男子チャンピオン優勝の中村俊介、女子優勝の牧瀬翼がともに連覇、そして2つの大会新記録が誕生したマウンテンサイクリングin乗鞍2019。ヒルクライムイベントの元祖的な存在として人気の大会の熱戦の模様をレポート。


盛夏で白の面積を減らした大雪渓前を行くサイクリストたち盛夏で白の面積を減らした大雪渓前を行くサイクリストたち photo:Makoto.AYANO
8月25日(日)に長野県松本市で行われたマウンテンサイクリングin乗鞍2019は、標高2,716mと国内の道路における最高標高地点を有する乗鞍エコーラインを登るヒルクライムレースだ。国内最強のアマチュア山岳王を決定するチャンピオンクラスには、今年も全国の有力クライマーたちが集結した。

残り4kmで森林限界を越えるつづら折れを行くサイクリストたち残り4kmで森林限界を越えるつづら折れを行くサイクリストたち photo:Makoto.AYANO
目指すは2716mのフィニッシュ地点目指すは2716mのフィニッシュ地点 photo:Makoto.AYANO
松本市の乗鞍観光センターをスタートし、乗鞍エコーラインを走り長野・岐阜県境の峠をゴールとする全長20.5km、獲得標高差1,260mの難関山岳ルートを4,475名が駆け登った。

チャンピオンクラス 中村俊介が連覇。54分41秒のコースレコード樹立

兼松大和(Team Green Road)とたなか(エントリー名の通称/グランペール)が序盤から急激にペースを上げ、スタートから2kmは超ハイペースな展開が続く。ゴンドラの下を通過する頃までには先頭集団は16人ほどまでに小さくなっていた。

ラスト1km、中村俊介(SEKIYA)、森本誠(GOKISO)、梅川陸(大泉愛輪会)の3人の先頭グループラスト1km、中村俊介(SEKIYA)、森本誠(GOKISO)、梅川陸(大泉愛輪会)の3人の先頭グループ photo:Makoto.AYANO
ゴールまで残り7.5km地点の冷泉小屋の時点で先頭グループは中村俊介(SEKIYA)、森本誠(GOKISO)、梅川陸(大泉愛輪会)、加藤大貴(COW GUMMA)の4人にまで絞られ、ゴールまで残り4km地点手前で梅川のアタックで加藤が先頭集団から脱落。ラスト2km地点の大雪渓で先頭集団では中村がアタックを繰り返しペースを上げ、梅川が遅れてしまうが、粘りの走りで先頭に食らいついた。勝負はこの3人の争いに絞られる。

フィニッシュ200m手前で競り合う中村俊介(SEKIYA)と森本誠(GOKISO)フィニッシュ200m手前で競り合う中村俊介(SEKIYA)と森本誠(GOKISO) photo:Makoto.AYANO
スプリント勝負に持ち込みたくない梅川がラスト1km地点でアタックするが、中村と森本はふるい落とせなかった。残り400mで中村が先行しつつ、残り200mで森本がスプリント開始。それを冷静にフォローした中村が、ラスト50mで森本の前に出た。追い越しを防ぐパイロン区間にギリギリで先行した中村は、そのままスプリントを制し、昨年に続き2連覇を飾った。中村のタイム54分41秒959は、9年前に森本誠が出した歴代最高記録を27秒塗り替える大会新記録となった。

フィニッシュ直前で中村俊介(SEKIYA)が森本誠(GOKISO)を交わして前に出るフィニッシュ直前で中村俊介(SEKIYA)が森本誠(GOKISO)を交わして前に出る photo:Makoto.AYANO
中村「連覇することができて嬉しいのと、ひと安心した2つの気持ちでいっぱいですね。去年優勝したことで、今大会に向けて気負わないように1年間を過ごしていくのが大変でした。去年と同じように準備するのが難しいので今年は今年で気持ちを作っていきました。去年と比べると最後の仕上げに取り掛かるのが遅かったので、ぎりぎり間に合ったという感じですね。去年は大会1周間前に早く仕上がりすぎて大会までピークを維持できるかが不安でした。今年もなんとか優勝できてよかった」

チャンピオンクラス3位の梅川陸(大泉愛輪会)チャンピオンクラス3位の梅川陸(大泉愛輪会) photo:Makoto.AYANOチャンピオン4位の加藤大貴(COW GUMMA)チャンピオン4位の加藤大貴(COW GUMMA) photo:Makoto.AYANO


2位森本「乗鞍は勝負所はわかりやすいので走りやすいです。去年は調子が悪かったですが、今年は乗鞍の大会まで調子が良かったので自信はありました。終盤は中村選手が揺さぶりをかけてきたり、梅川選手も積極的に走っていたが、正直なところ攻める余裕はありませんでした。でも、今までにもゴールスプリントで勝った記憶もあるので、スプリント勝負に持ち込みたくてあえて守りの走りにシフトしました。結果的に負けてしまい2位でしたがまた来年リベンジします!」

3位梅川「身体はかなり絞れていて調子も良かったので自信はありましたね。作戦はとにかく周りに合わせながら先頭についていくことで最後まで勝負できる位置にいられたらなという感じでした。レース終盤に自分からアタックしたり積極的に走れた点は良かったです。ラスト1kmで遅れてしまったのでとても悔しかったです」


チャンピオン5位の嘉瀬峻介(Link THOHOKU)チャンピオン5位の嘉瀬峻介(Link THOHOKU) photo:Makoto.AYANOチャンピオンクラス6位の中川真也(ケッヘルVCスプートニク)チャンピオンクラス6位の中川真也(ケッヘルVCスプートニク) photo:Makoto.AYANO


チャンピオン7位の大野拓也(OVER HEAT with天照)チャンピオン7位の大野拓也(OVER HEAT with天照) photo:Makoto.AYANOチャンピオン8位の池田隆人(Team ZWC)チャンピオン8位の池田隆人(Team ZWC) photo:Makoto.AYANO


チャンピオン9位の山岳大隊長(グランペールサイクリングチーム)チャンピオン9位の山岳大隊長(グランペールサイクリングチーム) photo:Makoto.AYANOチャンピオン10位の木村純気(志學館大学/茶輪子練)チャンピオン10位の木村純気(志學館大学/茶輪子練) photo:Makoto.AYANO


チャンピオンクラス表彰チャンピオンクラス表彰 photo:Makoto.AYANO

女子 牧瀬翼が連覇・12年ぶりのコースレコード更新

実力が抜けていた昨年覇者の牧瀬翼(IKEUCHI EXIT)、金子広美(イナーメ信濃山形バイクサンドR×L)、佐野歩(Team Green Road)の3人が先頭グループを形成し、フィニッシュまで残り5.5kmの位ヶ原山荘へ。そこで牧瀬がペースを上げるとまず金子が脱落。牧瀬と佐野の2人は残り1kmまでランデブーを続ける。先頭でペースをつくる牧瀬に対し佐野は追従するのみだったが、最後まで一緒に行くことを嫌った牧瀬は再びペースアップし、独走に持ち込み、単独でフィニッシュ。昨年に続き2度めの参加で2連覇を飾った。牧瀬のタイム1:06:48.774は、12年前に矢沢みつみがマークしたそれまでの歴代最高記録を1分22秒塗り替える、こちらも大会新記録となった。

女子クラスで独走する牧瀬翼(IKEUCHI EXIT)女子クラスで独走する牧瀬翼(IKEUCHI EXIT) photo:Makoto.AYANO
女子2位の佐野歩(Team Green Road)女子2位の佐野歩(Team Green Road) photo:Makoto.AYANO女子3位の金子広美(イナーメ信濃山形 バイクサンド R×L)女子3位の金子広美(イナーメ信濃山形 バイクサンド R×L) photo:Makoto.AYANO


昨年はオランダ籍のUCIチーム Maaslandster teamで走った牧瀬は、今年は日本に生活拠点を置き、個人スポンサーを得てナショナルチームの海外レースに参加するなどして活動している。北海道拠点のアウトドア関連会社「IKEUCHIグループ」の名前を胸に、ロードレースをメインに活動する。

牧瀬「大会新記録は嬉しいですね。タイムが出たのはメンバーが強かった人が揃っていたのもあると思います。ラスト1kmまで佐野さんと一緒に走ったんですが、思ったより強くて。名前は知っていたんですが走りは知らなかったのでスプリントになると怖いと思い、アタックして引き離しました。今は良くも悪くもない普通のコンディション。6月末の全日本選手権に調子を合わせようとしてうまく行かず、一度緩めてから後半に向けて上げている最中です。絶好調ではないけど、8月は野辺山高原を拠点に合宿を行っていたのが効いた感じです」

女子表彰は一般とチャンピオン登録をあわせて行われた女子表彰は一般とチャンピオン登録をあわせて行われた photo:Makoto.AYANO

一般男子A優勝の中島あつし(たてりん)一般男子A優勝の中島あつし(たてりん) photo:Makoto.AYANO一般男子B優勝の高橋良太(COW GUMMA)一般男子B優勝の高橋良太(COW GUMMA) photo:Makoto.AYANO


一般男子E優勝の竹谷賢二(チャリダー)一般男子E優勝の竹谷賢二(チャリダー) photo:Makoto.AYANO一般男子F優勝の西谷雅史(オーベスト)一般男子F優勝の西谷雅史(オーベスト) photo:Makoto.AYANO


ジュニア男子優勝の片田啓太ジュニア男子優勝の片田啓太 photo:Makoto.AYANO乗鞍6連覇、2009年までの大会記録保持者の村山利男は85位でフィニッシュ乗鞍6連覇、2009年までの大会記録保持者の村山利男は85位でフィニッシュ photo:Makoto.AYANO


松本ヒルクライムシリーズ上位入賞者にパワーブリーズ・ジャパンより賞金が贈られた松本ヒルクライムシリーズ上位入賞者にパワーブリーズ・ジャパンより賞金が贈られた photo:Makoto.AYANO
マウンテンサイクリング乗鞍2019 チャンピオンクラス リザルト
1位 中村俊介(SEKIYA) 0:54:41
2位 森本誠(GOKISO) 0:54:43 +0:00:01
3位 梅川陸(大泉愛輪会) 0:54:51 +0:00:09
4位 加藤大貴(COW GUMMA) 0:56:22 +0:01:40
5位 嘉瀬峻介(Link THOHOKU) 0:56:42 +0:02:00
6位 中川真也(ケッヘルVCスプートニク) 0:56:47 +0:02:05
7位 大野拓也(OVER HEAT with天照) 0:57:10 +0:02:28
8位 池田隆人(Team ZWC) 0:57:12 +0:02:30
9位 山岳大隊長(グランペールサイクリングチーム) 0:57:20 +0:02:38
10位 木村純気(志學館大学/茶輪子練) 0:57:23 +0:02:41
マウンテンサイクリング乗鞍2019 一般女子クラス リザルト
1位 牧瀬翼(IKEUCHI EXIT) 1:06:48
2位 佐野歩(Team Green Road) 1:06:59 +0:00:11
3位 金子広美(イナーメ信濃山形 バイクサンド R×L) 1:09:09 +0:02:20
4位 豊島典子(team panda / De Marchi) 1:10:55 +0:04:06
5位 大堀博美(YOKOSUKA UNO RACING) 1:11:04 +0:04:16
6位 榎本美帆(MIVRO) 1:12:24 +0:05:35
7位 宮下朋子(TWOCYCLE /袴田塾/OKADAJAPAN) 1:13:00 +0:06:11
8位 星恵莉奈(チャリダー) 1:13:06 +0:06:18
9位 望月美和子(サギサカEgg's) 1:14:07 +0:07:18
10位 中込由香里(team SY-Nak) 1:15:30 +0:08:41
一般男子A リザルト
1位 中島あつし(たてりん) 1:01:13.567
一般男子B リザルト
1位 高橋良太(COW GUMMA) 0:59:08.122
一般男子C リザルト
1位 椿健一 1:00:06.744
一般男子D リザルト
1位 栗山和之(soleil de l'est) 1:02:17.315
一般男子E リザルト
1位 竹谷賢二(チャリダー) 1:04:22.072
一般男子F リザルト
1位 西谷雅史(オーベスト) 1:02:53.549
一般男子G リザルト
1位 芹川研一 1:11:53.376
一般男子H リザルト
1位 高山信行(トライアスロンチームSUB3) 1:18:02.417
ジュニア男子 リザルト
1位 片田啓太 1:12:35.964
ジュニア女子 リザルト
1位 岡本彩那 1:38:29.511
text:Michinari.Takagi,Makoto.AYANO
photo:Makoto.AYANO