第10回ツアー・オブ・オマーンの実質的な総合優勝者を決める標高1,235mのKOMグリーンマウンテン山頂フィニッシュで再びアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)の好調ぶりが炸裂。ライバルを蹴散らしたカザフスタンチャンピオンが大会連覇に王手をかけた。
岩肌が露出した山岳地帯を進むメイン集団 photo:CorVos
ツアー・オブ・オマーン2019第5ステージ photo:A.S.O.オマーン内陸の山岳地帯を走る全長152kmの第5ステージ。獲得標高差1,800mのコースの最後を締めくくるのは標高1,235mの岩山だ。現地語で『ジャバル・アル・アフダル』と呼ばれるKOMグリーンマウンテン(全長5.7km/平均勾配10.5%)がツアー・オブ・オマーンの総合優勝者を導き出す。
7km地点で形成された逃げグループに入ったのはジュリアン・デュヴァル(フランス、アージェードゥーゼール)ら6名。すでに総合成績で7分以上遅れている選手で構成された逃げグループに対し、リーダージャージ擁するアスタナは6分のリードを容認した。
ステージ中盤に差し掛かると新城幸也を含むバーレーン・メリダのメンバーがドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア)のために集団牽引を開始。タイム差は縮小を続け、3分20秒まで縮まったところでKOMグリーンマウンテンの麓に到着する。そこからフィニッシュラインまでは標高差560mのヒルクライム。ステージ優勝の可能性にかけて、逃げグループ内でチームメイトにアシストされていたファビアン・グルリエ(フランス、ディレクトエネルジー)がアタックした。
逃げるジュリアン・デュヴァル(フランス、アージェードゥーゼール)ら6名 photo:A.S.O.
アスタナとバーレーン・メリダがメイン集団を牽引 photo:A.S.O.
バーレーン・メリダやアスタナが率いるメイン集団は平均勾配が10%を超える登りで人数を減らしていき、やがて残り2km地点でリーダージャージのルツェンコがアタック。この動きに唯一対応できたのはポッツォヴィーヴォで、総合優勝をかけてペースを上げるこの2人が先頭グルリエから30秒遅れで残り1kmサインを駆け抜ける。グルリエの逃げ切り勝利も見えたが、残り200mで加速したルツェンコがポッツォヴィーヴォを置き去りにして勢いよく迫った。
真っ赤なリーダージャージを着るルツェンコがグルリエをパスし、天を指差してKOMグリーンマウンテンの山頂にフィニッシュした。
リーダージャージのアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)とドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ) photo:A.S.O.
天を指差してフィニッシュするアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ) photo:CorVos
第2ステージと第3ステージに続く3勝目を飾り、文句なしのハットトリックで大会連覇に王手をかけたルツェンコは「レースの展開は完璧だった。登りの後半までチームメイトがアシストしてくれて、そこからは徹底的に危険なライバルをマークした。総合リーダージャージを守ることが目標だったけど、フィニッシュの手前で最後の逃げメンバー(グルリエ)が見えたので、全開でステージ優勝を狙った。とてもエモーショナルな勝利だ」と語る。
「まず最初に、この勝利を妻に捧げる。実は昨年12月に双子を流産してしまったんだ。妻と共にとても苦しい時間を経験した。このステージ3勝を、妻と生まれてくるはずだった2人を捧げたい。そんな辛い時期もサポートしてくれたチームにこうして勝利で報いることができてよかった」。
ルツェンコのKOMグリーンマウンテン登坂時間は19分29秒。VAM(平均登坂速度)は1718で、平均勾配10.5%の登りを平均17.4km/hで駆け上がっている。その平均出力は417W。平均勾配が13%まで上昇する残り2kmを平均出力442Wで踏み、食らいつくポッツォヴィーヴォを振り切るとともにグルリエを追い抜いた。
果敢に逃げながら、ステージ2位に終わったグルリエは「独走状態になってからは、レッドゾーンに入らないようにテンポを刻んで登ることを心がけた。ペース配分はよかった。全力を尽くしたので悔いはないよ。手に届きそうだったステージ優勝を逃したのは悔しいけど、ステージ2位という成績は悪くない。これも全て一緒に逃げたロマン・カルディスのおかげだ」とコメント。
「オーストラリアでの(ダウンアンダー開幕前の)落車以降、苦しい時期が続いたけど、テネリフェ島でのトレーニングキャンプの成果をここで示すことが出来てよかった」と語るのは、11秒差のステージ3位で総合2位にジャンプアップしたポッツォヴィーヴォ。小柄なイタリアンクライマーは「このオマーンで手応えを感じたので、次のパリ〜ニースが楽しみだ」と語る。
翌日の最終第6ステージは再びスプリンター向きの平坦コース。ルツェンコが2年連続でリーダージャージを着て首都マスカットに凱旋する。
ステージ55位でフィニッシュした新城幸也(バーレーン・メリダ) photo:CorVos
総合優勝に王手をかけたアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ) photo:CorVos


7km地点で形成された逃げグループに入ったのはジュリアン・デュヴァル(フランス、アージェードゥーゼール)ら6名。すでに総合成績で7分以上遅れている選手で構成された逃げグループに対し、リーダージャージ擁するアスタナは6分のリードを容認した。
ステージ中盤に差し掛かると新城幸也を含むバーレーン・メリダのメンバーがドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア)のために集団牽引を開始。タイム差は縮小を続け、3分20秒まで縮まったところでKOMグリーンマウンテンの麓に到着する。そこからフィニッシュラインまでは標高差560mのヒルクライム。ステージ優勝の可能性にかけて、逃げグループ内でチームメイトにアシストされていたファビアン・グルリエ(フランス、ディレクトエネルジー)がアタックした。


バーレーン・メリダやアスタナが率いるメイン集団は平均勾配が10%を超える登りで人数を減らしていき、やがて残り2km地点でリーダージャージのルツェンコがアタック。この動きに唯一対応できたのはポッツォヴィーヴォで、総合優勝をかけてペースを上げるこの2人が先頭グルリエから30秒遅れで残り1kmサインを駆け抜ける。グルリエの逃げ切り勝利も見えたが、残り200mで加速したルツェンコがポッツォヴィーヴォを置き去りにして勢いよく迫った。
真っ赤なリーダージャージを着るルツェンコがグルリエをパスし、天を指差してKOMグリーンマウンテンの山頂にフィニッシュした。


第2ステージと第3ステージに続く3勝目を飾り、文句なしのハットトリックで大会連覇に王手をかけたルツェンコは「レースの展開は完璧だった。登りの後半までチームメイトがアシストしてくれて、そこからは徹底的に危険なライバルをマークした。総合リーダージャージを守ることが目標だったけど、フィニッシュの手前で最後の逃げメンバー(グルリエ)が見えたので、全開でステージ優勝を狙った。とてもエモーショナルな勝利だ」と語る。
「まず最初に、この勝利を妻に捧げる。実は昨年12月に双子を流産してしまったんだ。妻と共にとても苦しい時間を経験した。このステージ3勝を、妻と生まれてくるはずだった2人を捧げたい。そんな辛い時期もサポートしてくれたチームにこうして勝利で報いることができてよかった」。
ルツェンコのKOMグリーンマウンテン登坂時間は19分29秒。VAM(平均登坂速度)は1718で、平均勾配10.5%の登りを平均17.4km/hで駆け上がっている。その平均出力は417W。平均勾配が13%まで上昇する残り2kmを平均出力442Wで踏み、食らいつくポッツォヴィーヴォを振り切るとともにグルリエを追い抜いた。
果敢に逃げながら、ステージ2位に終わったグルリエは「独走状態になってからは、レッドゾーンに入らないようにテンポを刻んで登ることを心がけた。ペース配分はよかった。全力を尽くしたので悔いはないよ。手に届きそうだったステージ優勝を逃したのは悔しいけど、ステージ2位という成績は悪くない。これも全て一緒に逃げたロマン・カルディスのおかげだ」とコメント。
「オーストラリアでの(ダウンアンダー開幕前の)落車以降、苦しい時期が続いたけど、テネリフェ島でのトレーニングキャンプの成果をここで示すことが出来てよかった」と語るのは、11秒差のステージ3位で総合2位にジャンプアップしたポッツォヴィーヴォ。小柄なイタリアンクライマーは「このオマーンで手応えを感じたので、次のパリ〜ニースが楽しみだ」と語る。
翌日の最終第6ステージは再びスプリンター向きの平坦コース。ルツェンコが2年連続でリーダージャージを着て首都マスカットに凱旋する。


ツアー・オブ・オマーン2019第5ステージ結果
1位 | アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ) | 3:44:03 |
2位 | ファビアン・グルリエ(フランス、ディレクトエネルジー) | 0:00:07 |
3位 | ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ) | 0:00:11 |
4位 | ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | 0:00:19 |
5位 | エリー・ジェスベール(フランス、アルケア・サムシック) | |
6位 | ヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス) | |
7位 | ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 0:00:23 |
8位 | ファビアン・ドゥべ(フランス、ワンティ・グループゴベール) | 0:00:30 |
9位 | マティアス・フランク(スイス、アージェードゥーゼール) | 0:00:39 |
10位 | マッテオ・ファッブロ(イタリア、カチューシャ・アルペシン) | 0:00:44 |
55位 | 新城幸也(日本、バーレーン・メリダ) | 0:06:25 |
個人総合成績
1位 | アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ) | 18:38:39 |
2位 | ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ) | 0:00:44 |
3位 | ヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス) | 0:00:47 |
4位 | ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | 0:00:53 |
5位 | エリー・ジェスベール(フランス、アルケア・サムシック) | 0:01:03 |
6位 | ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 0:01:14 |
7位 | エリオ・リエター(ベルギー、ワロニー・ブリュッセル) | 0:01:25 |
8位 | ファビアン・ドゥべ(フランス、ワンティ・グループゴベール) | 0:01:31 |
9位 | ブランドン・マクナルティ(アメリカ、ラリーUHCサイクリング) | 0:01:43 |
10位 | カンタン・パシェ(フランス、ヴィタルコンセプト・B&Bホテルズ) | 0:01:51 |
ポイント賞
1位 | アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ) | 45pts |
2位 | アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ) | 33pts |
3位 | グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) | 21pts |
ヤングライダー賞
1位 | エリー・ジェスベール(フランス、アルケア・サムシック) | 18:39:42 |
2位 | ブランドン・マクナルティ(アメリカ、ラリーUHCサイクリング) | 0:00:40 |
3位 | ステフ・クラス(ベルギー、カチューシャ・アルペシン) | 0:00:50 |
チーム総合成績
1位 | カチューシャ・アルペシン | 56:04:00 |
2位 | ディメンションデータ | 0:01:30 |
3位 | アージェードゥーゼール | 0:05:17 |
text:Kei Tsuji
photo:CorVos, A.S.O.
photo:CorVos, A.S.O.
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