引するブランドの1つでもある。

ヘルメットではグラベルやMTBなどオフロード系モデルが数多く登場している。耳まで覆う形状のTYRANT MIPSは、帽体形状での安全性に加えMIPSスフェリカルを採用することで、ライダーの頭部を守ることを優先して作られたモデルだ。安全性を高めるテクノロジーが多く採用されているため、激しいダートライドでも安心感を与えてくれるはず。ダートジャンプだけではなく、パークをアグレッシブに攻めるシチュエーションにピッタリだ。

ダートジャンプやパークライドにぴったりなTYRANTダートジャンプやパークライドにぴったりなTYRANT
RADIXはバイザー付きのオフロードモデルRADIXはバイザー付きのオフロードモデル ロードやグラベルシーンにぴったりなAGILISロードやグラベルシーンにぴったりなAGILIS


RADIXはバイザー付きのオフロードモデル。ベンチレーションホールが非常に多く設けられていることが特徴で、装備されているバイザーはベンチレーションを塞がないようにデザインされていることに加え上下に調整することが可能。もちろんMIPS搭載モデルだ。後頭部までシェルで覆うスタンダードなオフロードヘルメットの新作となっている。

AGILISはロードとグラベルどちらにもマッチするデザインのミドルグレード。後頭部を少し張り出した形状とすることで、プロテクション性能を確保したモデルだ。非常に多くのベンチレーションホールを備えており、通気性にも期待ができるだろう。MIPS付きのミドルグレードということで、幅広いサイクリストにメリットがありそうなヘルメットだ。

新型VENTANAはBOAクロージャータイプとシューレースタイプの2種類が用意される新型VENTANAはBOAクロージャータイプとシューレースタイプの2種類が用意される
IMPERIALと同じアッパー素材を採用したEMPIRE SLXIMPERIALと同じアッパー素材を採用したEMPIRE SLX
シューズのニューモデルというとIMPERIALは今年発表された大きなニュース。IMPERIALと同じ素材を使用したシューレースモデル「EMPIRE SLX」がブースに並べられていた。ジロはIMPERIAL、EMPIRE SLX、PROLIGHT TECHLACEなど軽量モデルが非常に充実してきているようだ。

オフロードシューズの新型VENTANAはBOAクロージャータイプとシューレースタイプの2種類が用意される。つま先まで覆うアウトソールはSensorラバーを使用することで高いグリップ力を得ているという。また、ソールが柔軟に作られているため歩きやすさも獲得。RUMBLEなど歩行性に優れるシューズをジロはリリースしているため、VENTANAでも歩きやすさに期待できるだろう。クリート部分にはナイロンシャンクをいれることで、剛性を確保している。



3T/THMカーボネス ユニークな展示や軽量コンフォートシートピラーをリリース

3Tが用意したカーボングラベルロードの先駆的存在EXPLORO3Tが用意したカーボングラベルロードの先駆的存在EXPLORO
3Tのブースはフレームにライブペインティングを施すデモンストレーション展示が多くの人を呼んだ。ハンドペイントを行っていくため、フレーム1本全体を描ききるのには想像以上の時間が必要で、3Tのブースの近くを通るたびにどのくらい進んだのか見てみるというのが、ユーロバイク取材の楽しみ。ペイントが完了したフレームはブースの壁に飾られるため、1つずつ増えていくのも3Tブースをチラリと見に行ってしまう理由の1つだった。

3Tのフレームと言えばエアロロードのSTRADAとEXPLORO。ライブペインティングが行われていたのはSTRADAの方で、こちらのバイクはTHMカーボネスやライトウェイトのパーツを組み付け6.130kgという重量を実現したデモンストレーション展示も行われていた。

EXPLOROはカーボングラベルバイクの先駆け的存在。レースやアドベンチャーライドを含めグラベルシーンが盛り上がってきており、どちらも対応できるEXPLOROは改めて注目したいフレームの1つだ。いずれも室内展示だけではなく、デモエリアで試せるようになっており、グラベルに興味のある関係者たちが多く試していたようだ。

THMカーボネスから登場した軽量コンフォートシートピラー「MANDIBULA」THMカーボネスから登場した軽量コンフォートシートピラー「MANDIBULA」 軽量パーツで組み上げ、6.13kgという重量のSTRADA軽量パーツで組み上げ、6.13kgという重量のSTRADA 3TのロードバイクSTRADA3TのロードバイクSTRADA


また、3Tと合わせて並べられていたTHMカーボネスからは、軽量コーフォタブルシートポスト「MANDIBULA」がリリースされる。THMカーボネスは従来のコンフォートサドルがクランプ部からシートまでの距離が離れるにつれて柔軟性が増していく構造に着目。シートポストの突き出し量に影響されず、狙った快適性と軽量性を実現することがTHMカーボネスの目標として開発に取り組んだという。

その結果生み出されたのは、コンフォートゾーンとパワーゾーンの2層に分けられた構造。パワーゾーンで非常に高い剛性と軽量性を追求することで、ポストの突き出し量に影響されないスペックを獲得。対してコンフォートゾーンは二又に分かれた構造とすることで、衝撃吸収性を実現しているという。また、この構造は円周方向に変形するのではなく、水平方向に変形することがポイントだとスタッフは言う。気になる重量は159g。

3Tブースではライブペインティングを行っていた3Tブースではライブペインティングを行っていた


コラテック 多彩なラインアップを揃えるドイツの総合ブランド

Revolution iLink SLというフルサスモデルがMTBエリミネーターで世界選手権を制覇Revolution iLink SLというフルサスモデルがMTBエリミネーターで世界選手権を制覇
ユーロバイクを訪れると日本では見かけないブランドが多数あることに気がつくが、本国では非常に多彩なラインアップを揃えていることを知るブランドもある。その1つがドイツの総合自転車ブランドのコラテックだ。日本国内ではスポーツバイクを中心に展開しているが、ドイツ本国では軽快車のようなバイクが多数用意されており、ブランドの大きさを知ることができる。

MTBのラインアップも充実している上に、Revolution iLink SLというフルサスモデルがMTBエリミネーターで世界選手権を制覇するなど性能も折り紙付き。国内でもMTBテクノロジーを活用したSHAPEなどが展開しているため、その性能を受け継いでいることを期待できるはずだ。

コラテックはE-BIKEラインアップが非常に充実しているコラテックはE-BIKEラインアップが非常に充実している コラテックはシティバイクも充実している。もちろんE-BIKEだコラテックはシティバイクも充実している。もちろんE-BIKEだ

グラベルロードのA-ROADもE-BIKE化を果たしているグラベルロードのA-ROADもE-BIKE化を果たしている ロードバイクはCCT EVOやTEAMが主力ロードバイクはCCT EVOやTEAMが主力


コラテックはE-BIKEに非常に注力している様子で、ブースに展示しているバイクの殆どが電動アシストユニットを搭載している。シティ系やMTBも例に漏れない。昨年より日本でも展開しているグラベルロードのA-ROADもE-BIKE化しており、ドイツ国内でE-BIKEの人気が非常に高いと伺える。

もちろんディスクブレーキ化を果たしたCCT EVOやDOLOMITIなど日本でおなじみのバイクたちもお馴染みの存在。日本で展開する2020年モデルのロードバイクはCCT TEAMのディスクブレーキモデルやR.T.CARBONだという。

CCT EVOにはディスクブレーキモデルが登場しているCCT EVOにはディスクブレーキモデルが登場している


マックオフ 25周年を迎えるブリティッシュ・ケミカルブランド

ショッキングピンクを使い目を引くマックオフのブースショッキングピンクを使い目を引くマックオフのブース
創業25周年を記念してマックオフペイントが施されたバイク創業25周年を記念してマックオフペイントが施されたバイク ディスクブレーキローターを洗浄液などから守るプロテクターディスクブレーキローターを洗浄液などから守るプロテクター


ショッキングピンクを使い、ひときわ目立つブースを展開していたのはイギリスのケミカルブランドのマックオフだ。創業から25周年を迎える老舗であり、サーヴェロのS5をブースと同じショッキングピンクと縞模様でコーディネートした特別バイクを用意していた。

ファーストインプレッションはイケイケなブランドであるのは間違いないが、製品の開発は全てインハウスで行うという堅実な部分も持つ。その開発能力についてはチームイネオスとの協業や、ブラドリー・ウィギンズによるアワーレコード更新もサポートしていたというストーリーが裏付けている。

前面に推されていたのはチューブレスタイヤ関連プロダクトだ前面に推されていたのはチューブレスタイヤ関連プロダクトだ
シーラントリムーバーなども用意されているシーラントリムーバーなども用意されている 日本にぴったりな水が必要ないフレーム洗浄剤日本にぴったりな水が必要ないフレーム洗浄剤


そんなマックオフが前面に押し出して展示していたのはチューブレス関連プロダクト。懐かしさを感じるカセットテープの絵を描いた箱に入れられるリムテープやシーラント剤(DICHTMITTELという言葉がそれを表しているという)、応急処置用タイヤプラグ、シーラントリムーバーなど一式だ。これらがまとめられたキットも用意している。数ある定番製品ではなく、チューブレスタイヤ関連プロダクトが推されているところに、欧州で今求められているものがそれだということを伝えている。

マックオフのスタッフによると日本のマーケットにおすすめなのは「WATERLESS WASH」だという。製品名の通り、水で洗い流す必要のないバイク洗浄剤であり、「日本の住宅環境にあってるでしょ?」とはスタッフの言葉。筆者も例にもれず外に水道がないアパート暮らしなので、一度試してみたいと思うプロダクトの1つだ。


text&photo:Gakuto Fujiwara

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