逃げ切った末のスプリントでライバルを下したサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)、誕生日に逃げたサイモン・クラーク(オーストラリア、EFエデュケーションファースト)、そして明日を見据える総合勢。ツール第12ステージを選手たちの言葉で振り返ります。



サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)

ピレネー山岳初日ステージを制したサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)ピレネー山岳初日ステージを制したサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:Makoto.AYANO
山岳にたどり着くまでずっとエネルギーをセーブして走っていた。今日は自分でトライする今大会最初のチャンスだった。普段のステージであれば集団内でアダムをサポートする役目だが、今日は自分にチャンスが巡ってきた。だから全力で掴みにいったんだ。彼らがどれだけ速いのか分からなかったのでスプリントで二人を倒す自身があった訳ではなかった。チームカーからはただ"最終コーナーの手前で先頭に立て"と言われていたので為すべきことは理解していたよ。幸運にも最後までリードを保ち続けることができた。

今回ツールでの僕の任務はアダムを助けることで、今日は転がりこんできたチャンスを掴んだだけ。この先数日間でどういう展開になっていくのか注意して見ていきたい。ここまで素晴らしいツールになっているし、この先もこのリズムのまま走りたい。

ステージ2位:ペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ)

3番手で1級山岳ウルケット=ダンシザンを越えたペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ)3番手で1級山岳ウルケット=ダンシザンを越えたペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ) photo:Kei Tsuji
このステージで勝利をかけて戦う機会に恵まれたことに満足している。最後のスプリントで自分がミスをしたとは思っていない。ただ、単純にイェーツに勝てるだけの力がなかった。最後の登りで、イェーツとミュールベルガーへブリッジをかけるときにかなり足を消耗してしまったし、その時に彼らが自分よりも強いと感じていた。このツールでは、フルサングの総合成績がチームの最優先目標だから、このステージは自分にとって最後のチャンスだった。ここからチームが一丸となれば、彼を表彰台に上げることはできるはずだ。

ステージ3位:グレゴール・ミュールベルガー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)

三つ巴スプリントを繰り広げるサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)ら三つ巴スプリントを繰り広げるサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)ら photo:Luca Bettini
ほぼほぼ完璧な一日だったんだ。ウルケット=ダンシザンでイェーツに最後まで食らいつけたことを誇りに思っているけれど、かなりエネルギーを消耗する結果にもなった。スプリントにおいても、彼がトラック出身でスピードもあることは知っていた。でも、自分が足を極力使わなければチャンスはあると信じていた。とにかく、自分のパフォーマンスとリザルトには満足しているよ。また次のステージで仕掛けたい。

ステージ4位:ティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル)

ティム・ウェレンスをサポートするティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダルティム・ウェレンスをサポートするティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル photo:Makoto.AYANO
レース開始後最初の30分は調子が良くなかったけれど、走るたびにコンディションが回復していった。2,3度しか逃げにトライしなかったけれど、すぐに先行が決まったんだ。ペイルスルド峠では山岳ポイントを狙うティムをリードアウトし、先行するカルメジャーヌを捉えることができた。

でも、ウルケット=ダンシザンでは再び調子が悪くなった。おそらく前日の落車が影響して背中が張ってしまったんだ。それが無ければ他のクライマーたちに付いていけたと思うけれど、今日は4位という結果が最大限の成果だったと思う。ともかく明日の個人TTは僕にとっての休息日。明後日からは再びコンディションが戻ってきてくれることを願っているよ。今回のツールで何としてもチャンスを掴みたいんだ。

ステージ9位:サイモン・クラーク(オーストラリア、EFエデュケーションファースト)

先頭で1級山岳ウルケット=ダンシザンを駆け上がるサイモン・クラーク(オーストラリア、EFエデュケーションファースト)先頭で1級山岳ウルケット=ダンシザンを駆け上がるサイモン・クラーク(オーストラリア、EFエデュケーションファースト) photo:A.S.O.
これで5回目のツール・ド・フランスだけど、誕生日に逃げたのは今回が初めて。毎年この日は逃げにトライしているけれど、いつもは第3週目のひどい山岳ステージばかりなので良い展開にはならないんだ。今日はチャンスがあったので全力を尽くしたよ。逃げグループには世界最高レベルのクライマーたちが入っていた。12kmの山岳でサイモン・イェーツについていくなんてことは不可能だ。自分のアタックは早過ぎたかもしれないけれど、ベッティオールと二人でクライマー達に打ちのめされるのを待つなんて手は無かった。

ペイルスルド峠のダウンヒルは知り尽くしている。すごくスピードが乗る一直線の下りだ。コーナーを知っていれば良いタイム差を稼ぐこともできる。だから逃げてやろうと思った。1分もリードを稼いだなんて自分でびっくりしたよ。でも、追走グループから逃げ切ることはできなかった。精鋭グループに追い抜かれ、僕はその後も自分のために走り続けた。

マイヨジョーヌを守ったジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)

マイヨジョーヌを守ったジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)マイヨジョーヌを守ったジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Makoto.AYANO
100周年のマイヨジョーヌを着ることができるのは、まさに歴史を背負っているようなもの。明日、フランス人として、この特別なジャージを着て個人タイムトライアルへ挑むのは、僕のキャリアの中でも最も美しい一幕となるはずだ。きっと明日は最高のパフォーマンスを発揮できる。マイヨジョーヌを背負って独走する時間を楽しんでいる間に、自分の限界を超えていけるはずだ。

総合2位:ゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)

難なくピレネー初日ステージを終えたゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)難なくピレネー初日ステージを終えたゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス) photo:Makoto.AYANO
最後の登りで総合に関わる動きが出るだろうと思っていた。逃げグループとのタイム差が急に縮まっていたからだ。僕らは何か起こることを予想して構えていたけれど、結局何も起こらなかった。おそらく誰もがこの先の3日間で総合争いにシャッフルが掛かることを気にかけているんだろう。

今日はルークとディランの走りが素晴らしかった。特にルークは最終山岳の最後まで隊列の先頭を牽き続けてくれた。素晴らしいチームメイトたちが僕らのことを囲んでくれている。明日は全力を尽くす日。どうなるか興味深いよ。ステージを獲れたら最高だけど、僕の優勝候補はワウト・ファンアールトだ。

総合4位:ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)

フィニッシュしたステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)フィニッシュしたステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) (c)CorVos
今日は大きな動きは起きないと踏んでいた。ステージ優勝を狙うエスケープを決めるにはふさわしいステージだったと思う。とにかくタイムを失わないように注意を払う必要があるステージだった。チームメイトは自分を理想のポジションで登りへ送り出してくれた。

最後の峠からフィニッシュまでは距離があったから、明日のタイムトライアルを見据えて、仕掛けることは考えていなかった。明日のタイムトライアルに続き、2つの山頂フィニッシュが含まれるここからの数日間が総合争いにとって非常に重要になるだろう。

明日のステージに備えて、しっかり補給し回復する必要がある。いい成績を残せたドーフィネのタイムトライアルに近いコースで、自分の脚質にフィットしている。明日のコースの下見は何度も行っている。チーム一丸となって明日のステージに取り組んできたんだ。

リタイアを選んだローハン・デニス(オーストラリア、バーレーン・メリダ)

このタイミングでツールを去ることが残念でならない。明日の個人TTは僕にとって、そしてチームにとって大きな目標だったけれど、今の状況では仕方ない。ステージ序盤でリタイアしたことは正しい判断だった。ツールを戦い続けるチームメイトを最大限応援したい。そしてTVで、沿道で僕を応援してくれた全てのファンに感謝したい。またこの素晴らしい舞台に戻ってきたい。

Text:So.Isobe,Naoki,Yasuoka