ラスト2km、4人の先頭グループから大本命の長沼隆行(宇都宮ブリッツェン)がアタックしてゴールへ。そこに後方から追いついたのは平塚吉光(シマノレーシング)。平塚はゴール前で長沼をかわしシマノ加入1年目にして早くも1勝を挙げた。

TR スタートTR スタート photo:Hideaki.TAKAGI4月11日(日)、岐阜県関ヶ原町の伊吹山ドライブウェイで、第3回全日本実業団ヒルクライムin伊吹山ドライブウェイが行われた。これは第3回パナソニックヒルクライムとの併催で、当日は合わせて2880名のエントリーとなり、冬季閉鎖期間の伊吹山ドライブウェイはサイクリストでにぎわった。

当初の17km標高差1075mが頂上近くの積雪のため、12kmに短縮されての開催となった。コースは平均勾配6%、緩急はあるものの短いこともあり、通常のヒルクライムよりはややパワーのある選手に有利なものとなっている。


移籍後初レースの阿部良之(マトリックスパワータグ・コラテック)移籍後初レースの阿部良之(マトリックスパワータグ・コラテック) photo:Hideaki.TAKAGITRクラスは85名がスタートラインに付く。移籍後初レースの阿部良之(マトリックスパワータグ・コラテック)や、国内レースで久々の福島晋一(GEUMSAN GINSENG ASIA)などの顔ぶれも。
スタートアタックは平林昌樹(湘南ベルマーレ)。早くもそれを長沼隆行(宇都宮ブリッツェン)と狩野智也(チームブリヂストン・アンカー)の日本を代表するヒルクライマー2人が追う。その後は先頭で積極的にペースを上げるのは村上純平(シマノレーシング)、鈴木譲(シマノレーシング)、伊丹健治(チームブリヂストン・アンカー)、柿沼章(宇都宮ブリッツェン)そして狩野と長沼も先頭に立つ。3km地点ではこれら選手のペースアップで先頭は15名ほどに絞られる。クラブチームの角田昌洋(エルドラード-TR)も積極的に加わる。

4km過ぎ、ハイペースで一列棒状で上る先頭集団が、パナソニックヒルクライムの下山途中の選手たちの横を声援を受けながら過ぎる。先頭は狩野、長沼、村上、鈴木がペースを上げていく。特に狩野はペースを上げることで、そして長沼はキレのいいアタックで集団の人数を減らしていく。


4km地点、下山待ちの選手から声援を受ける4km地点、下山待ちの選手から声援を受ける photo:Hideaki.TAKAGI7km地点で狩野がさらにペースを上げて一人飛び出すと、それを平塚、長沼が追走し合流、さらに福島も加わり4人の先頭集団ができる。ここから約1kmにわたって狩野と長沼のアタック合戦が始まる。そして8km地点で長沼がアタックすると3人が離れ、長沼の独走状態に。

長沼は後続3人に20秒差をつけゴールへ向かう。一方で後続の3人は狩野と福島が長沼を追走し差を詰めていき、平塚だけがゴール500m前で長沼についに追いつく。先行する長沼を平塚がゴール前でかわして先着、見事シマノ入り後初優勝を飾った。同時にJサイクルツアーリーダーともなった。


5km地点、福島晋一(GEUMSAN GINSENG ASIA)がペースアップ5km地点、福島晋一(GEUMSAN GINSENG ASIA)がペースアップ photo:Hideaki.TAKAGI平塚「チャレンジロードの悔しさを思いながらもがいた」
優勝の平塚は「優勝できてびっくりしています。4人になったときに後ろから(ツアーリーダーの)畑中さんが来ていて引かない区間があって申し訳なかったのですが。その後に福島さんがアタックかけて長沼さんとの距離がつまったので、そこから踏んだら長沼さんに追いつきました。ヒルクライムの優勝は初めてです。先週のチャレンジロードは地元だし本当に勝ちたかったので、2位の結果はとても残念でした。今日はそのことを思いながら最後もがきました」
「自分はあまり練習できていないので、チームでは畑中さんのリーダーを守ることをまず考え、自分の名前はミーティングで出ていなかったです。でも昨夜はプレッシャーで胃が痛くなっていました。次のレースは17日からのツアー・オブ・フィリピンで、そこで頑張ってチームに貢献したいです」


6km地点、狩野智也(チームブリヂストン・アンカー)がアタック6km地点、狩野智也(チームブリヂストン・アンカー)がアタック photo:Hideaki.TAKAGI長沼「狩野さんにタイム差をつけて勝ちたかった」
2位の長沼はこう語る。「勾配がゆるかったので僕と狩野さん交互にアタックして潰し合いをしてしまったと思っています。こういうコースでライバルになるのはやはり狩野さんと思ってレースをしていました。ラスト2kmでアタックして差をつけたけれども、一部平坦区間があってそこでだいぶ詰められました。僕も狩野さんも後半はチームメイトがいなかったので同じですね」
「ゴールスプリントで勝つつもりはありませんでした。狩野さんにタイム差をつけて逃げ切って勝てば、世代交代ができるのかなと考えていました。やはり(優勝という)結果は出さないといけないですね」


8km地点、4人の戦いが続く8km地点、4人の戦いが続く photo:Hideaki.TAKAGI先頭を引き続けた狩野
4位となった狩野。「3日前にタイから帰ってきました。どうやって勝とうか考えながら走りましたが、やはり回復しきれていなかったです。調子が良ければ先頭を走っていけば後ろが切れていくのが僕のスタイル。今日は積極的に行ったし、カウンターで長沼が行ったときもそれほど怖くはなかったです。4位という結果は残念ですが、タイに行ったメンバーは上位にいないし、僕の場合回復しきれていなかったと思います」
「最後は結局僕と福島とで回っていて、平塚の畑中を待つ動きは気にしないでいました。結果として2人は優勝者のアシストをしてしまったとは思いますが。僕らレースはこれだけじゃないし、引く引かないで負けるようじゃだめだし。長沼は僕の中では一番いい走りをしていたので、長沼にあそこで勝って欲しかったという気持ちはあります。勝ち負けの世界、反省して思うことはたくさんあります」


8.5km地点、長沼隆行(宇都宮ブリッツェン)がアタック8.5km地点、長沼隆行(宇都宮ブリッツェン)がアタック photo:Hideaki.TAKAGI福島「出るからには優勝を狙っていたが」
3位の福島は語る。「今日は長沼にやられました。狩野と自分で長沼を追ったとき、最後は平塚にも引かせたのですが、みんな一杯一杯で平塚だけが届きました。平塚も強いですね。今日は当然優勝を狙って走りましたが、追い込んだ練習ができていないので最後のスプリントなどができず、TOJに向けて課題が見つかりました。怪我明けで鎖骨にはまだボルトが入っています。久しぶりの国内レースで、僕にとっては楽しい同窓会のような感じですね。TOJでは1番取りますよ!」

先頭集団ではそれぞれの思いがあった。
平塚は1週間前のチャレンジロードU23で惜敗した悔しさをぶつけた。


平塚吉光(シマノレーシング)が優勝平塚吉光(シマノレーシング)が優勝 photo:Hideaki.TAKAGI長沼は山岳王の狩野に秒差をつけて優勝したい、という強いこだわりがあったことが結果として裏目に出た。だがアタックの回数とキレのよさは随一のもの。チャレンジロードで2周にわたり逃げた走りとともに、積極性は高く評価できる。

狩野は日本の山岳王らしく正面から堂々と力ずくでライバルを蹴落とした姿は圧巻。序盤から誰よりも先頭を走る時間が長く、4位だけれども「山岳王はやはり狩野」の印象を強くライバル達に与えた。


結果
TR
優勝でリーダージャージも獲得の平塚吉光(シマノレーシング)優勝でリーダージャージも獲得の平塚吉光(シマノレーシング) photo:Hideaki.TAKAGI1位 平塚吉光(シマノレーシング)27分55秒35
2位 長沼隆行(宇都宮ブリッツェン)
3位 福島晋一(GEUMSAN GINSENG ASIA)+20秒
4位 狩野智也(チームブリヂストン・アンカー)+29秒
5位 畑中勇介(シマノレーシング)+42秒
6位 真鍋和幸(マトリックスパワータグ・コラテック)+45秒
7位 野寺秀徳(シマノレーシング)+50秒
8位 村上純平(シマノレーシング)+55秒
9位 鈴木譲(シマノレーシング)+57秒
10位 森本誠(イナーメ・アイランド信濃山形-TR)+58秒
Jサイクルツアー・リーダー 平塚吉光(シマノレーシング)

FR
1位 星川恵利奈(湘南ベルマーレ コムレイド)36分38秒18
2位 福本千佳(Ready Go JAPAN)+2分33秒
3位 西塚優美(SQUADRA CORSA cicli HIDE)+2分44秒
Jフェミニン・リーダー 西塚優美(SQUADRA CORSA cicli HIDE)

BR-1
1位 南島康一(竹芝サイクルレーシング)29分29秒52
2位 乾友行(竹芝サイクルレーシング)+11秒
3位 清宮洋幸(竹芝サイクルレーシング)+29秒
4位 佐々木英雄(Tacurino.net)+43秒
5位 角谷健吾(大阪大学Cuesta Azul)+1分09秒
6位 村山利男(vitesse-イチカワレーシングチーム)+1分14秒

ER1組
1位 池本幸男(EsperanceStage我逢人)31分17秒07
2位 小口尚思(スミタ・ラバネロ)+1分00秒
3位 有吉竜一(TEAM☆ルパンttm)+1分09秒
4位 熊崎祥太(R2 SPORTS CYCLINGTEAM)+1分24秒
5位 内田晋平(シマノドリンキング)+1分30秒
6位 村山優弥(スワコレーシングチーム)+1分32秒

ER2組
1位 水間健(チームスクアドラ)32分06秒38
2位 高柳智尚(BREZZAカミハギRT)
3位 竹内鉄平(快レーシング)+01秒
4位 鈴木悠史(トーヨーレーシングチーム)+05秒
5位 村岡俊典(R2 SPORTS CYCLINGTEAM)+10秒
6位 西島正太(チームオーベスト)+12秒

パナソニックヒルクライム&各クラス表彰の模様

パナソニックヒルクライム C-1先頭グループパナソニックヒルクライム C-1先頭グループ photo:Hideaki.TAKAGIパナソニックヒルクライム 下界は桜と新緑がまぶしいパナソニックヒルクライム 下界は桜と新緑がまぶしい photo:Hideaki.TAKAGI

パナソニックヒルクライム 女子の皆さんパナソニックヒルクライム 女子の皆さん photo:Hideaki.TAKAGIパナソニックヒルクライム 女子の皆さんパナソニックヒルクライム 女子の皆さん photo:Hideaki.TAKAGI

パナソニックヒルクライム ゴール地点はたくさんの応援がパナソニックヒルクライム ゴール地点はたくさんの応援が photo:Hideaki.TAKAGIパナソニックヒルクライム ロードFA先頭パナソニックヒルクライム ロードFA先頭 photo:Hideaki.TAKAGI


FR表彰FR表彰 photo:Hideaki.TAKAGIBR-1表彰BR-1表彰 photo:Hideaki.TAKAGI

ER2組表彰ER2組表彰 photo:Hideaki.TAKAGIER1組表彰ER1組表彰 photo:Hideaki.TAKAGI




photo&text:高木秀彰

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