カヴェンディッシュの第2の故郷ハロゲートと9月の世界選手権ロードの周回コースを通過するヨークシャー第2ステージ。今日も雨のレースとなったカオスなゴールスプリントを制したのはカチューシャのリック・ツァベル。4年ぶりの勝利で、偉大なスプリンターの父に一歩近づいた。
スタートラインに並んだ各賞リーダージャージ。総合首位はジャスパー・アッセルマン( オランダ、ルームポット・シャルレ); (c)CorVos
ツール・ド・フランスのグランデパールのレガシーとして始まって5回目のツール・ド・ヨークシャー。第2ステージはバーンズレイ〜べダーレの132kmで行われた。この日の75km〜90km地点ではハロゲート近郊の世界選手権ロードレースの周回コースの一部を通過するのが話題。コースは平坦基調ながらアップダウンが続き、スプリントステージになるだろうという予想。
今日のキーとなる世界選手権ロードレースコースは14kmを7周するサーキット。それを今日は1周だけする。出場を控える選手たちにとってはその下見にもなる。
約3時間の距離の短いステージ。しかしイージーというわけでなく、今日も雨模様でさらに気温が低め。展開の圧縮される短い距離のレースで、ワールドツアー4チームがレースをコントロールしきれない展開が予想された。
ハロゲート近郊の世界選手権コースを行くプロトン photo:SWPix.com/A.S.O
今日もプロコンチ、コンチチームからの混成グループが序盤から逃げて高いモチベーションを見せる。ファビアン・グルリエ(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)のみがプロコンで、あとの5人はコンチ所属という、イギリス3人、フランス、アイルランド、ニュージーランドがひとりづつの6人の逃げ。そのなかでもっとも総合上位につけるのは42位(+11秒)のクリストファー・マグリンチェイ(アイルランド、ヴィータスプロサイクリング)。
ペースを上げながらヨークシャーの街を抜けていくメイン集団 photo:SWPix.com/A.S.O
集団は今日もチームイネオスが主にコントロールし、コフィディスが協力する。逃げ切られた昨日の教訓は生かされたのか、残り50kmで1分差と、タイム差を広げない走りだ。
途中通過するハロゲートの街ではマーク・カヴェンディッシュ(ディメンションデータ)が集団の先頭に出て、沿道に詰めかけた観客達に手を振りながら通過する。この街は母の実家があるカヴ第二の故郷。この街の中心部がスタート/フィニッシュ地点となった2010年ツール・ド・フランスでは、カヴはゴールスプリントで落車して骨折、失意のリタイヤをした場所だ。
ヴァーガンディカラーのINEOSジャージを披露するクリス・フルーム(イギリス、チームイネオス) (c)CorVos
残り17kmを切ると逃げグループも逃げ切りと敢闘賞を狙ったアタックが始まり、分裂する。そして後方にメイン集団が迫る。トーマス・スチュアート(キャニオンDHBブロアホームズ)とクリストファー・マグリンチェイ(アイルランド、ヴィータスプロサイクリング)の2人が粘る。マグリンチェイは2016年にツール・ド・北海道を走っている25歳。
レースは残り10kmを切るが、後方集団から合流した3人の選手により5人となったグループの逃げは続く。しかし今日の集団はさすがに逃げ切りを許さなかった。
雨足が強まってきた頃、逃げグループを集団が捉えようとする photo:SWPix.com/A.S.O
雨足の強まる中、スプリントへ向けて激しい位置取り争いが始まる。ヴィタルコンセプト、カチューシャ、イネオス、英国ナショナルチームが主導権闘いを繰り広げ、CCCとディフェンディングチャンピオンのグレッグ・ファンアーフェルマートが先頭に立つ姿も。加えてディメンションデータもカヴェンディッシュの地元勝利に向けて意欲的だ。
混沌とした危険なゴールスプリント。リック・ツァベル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)が先頭に立つ photo:SWPix.com/A.S.O
最終盤、前から3番手といい位置につけたカヴ。しかし苦しみからスプリントを諦めてしまう。落車も発生した危険な位置取り争いで10番手以降から一気にまくりあげたのがリック・ツァベル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)。伸びを見せるとそのまま先頭を切ってフィニッシュした。
スプリントで抜け出したリック・ツァベル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン) photo:SWPix.com/A.S.O
トップフィニッシュで雄叫びを上げるリック・ツァベル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン) photo:SWPix.com/A.S.O
チームメイトたちに祝福されるツァベルの、トップレベルのレースでの勝利は2015年のツアー・オブ・オーストリア(2.HC)でのステージ勝利以来。普段はゴールスプリントに向けての牽引役として働く若手が、今日は主役となり勝利を掴んだ。
リックの父エリック・ツァベルは、4度のミラノ〜サンレモ勝利を含むメジャークラシックを含む通算200勝以上、そしてツール・ド・フランスでは1996年~2001年の6年連続でポイント賞マイヨヴェール獲得者という最高峰のスプリンター。かつてシャンゼリゼのポディウムで父エリックに肩車されて登壇した子供が今、トップスプリンターの仲間入りをしようとしている。そして父も現在はカチューシャのコーチとして関わっている。
リーダージャージは2位に入った昨日の覇者ジャスパー・アッセルマン(オランダ、ルームポット・シャルレ)がキープした。総合タイムではツァベルとの差はわずか1秒。ポイント賞はボーイ・ファンポッペル(オランダ、ルームポット・シャルレ)の手に。
4年ぶりのステージ優勝を飾ったリック・ツァベル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン) photo:SWPix.com/A.S.O
優勝したリック・ツァベル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)のコメント
混沌とした危険なステージで、何度も落車しそうになった。短い距離のステージはいつもフルガスだね。まさにカオスだった。ラスト500mでなんとかいい位置に付き、ロングスプリントを開始した。シーズンスタートで鎖骨を折って準備が遅れていたから心配をしていたんだ。
(久しぶりの勝利に)4年という月日を思うと感情的になり、涙が出てきた。僕は普段はリードアウトマン(牽引役)だから、こうしてレースに勝ったということは、僕だってハイレベルのレースで勝つことができるという確信を与えてくれる素晴らしいもの。今日は本当にレースを楽しめた。ハロゲートの世界選手権コースを走れたのも、だ。本当に美しいコースだった。観客達の応援が素晴らしく、僕もそのときに選手として走りたい。選手には厳しいコースだが、素晴らしいレースになるであろう9月が本当に楽しみになった。
総合リーダーはジャスパー・アッセルマン(オランダ、ルームポット・シャルレ) photo:SWPix.com/A.S.O
ポイント賞はボーイ・ファンポッペル(オランダ、ルームポット・シャルレ) photo:SWPix.com/A.S.O
敢闘賞はジェイコブ・スコット(イギリス、スイフトカーボン プロサイクリング) photo:SWPix.com/A.S.O

ツール・ド・フランスのグランデパールのレガシーとして始まって5回目のツール・ド・ヨークシャー。第2ステージはバーンズレイ〜べダーレの132kmで行われた。この日の75km〜90km地点ではハロゲート近郊の世界選手権ロードレースの周回コースの一部を通過するのが話題。コースは平坦基調ながらアップダウンが続き、スプリントステージになるだろうという予想。
今日のキーとなる世界選手権ロードレースコースは14kmを7周するサーキット。それを今日は1周だけする。出場を控える選手たちにとってはその下見にもなる。
約3時間の距離の短いステージ。しかしイージーというわけでなく、今日も雨模様でさらに気温が低め。展開の圧縮される短い距離のレースで、ワールドツアー4チームがレースをコントロールしきれない展開が予想された。

今日もプロコンチ、コンチチームからの混成グループが序盤から逃げて高いモチベーションを見せる。ファビアン・グルリエ(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)のみがプロコンで、あとの5人はコンチ所属という、イギリス3人、フランス、アイルランド、ニュージーランドがひとりづつの6人の逃げ。そのなかでもっとも総合上位につけるのは42位(+11秒)のクリストファー・マグリンチェイ(アイルランド、ヴィータスプロサイクリング)。

集団は今日もチームイネオスが主にコントロールし、コフィディスが協力する。逃げ切られた昨日の教訓は生かされたのか、残り50kmで1分差と、タイム差を広げない走りだ。
途中通過するハロゲートの街ではマーク・カヴェンディッシュ(ディメンションデータ)が集団の先頭に出て、沿道に詰めかけた観客達に手を振りながら通過する。この街は母の実家があるカヴ第二の故郷。この街の中心部がスタート/フィニッシュ地点となった2010年ツール・ド・フランスでは、カヴはゴールスプリントで落車して骨折、失意のリタイヤをした場所だ。

残り17kmを切ると逃げグループも逃げ切りと敢闘賞を狙ったアタックが始まり、分裂する。そして後方にメイン集団が迫る。トーマス・スチュアート(キャニオンDHBブロアホームズ)とクリストファー・マグリンチェイ(アイルランド、ヴィータスプロサイクリング)の2人が粘る。マグリンチェイは2016年にツール・ド・北海道を走っている25歳。
レースは残り10kmを切るが、後方集団から合流した3人の選手により5人となったグループの逃げは続く。しかし今日の集団はさすがに逃げ切りを許さなかった。

雨足の強まる中、スプリントへ向けて激しい位置取り争いが始まる。ヴィタルコンセプト、カチューシャ、イネオス、英国ナショナルチームが主導権闘いを繰り広げ、CCCとディフェンディングチャンピオンのグレッグ・ファンアーフェルマートが先頭に立つ姿も。加えてディメンションデータもカヴェンディッシュの地元勝利に向けて意欲的だ。

最終盤、前から3番手といい位置につけたカヴ。しかし苦しみからスプリントを諦めてしまう。落車も発生した危険な位置取り争いで10番手以降から一気にまくりあげたのがリック・ツァベル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)。伸びを見せるとそのまま先頭を切ってフィニッシュした。


チームメイトたちに祝福されるツァベルの、トップレベルのレースでの勝利は2015年のツアー・オブ・オーストリア(2.HC)でのステージ勝利以来。普段はゴールスプリントに向けての牽引役として働く若手が、今日は主役となり勝利を掴んだ。
リックの父エリック・ツァベルは、4度のミラノ〜サンレモ勝利を含むメジャークラシックを含む通算200勝以上、そしてツール・ド・フランスでは1996年~2001年の6年連続でポイント賞マイヨヴェール獲得者という最高峰のスプリンター。かつてシャンゼリゼのポディウムで父エリックに肩車されて登壇した子供が今、トップスプリンターの仲間入りをしようとしている。そして父も現在はカチューシャのコーチとして関わっている。
リーダージャージは2位に入った昨日の覇者ジャスパー・アッセルマン(オランダ、ルームポット・シャルレ)がキープした。総合タイムではツァベルとの差はわずか1秒。ポイント賞はボーイ・ファンポッペル(オランダ、ルームポット・シャルレ)の手に。

優勝したリック・ツァベル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)のコメント
混沌とした危険なステージで、何度も落車しそうになった。短い距離のステージはいつもフルガスだね。まさにカオスだった。ラスト500mでなんとかいい位置に付き、ロングスプリントを開始した。シーズンスタートで鎖骨を折って準備が遅れていたから心配をしていたんだ。
(久しぶりの勝利に)4年という月日を思うと感情的になり、涙が出てきた。僕は普段はリードアウトマン(牽引役)だから、こうしてレースに勝ったということは、僕だってハイレベルのレースで勝つことができるという確信を与えてくれる素晴らしいもの。今日は本当にレースを楽しめた。ハロゲートの世界選手権コースを走れたのも、だ。本当に美しいコースだった。観客達の応援が素晴らしく、僕もそのときに選手として走りたい。選手には厳しいコースだが、素晴らしいレースになるであろう9月が本当に楽しみになった。



ツール・ド・ヨークシャー2019第第2ステージ
1位 | リック・ツァベル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン) | 3:09:16 |
2位 | ボーイ・ファンポッペル(オランダ、ルームポット・シャルレ) | |
3位 | クリストファー・ローレス(イギリス、チームイネオス) | |
4位 | アンドリュー・テナント(イギリス、キャニオン DHB ブロアホームズ ) | |
5位 | ダニエル・マクレー(イギリス、英国ナショナルチーム) | |
6位 | アンドレス・ニールセン(デンマーク、リワルレディーネスサイクリングチーム) | |
7位 | ヨナス・ファンヘネヒテン(ヴィタルコンセプト・B&Bホテルズ) | |
8位 | マイケル・ライス(オーストラリア、ハーゲンスバーマン・アクセオン) | |
9位 | シリル・バルト(フランス・エウスカディ・バスクカントリー・ムリアス) | |
10位 | コナー・スウィフト(イギリス、マディソン・ジェネシス) |
総合成績
1位 | ジャスパー・アッセルマン( オランダ、ルームポット・シャルレ) | 7:14:50 |
2位 | リック・ツァベル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン) | 0:00:01 |
3位 | ボーイ・ファンポッペル(オランダ、ルームポット・シャルレ) | 0:00:05 |
4位 | フィリッポ・フォルティン(イタリア、コフィディス) | |
5位 | ヤコブ・ヘネシー(イギリス、キャニオンDHBブロアホームズ ) | |
6位 | ヨナス・ファンヘネヒテン(ヴィタルコンセプト・B&Bホテルズ) | 0:00:07 |
7位 | クリストファー・ローレス(イギリス、チームイネオス) | |
8位 | ケヴィン・ファンマールク(アメリカ、ハーゲンスバーマン・アクセオン) | |
9位 | トーマス・スチュアート(キャニオンDHBブロアホームズ) | |
10位 | シリル・バルト(フランス・エウスカディ・バスクカントリー・ムリアス) | 0:00:11 |
山岳賞
ヤコブ・ヘネシー(イギリス、キャニオンDHBブロールホームズ );4pt
ポイント賞
ボーイ・ファンポッペル(オランダ、ルームポット・シャルレ);19pt
text:Makoto.AYANO
photo:A.S.O,CorVos
ヤコブ・ヘネシー(イギリス、キャニオンDHBブロールホームズ );4pt
ポイント賞
ボーイ・ファンポッペル(オランダ、ルームポット・シャルレ);19pt
text:Makoto.AYANO
photo:A.S.O,CorVos
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