5月9日、ツール・ド・フランスでステージ通算14勝を飾っているマルセル・キッテル(ドイツ)が所属するカチューシャ・アルペシンとの契約を終了し、チームを離脱することを発表した。実質的にトップレースから身を引く決断について「消耗しきっている感覚」を理由に挙げている。



シーズン途中でチーム離脱を発表したマルセル・キッテル(ドイツ)シーズン途中でチーム離脱を発表したマルセル・キッテル(ドイツ) (c)Team KATUSHA ALPECIN
「私自身の要請により、カチューシャ・アルペシンと私は契約を終了することに同意した」。カチューシャ・アルペシンのプレスリリースの中でキッテルはチームとの契約終了を発表した。

「一人の人間としてアスリートとして何をしたいのか、何が大事なのかという疑問が生まれる中で、状況を見極めるには長い時間がかかった。サイクリングを愛する気持ちやこの美しいスポーツへの情熱を失ったわけじゃない。勝つためには何が必要か、何をすべきかということも分かっている。誰しもがそれぞれ強さと弱さを持ち合わせていて、勝ち続けるためにはチームの中でそれらと上手く付き合わなければならない。この2ヶ月間ずっと、消耗しきっている感覚があった。現状、トレーニングを重ねて、世界トップレベルのレースを走るのは難しい状態にある。この理由から、少し休養をとって、自分のための時間を持つことに決めたんだ。自分の目標について考え、将来への予定を立てたい」と、チーム離脱の理由を語っている。

2011年にスキル・シマノでプロ入りしたキッテルは同年ブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝。同チームで5年間を過ごした後、2016年にエティックス・クイックステップ(現ドゥクーニンク・クイックステップ)に移籍するとさらに勝利数を伸ばすことに成功する。ジロ・デ・イタリアではステージ通算4勝、ツール・ド・フランスではステージ通算14勝をマーク。身長188cmの大柄な体躯を生かしたパワフルなスプリントを武器に一時代を築き、ステージレースからワンデーレースまで幅広く勝利数を残してきた。

しかし2018年にカチューシャ・アルペシンに移籍すると低迷が続き、シーズン中に飾った勝利はティレーノ〜アドリアティコでのステージ2勝のみ。ツールでは第1ステージ3位、第4ステージ5位にとどまり、第11ステージでタイムアウト。今シーズンは2月のマヨルカチャレンジで1勝を飾ったが、4月のシュヘルデプライスを最後に戦線を離脱していた。

2017年のクイックステップフロアーズ時代にはマイヨヴェールも獲得した2017年のクイックステップフロアーズ時代にはマイヨヴェールも獲得した photo:Makoto.AYANO
2年連続シャンゼリゼを制したマルセル・キッテル2年連続シャンゼリゼを制したマルセル・キッテル photo:Makoto Ayano2018年のティレーノ~アドリアティコではステージ2勝を挙げたマルセル・キッテル2018年のティレーノ~アドリアティコではステージ2勝を挙げたマルセル・キッテル photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari


笑顔が眩しいマルセル・キッテル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)笑顔が眩しいマルセル・キッテル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン) photo:Kei Tsuji
調整不足を理由にツール・ド・ヨークシャーとツアー・オブ・カリフォルニアを立て続けに欠場した中でのキッテルのチーム契約終了。キッテルは2018年からともに過ごしたカチューシャ・アルペシンに感謝する。「この1年半にわたるチームのサポートに感謝している。特にチームのスタッフには重ねて感謝したい。心の底から、彼らはこれまで出会った中で最高のスタッフだったと言える。彼らの情熱に勝利で報いることができなくなったことを残念に思う。チームを信頼して支えてくれているスポンサーやパートナーにも感謝したい」。

2日後に31歳の誕生日(1988年5月11日生まれ)を迎えるキッテルの今後の活動は全くの白紙の状態。将来についてキッテルは「新しい進路や機会に向け、自分の長年の経験からこの決断に至った。不確定要素が多い中でも、これから新しいチャンスやチャレンジを見つけることができると確信している。これからは幸せや楽しさを感じながら将来に向けて歩んでいきたい。何が起こるのか今から楽しみだ。将来的にまたロードバイクに乗ってレースに戻りたい。楽しむという目標に向かって目標を立てたい。これは自分のキャリアの中で最大のチャレンジ。この事実を受け入れている」と語っている。

text:Kei Tsuji

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