パリ〜ニースの総合争いに大きく響く第5ステージ個人タイムトライアルで、ブエルタ覇者サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)が自身初のTT勝利をマーク。3位に入ったミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)が総合リードを広げた。


トップタイムを叩き出したサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)トップタイムを叩き出したサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:A.S.O.
パリ〜ニース2019第5ステージパリ〜ニース2019第5ステージ photo:A.S.O.バルバンターヌを発着する25.5km。ぐるっと一周するコースの中盤にはサン・ミシェル・ド・フリゴレ修道院の登り(全長2.5km/平均勾配3%)が組み込まれているが、獲得標高差が150mに満たないコースは平坦基調であると言える。

すでに総合争いで大きく遅れていたサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)が、この平均スピードが50km/hを超える『時間との戦い』で気を吐いた。イギリス・イングランドのマンチェスターに近いバリー生まれの2018年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝者は25.5kmコースで30分26秒のトップタイムを更新。その後、徐々に強まる風に後半スタートの選手が苦しめられたこともあり、Sイェーツが最後までトップタイムをキープした。

「この勝利は予想していなかった。大きな登りのないコースは自分向きではなかったけど、確かに調子は良かったし、全力を出し切ってみたんだ」。自身も驚く個人タイムトライアル勝利を果たしたSイェーツは語る。

Sイェーツは第2ステージで6分44秒ものタイムロスを被って総合争いから脱落。第4ステージを終えた時点で18分28秒遅れの総合70位に沈んでいた。「序盤ステージの横風で大きく総合タイムを失っていただけに、今日の勝利はとても嬉しい。ジュニア時代から数えても、個人タイムトライアルで勝利するのは初めて。ただ単に序盤ステージの風で総合争いから脱落しただけであり、調子はとても良い。週末の戦いが楽しみだ」と語る。

この日のステージ優勝でSイェーツは総合順位を少し上げたものの、それでも18分以上遅れた状態であり、逃げが容認されやすい『総合に関係のない選手』のまま。この先も総合8位ジャック・ヘイグ(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)をアシストすることになるが、チャンスがあればステージ優勝を狙って山岳で動いてくるだろう。

ステージ2位に入ったニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)が公開しているSTRAVAログを見ると、体重80kgのポリッツは30分33秒のレース中に平均448Wを出力している。終盤の平坦区間の平均スピードは56km/hに達した。

サン・ミシェル・ド・フリゴレ修道院の登り(全長2.5km/平均勾配3%)をこなすサン・ミシェル・ド・フリゴレ修道院の登り(全長2.5km/平均勾配3%)をこなす photo:A.S.O.
中盤スタートのサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)がトップタイム中盤スタートのサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)がトップタイム photo:CorVos
ステージ4位に入ったティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、EFエデュケーションファースト)ステージ4位に入ったティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、EFエデュケーションファースト) photo:A.S.O.
ステージ11位に入ったボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ)ステージ11位に入ったボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:A.S.O.
総合上位陣の中で安定した走りを見せたのがチームスカイだった。リーダージャージを着る最終走者ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)がステージ3位に入り、さらにヤングライダー賞のエガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ)がステージ6位に。総合ワンツー体制で週末の2連続山岳ステージに挑むことになった。

「今日はステージ優勝が目標ではなく、イエロージャージを守るために走った。その結果、リーダーの座を守ることができたし、総合リード拡大に成功したのでとても満足している。チームスカイはポールポジションにつけているけど、決して気をぬくことなく週末の山岳の戦いに挑みたい」。クウィアトコウスキーは直近のライバルである総合3位ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)から24秒のリードを得ている。

ステージ3位に入ったミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)ステージ3位に入ったミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) photo:CorVos
ステージ6位に入ったエガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ)ステージ6位に入ったエガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ) photo:CorVos
総合4位に順位を上げたウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)総合4位に順位を上げたウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) photo:CorVos
「チームスカイにとって良い1日だった。もっとタイムを失うと思っていただけに、個人的にも良い走りだったと思う」と語るのは第2エースのベルナル。ジロ・デ・イタリアでエースを担う予定の22歳は「チームスカイは個人タイムトライアルを終えてもなお2枚のカードを持っている状態。クウィアトコウスキーは状態がすこぶる良くて、登りもこなせている。状況によって変化するかもしれないけど、あくまでも彼がチームリーダーであり、彼をサポートする戦力が揃っている。総合優勝が最優先事項であり、無理にステージ優勝を狙うことはしないよ」と、クウィアトコウスキーをバックアップすると宣言した。

チームスカイの他にもこの日はEFエデュケーションファーストの走りが目立った。ステージ4位に入ったティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)をはじめ、トップ10に4名を送り込むことに成功している。

自身初の個人タイムトライアル勝利を飾ったサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)自身初の個人タイムトライアル勝利を飾ったサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:CorVos総合リード拡大に成功したミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)総合リード拡大に成功したミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) photo:CorVos
パリ〜ニース2019第5ステージ結果
1位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 0:30:26
2位 ニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン) 0:00:07
3位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) 0:00:11
4位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、EFエデュケーションファースト) 0:00:15
5位 ダニエル・マルティネス(コロンビア、EFエデュケーションファースト)
6位 エガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ)
7位 ローソン・クラドック(アメリカ、EFエデュケーションファースト)
8位 トーマス・スクーリー(ニュージーランド、EFエデュケーションファースト) 0:00:27
9位 マルク・ソレル(スペイン、モビスター) 0:00:30
10位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)
個人総合成績
1位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) 17:23:04
2位 エガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ) 0:00:15
3位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ) 0:00:24
4位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) 0:00:57
5位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ)
6位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 0:01:01
7位 フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) 0:01:05
8位 ジャック・ヘイグ(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) 0:01:15
9位 ルディ・モラール(フランス、グルパマFDJ) 0:01:18
10位 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) 0:01:21
ポイント賞
1位 ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) 32pts
2位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) 30pts
3位 カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) 24pts
山岳賞
1位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) 27pts
2位 ダミアン・ゴダン(フランス、ディレクトエネルジー) 21pts
3位 アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、CCCチーム) 20pts
ヤングライダー賞
1位 エガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ) 17:23:19
2位 ヴァランタン・マデュアス(フランス、グルパマFDJ) 0:02:08
3位 ダニエル・マルティネス(コロンビア、EFエデュケーションファースト) 0:07:47
チーム総合成績
1位 EFエデュケーションファースト 52:11:08
2位 チームスカイ 0:00:51
3位 アージェードゥーゼール 0:03:14
text:Kei Tsuji
photo:CorVos, A.S.O.

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