自転車と鉄道、二つを愛する「テツ店長」ことバイクプラス多摩センターの河井孝介さんの輪行サイクリング紀行。今回で連載21回目、前編に引き続き輪界のテツトリオが集った国鉄型特急189系電車見納めツーリングの後編レポートが届きました(前編はこちら)。



テツ店長の輪行サイクリング紀行、前回は仲間と共に愛知県の廃線巡りからローカル線の王様"JR飯田線"でロングライド乗り鉄で長野県は松本までやって来ました。

二日目の早朝乗り鉄からスタート!二日目の早朝乗り鉄からスタート! photo:Kousuke.Kawai
そして今回は二日目の早朝乗り鉄からスタートとなります!この早朝からどうしても乗らなければならない電車というのが非常に重要で、まさに『今しか見れない鉄道風景』をこの目にしっかり焼き付けておくために、今回我らテツトリオはここ長野の地に集結したのでした。なぜなら、国鉄型特急電車を代表する189系の最後の一編成が、3月のダイヤ改正を機についに鉄路から引退してしまうからなのです!

ちなみにこの列車、輪行サイクリング紀行の栄えある初回にも登場してきた車両なのですが、当時はこの車両が引退してしまうなんてことは全く予想すらしていなかったのですが、時の経つのが早いと言いますか、時代の変化というものなのか、いずれにしても痛恨の極みなのであります(号泣)

そんな貴重な車両(マニアにとっては)ではありますが、ふだんは平日の早朝に塩尻発~松本~長野着の"快速おはようライナー"として運用されており、誰でもいつでも乗ろうと思えば乗れてしまうというのは有り難い限りなのでした(笑)

お目当ての列車キター!ということで、早朝から塩尻行き送り込み回送列車を狙うテツな人たち(笑)お目当ての列車キター!ということで、早朝から塩尻行き送り込み回送列車を狙うテツな人たち(笑) photo:Kousuke.Kawai
回送列車を見送って、一仕事終えてゴキゲンな面々(笑)回送列車を見送って、一仕事終えてゴキゲンな面々(笑) photo:Kousuke.Kawaiお目当ての列車の後を追いかけて、次に出発する普通列車で塩尻駅へ向かいます!お目当ての列車の後を追いかけて、次に出発する普通列車で塩尻駅へ向かいます! photo:Kousuke.Kawai

今回はせっかくなので、朝イチの特別ミッションとして、車庫のある長野駅から始発駅の塩尻駅へ向かう電車の送り込み回送列車を松本駅で鑑賞しましょう!と言い出したのは編集部イソベでしたが…、そのテツとして正しい発想にはただただ脱帽としか言いようがなく、さすがに自分もその着眼は無かったです(笑)

翌朝、寒さも何のそので早朝6時の松本駅ホームまでやって来ました!さすがにこの時間のホームは人気も少なく、回送列車を狙おうというツワモノも我々を除くとごくわずかでした。

間もなくすると、お目当ての189系電車が静かに松本駅のホームに入線して来ました!いかにも古強者らしい堂々としたその姿にいきなり胸アツでしたが、少年時代から見慣れてきた国鉄型特急の走る姿が見れるのもこれが最後かと思うと切ない気持ちもあり、とりあえずは列車が走り去るまでは一心にカメラを向け続けるテツトリオなのでした(涙)

とりあえず列車を見送ったら一息といったところで、ここから15分後に出発する普通列車に乗って塩尻駅まで後を追いかけることにします。そして列車に揺られること18分で、さきほどお見送りした列車の待つ塩尻駅に到着です!するとお隣のホームにはさきほど見送った189系電車が静かに出発の時を待っていました。さすが引退間近ということでホーム上には数多くの同業者(鉄道ファン)が早朝から集結しており賑やかなことこの上ない。

そんな合間をぬって大きな輪行袋をぶら下げながら動き回る3人組はさぞかし違和感を放っていたことでしょう(笑)そんなことはお構い無しで出発ぎりぎりまで何かに取り憑かれたように撮影していると、あっという間に列車の出発時刻が近づいてきました!

少々慌てて列車に乗り込みましたが、すでに車内はかなりの乗車率です!正規の乗客の数よりも、我々も含め乗り鉄の方の方が明らかに多く、早朝にもかかわらず車内にこもる異様な熱気を感じていたのは、きっと我々だけではなかったはず……。

塩尻駅に到着すると、お隣のホームにお目当ての国鉄型特急車両189系が待っています!塩尻駅に到着すると、お隣のホームにお目当ての国鉄型特急車両189系が待っています! photo:Kousuke.Kawaiこの国鉄顔もこれで見納めか…(涙)、とはいえ乗車を前にしてテンションは上がりっぱなし!!この国鉄顔もこれで見納めか…(涙)、とはいえ乗車を前にしてテンションは上がりっぱなし!! photo:Kousuke.Kawai
待ち焦がれた電車にようやく乗れて、気持ちの高ぶりを隠し切れないテツトリオ待ち焦がれた電車にようやく乗れて、気持ちの高ぶりを隠し切れないテツトリオ photo:Kousuke.Kawai日本三大車窓のひとつ日本三大車窓のひとつ"姨捨駅"近くは、善光寺平を一望できる絶景区間なので見逃せません! photo:Kousuke.Kawai

ここから先の1時間13分の旅は実に忘れられない時間となりました。昭和~平成を駆け抜けた往年の国鉄型特急車両は、車内設備から乗り心地、モーターの音まですべてが懐かしく、しかも途中では日本三大車窓のひとつ"姨捨"からの善光寺平の景色を眺められるのですから、これほど完璧なシチュエーションもそうそうありません!

さらにそんな時間を仲間と一緒に過ごしながら"乗り納め"できるというのが、よりいっそうこの旅を思い出深いものにしてくれました。1時間少々の乗車時間は本当にアッと言う間でしたが、長野駅に近づくとこれまた懐かしい"鉄道唱歌"の車内メロディーが流れて一同の思いは最高潮を迎えると同時に、思い出の旅路もあっけなく終わってしまったのでした(涙)とりあえず目的としていた"乗り鉄"は終わったものの、長野駅で下車した我々にはもう一仕事が待っていました。

ホームには全国から集まったであろう多くの鉄道ファンが熱心にその姿をカメラに収めていましたが、我々もそんな中に交じって時間の許す限り、最後の雄姿をカメラと心にしっかりと刻んだのでした。

ひとしきりの活動を終えたら、ようやくの休憩ということで、駅そばで朝食と洒落込むことにしました。
ココロはすっかり熱くなっていましたが、じつはこの日の長野駅は相当な冷え込みで、気を抜くとカラダに堪える寒さのことはすっかり忘れていました(笑)
それにしても駅ホームで大好きな列車を眺めながら温かい蕎麦を頂けるという、これほどテツ冥利に尽きることはありませんね(笑)

長野駅に到着しても189系まつりは終わりません!ラストラン間近なので同業者が殺到して大変な喧騒です!長野駅に到着しても189系まつりは終わりません!ラストラン間近なので同業者が殺到して大変な喧騒です! photo:Kousuke.Kawai
大好きな電車を目の前にしていただく駅そばが美味しくないハズがない!幸せそうな表情のナカジ♡大好きな電車を目の前にしていただく駅そばが美味しくないハズがない!幸せそうな表情のナカジ♡ photo:Kousuke.Kawai次々と国鉄型車両がやって来る次々と国鉄型車両がやって来る"長野駅"のホームは何かと忙しいのです…機関車好きのナカジが記録中! photo:Kousuke.Kawai

そろそろ「いったいいつになったらサイクリングが始まるの!?」というお叱りの声が聞こえてきそうですが、ここはもうしばらく乗り鉄の旅が続きますのでご容赦ください…(汗)

ここ長野駅からは"しなの鉄道・北しなの線"に乗り換えて、一路日本海を目指します!実は"しなの鉄道"も連載10回目で登場しましたが、ここの鉄道会社もかつては国鉄→JR東日本の信越本線だったものが、北陸(長野)新幹線開通により並行在来線として第三セクター鉄道に分離されたのでした。

かつての大幹線も長距離旅客がいなくなると一気にローカル輸送専門となり、経営もラクではないようです。
そんなしなの鉄道が取り組んだのが、『古い電車を活かして集客しよう!』という作戦で、これがまんまと当たって、JRから引き継いだ古い車両をあえて昔の塗装に戻して走らせることで、全国から鉄道ファンが集まって経営の改善に大きな効果を挙げているのだそう。(とガッチリマンデーで言ってました)

これぞ国鉄仕様のボックスシート!な115系電車も今や貴重な存在となりましたこれぞ国鉄仕様のボックスシート!な115系電車も今や貴重な存在となりました photo:Kousuke.Kawai
そんな作戦に我々も乗せられて、国鉄型特急車両から続いて国鉄型近郊型車両に乗り継ぐと言う、うれしい旅をさせてもらうことにしたのでした(笑)

我々を乗せた115系電車の向かった先は、長野県と新潟県の県境にあたる"妙高高原駅"。長野を出た列車はモーターを唸らせながらだんだんと高度を上げてゆきますが、それに従って外は一面の雪景色に変わってきました。

列車の終点"妙高高原駅"に到着すると、そこはもう一面の銀世界……。ホンモノの雪景色は古参の車両を引き立ててくれますが、それにしてもサイクリングには似つかわしくない風景にちょっとびっくり!これから先は本当に大丈夫なのでしょうか?

この手動式ドアがマニアにはたまらないですねぇ、ホームとの段差も国鉄時代っぽくて萌えるのですが…この手動式ドアがマニアにはたまらないですねぇ、ホームとの段差も国鉄時代っぽくて萌えるのですが… photo:Kousuke.Kawai
"妙高高原駅"にて、これからサイクリングするとは思えない大雪の図(笑) photo:Kousuke.Kawai
ここから先は"えちごトキめき鉄道・妙高はねうまライン"に乗り換えます。こちらも北陸新幹線開業により第三セクター化された路線ですが、県境を過ぎると別会社(別料金)になるため、いちいち乗り換えを強いられるのは、利用者にとってはあまり良いサービスとは言えませんが、まあいろいろな事情があるのでしょうね……。

えちごトキめき鉄道の電車は最新のもので車内も明るくひろびろとしていて快適ではありますが、テツ的にはちょっともの足りない……。

しか~し!ここ"妙高はねうまライン"にはそんなマニアが大喜びするとあるスポットがあるのですね(笑)
それが直江津に向かう途中駅の"二本木"です!、この駅がまたテツの大好物である"スイッチバック駅"とないうことで要注目なのであります!!

またまた登場のスイッチバック駅は、えちごトキめき鉄道(もと信越本線)またまた登場のスイッチバック駅は、えちごトキめき鉄道(もと信越本線)"二本木駅"。右に下って行くのが本線 photo:Kousuke.Kawai
"スイッチバック"はこれまでも何回か出てきているので詳しい説明は省略しますが、長野方面からの勾配区間を下ってきた列車はひとまず本線から分かれて引き込み線に入り、その先にある平地に設置された二本木駅のホームに滑り込みます。

その後列車はもと来た方向に出発して本線をまたぎ、反対側の平地に敷かれた引き込み線に入ったのちに、ふたたび進行方向を変えて本線に戻って行くという、なかなかトリッキーな動きをするのがテツにはたまらない!

ちなみにこのような面倒な動きをするのは、その昔蒸気機関車が走っていた時代の名残りで、当時の非力なSLだと坂の途中に駅を造って一度止まってしまうと、次に発車が出来なくなってしまうため、わざわざ坂の途中に平地の引き込み線を設けて助走をつけてから坂を上ってゆくための設備なのです!

昔は全国の勾配区間でふつうに見られたものが、現在ではパワーに余裕のある電車や気動車に代わったために不要となり、そのほとんどが姿を消して行ってしまったという、まさに今に生きる鉄道遺構なのでした……。とすっかり熱く語ってしまいましたが、そんなワケで我々も列車の動きに合わせて右往左往しながら、その動きをくまなく観察して楽しんでいたのでした(笑)

かつて大幹線だったかつて大幹線だった"信越本線"と"北陸本線"の接続駅"直江津"は、広い構内と長く立派なホームが過去の栄華を物語っていた photo:Kousuke.Kawai
そんなこんなで妙高高原駅から山を下ってきた2両編成の電車は、終点の"直江津駅"のホームに滑り込んでゆきました。その直江津駅ですが、かつては信越本線と北陸本線の結節点として賑わっていましたが、新幹線開業に伴い第3セクター化され、今は特急も通らないただのローカル駅になり下がってしまった感もあり、3本もある長いホームや広い駅構内は、少々持て余し気味にも見えます。

まあそんな歴史的背景や移り変わりも含めて鉄道を楽しんでいるとも言えますが、ここいらからそろそろサイクリングに出発しましょうか…

駅前ロータリーで自転車を組み立てたら、二日目のサイクリングがスタートです!駅前ロータリーで自転車を組み立てたら、二日目のサイクリングがスタートです! photo:Kousuke.Kawai
やっとサイクリングネタかよ!とお叱りの声が聞こえてきそうですが、ここからのサイクリングコースはなかなかオススメですからね!期待して読み進んでくださいね(笑)直江津の街はほぼ海に面しているいると言っても良い地形で、街の中心にある直江津駅も海岸から1kmほどのところに位置しており、本日はここから日本海を眺めながらの廃線サイクリングを楽しもうという算段でやってきた次第。

駅前で自転車を組み立てたらさっそくサイクリングを始めましょう!少々冷え込みがキビシイではありましたが、日本海側はおおむね晴れてくれて、サイクリングには悪くない日和となってくれました。一行は北向きに走り出してひとまず日本海を目指しましたが、ものの数分で海岸線に達してしまいます。

昨日の朝には愛知県の豊橋にいたのが、在来線の普通列車を延々と乗り継いで新潟県の直江津までやって来て、今まさに日本海を目の前にすると、「ずいぶん遠くまでやって来たなぁ」とちょっと感慨深いものがありましたが、これこそがローカル線マジックなのか知れませんね(笑)

駅から直江津駅から海岸に出て、糸魚川向けに海沿いを走ってゆくと現れるサイクリングロードが本日の舞台駅から直江津駅から海岸に出て、糸魚川向けに海沿いを走ってゆくと現れるサイクリングロードが本日の舞台 photo:Kousuke.Kawai
先ほどまでと打って変わって、晴天の下で日本海を見ながらサイクリングできるという幸せ❤先ほどまでと打って変わって、晴天の下で日本海を見ながらサイクリングできるという幸せ❤ photo:Kousuke.Kawai
さて海岸線に出るとすぐにサイクリングロード"入口の標識が現れました。こちらが今回ぜひ走ってみたかった"久比岐自転車道"という大規模自転車道で、、線路付け替えで廃止となった旧国鉄北陸本線の路盤を利用した自転車専用道で、国道8号線に沿って直江津~糸魚川間の距離32kmを結んでいます。

さっそくサイクリングロードを走り出してみると、道は海岸線沿いの地形に沿ってカーブを繰り返しながら、ところどころを短いトンネルで抜いて線路をつないで行くという、いかにもここは昔軌道だったという趣きがあるのもうれしいものです。

いよいよ現れた北陸本線の旧線区間!レンガ造りのトンネルに歴史の重みを感じますねいよいよ現れた北陸本線の旧線区間!レンガ造りのトンネルに歴史の重みを感じますね photo:Kousuke.Kawai
旧北陸本線の廃線敷はサイクリングロードとして整備されて、日本海の眺めも良い快適なコースでした旧北陸本線の廃線敷はサイクリングロードとして整備されて、日本海の眺めも良い快適なコースでした photo:Kousuke.Kawaiその昔は列車の車窓から眺めていたであろう滝の風景に思いを馳せるその昔は列車の車窓から眺めていたであろう滝の風景に思いを馳せる photo:Kousuke.Kawai

ほとんどの区間を海岸線ギリギリを走ってゆくので、とにかく見晴らし良く走っていて気持ちの良いサイクリングロードです!さらに次々と現れるレンガ積みの古いトンネルや橋脚などの遺構も風格があり、その昔鉄道が陸上交通の花形だった頃の雰囲気色濃く残しているのも素晴らしい!!

さて朝からの電車移動でサイクリングのスタートが遅かったこともあり、走り始めた頃はもうお昼前というありさまで、どこかでランチにしたい気分となってきました。

街道沿いのドライブインは間違いない!ということで、豊富すぎるメニューで選ぶのに迷ってしまいます(笑)街道沿いのドライブインは間違いない!ということで、豊富すぎるメニューで選ぶのに迷ってしまいます(笑) photo:Kousuke.Kawai
幸いサイクリングロードに沿って国道8号線が通っており、飲食店もところどころに見受けられたので、その中から地方の街道沿いによく見かける、比較的規模の大きいドライブインに寄ってゆくことにしました。まあドライブインなのでこじゃれた雰囲気は皆無ですが、その代わり圧倒的に豊富なメニューが選ぶ楽しみを増幅してくれて、これまたワクワクさせてくれるのがツボです(笑)

こちらの"名立食堂"も期待に違わずメニューが豊富で、しかも日本海の食材を使ったメニューが揃っているので選ぶのに迷ってしまいます!結局、ナカジは"にぎりずし"、イソベが"イクラ丼"、ワタシは"タラ汁"と、バリエーション豊かな海メニューで揃えてみましたが、どれもご当地食材を使って調理しただけ新鮮で美味い!!さらに言うと、もう一つイソベが別注していた"つみれフライ"が食感と味ともに最高に美味しくて、一同顔を見合わせて思わず笑顔が出てしまうという、それは思い出に残る一品となりました!

もし"久比岐自転車道"までお越しの際には、ぜひ"名立食堂"の"つみれフライ"ご賞味くださいね(笑)

そしてこちらのお店にも鉄道の歴史を物語る資料が展示されていて一同大興奮!北陸本線旧線が現役だった頃の貴重な写真がパネル展示されていて、興味津々で食い入るように眺めていると、こちらのお店の目の前をSLが走っているではないですか!!

ここにも旧線時代の写真が展示されていて、思わず見入ってしまう面々なのでしたここにも旧線時代の写真が展示されていて、思わず見入ってしまう面々なのでした photo:Kousuke.Kawai
旧線の遺構探しに余念がありませんが、そのおかげで時間だけがどんどんと過ぎって行ってしまうのでした(汗)旧線の遺構探しに余念がありませんが、そのおかげで時間だけがどんどんと過ぎって行ってしまうのでした(汗) photo:Kousuke.Kawai
居ても立っても居られずお店の方に話を伺ってみると、当時の駅はこの食堂からほど近い場所にあったとのことで、このあとサイクリングロードに戻って確認してみると、たしかに駅があったと思われる場所は広い敷地があった痕跡があり、我ら鉄トリオの探求心を大いにくすぐってくれたのでした。

ふらりと立ち寄ったお店での思わぬ出会いや発見というのもまた旅の醍醐味ですよね!こう言う楽しみがあるからやっぱり輪行旅はやめられないんですよねぇ(笑)そんなこんなで少々のんびりモードで寛いでいるうちに時間だけが過ぎて行き、そろそろ帰りの列車の時間も気にしないといけない時間に…

するとナカジが見計らったように、「この先にある筒石駅から輪行しちゃいません?」と言ううれしい提案が……。なぜに突然切り上げて輪行なのかと言うと、その駅とはテツなら誰もが一度は行ってみたいと思う、もの凄~く気になる駅なのですから、この誘いに乗らないワケがありません!!

今からゆったりめに向かってちょうど良い時間に糸魚川方面の列車があることを、あらかじめ調べておいた上で切り出すあたり、逃げグループ吸収のための計算をしたかのような見事な集団コントロールです(笑)

海沿いのサイクリングロードから一歩外れると、いきなり急坂の上りが始まります海沿いのサイクリングロードから一歩外れると、いきなり急坂の上りが始まります photo:Kousuke.Kawai
坂を上り切った先にあるのが、もと北陸本線(現えちごトキめき鉄道日本海ひすいライン)の名物駅坂を上り切った先にあるのが、もと北陸本線(現えちごトキめき鉄道日本海ひすいライン)の名物駅 photo:Kousuke.Kawai
ということで、ここからの目的地は"えちごトキめき鉄道『筒石駅』"に上書きされたのでした……。サイクリングの距離自体は短くなってしまいますが、テツとしてこの世に生を受けたのであれば、この機会を逃す手はありません!一同楽しみで仕方なくなってしまい、ペダルを回す足取りも軽く先をめざします!!

とは言うものの、こちらの駅は海抜60m地点の山中にあるため、そこに至る急坂を一気の上らなくてはならないのはちょっとツラい(汗)

結局ナカジにゆっくりと牽いてもらいながらなんとか駅までたどり着きましたが、この駅というのがまあなんと言うか駅らしくない造りで、一見どこかの工事事務所のような外観に、本当にここが駅なのかと疑ってしまうくらい……。

山深い道路の突き当りににあるただのプレハブ小屋にしか見えませんが…山深い道路の突き当りににあるただのプレハブ小屋にしか見えませんが… photo:Kousuke.Kawai
山の上から地下深くに下りる階段は、なんと280段もある!デカイ輪行袋を背負っての下りもけっこう大変!!山の上から地下深くに下りる階段は、なんと280段もある!デカイ輪行袋を背負っての下りもけっこう大変!! photo:Kousuke.Kawai
近くまで寄ってみると、一見プレハブ小屋風ですがいちおう駅名の標識も出ていたのでひと安心。軒先を借りて自転車を梱包したらいざ改札口へ突入へ!するとその先に現れたのは延々と続く階段(汗)

そうです!ここは日本でも有数のトンネル駅だったのです!!

駅舎から駅ホームまでは約40mの高低差がありますが、これを上るのはけっこうしんどそうだ…駅舎から駅ホームまでは約40mの高低差がありますが、これを上るのはけっこうしんどそうだ… photo:Kousuke.Kawai
こちらの駅、海抜20m地点の山中を貫通する"頸城トンネル"内にホームを作ったために、海抜60mの改札口から正味40mを下らなければならず、そのために築かれた階段の数はなんと290段[糸魚川方面]!ということで、その内部はまったくもって駅とは思えない造りなのでした。

だったら地上20m地点に横穴を掘れば良かったんじゃねえの!と思ったのはワタシも同じだったのですが、調べてみるとこんな造りになったのには理由があるのだそう……。

と言うのも、海岸沿いの線路をトンネル化するにあたって駅はいったん廃止される予定だったのが、住民の反対によって存続することとなり、結局工事用の斜坑(土砂を搬出したり、資材を搬入するための作業用トンネル)を流用してトンネル内に駅を設けるという、いささか手っ取り早い方法をで駅を造ったからなのだそうです。

まあ実際現場に足を踏み入れてみると、なるほどこれはスゴイ!!とはしゃぎたいところではあったのですが、じつは列車の到着時刻が差し迫っておりまして、大きな輪行袋を担ぎながら少々急ぎ足でホームに向かって階段を下りて行ったので、じっくりと楽しむ余裕はありませんでした(涙)

ようやく階段の底までくると、そこには金属製の何やら仰々しい扉が待っていました。もはや核シェルターか何かの秘密基地のような、とても駅とは思えない空間にちょい引き気味です(汗)

ちょっとドキドキしながら金属製の引き戸を開いてみるとそこには……。トンネルのど真ん中に無理やり狭いホームを詰めこんだ、これまたちょっと恐ろしげな空間がありました。

なるほどこの狭いホームで通過列車を待つのは危険極まりなく、強烈な風圧を遮断すべくしっかりした扉で隔離されていたわけですが、実際に列車が近づいてくる音がトンネル内に響き渡り、だんだん音が大きくなってくるのは正直ちょっと怖いものがあります(涙)

駅ホームと通路を隔てる気密扉。これはかつて走っていた駅ホームと通路を隔てる気密扉。これはかつて走っていた"特急はくたか"通過による突風を防ぐために設けられたものだそう photo:Kousuke.Kawai
と思ったら、まもなく明かりが見えてきて、轟音と共に列車がホームに滑り込んできました!ややあっけにとられながらも、開いたドアから中に乗り込むと、すぐに列車はに静かに走り出しました。

ここから目的地の糸魚川駅へは約20分で到着するのですが、現行線は山を長大トンネルぶち抜きながら、ほぼまっすぐに敷かれているのに比べ、旧線は海岸沿いの険しい地形に線路を敷いていたのだなぁ、と昔の人々の苦労に思いを致すとともに、地形をものともせず線路を敷設する土木技術の進歩をちょっぴり肌で感じたような気がするのでした。

そんなことを考えているうちに、泊行きの普通列車はこれまた長いホームを持て余し気味の"糸魚川駅"に到着しました。こちらは北陸新幹線とえちごトキめき鉄道・日本海ひすいライン、JR大糸線の3線が接続している駅なのですが、在来線ホームだけを見ていると、どうにも活気がなくうらぶれた感が否めません。

しかしここ糸魚川駅には我々テツの大好きな国鉄型気動車が静態保存されていて、最後にこれを拝んで解散しようということで、ここを今回のサイクリングの終着駅に選んだワケです。

地底深くのトンネル内にホームで待っていると、列車の音と光がみるみる近づいてきた!地底深くのトンネル内にホームで待っていると、列車の音と光がみるみる近づいてきた! photo:Kousuke.Kawai
ということで、駅南口にある"糸魚川ジオステーション ジオパル"にやってきました。広い屋内施設の中には、糸魚川の観光案内所とともに、鉄道保存展示施設が併設されており(どちらかというこちらがメイン)、大小さまざまな鉄道グッズやジオラマが展示されているんだから、これはテツにはたまらない!

しかしここの主役は惜しまれつつも2010年に大糸線から引退したキハ52系気動車であることは間違いありません!!これぞ国鉄顔に国鉄標準色を纏ったその完璧な装いに、一同うっとりと見とれてしまうのでしたが、うれしいことにこのキハ52は車内が待合室として解放されていて、あの懐かしいボックスシートでくつろぐことができるというのだから、もはやここは聖地と言っても良いでしょう(笑)

ちなみに大糸線で最後まで使用されていた国鉄型のキハ52系3両でしたが、こちらの車両以外の2両も引退後に保存先が決まり、うち1両は連載第6回にも出てきた、岡山県の"津山まなびの鉄道館"で静態保存され、もう1両は千葉県の"いすみ鉄道"で観光列車として今も現役で走っています。

あっさりと廃車解体されることが多いこの業界で、すべて保存というのは幸運以外の何ものでもありませんが、やはりそれだけ多くの人に国鉄型車両が愛されていたから、ということなのでしょうね……。

まあそうなると残る千葉県の"いすみ鉄道"も俄然行きたくなってきますよね!(笑)

糸魚川駅に設けられた糸魚川駅に設けられた"ジオステーション ジオパル"内の資料展示がマニアにはたまらないのでした photo:Kousuke.Kawai
おっと話が脱線してしまいましたが、そろそろ帰りの列車の時間が近づいてきました!今回もこの上なく思い出深い2日間になりましたが、最後は大好きなキハ52の前で再会を誓って解散です(涙)

ここからは各人の向かう方向別に乗って帰ることになります。まずナカジは北陸新幹線で金沢方面へ、編集部イソベは同じく新幹線で東京方面。テツ店長はまだ乗り足りない?ので、ここからさらに大糸線を乗り継いでローカル線の旅を続ける事にします。

惜しまれつつ引退した国鉄型気動車キハ52の車体が待合室として活用されているのがうれしい!惜しまれつつ引退した国鉄型気動車キハ52の車体が待合室として活用されているのがうれしい! photo:Kousuke.Kawai
駅のはずれにある大糸線ホームに向かうと、JR西日本の非電化ローカル線用気動車キハ120が待っていた駅のはずれにある大糸線ホームに向かうと、JR西日本の非電化ローカル線用気動車キハ120が待っていた photo:Kousuke.Kawai
ここからソロ活動でゆく"大糸線"も、じつは連載第1回に出てきましたが、一日に走る本数の少なさと、険しい山間部を走るその線形から、かなりローカル線ポイントの高い路線です。JR西日本の非電化ローカル線ではお馴染みのキハ120は、ワタシのほか数人の乗客を乗せて、広い糸魚川駅の外れにある4番ホームを発車しました。

駅を出ると線路は大きく左に曲がって、あとは"姫川"沿いの険しい谷間を通って高度を上げてゆきます。標高が高くなるにつれてまたもや車窓が雪景色に変わってきました。大糸線の"糸魚川"からこの列車の終点"南小谷"まではとりわけ地形が険しく、列車は連続する急カーブを速度も抑えめにトコトコと走ってゆきますので、ご乗車の際はその迫力ある車窓を楽しんでください(笑)

ぐるっと回って朝出発した松本駅まで戻ってきたわけですが、最後は"特急スーパーあずさ36号"に乗って今回の旅をしめくくることにします。ちなみにこの"スーパーあずさ"の名称も今度のダイヤ改正で無くなることが決まっているので、これもある意味乗り納めなんですよね……。

糸魚川から南小谷までの区間は徐々に高度を上げて、周囲は再び雪景色となってくる糸魚川から南小谷までの区間は徐々に高度を上げて、周囲は再び雪景色となってくる photo:Kousuke.Kawai
"松本駅"から乗車するのは最新のE353系特急型電車!この"スーパーあずさ"の名称もこの春で消滅しました photo:Kousuke.Kawai
短い乗り換え時間ではありましたが、しっかり夕食用の駅弁を準備することができた!短い乗り換え時間ではありましたが、しっかり夕食用の駅弁を準備することができた! photo:Kousuke.Kawai楽しかった旅の思い出を振り返りながら、ひとしみじみと駅弁をつつくテツ店長なのでした…楽しかった旅の思い出を振り返りながら、ひとしみじみと駅弁をつつくテツ店長なのでした… photo:Kousuke.Kawai

乗車した車両は最新の車体傾斜装置を持つE353系電車で、車内もすっきり広々としていて快適そのもの!発車後ひと息ついたら、松本駅で乗り換えの合間に買っておいた"信州あずみ野物語"弁当で夕食を楽しみながら、ひとり満たされた気持ちで家路についたのでした。

平成から令和へと時代は変わり、続々と古いものは消えてゆくのもまた歴史の流れなのかも知れませんが、そんな歴史を辿ってみたり、古いものを追いかける輪行の旅はまだまだ続きます。

多忙な時間を割いて集まってくれた、キナンサイクリングチーム・中島康晴様、シクロワイアード編集部・磯部聡様
2019年春、思い出深い旅をありがとうございました!

お二人の鉄道愛はしかと受け止めましたので、また鉄分豊富なサイクリング行きましょうね♡

おわり



河井 孝介河井 孝介 旅する人 河井孝介プロフィール

バイクプラス多摩センターの店長を務める50歳。前職で足かけ10年にわたる勤務を鉄道の無い(モノレール除く)沖縄県で過ごした反動からか、帰京後は輪行サイクリングの虜となり、現在は鉄道と自転車を組み合わせ、鉄道廃線跡や未成線など鉄道の歴史を辿るサイクリングをライフワークとする。鉄道趣味のジャンルは「乗り鉄」。旧国鉄型車両を心から愛し、ひそかにJR全線乗車にチャレンジ中。非常勤の防衛省職員である予備三等陸曹の身分も合わせ持っている。


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