ヨークシャーの丘を吹き抜ける強風を利用したチームイネオスとCCCチームの集団分断作戦が成功。ツール・ド・ヨークシャー第3ステージを締めくくる精鋭グループによる集団スプリントで、アレクサンダー・カンプ(デンマーク、リワルレディネスサイクリング)が金星を飾った。


ヨークシャー東部の海岸線に近い丘陵地帯を走るヨークシャー東部の海岸線に近い丘陵地帯を走る photo:SWPix.com/A.S.O.
ブリドリントンからスカボローまで、北海に近いヨークシャー東部の丘陵地帯を走る132kmで行われたツール・ド・ヨークシャー第3ステージ。登場する5つのカテゴリー山岳の難易度はさほど高くないが、コンスタントに吹き付ける北風がタフな展開を生み出した。

晴れ、曇り、雨降りのインターバルが続くヨークシャーらしい天候の中、この日も地元イギリスのUCIプロコンチネンタルチームとUCIコンチネンタルチームの選手たちが果敢に逃げを打つ。ロメン・シカール(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)やケヴィン・レザ(フランス、ヴィタルコンセプト・B&Bホテルズ)といったトップチーム経験者を含む9名の逃げグループが形成され、その中で積極的に山岳ポイントを稼いだロバート・スコット(イギリス、チームウィギンス・ルコル)が山岳賞ジャージを射止めている。

メイン集団はカチューシャ・アルペシンやCCCチームを先頭に、逃げグループとのタイム差を2分以内に抑え込みながらステージ前半の向かい風区間を消化。中盤に差し掛かって風向きが変わると、チームイネオスが人数を揃えて集団先頭に上がり始める。この日3つ目のカテゴリー山岳ライスバンク(距離1.1km/平均10%)を越えるとすぐ、チームイネオスとCCCチームがアクセルを踏み込んだ。

急勾配の登りで縦に長く伸びた集団を、その後の吹きっさらし横風区間で完全に破壊したチームイネオスとCCCチーム。エシュロンを形成しながら脱落していく選手たちを尻目に、序盤から逃げていた選手たちを吸収しながら精鋭グループが先を急ぐ。前日のステージ優勝者リック・ツァベル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)を始め、登りでポジションを下げていたスプリンターたちはこの動きに乗ることができなかった。

ルームポット・シャルルやカチューシャ・アルペシン、CCCチームがメイン集団をコントロールルームポット・シャルルやカチューシャ・アルペシン、CCCチームがメイン集団をコントロール photo:SWPix.com/A.S.O.
ファンアーフェルマートの大会連覇を目指すCCCチームファンアーフェルマートの大会連覇を目指すCCCチーム photo:SWPix.com/A.S.O.
横風区間で集団を破壊したチームイネオスとCCCチーム横風区間で集団を破壊したチームイネオスとCCCチーム photo:SWPix.com/A.S.O.
チームイネオスが6名、CCCチームが4名、リワルレディネスサイクリングが4名を揃えた約20名の精鋭グループは追い風に乗って高速巡航を続けた。大柄なイアン・スタナード(イギリス、チームイネオス)らの強力な引きによって後続の選手たちは復帰できず。ステージ優勝ならびに総合優勝の行方は実質的に先頭の約20名に絞られることに。

人数を揃えるチームイネオスが断続的なアップダウンを利用して仕掛けるシーンも見られたが、終盤にかけて平均スピード50km/hで駆け抜けた精鋭グループから抜け出す選手は現れない。残り5kmから始まる短い登りで仕掛ける選手も現れず、ステージ優勝は20名による小集団スプリントで決することに。

スカボローの海岸通りに打ち付ける高波によって当初の予定よりも800m短縮されたフィニッシュ地点。クリストファー・フルーム(イギリス)を含むチームイネオスがメンバー全員でリードアウトトレインを形成するシーンも見られたが、残り1kmサインの時点でCCCチームが主導権を奪う。強い北風に押し戻される形で、およそ30km/hほどで進んだスプリントへのリードアウト。誰もが躊躇する向かい風区間を終えると、チームイネオスが最初に仕掛けた。

鋭い加速で一気に先頭に立ったオウェイン・ドゥール(イギリス)が、チームイネオスのエースを担うクリストファー・ローレス(イギリス)を発射する。ポジション&タイミングともに完璧な形でスプリントに持ち込んだローレスに、前年度の総合優勝者グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)とアレクサンダー・カンプ(デンマーク、リワルレディネスサイクリング)が対抗。向かい風から一転追い風になった最終ストレートで、70km/hに達するスプリントを披露したカンプがローレスとファンアーフェルマートを追い抜いた。

ステージ後半のアップダウン区間で仕掛けるオウェイン・ドゥール(イギリス、チームイネオス)ステージ後半のアップダウン区間で仕掛けるオウェイン・ドゥール(イギリス、チームイネオス) photo:SWPix.com/A.S.O.
接戦スプリントを制したアレクサンダー・カンプ(デンマーク、リワルレディネスサイクリング)接戦スプリントを制したアレクサンダー・カンプ(デンマーク、リワルレディネスサイクリング) photo:SWPix.com/A.S.O.
今年UCIコンチネンタルチームからUCIプロコンチネンタルチームに昇格したデンマークのリワルレディネスサイクリングに所属する25歳のカンプ。2018年にツアー・オブ・ノルウェーでステージ1勝&総合2位という成績を残しているオールラウンダーが、ビッグチームを破って金星を飾った。

「横風が吹き荒れるハードなステージだったけど、常に風に警戒して集団前方で展開していたチームの走りがこの勝利に繋がった。チームメイトのおかげで力を温存できていたし、本能に従ってスプリントしたんだ。明日ももちろんステージ優勝に絡みたい」と語るカンプは総合2位に浮上している。

イネオスジャージでの初勝利を逃し、フィニッシュラインで悔しさを爆発させたローレスが総合首位の証であるブルージャージを獲得。チームイネオスが大会制覇に王手をかけたが、カンプが0秒差の総合2位、ファンアーフェルマートが6秒差の総合3位につけている。パンチャー&オールラウンダー向きのアップダウンコースで行われる翌日の最終ステージで接戦の総合争いが繰り広げられることになりそうだ。

チームメイトたちと勝利を喜ぶアレクサンダー・カンプ(デンマーク、リワルレディネスサイクリング)チームメイトたちと勝利を喜ぶアレクサンダー・カンプ(デンマーク、リワルレディネスサイクリング) photo:SWPix.com/A.S.O.
総合首位に立ったクリストファー・ローレス(イギリス、チームイネオス)総合首位に立ったクリストファー・ローレス(イギリス、チームイネオス) photo:SWPix.com/A.S.O.

ツール・ド・ヨークシャー2019第3ステージ結果
1位 アレクサンダー・カンプ(デンマーク、リワルレディネスサイクリング) 3:23:24
2位 クリストファー・ローレス(イギリス、チームイネオス)
3位 グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)
4位 ラスムス・ティレル(ノルウェー、ディメンションデータ)
5位 スコット・スワイツ(イギリス、ヴィタすプロサイクリング)
6位 オウェイン・ドゥール(イギリス、チームイネオス)
7位 マシュー・ホームズ(イギリス、マディソンジェネシス)
8位 アナス・ストクブロ(デンマーク、リワルレディネスサイクリング)
9位 ニック・ファンデルレイケ(オランダ、ルームポット・シャルル)
10位 イエンセ・ビエルマンス(ベルギー、カチューシャ・アルペシン)
個人総合成績
1位 クリストファー・ローレス(イギリス、チームイネオス) 10:38:15
2位 アレクサンダー・カンプ(デンマーク、リワルレディネスサイクリング)
3位 グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) 0:00:06
4位 アナス・ストクブロ(デンマーク、リワルレディネスサイクリング) 0:00:10
5位 スコット・スワイツ(イギリス、ヴィタすプロサイクリング)
6位 コナー・スウィフト(イギリス、マディソンジェネシス)
7位 ニック・ファンデルレイケ(オランダ、ルームポット・シャルル)
8位 オウェイン・ドゥール(イギリス、チームイネオス)
9位 エディ・ダンバー(アイルランド、チームイネオス)
10位 イエンセ・ビエルマンス(ベルギー、カチューシャ・アルペシン)
ポイント賞
クリストファー・ローレス(イギリス、チームイネオス)
山岳賞
ロバート・スコット(イギリス、チームウィギンス・ルコル)