ツアー・オブ・ジャパン第6ステージが、静岡県の須走商店街からふじあざみラインのコースで行われ、登りの中盤から独走したクリス・ハーパー(チーム・ブリッジレーン)が優勝し、個人総合首位に立った。増田成幸(宇都宮ブリッツェン)が4位に入り、個人総合でも4位に浮上した。



4賞ジャージと、ホームチームのチームブリヂストンサイクリングを先頭に84名がスタートラインに揃った4賞ジャージと、ホームチームのチームブリヂストンサイクリングを先頭に84名がスタートラインに揃った photo:Satoru Kato
各チーム激坂対応の機材を用意。インナーギアも極小各チーム激坂対応の機材を用意。インナーギアも極小 photo:Satoru Katoコース沿いから子供達が声援を送るコース沿いから子供達が声援を送る photo:Satoru Kato

ツアー・オブ・ジャパンのクイーンステージとなる富士山ステージ。毎年このステージを制した者が個人総合優勝に大きく近づく重要なステージだ。

今年は富士山の麓にある須走商店街から、2020東京オリンピックのロードレースフィニッシュ地点となる富士スピードウェイの西ゲート前までパレードしたのちリアルスタート。富士スピードウェイの外周道路を2周し、標高差1160m、最大勾配22%を誇るふじあざみラインを登り、富士山5合目にフィニッシュする36kmのレースだ。

この日も朝から青空が広がり、雪が残る富士山の姿が遠方からもはっきりと見える1日。フィニッシュ地点の5合目は毎年寒いくらいだが、この日は日差しが暑く感じるほど。富士の頂は雲間に隠れることなく、最後の選手まで出迎えた。

富士スピードウェイ西ゲート前をスタート富士スピードウェイ西ゲート前をスタート photo:Satoru Kato
ふじあざみラインの旧馬返付近を行く集団 青空をバックに富士山がそびえるふじあざみラインの旧馬返付近を行く集団 青空をバックに富士山がそびえる ©️TOJ2019
リアルスタート直後から、昨年富士ステージの勝者、マルコス・ガルシアを擁するキナンサイクリングチームが集団前方に集まってコントロール。何度か飛び出す動きが起きるものの、長く続かずに吸収されていく。

ふじあざみラインに入ると、メトケル・イヨブ(トレンガヌ・INC・TSG・サイクリングチーム)と、ディラン・サンダーランド(チーム・ブリッジレーン)の2名が先行し、徐々に差を広げていく。そこにクリス・ハーパー(チーム・ブリッジレーン)が追走して合流し、先頭集団は3名となる。後続集団は徐々に人数を減らしながらも追走するが、差は50秒以上まで開いていく。

独走で登り続けるクリス・ハーパー(チーム・ブリッジレーン)独走で登り続けるクリス・ハーパー(チーム・ブリッジレーン) ©️TOJ2019
ふじあざみラインの中間地点付近で、先頭集団からハーパーがアタック。アシストしてきたサンダーランドは離脱し、イヨブが追走する。しかしハーパーとの差は開き、後続集団から追走してきた増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、ベンジャミ・プラデス・レヴェルテル(チーム右京)、ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)ら3名がイヨブの姿が見える位置まで迫る。

クリス・ハーパー(チームブリッジレーン)が富士山ステージ優勝クリス・ハーパー(チームブリッジレーン)が富士山ステージ優勝 ©️TOJ2019
28秒差の2位にメトケル・イヨブ(トレンガヌ・INC・TSG・サイクリングチーム)28秒差の2位にメトケル・イヨブ(トレンガヌ・INC・TSG・サイクリングチーム) photo:Satoru Kato増田成幸(宇都宮ブリッツェン)が、ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)を抑えて4位増田成幸(宇都宮ブリッツェン)が、ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)を抑えて4位 photo:Satoru Kato

後方の争いをよそに、ハーパーは独走を続けて残り1kmへ。途中、蛇行して苦しそうな場面もあったものの、トップを守り続けてフィニッシュした。2位はイヨブ、3位にプラデス、4位に増田が入った。個人総合順位は大きく入れ替わり、ハーパーが首位。45秒差の2位にプラデスが続き、51秒差の4位に増田が浮上した。

個人総合首位はクリス・ハーパー(チーム・ブリッジレーン)個人総合首位はクリス・ハーパー(チーム・ブリッジレーン) photo:Satoru Kato「富士山ステージはツアー・オブ・ジャパンの中でもずっと優勝したいと思っていたステージ。勝てて本当に嬉しい。チームメイトのディランがずっとアシストして引いてくれたおかげで勝てた」と、優勝したハーパー。

「昨年優勝のマルコス・ガルシアをマークしていて、彼がアタックしたけれど止まったので、それを追い越して前に出た。このコースは過去2回登っているので、どこで傾斜が厳しくなるとか、どこで足を使うべきかは分かっていたので、今までの経験が役に立った。明日の伊豆はとてもハードなコースだから、最後に人数が絞られるレースになると思う。前半に誰が前に行くかをよく見て、危ない動きをさせないようにチームでコントロール出来るようにしたい。強いメンバーを揃えてきたので、チーム一丸となって戦いたい」と、コメントした。

ポイント賞 レイモンド・クレダー(チーム右京)ポイント賞 レイモンド・クレダー(チーム右京) photo:Satoru Kato山岳賞はフィリッポ・ザッカンティ(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)がほぼ手中に山岳賞はフィリッポ・ザッカンティ(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)がほぼ手中に photo:Satoru Kato



昨年覇者のマルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)は6分45秒遅れの33位昨年覇者のマルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)は6分45秒遅れの33位 photo:Satoru Kato下馬評では、昨年優勝のマルコス・ガルシア有利と見られていたが、まさかの失速。6分45秒遅れの33位に終わり、連覇の可能性はかなり厳しくなった。

一方で増田が個人総合で1分以内の4位につけ、さらなる上位進出に期待が高まる。とは言え、首位のハーパーは今期好調。総合2位のプラデス、総合3位の伏兵イヨブ、さらにはホセ・ビセンテ・トリビオ、フランシスコ・マンセボのマトリックスパワータグ2人が1分差で続いており、簡単に逆転は許さないだろう。

明日は事実上総合優勝が決まる伊豆ステージ。個人総合首位の証・グリーンジャージは誰の手に渡るのか?

第6ステージ:富士山 結果(須走商店街→富士スピードウェイ周回コース→ふじあざみライン 36km)
1位 クリス・ハーパー(オーストラリア、チーム・ブリッジレーン) 1時間22分24秒
2位 メトケル・イヨブ(エリトリア、トレンガヌ・INC・TSG/ +28秒
3位 ベンジャミ・プラデス・レヴェルデル(スペイン、チーム右京) +43秒
4位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) +51秒
5位 ホセ・ビセンテ・トリビオ(スペイン、マトリックスパワータグ)
6位 フランシスコ・マンセボ・ペレス(スペイン、マトリックスパワータグ) +1分6秒
7位 フン・カホー(香港、HKSIプロサイクリングチーム) +1分12秒
8位 フィリッポ・ザッカンティ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) +1分20秒
9位 ドリュー・モレ(オーストラリア、トレンガヌ・INC・TSG・サイクリングチーム) +1分25秒
10位 アドリアン・ギロネット(フランス、インタープロサイクリングアカデミー) +1分38秒
個人総合成績(第6ステージ:富士山 終了時)
1位 クリス・ハーパー(オーストラリア、チーム・ブリッジレーン) 13時間50分42秒
2位 ベンジャミ・プラデス・レヴェルテル(スペイン、チーム右京) +45秒
3位 メトケル・イヨブ(エリトリア、トレンガヌ・INC・TSG/ +46秒
4位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) +51秒
5位 ホセ・ビセンテ・トリビオ(スペイン、マトリックスパワータグ) +1分
6位 フランシスコ・マンセボ・ペレス(スペイン、マトリックスパワータグ) +1分7秒
ポイント賞(第6ステージ:富士山 終了時)
1位 レイモンド・クレダー(オランダ、チーム右京) 67p
2位 フェデリコ・ズルロ(イタリア、ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー) 57p
3位 窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング) 55p
山岳賞(第6ステージ:富士山 終了時)
1位 フィリッポ・ザッカンティ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) 33p
2位 メトケル・イヨブ(エリトリア、トレンガヌ・INC・TSG/ 19p
3位 クリス・ハーパー(オーストラリア、チーム・ブリッジレーン) 15p
チーム総合(第6ステージ:富士山 終了時)
1位 マトリックスパワータグ 41時間37分28秒
2位 トレンガヌ・INC・TSG・サイクリングチーム +10秒
3位 チーム・ブリッジレーン +1分41秒
text&photo:Satoru Kato