20010年3月27日、第53回E3プライス・フラーンデレン(UCI1.HC)が開催され、ボーネン、フレチャらと逃げを決めたファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)が残り1kmで抜け出し勝利を飾った。別府史之(スキル・シマノ)は75位で完走した。

レース序盤に落車したニック・ナイエンス(ベルギー、ラボバンク)レース序盤に落車したニック・ナイエンス(ベルギー、ラボバンク) photo:Cor Vosいよいよ目前に迫ったロンド・ファン・フラーンデレンとパリ〜ルーベの2大北のクラシックを占う上でも重要となるセミクラシックレース、E3プライス・フラーンデレン。石畳の激坂が連続するコースは、ロンドに似る。

もちろん、北のクラシックの名手たちが勢揃い。過去にこの大会を4度制しているトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)は優勝候補の筆頭。昨年、ボーネンを打ち破って優勝したフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)は連覇を狙う。

終始積極的に走ったトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)にフレチャ、カンチェラーラがジョイン終始積極的に走ったトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)にフレチャ、カンチェラーラがジョイン photo:Cor Vos203kmのコースには12の激坂が設定される。9番目のパテルベルクの激坂は最大勾配20%。選手には石畳を乗るテクニックと同時に、激坂を越えるパワーも要求される。北のセミクラシックらしいタフなコースレイアウトだ。

レースは序盤からハイスピードで推移。各チームとも、エースのためにアシストがアタックを繰り広げ、60kmを過ぎたところで形成されたのは24人の大人数の逃げグループ。ほとんどのチームの選手がここに入ったが、人数の多さからメイン集団は警戒。2分以上の差がつかないままレースは進んでいく。

ボーネンたちに出遅れ、ロセレルと前を追うフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)ボーネンたちに出遅れ、ロセレルと前を追うフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ) photo:Cor Vos残り80kmを切って、メイン集団の牽引を始めたのはサクソバンク。人数を揃えて集団前方に位置取り、赤いスイスチャンピオンジャージを着るカンチェラーラのための走りだ。レースが動いたのは134km地点、4番目の激坂にあたるエイケンベルク。

ここで20人ほどいた集団が2つに分断。続く5番目の激坂スタシオンズベルクを越えて先頭に残ったのはセバスティアン・ロセレル(ベルギー、レディオシャック)、マルティン・チャリンギ(オランダ、ラボバンク)、キャスパー・クロステルガード(デンマーク、サクソバンク)、マキシム・ファントンム(ベルギー、カチューシャ)の足のある4人。

ラボバンク勢が中心となって、ポッツァートを追うラボバンク勢が中心となって、ポッツァートを追う photo:Cor Vosこの4人が協調して逃げる後方、メイン集団でもレースは活性化。145km地点、最大勾配18%の6番目の激坂ターインベルクでボーネンがアタック。まるでロンドに備えての様子見と言わんばかりのアタックで集団は縮小。逃げていて先頭に残れなかった選手たちはここでメイン集団に吸収される。

その後メイン集団のコントロールを開始したのはチームスカイ。クラシックのエース、ファンアントニオ・フレチャ(スペイン)のための動きだ。メイン集団ではルカ・パオリーニ(イタリア、アックア・エ・サッポーネ)がパンク。アシストを使って集団復帰を試みるが、スカイとクイックステップ勢のコントロール下にある集団には遂に追いつけず、レースを終えた。

勝負を決定づける動きは9番目の激坂、パテルベルクで起きた。最大勾配20%のこの登りが始まってすぐにボーネンが再びアタック。勢いよく進むボーネンに頂上付近でなんとか追いつけたのはカンチェラーラとフレチャの2人のみ。ゴールまで残り40km強、この3人はそのまま進むことを選択。

逃げグループを強力に牽引するファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)逃げグループを強力に牽引するファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク) photo:Cor Vosこの3人はあっという間に逃げていたロセレルら4人に追いつき、抜きさって行く。北のクラシックのスターが揃った3人の逃げに入りそびれたのは前年の優勝者ポッツァート。次のクワラモントの激坂で単独で抜け出し、前を行く3人を追いにかかる。

前の3人は全開で進む。北のクラシックのスペシャリスト、ボーネン、フレチャにTT世界チャンピオンのカンチェラーラ3人に対しては、さすがのポッツァートも分が悪い。前からこぼれたロセレルと共同して先頭グループを追い、残り30km地点で14秒差まで詰め寄る。

残り1kmで抜け出したファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)が優勝残り1kmで抜け出したファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)が優勝 photo:Cor Vos前の3人もポッツァートが追いかけるのを見てペースを緩めない。残り28km地点でロセレルを切り離したポッツァートだが、そこからは前の3人との差は開くばかり。残り19km地点で前の3人から1分遅れのラボバンク勢率いる追走グループにポッツァートは吸収される。

レースはボーネン、フレチャ、カンチェラーラの3人のグループと、ポッツァート、ラス・ボーム(オランダ)、チャリンギらが含まれる8人のグループの戦いに。残り15kmでその差は45秒。

表彰台に上ったトップスリー 優勝はファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)表彰台に上ったトップスリー 優勝はファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク) photo:Cor Vosスター揃いの先頭の3人も、全開での逃げに苦しむ。一番調子が良さそうに見えたボーネンも苦痛の表情で走る。先頭交代はスムーズだが、カンチェラーラが積極的に引いていく。残り3km地点で差は30秒。先頭交代のリズムは崩れ、先頭の3人による牽制が始まる。

残り1kmの手前で一気にスパートをかけたのはカンチェラーラ。ボーネンが追いかけるがその差が縮まらない。フレチャに行かせようとしたボーネンだが、フレチャも追えない。カンチェラーラがどんどんその差を開いてゴールへ向かう。

果敢なアタックを見せたカンチェラーラが単独でゴールへ。力強いガッツポーズのその後ろではボーネンが疲れ切った表情でゴール。3位はフレチャ。50秒遅れでやってきた追走グループの頭を獲ったのはポッツァート。5位にはシクロクロスのスぺシャリスト、ボームが入った。上位4人は北のクラシックの大本命。いずれも好調な仕上がりであることを証明した。

昨年に続いての出場となった別府史之(レディオシャック)は、9分4秒遅れの集団で75位でレースを完走している。フミは翌日のヘント・ウェベルヘム、翌週のロンド、そのまた翌週のパリ〜ルーベと北のクラシックを連戦する予定だ。


E3プライス・フラーンデレン2010結果
1位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)4h44'34"
2位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)+03"
3位 ファンアントニオ・フレチャ(スペイン)
4位 フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)+50"
5位 ラス・ボーム(オランダ、ラボバンク)
6位 セバスティアン・ラングヴェルド(オランダ、ラボバンク)
7位 ビョルン・ルークマンス(ベルギー、ヴァカンソレイユ)
8位 ポール・マルテンス(オランダ、ラボバンク)
9位 マルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ)+58"
10位 ファビオ・フェリーネ(イタリア、フットオン・セルヴェット)+3'16"
75位 別府史之(日本、レディオシャック)+9'04"


text:Yufta Omata
photo:Cor Vos