2019/08/29(木) - 08:24
大会最初の1級山岳ハバランブレ天文台山頂フィニッシュが設定されたブエルタ・ア・エスパーニャ第5ステージで山岳賞ジャージを着るアンヘル・マドラソ(スペイン、ブルゴスBH)が逃げ切り勝利。総合ライバルをふるい落としたミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)が首位に返り咲いた。
ブエルタ・ア・エスパーニャに登場する合計8つの山頂フィニッシュのうち3つが第5ステージから連続。しかも第5ステージは早速1級山岳の本格的な山頂フィニッシュが設定されており、開幕から5日目にして早くもマイヨロホ争いが始まった。カテゴリー2級と3級の山岳をこなしながら内陸部に向かい、最後は標高1,950mの1級山岳オブゼルバトリオ・アストロフィジコ・デ・ハバランブレを駆け上がる。その名の通り頂上に天体観測所(2013年完成)のあるブエルタ初登場の登りは全長11.1km/平均勾配7.8%で、フィニッシュ5km手前には500mにわたって平均勾配が16%に達する激坂区間も。
この総合争いにおいて重要な山岳ステージでブルゴスBHが4日連続となる逃げを試みた。山岳賞ジャージを着るアンヘル・マドラソ(スペイン、ブルゴスBH)は大会3回目のエスケープ。チームメイトのイェツセ・ボル(オランダ、ブルゴスBH)とホセ・エラダ(スペイン、コフィディス)とともにメイン集団とのタイム差を広げ始めた。
逃げグループを形成した3名
ホセ・エラダ(スペイン、コフィディス)総合13分21秒遅れ
アンヘル・マドラソ(スペイン、ブルゴスBH)総合16分21秒遅れ
イェツセ・ボル(オランダ、ブルゴスBH)総合21分19秒遅れ
マイヨロホ擁するサンウェブがメイン集団を牽引したものの70km地点でタイム差は10分25秒まで拡大する。総合で13分以上遅れている先頭3名の逃げ切りを実質的に容認した状態。ステージ後半にかけてUAEチームエミレーツが集団牽引に加わったがタイム差が劇的に縮まることはなかった。
マドラソはステージ前半の2つのカテゴリー山岳で順調にポイントを伸ばしたものの、後半にかけて徐々にエラダとボルから遅れることが多くなる。その度にマドラソは先頭に合流し、メイン集団から11分のリードを持ったまま残り30kmへ。チームカーと接触してバランスを崩したマドラソがエラダとともに落車しかけるシーンも。
ユンボ・ヴィズマやチームイネオス、サンウェブが牽引するメイン集団に対して先頭3名は9分のリードを維持したまま最後の1級山岳オブゼルバトリオ・アストロフィジコ・デ・ハバランブレに突入。急勾配区間を含む登りで、逃げグループとメイン集団のタイム差は概ね1km/1分弱のペースで縮まり始める。
全長11.1km/平均勾配7.8%の登りでユンボ・ヴィズマ、サンウェブ、ボーラ・ハンスグローエ、アスタナがペースを刻み、徐々に人数を減らしていくメイン集団。5分遅れで残り4kmに差し掛かると、ヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーションファースト)の強力な牽引によってマイヨロホのニコラス・ロッシュ(アイルランド、サンウェブ)が脱落。同じタイミングでアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)がアタックした。
世界チャンピオンの加速に反応できたのはセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィズマ)とプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)、タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)だけ。そこからさらに加速したロペスが単独で抜け出すことに成功する。
バルベルデとログリッチェがロペスを追いかけるその後方ではナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)やエステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)、ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)らが追走グループを形成したが、ヤングライダー賞ジャージを着るロペスの背中は離れていった。
先頭ではマドラソの数回の脱落と合流を経て、3名が付かず離れずのまま残り2km。快調なロペスが1分20秒後方にまで迫る中、残り1kmを切ってから先頭に合流したマドラソがカウンターアタックする。ここにエラダが反応したが、フィニッシュ手前の急勾配区間で再び加速したマドラソが完全に抜け出すことに成功した。
山岳賞ジャージのマドラソが今大会最初の1級山岳山頂フィニッシュを制覇。チームメイトのボルが10秒遅れのステージ2位に入り、連日逃げているブルゴスBHがワンツー勝利を達成した。マドラソから47秒遅れで山頂にたどり着いたロペスは、バルベルデとログリッチェから12秒、その他のライバルたちから40秒以上のタイムを奪うことに成功している。
「サイクリストとして最高の勝利。夢が叶った。山岳賞ジャージが自分の背中を押してくれた。最初は山岳ポイント獲得のための逃げだったけど、大きなタイム差が開いたのでそのまま逃げる作戦に切り替えたんだ。チームからは明日のステージに向けて力を温存するように言われていたけど『いやいやいや、今日狙っていく。今日できることは今日するんだ』と彼らに言った」と自身初のステージ優勝を飾ったマドラソは語る。
2009年にケースデパーニュ(現モビスター)でプロ入りし、2014年から3年間カハルラル、2017年から2年間デルコ・マルセイユ、そして2019年からブルゴスBHに所属している31歳のマドラソ。ブエルタ出場はこれが4回目で、2015年の第8ステージと第18ステージで敢闘賞を獲得している。「残り50km地点でエラダがペースを上げたところで脱落したけど、チームメイトのイェツセ・ボルのおかげで先頭に復帰。残り1kmで先頭に追いついた時、ホセ(エラダ)が疲れているように見えたので、イェツセのために加速した。その結果、ステージ優勝が回ってきた」。2018年にUCIプロコンチネンタルチーム登録し、同年ブエルタに初出場したブルゴスBHにとってもステージ初優勝となった。
2分17秒遅れたロッシュに代わって表彰台でマイヨロホを受け取ったのはロペス。総合上位陣の中で最も鋭い登坂力を見せた25歳のコロンビアンクライマーは「登りの麓はハイスピードだったけど調子は良かった。ライバルたちがアシストを失った段階でアタックしようと決めていたんだ。ログリッチェとバルベルデがどう反応するかを見たくてアタック。調子が良い時はいつでも観る人を楽しませるショーを見せたいと思っている。単独になってからは全力走行した」とコメントする。
大会最初の山頂フィニッシュを終えて、ロペスはログリッチェから14秒、キンタナから23秒のリードを得ている。「結果的にライバルたちから大きなタイム差は奪えなかったけど、結果には満足している。まだまだレースは長いけどここまで素晴らしい展開になっている。明日以降もタイム差は広がるはず。ブエルタはここからどんどん厳しくなっていく」と語るロペスを中心にマイヨロホ争いが繰り広げられることになりそうだ。
ブエルタ・ア・エスパーニャに登場する合計8つの山頂フィニッシュのうち3つが第5ステージから連続。しかも第5ステージは早速1級山岳の本格的な山頂フィニッシュが設定されており、開幕から5日目にして早くもマイヨロホ争いが始まった。カテゴリー2級と3級の山岳をこなしながら内陸部に向かい、最後は標高1,950mの1級山岳オブゼルバトリオ・アストロフィジコ・デ・ハバランブレを駆け上がる。その名の通り頂上に天体観測所(2013年完成)のあるブエルタ初登場の登りは全長11.1km/平均勾配7.8%で、フィニッシュ5km手前には500mにわたって平均勾配が16%に達する激坂区間も。
この総合争いにおいて重要な山岳ステージでブルゴスBHが4日連続となる逃げを試みた。山岳賞ジャージを着るアンヘル・マドラソ(スペイン、ブルゴスBH)は大会3回目のエスケープ。チームメイトのイェツセ・ボル(オランダ、ブルゴスBH)とホセ・エラダ(スペイン、コフィディス)とともにメイン集団とのタイム差を広げ始めた。
逃げグループを形成した3名
ホセ・エラダ(スペイン、コフィディス)総合13分21秒遅れ
アンヘル・マドラソ(スペイン、ブルゴスBH)総合16分21秒遅れ
イェツセ・ボル(オランダ、ブルゴスBH)総合21分19秒遅れ
マイヨロホ擁するサンウェブがメイン集団を牽引したものの70km地点でタイム差は10分25秒まで拡大する。総合で13分以上遅れている先頭3名の逃げ切りを実質的に容認した状態。ステージ後半にかけてUAEチームエミレーツが集団牽引に加わったがタイム差が劇的に縮まることはなかった。
マドラソはステージ前半の2つのカテゴリー山岳で順調にポイントを伸ばしたものの、後半にかけて徐々にエラダとボルから遅れることが多くなる。その度にマドラソは先頭に合流し、メイン集団から11分のリードを持ったまま残り30kmへ。チームカーと接触してバランスを崩したマドラソがエラダとともに落車しかけるシーンも。
ユンボ・ヴィズマやチームイネオス、サンウェブが牽引するメイン集団に対して先頭3名は9分のリードを維持したまま最後の1級山岳オブゼルバトリオ・アストロフィジコ・デ・ハバランブレに突入。急勾配区間を含む登りで、逃げグループとメイン集団のタイム差は概ね1km/1分弱のペースで縮まり始める。
全長11.1km/平均勾配7.8%の登りでユンボ・ヴィズマ、サンウェブ、ボーラ・ハンスグローエ、アスタナがペースを刻み、徐々に人数を減らしていくメイン集団。5分遅れで残り4kmに差し掛かると、ヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーションファースト)の強力な牽引によってマイヨロホのニコラス・ロッシュ(アイルランド、サンウェブ)が脱落。同じタイミングでアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)がアタックした。
世界チャンピオンの加速に反応できたのはセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィズマ)とプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)、タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)だけ。そこからさらに加速したロペスが単独で抜け出すことに成功する。
バルベルデとログリッチェがロペスを追いかけるその後方ではナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)やエステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)、ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)らが追走グループを形成したが、ヤングライダー賞ジャージを着るロペスの背中は離れていった。
先頭ではマドラソの数回の脱落と合流を経て、3名が付かず離れずのまま残り2km。快調なロペスが1分20秒後方にまで迫る中、残り1kmを切ってから先頭に合流したマドラソがカウンターアタックする。ここにエラダが反応したが、フィニッシュ手前の急勾配区間で再び加速したマドラソが完全に抜け出すことに成功した。
山岳賞ジャージのマドラソが今大会最初の1級山岳山頂フィニッシュを制覇。チームメイトのボルが10秒遅れのステージ2位に入り、連日逃げているブルゴスBHがワンツー勝利を達成した。マドラソから47秒遅れで山頂にたどり着いたロペスは、バルベルデとログリッチェから12秒、その他のライバルたちから40秒以上のタイムを奪うことに成功している。
「サイクリストとして最高の勝利。夢が叶った。山岳賞ジャージが自分の背中を押してくれた。最初は山岳ポイント獲得のための逃げだったけど、大きなタイム差が開いたのでそのまま逃げる作戦に切り替えたんだ。チームからは明日のステージに向けて力を温存するように言われていたけど『いやいやいや、今日狙っていく。今日できることは今日するんだ』と彼らに言った」と自身初のステージ優勝を飾ったマドラソは語る。
2009年にケースデパーニュ(現モビスター)でプロ入りし、2014年から3年間カハルラル、2017年から2年間デルコ・マルセイユ、そして2019年からブルゴスBHに所属している31歳のマドラソ。ブエルタ出場はこれが4回目で、2015年の第8ステージと第18ステージで敢闘賞を獲得している。「残り50km地点でエラダがペースを上げたところで脱落したけど、チームメイトのイェツセ・ボルのおかげで先頭に復帰。残り1kmで先頭に追いついた時、ホセ(エラダ)が疲れているように見えたので、イェツセのために加速した。その結果、ステージ優勝が回ってきた」。2018年にUCIプロコンチネンタルチーム登録し、同年ブエルタに初出場したブルゴスBHにとってもステージ初優勝となった。
2分17秒遅れたロッシュに代わって表彰台でマイヨロホを受け取ったのはロペス。総合上位陣の中で最も鋭い登坂力を見せた25歳のコロンビアンクライマーは「登りの麓はハイスピードだったけど調子は良かった。ライバルたちがアシストを失った段階でアタックしようと決めていたんだ。ログリッチェとバルベルデがどう反応するかを見たくてアタック。調子が良い時はいつでも観る人を楽しませるショーを見せたいと思っている。単独になってからは全力走行した」とコメントする。
大会最初の山頂フィニッシュを終えて、ロペスはログリッチェから14秒、キンタナから23秒のリードを得ている。「結果的にライバルたちから大きなタイム差は奪えなかったけど、結果には満足している。まだまだレースは長いけどここまで素晴らしい展開になっている。明日以降もタイム差は広がるはず。ブエルタはここからどんどん厳しくなっていく」と語るロペスを中心にマイヨロホ争いが繰り広げられることになりそうだ。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2019第5ステージ結果
1位 | アンヘル・マドラソ(スペイン、ブルゴスBH) | 4:58:31 |
2位 | イェツセ・ボル(オランダ、ブルゴスBH) | 0:00:10 |
3位 | ホセ・エラダ(スペイン、コフィディス) | 0:00:22 |
4位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:00:47 |
5位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 0:00:59 |
6位 | プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) | |
7位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 0:01:29 |
8位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | 0:01:41 |
9位 | セップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィズマ) | |
10位 | エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット) | 0:01:46 |
11位 | ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:01:52 |
12位 | ピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール) | 0:02:05 |
13位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト) | 0:02:11 |
14位 | ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サンウェブ) | 0:02:17 |
18位 | ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:02:32 |
20位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) | |
25位 | ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ) | 0:02:59 |
90位 | 新城幸也(日本、バーレーン・メリダ) | 0:11:47 |
DNF | グレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) |
個人総合成績
1位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 18:55:21 |
2位 | プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) | 0:00:14 |
3位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | 0:00:23 |
4位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 0:00:28 |
5位 | ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サンウェブ) | 0:00:57 |
6位 | リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト) | 0:00:59 |
7位 | エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット) | 0:01:17 |
8位 | ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:01:18 |
9位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 0:01:49 |
10位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) | 0:01:50 |
ポイント賞
1位 | サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) | 45pts |
2位 | ファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ) | 34pts |
3位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | 33pts |
山岳賞
1位 | アンヘル・マドラソ(スペイン、ブルゴスBH) | 33pts |
2位 | イェツセ・ボル(オランダ、ブルゴスBH) | 11pts |
3位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 6pts |
ヤングライダー賞
1位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 18:55:21 |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 0:01:49 |
3位 | セルジオ・イギータ(コロンビア、EFエデュケーションファースト) | 0:02:40 |
チーム総合成績
1位 | サンウェブ | 41:19:06 |
2位 | EFエデュケーションファースト | 0:00:02 |
3位 | モビスター | 0:00:06 |
text:Kei Tsuji
photo:CorVos
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