中央山塊の7つのカテゴリー山岳が詰め込まれたツール・ド・フランス第8ステージで逃げグループから飛び出したトーマス・デヘント(ロット・スーダル)が独走勝利。トーマスが落車する中、終盤の急勾配山岳で集団から抜け出したジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)がマイヨジョーヌを奪回した。


7月13日(土)第8ステージ
マコン〜サン・テティエンヌ
距離:200km
獲得標高差:3,900m
天候:晴れ
気温:25〜29度


7月13日(土)第8ステージ マコン〜サン・テティエンヌ 200km7月13日(土)第8ステージ マコン〜サン・テティエンヌ 200km photo:A.S.O.7月13日(土)第8ステージ マコン〜サン・テティエンヌ 200km7月13日(土)第8ステージ マコン〜サン・テティエンヌ 200km photo:A.S.O.
ボジョレーのワインを生み出す丘陵を逃げるニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー)らボジョレーのワインを生み出す丘陵を逃げるニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー)ら photo:Kei Tsuji


獲得標高差3,900mの断続的なアップダウンコース

フランス中部、同国の国土の15%の面積を占める広大な「マッシフサントラル」。日本で中央山塊、中央高地、または中央山地と呼ばれる通り(山脈とは呼ばない)、標高1,000〜1,500m程度の山が広域にわたって延々と続いている一帯をツール・ド・フランスは通過する。ジャスト200kmの距離で行われた第8ステージにはカテゴリー山岳が合計7つ詰め込まれた。

細い山道を延々と走り、獲得標高差が3,900m近くに達するこのアップダウンコースは、近くに住む別府史之(トレック・セガフレード)の言葉を借りると『プティ・リエージュ(小さなリエージュ)』。残り12.5km地点に「ボーナスポイント」の3級山岳ラ・ジェイレール(距離1.9km/平均7.6%)が設定されるなど、逃げ切り向きであると同時に総合争いにも影響する難易度を誇る。

フランス革命記念日を翌日に控えたこの日、『パトルイユ・ド・フランス』がスタート地点マコンの青空にトリコロール(フランス国旗の三色)を描き出した。クリスティアン・プリュドム氏による正式スタートの旗が振られるとすぐにトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)がファーストアタック。何度かのアタックと吸収を繰り返した後、最終的にデヘントを含む4名の先行が始まった。

一面ボジョレーのワイン畑が広がる丘陵地帯で、総合に関係しない4名(最高位はデマルキ/総合77位/29分38秒遅れ)が順調にリードを広げ始める。逃げグループから5分遅れでスプリントポイント(33km地点)に差し掛かったメイン集団の先頭をエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)が取っている。

逃げグループを形成した4名
トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)
アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、CCCチーム)
ベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ)
ニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー)

ボジョレーのワインを生み出す丘陵を逃げるニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー)らボジョレーのワインを生み出す丘陵を逃げるニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー)ら photo:Kei Tsuji
ステージ前半にかけてトレック・セガフレードがメイン集団をコントロールステージ前半にかけてトレック・セガフレードがメイン集団をコントロール photo:Kei Tsuji
集団内でアップダウンをこなすジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)集団内でアップダウンをこなすジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
下りを攻めるトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)下りを攻めるトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) photo:Kei Tsuji


スプリンターたちが脱落し、残り16km地点でトーマスが落車するも集団に復帰

過去に、この日のフィニッシュ地点サンテティエンヌに至るクリテリウム・デュ・ドーフィネのステージで優勝を飾り、ともにマイヨジョーヌを着た経験のあるテルプストラ(2009年第3ステージ)とデヘント(2017年第1ステージ)の2人。ステージ優勝目的だけでなくチームメイトのティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)のマイヨアポワを守るために逃げたデヘントが前半から2級山岳と3級山岳を立て続けに先頭通過していく。

メイン集団は先頭4名の逃げ切りを容認したと思われたが、小集団スプリントに持ち込みたいボーラ・ハンスグローエやマイヨジョーヌを取り戻したいドゥクーニンク・クイックステップが先頭に立ってペースを繋ぐ。ステージ中盤にタイム差は3分30秒前後で落ち着いた。

この日5つ目の2級山岳クロワ・デ・パール(距離4.9km/平均7.9%)で先頭はデヘントとデマルキに絞られ、アスタナがペースアップを開始したメイン集団からはピュアスプリンターたちが相次いで脱落。この急勾配の登りで総合3位ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ)も遅れていく。立て続けに登場した2級山岳アヴェーズ(距離5.2km/平均6.4%)でメイン集団はさらに人数を減らす。

下りでデマルキがオーバーランするシーンが見られながも、先頭2名はフィニッシュまで50kmを残して3分40秒のリード。EFエデュケーションファーストがアスタナに加勢してメイン集団のペースを上げたため、残り25km地点で先頭デヘントとデマルキのリードは2分を切る。いよいよこの日最後の3級山岳ラ・ジェイレールの登りが近づき、逃げデュオとメイン集団のタイム差が1分まで縮まったところで、ゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)が落車した。

フィニッシュまで16kmを残して落車したディフェンディングチャンピオンのトーマス。ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームイネオス)とともに地面に叩きつけられたトーマスはそのまま自分のバイクにまたがって再スタートし、アスタナがスピードを上げて3級山岳ラ・ジェイレールを駆け上がるメイン集団に何とか復帰して事なきを得ている。その頃、先頭ではデヘントがデマルキを切り離した。

2級山岳クロワ・デ・パールで先頭はトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)とアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、CCCチーム)の2人に2級山岳クロワ・デ・パールで先頭はトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)とアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、CCCチーム)の2人に photo:Kei Tsuji
山岳ポイントを量産するトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)山岳ポイントを量産するトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) photo:Kei Tsuji
集団前方で山岳をこなすゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)集団前方で山岳をこなすゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス) photo:Kei Tsuji
ステージ後半にかけてメイン集団のペースを上げるアスタナとEFエデュケーションファーストステージ後半にかけてメイン集団のペースを上げるアスタナとEFエデュケーションファースト photo:CorVos
落車したゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)を送り出すチームメイトたち落車したゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)を送り出すチームメイトたち photo:CorVos


最後の3級山岳で独走に持ち込んだデヘントと、集団を飛び出したアラフィリップ

独走で3級山岳ラ・ジェイレールを駆け上がり、7つ全てのカテゴリー山岳先頭通過を達成したデヘント。逃げ切り独走体制に入ったデヘントの後ろでは、いよいよマイヨジョーヌ争いが始まる。ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)が失速した一方で、ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)から6秒差で総合2位につけるジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)が得意の爆発的な加速でメイン集団から飛び立った。

独走勝利した第3ステージの最終山岳と同じ状況からのアタック。今回はティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)がアラフィリップに食らいついた。勢いよくメイン集団を抜け出したアラフィリップとピノが、デマルキを追い抜き、先頭デヘントから30秒遅れで3級山岳ラ・ジェイレールの頂上に到達。2番手通過したアラフィリップがボーナスタイム5秒を獲得し、チッコーネとの総合タイム差を1秒にまで詰める。

逃げるデヘント、20秒遅れで追いかけるアラフィリップとピノ、そして30秒遅れで追いかける約35名のメイン集団。スプリント勝負に持ち込みたいサンウェブ勢がメイン集団を牽引したものの、エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ)らが抑え役としてローテーションの間に入る。こうしてアラフィリップとピノがメイン集団から逃げる展開が続く。

デヘントのペースは最後まで落ちなかった。0km地点からアタックし、逃げグループを率い、全てのカテゴリー山岳を先頭通過し、残り14km地点で独走に持ち込んだデヘントが残り1kmを切って後方を振り返る。アラフィリップとピノが視界に入ったものの、その間には十分な距離があった。フィニッシュラインまで距離を残してハンドルから両手を離し、デヘントが頭を抱えて独走フィニッシュ。続いて最後までメイン集団を引き離すために協調したピノとアラフィリップが6秒遅れで飛び込み、メイン集団はマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)を先頭に26秒遅れでフィニッシュした。

デマルキを引き離すトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)デマルキを引き離すトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) photo:CorVos
頭を抱えてフィニッシュするトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)頭を抱えてフィニッシュするトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) photo:Luca Bettini
6秒遅れでフィニッシュするティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)とジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)6秒遅れでフィニッシュするティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)とジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Luca Bettini
攻撃を成功させたジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)攻撃を成功させたジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
26秒遅れの集団先頭でフィニッシュするマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)26秒遅れの集団先頭でフィニッシュするマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ) photo:Kei Tsuji
落車しながらもステージ10位でフィニッシュしたゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)落車しながらもステージ10位でフィニッシュしたゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス) photo:Kei Tsuji


逃げ職人デヘントの独走勝利と、アラフィリップのマイヨジョーヌ奪回

「1日中ずっと調子は良かった。タイム差が5分から3分30秒まで縮まったものの、補給ポイントの登りまであえてペースを落とした。そこから再び加速して、逃げ切るために十分なリードを得た。残り70kmから最後の山岳まで全開走行だった。メイン集団が近づいてきていたので、逃げ切るには独走に持ち込む必要があったんだ」と、絶妙なペースコントロールで逃げ切りを果たしたデヘントは語る。

2016年のモンヴァントゥー山頂フィニッシュ(フルームがランニングした日)に続くステージ通算2勝目を飾ったデヘント。「いくつかのコーナーで落車しかけたけど逃げ切りを達成。とても苦しんだ甲斐があった。ステージ優勝というロット・スーダルの目標も達成することができたよ」。この日だけで山岳ポイントを29ポイント獲得したデヘントはウェレンスに続いて山岳賞2位に浮上している。

そしてマイヨジョーヌはアラフィリップの手に。3級山岳ラ・ジェイレールの頂上からフィニッシュまで平均47.6km/hで走ったデヘントには届かなかったが、同49.6km/hで走ったアラフィリップが、同48.5km/hのメイン集団を振り切った。

ピノとともに力づくでメイン集団から20秒を奪い、さらにボーナスタイムを合計9秒獲得してチッコーネから23秒差で総合首位に返り咲いたアラフィリップ。「理想的なシナリオだったけど、ここまで上手くいくとは思っていなかった。でも失うものはなかったし、タイム差6秒をひっくり返すために動くことにした。アタックしてからフィニッシュまではフルガス(全開)。ティボー・ピノと2人という状況も味方した。もし単独だったらメイン集団を引き離せていなかったかもしれない」と、何度も喜びに溢れた表情でガッツポーズを繰り返したアラフィリップは語る。

アラフィリップは「マイヨジョーヌを着てバスティーユデイ(フランス革命記念日)を迎えるなんて、これ以上に素晴らしい夢はない」とコメント。ともに逃げたピノが総合3位に浮上しており、国民の祝日を前にフランスは沸いた。

ステージ通算2勝目を飾ったトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)ステージ通算2勝目を飾ったトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) photo:Kei Tsuji
マイヨジョーヌを奪い返したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)マイヨジョーヌを奪い返したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
コメンテーターとして登場したマルセル・キッテルコメンテーターとして登場したマルセル・キッテル photo:Kei Tsuji29分遅れでフィニッシュするヨアン・オフルド(フランス、ワンティ・グループゴベール)とラルスイティング・バク(デンマーク、ディメンションデータ)29分遅れでフィニッシュするヨアン・オフルド(フランス、ワンティ・グループゴベール)とラルスイティング・バク(デンマーク、ディメンションデータ) photo:Luca Bettini
ツール・ド・フランス2019第8ステージ結果
1位トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)5:00:17
2位ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)0:00:06
3位ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
4位マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)0:00:26
5位ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)
6位マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)
7位クサンドロ・ムーリッセ(ベルギー、ワンティ・グループゴベール)
8位グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)
9位エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)
10位ゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)
45位ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)0:04:25
DNSティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、EFエデュケーションファースト)
DNFクリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)34:17:59
2位ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)0:00:23
3位ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)0:00:53
4位ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ユンボ・ヴィズマ)0:01:10
5位ゲラント・トーマス(イギリス、チームイネオス)0:01:12
6位エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)0:01:16
7位ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)0:01:27
8位リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト)0:01:38
9位ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)0:01:42
10位エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)0:01:45
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)204pts
2位マイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)144pts
3位ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・メリダ)129pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)43pts
2位トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)37pts
3位ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)30pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)34:18:22
2位エガン・ベルナル(コロンビア、チームイネオス)0:00:53
3位エンリク・マス(スペイン、ドゥクーニンク・クイックステップ)0:01:23
チーム総合成績
1位トレック・セガフレード103:29:48
2位モビスター0:01:39
3位グルパマFDJ0:01:44
text&photo:Kei Tsuji in Saint-Étienne, France
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