2019/03/13(水) - 14:02
3月13日から7日間の日程で、イタリア中部を舞台に第54回ティレーノ〜アドリアティコ(UCIワールドツアー)が開催。ログリッチェ、トーマス、デュムラン、ニバリ、Aイェーツ、アラフィリップ、サガン、GVA、ヴィヴィアーニ、ガビリアが出場する激坂バトルの注目ポイントをプレビューします。
初日のチームTTと最終日の個人TT、そして激坂バトルが名物の「二つの海のレース」
1966年に初開催され、ジロ・デ・イタリアと同じRCSスポルト(エッレチーエッセ・スポルト)が主催するティレーノ〜アドリアティコ。レース名の通り、ティレニア海沿岸をスタートし、イタリア半島を横断してアドリア海沿岸に至るステージレースだ。イタリア半島を囲む2つの海を結ぶその行程から「コルサ・デイ・ドゥエ・マーリ(二つの海のレース)」と呼ばれる。
同時期に開催されるパリ〜ニースと同様、クラシックレースやグランツールに向けて調整を続ける有力選手たちが多数出場。コースレイアウトに合わせて、各チームがメンバーをパリ〜ニースとティレーノ〜アドリアティコに振り分けている。開催期間はパリ〜ニースよりも1日短い7日間だが、タイムトライアルx2、平坦ステージx2、丘陵ステージx3というバリエーションに富んだコース設定が特徴だ。
初日はティレニア海に面したリード・ディ・カマイオーレを舞台にしたチームタイムトライアル。平坦な直線路で構成された毎年恒例の21.5kmコースを22チームの選手たちが高速で駆け抜け、優勝チームの先頭フィニッシュ選手が青いリーダージャージを獲得する。スピードが弱まるポイントが少ないため、平均スピードは55km/h前後まで上がる。
カマイオーレからトスカーナ州を南下する第2ステージは、標高364mの丘の上の街ポマランチェにフィニッシュする。山頂フィニッシュとは呼べない難易度だが、残り8km地点には最大16%の急勾配区間も登場。そこから勾配4%程度の緩斜面を駆け上がる。ピュアスプリンター向きではなく、精鋭集団によるスプリント勝負に持ち込まれるだろう。
トスカーナ州からウンブリア州に移動する第3ステージは大集団によるスプリントで決するはず。前半にストラーデビアンケでも通った道を一部通過するが、未舗装区間は設定されていない。この第3ステージと、マルケ州を走る最終日前日の第6ステージがピュアスプリンター向きの平坦ステージだ。
マルケ州らしい丘の登りが組み込まれた第4ステージと第5ステージはパンチャー向き。登坂力を生かしてリードを稼ぐことができるのはこの2日間しかないため、ピュアクライマーたちもここで勝負を仕掛けてくる。
終盤にかけてフォッソンブローネの全長9.25km周回コースを2周する第4ステージは白熱したものになるだろう。何しろこの周回コースには『イ・カップチーニ(全長3.6km/平均勾配10.6km/最大勾配19%)』の登りが組み込まれており、2回目の頂上からフィニッシュまでは5.6kmしかない。総合争いも動くため、かなり人数が絞られた状態でフィニッシュにたどり着くはずだ。
そして今大会のクイーンステージである第5ステージはさらに難易度が高い。ステージ後半にかけて丘の上の街レカナーティを起点にした全長22.8km周回コースを合計3周。この周回コースはまさにアップダウンの連続で、『サンピエトロ(全長3km/平均勾配6.8%/最大勾配20%)』と『ポルタドージモ(全長1.8km/平均勾配10.8%/最大勾配19%)』が集団を破壊する。しかもフィニッシュ地点は『ポルタドージモ』の頂上からさらに勾配3.3%の緩斜面を1.8km登った先。2019年大会には標高のある本格的な山岳ステージは設定されていないが、代わりにこのパンチの効いた短距離&激坂レイアウトが選手たちの脚を問う。
最終日は恒例となったサンベネデット・デル・トロントを舞台にした真っ平らな個人タイムトライアル。全長10.05km、時間にして11分前後のハイスピード走行で7日間の戦いは締めくくられる。
初日のチームTTと最終日の個人TT、そして激坂バトルが名物の「二つの海のレース」
1966年に初開催され、ジロ・デ・イタリアと同じRCSスポルト(エッレチーエッセ・スポルト)が主催するティレーノ〜アドリアティコ。レース名の通り、ティレニア海沿岸をスタートし、イタリア半島を横断してアドリア海沿岸に至るステージレースだ。イタリア半島を囲む2つの海を結ぶその行程から「コルサ・デイ・ドゥエ・マーリ(二つの海のレース)」と呼ばれる。
同時期に開催されるパリ〜ニースと同様、クラシックレースやグランツールに向けて調整を続ける有力選手たちが多数出場。コースレイアウトに合わせて、各チームがメンバーをパリ〜ニースとティレーノ〜アドリアティコに振り分けている。開催期間はパリ〜ニースよりも1日短い7日間だが、タイムトライアルx2、平坦ステージx2、丘陵ステージx3というバリエーションに富んだコース設定が特徴だ。
初日はティレニア海に面したリード・ディ・カマイオーレを舞台にしたチームタイムトライアル。平坦な直線路で構成された毎年恒例の21.5kmコースを22チームの選手たちが高速で駆け抜け、優勝チームの先頭フィニッシュ選手が青いリーダージャージを獲得する。スピードが弱まるポイントが少ないため、平均スピードは55km/h前後まで上がる。
カマイオーレからトスカーナ州を南下する第2ステージは、標高364mの丘の上の街ポマランチェにフィニッシュする。山頂フィニッシュとは呼べない難易度だが、残り8km地点には最大16%の急勾配区間も登場。そこから勾配4%程度の緩斜面を駆け上がる。ピュアスプリンター向きではなく、精鋭集団によるスプリント勝負に持ち込まれるだろう。
トスカーナ州からウンブリア州に移動する第3ステージは大集団によるスプリントで決するはず。前半にストラーデビアンケでも通った道を一部通過するが、未舗装区間は設定されていない。この第3ステージと、マルケ州を走る最終日前日の第6ステージがピュアスプリンター向きの平坦ステージだ。
マルケ州らしい丘の登りが組み込まれた第4ステージと第5ステージはパンチャー向き。登坂力を生かしてリードを稼ぐことができるのはこの2日間しかないため、ピュアクライマーたちもここで勝負を仕掛けてくる。
終盤にかけてフォッソンブローネの全長9.25km周回コースを2周する第4ステージは白熱したものになるだろう。何しろこの周回コースには『イ・カップチーニ(全長3.6km/平均勾配10.6km/最大勾配19%)』の登りが組み込まれており、2回目の頂上からフィニッシュまでは5.6kmしかない。総合争いも動くため、かなり人数が絞られた状態でフィニッシュにたどり着くはずだ。
そして今大会のクイーンステージである第5ステージはさらに難易度が高い。ステージ後半にかけて丘の上の街レカナーティを起点にした全長22.8km周回コースを合計3周。この周回コースはまさにアップダウンの連続で、『サンピエトロ(全長3km/平均勾配6.8%/最大勾配20%)』と『ポルタドージモ(全長1.8km/平均勾配10.8%/最大勾配19%)』が集団を破壊する。しかもフィニッシュ地点は『ポルタドージモ』の頂上からさらに勾配3.3%の緩斜面を1.8km登った先。2019年大会には標高のある本格的な山岳ステージは設定されていないが、代わりにこのパンチの効いた短距離&激坂レイアウトが選手たちの脚を問う。
最終日は恒例となったサンベネデット・デル・トロントを舞台にした真っ平らな個人タイムトライアル。全長10.05km、時間にして11分前後のハイスピード走行で7日間の戦いは締めくくられる。
ティレーノ〜アドリアティコ2019ステージリスト
3月13日(水) | 第1ステージ | リード・ディ・カマイオーレ | 21.5km(チームTT) |
3月14日(木) | 第2ステージ | カマイオーレ〜ポマランチェ | 195km |
3月15日(金) | 第3ステージ | ポマランチェ〜フォリーニョ | 226km |
3月16日(土) | 第4ステージ | フォリーニョ〜フォッソンブローネ | 221km |
3月17日(日) | 第5ステージ | コッリ・アル・メタウロ〜レカナーティ | 180km |
3月18日(月) | 第6ステージ | マテリカ〜イェージ | 195km |
3月19日(火) | 第7ステージ | サンベネデット・デル・トロント | 10.05km(個人TT) |
本命はログリッチェやトーマス? アラフィリップやサガンにも注目の総合争い
今シーズン最も旬な、勢いのあるオールラウンダーと言えばプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)だ。ティレーノと同じRCSスポルトが主催するUAEツアーでは、安定感あふれる登坂力を発揮して総合優勝&ステージ優勝を飾った。ジロ・デ・イタリアでマリアローザを狙う予定のログリッチェがティレーノに出場するのは4回目で、2016年に総合52位、2017年に総合4位という成績を残している。2018年は丘陵ステージで優勝を飾ったものの、平坦ステージの落車で総合成績のチャンスを失っている(総合29位)。しかしその後のイツリア・バスクカントリーとツール・ド・ロマンディ、ツアー・オブ・スロベニアで総合優勝。ツール・ド・フランスでは総合4位に入った。TTスペシャリストのトニー・マルティン(ドイツ)やヨス・ファンエムデン(オランダ)、山岳アシストのローレンス・デプルス(ベルギー)やロベルト・ヘーシンク(オランダ)らがログリッチェをサポートする。
2018年のツール・ド・フランス覇者ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)も4回目のティレーノ出場。トーマスは2017年大会の第2ステージ(今大会第2ステージと同じ登りフィニッシュ)で逃げ切り勝利を飾って総合5位。さらに2018年には総合3位に入った。直前のストラーデビアンケで12位に入っているトーマスは7月のツールに向けてコンディショニングを軌道に乗せている。チームスカイはワウト・プールス(オランダ)やヨナタン・カストロビエホ(スペイン)、ジャンニ・モスコン(イタリア)、そしてトラック世界選手権の個人追い抜きで連覇を果たしたフィリッポ・ガンナ(イタリア)という強力な布陣を送り込む。
まだ今シーズン0勝のチームに勝ち星をもたらしたいのは、ジロへの出場を表明しているトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)だ。過去4回の出場でデュムランの最高位は2017年の総合6位。トーマスと同様に、最終日の個人タイムトライアルでの挽回が鍵となる。
初出場のストラーデビアンケで優勝を飾ったジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)はティレーノ初出場。過去3回出場したパリ〜ニースでは総合5位の成績も残している。2018年のラ・フレーシュ・ワロンヌを制した激坂の名手とこのティレーノは相性が良いはず。ドゥクーニンク・クイックステップと並んで好調ぶりを見せているアスタナは、ストラーデビアンケでアラフィリップと競り合ったヤコブ・フルサング(デンマーク)とアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン)のダブルエース体制で挑んでくるだろう。
意外にもパリ〜ニース出場経験のないティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)は、このティレーノで2015年から総合4位、総合5位、総合3位と好成績を連発。2018年にイル・ロンバルディアを制したピノは今シーズンすでに2勝を飾っており、シュテファン・キュング(スイス)とマイルズ・スコットソン(オーストラリア)という2人の元BMCレーシングのTTスペシャリストを味方につける。
パリ〜ニースに出場中でジロ出場に予定のサイモンに対して、アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)はティレーノに出場してツールに出場予定。イェーツは2018年大会の第5ステージ激坂フィニッシュで優勝(総合5位)を飾っている。ブレント・ブックウォルター(アメリカ)やルーク・ダーブリッジ(オーストラリア)を始め、初日のチームTTで出遅れないための布陣を組んでいる。
上記のユンボ・ヴィズマやチームスカイ、サンウェブ、グルパマFDJ、ミッチェルトン・スコットと並んでチームタイムトライアルでリードを得ると見られるのが、11回目(出場選手中最多)の出場を迎えるヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)のバーレーン・メリダだ。2012年と2013年に総合優勝を飾っているニバリは、世界TT王者ローハン・デニス(オーストラリア)やダミアーノ・カルーゾ(イタリア)、ヤン・トラトニク(スロベニア)、マテイ・モホリッチ(スロベニア)らを従えての出場となる。
平坦な第3ステージと第6ステージで勝利を狙うのがエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)やフェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)、ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、ディメンションデータ)、ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)といったピュアスプリンターたち。特にUAEツアーでバトルを繰り広げたヴィヴィアーニとガビリアの元チームメイト同士による戦いに注目したい。
丘陵ステージでは、このティレーノでステージ通算7勝を飾っているペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)や、2016年の総合優勝者グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)らが主役を担う。本格山岳ステージが設定されない今大会では、もちろん彼らにも総合優勝のチャンスがある。
text:Kei Tsuji
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