風が吹き、落車が多発し、登りが連続したパリ〜ニース第6ステージ。プロヴァンスの丘で41名に絞られた小集団スプリントで、「ただ身を任せていれば勝てるような調子の良さ」と語るサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)がステージ2勝目を飾った。


晴れ時々曇り、風の強い1日晴れ時々曇り、風の強い1日 photo:CorVos

パリ〜ニース2019第6ステージパリ〜ニース2019第6ステージ photo:A.S.O.ペニエからブリニョールまで、南仏プロヴァンスの丘を駆け抜ける176.5kmのパリ〜ニース第6ステージ。獲得標高差2,100mのアップダウンコースには、終盤にかけて2級、3級、2級というカテゴリー山岳が設定されている。いずれも急勾配ではないが、北西から吹く風速38〜48km/h(10〜13m/s)の強風がレースの難易度を上げた。

レース序盤から逃げたのはアレックス・キルシュ(ルクセンブルク、トレック・セガフレード)、ローラン・ピション(フランス、アルケア・サムシック)、マウロ・フィネット(イタリア、デルコ・マルセイユプロヴァンス)の3名。ファーストアタックを仕掛けたリリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー)は、一旦は逃げに乗りながらも、総合で危険な存在(総合19位/2分15秒遅れ)であるとして集団に戻っている。

3分後方のメイン集団内では落車が頻発し、さらに追い風によってエシュロンを形成して分裂するシーンも。この日はファビオ・ヤコブセン(オランダ、ドゥクーニンク・クイックステップ)やディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)、ローソン・クラドック(アメリカ、EFエデュケーションファースト)ら合計7名がレースを去る結果になっている。

フィニッシュまで48kmを残して早くも逃げを飲み込んだメイン集団は、ピュアスプリンターにとってハードな展開に持ち込みたいバーレーン・メリダとドゥクーニンク・クイックステップ、チームスカイがペースを上げる。連続するカテゴリー山岳で人数を減らしながら残り30km地点の第1中間スプリントに差し掛かると、ヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ)に引き連れられる形でルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)がアタック。総合3位のサンチェスはここで貴重なボーナスタイム3秒獲得に成功した。

プロヴァンスに広がるワイン畑を走るプロヴァンスに広がるワイン畑を走る photo:CorVos
逃げグループを形成するマウロ・フィネット(イタリア、デルコ・マルセイユプロヴァンス)ら逃げグループを形成するマウロ・フィネット(イタリア、デルコ・マルセイユプロヴァンス)ら photo:CorVos
横風区間で飛び出したミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)ら横風区間で飛び出したミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)ら photo:CorVos
前日のステージ優勝者サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)が翌日の山岳ステージに向けて脚を溜める中、ミッチェルトン・スコットがペースアップに合流。相次ぐ落車の影響でメイン集団がさらに絞り込まれていく。

残り4km地点の第2中間スプリントが近づくと再びイサギレとサンチェスがボーナスタイム獲得のために動いたが、今度はリーダージャージのミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)がぴったりとマーク。先着したクウィアトコウスキーがボーナスタイム3秒を奪い返すことに成功している。

後方ではカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)やタオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ)、クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)を含む落車が発生。ステージ優勝候補の一角であるユアンはここで脱落してしまう。集団先頭では、メンバー5名を揃えるグルパマFDJが先頭でリードアウトトレインを走らせた。

ライバルチームに主導権を譲らず、最終牽引役ジャコポ・グアルニエーリ(イタリア)が完璧な形でデマールを発射。第1ステージ7位、第2ステージ8位、第3ステージ8位と、今大会まだ勝利を飾っていないデマールが残り150mから加速して勝ちパターンに持ち込んだが、その後ろからマッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)とサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)が追い上げる。

フィニッシュライン手前でデマールの先行は終わり、差し切ったベネットが激しく右手を振り上げた。

スプリントで競り合うサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)やアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)スプリントで競り合うサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)やアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) photo:CorVos
接戦スプリントを制したサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)接戦スプリントを制したサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
「自信があると、全てが流れるように進む。全てがスムーズに流れているように感じるんだ。がむしゃらに勝利に向かって突き進まなくても、ただ身を任せていれば勝てるような。それほど調子が良くて、正しいポジションにつけていれば勝てるという自信があった」。今シーズン4勝目を飾ったアイルランド生まれのスプリンターは波に乗る。

第3ステージに続く勝利でポイント賞トップに立ったベネット。「自分にできることは、チームメイトを信頼してついていくこと。終盤は登りが連続してハードな展開だったけど、チームは完璧な走りでポジションを守ってくれた。次なる目標であるミラノ〜サンレモに向けて仕上がっている」。ベネットは過去に3回ミラノ〜サンレモに出場し、2017年の66位が最高位。ティレーノ〜アドリアティコ出場中のペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)とダブルエース体制で『ラ・プリマヴェーラ』に挑むことになりそうだ。

ボーナスタイム3秒を獲得したクウィアトコウスキーが総合首位を堅守。2つの中間スプリントで合計5秒を獲得したサンチェスとの総合タイム差は22秒に縮まったが、依然としてチームスカイが総合ワンツー体制を保ったまま。翌日は1級山岳テュリニ峠(全長14.9km/平均勾配7.3%)にフィニッシュするクイーンステージが待っている。

ポイント賞トップに立ったサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)ポイント賞トップに立ったサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos総合首位を守ったミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)総合首位を守ったミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) photo:CorVos
パリ〜ニース2019第6ステージ
1位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) 4:12:35
2位 アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)
3位 マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)
4位 ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、トレック・セガフレード)
5位 ブライアン・コカール(フランス、ヴィタルコンセプト・B&Bホテルズ)
6位 アントニー・テュルジス(フランス、ディレクトエネルジー)
7位 フロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
8位 オリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール)
9位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)
10位 エガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ)
個人総合成績
1位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) 21:35:26
2位 エガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ) 0:00:18
3位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ) 0:00:22
4位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) 0:01:00
5位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ)
6位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 0:01:04
7位 フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) 0:01:08
8位 ジャック・ヘイグ(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) 0:01:17
9位 ルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ) 0:01:21
10位 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) 0:01:24
ポイント賞
1位 サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) 37pts
2位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) 33pts
3位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) 32pts
山岳賞
1位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) 29pts
2位 ダミアン・ゴダン(フランス、ディレクトエネルジー) 21pts
3位 アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、CCCチーム) 20pts
ヤングライダー賞
1位 エガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ) 21:35:54
2位 ヴァランタン・マデュアス(フランス、グルパマFDJ) 0:02:08
3位 イバン・ガルシア(スペイン、バーレーン・メリダ) 0:11:34
チーム総合成績
1位 チームスカイ 64:50:26
2位 アージェードゥーゼール 0:01:41
3位 バーレーン・メリダ 0:03:20
text:Kei Tsuji
photo:CorVos

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