他チームの攻撃や強風に、力で立ち向かいねじ伏せる。圧倒的な力で実業団Jサイクルツアー第1戦を、畑中勇介(シマノレーシング)が制した。

TR決勝 スタート前TR決勝 スタート前 photo:Hideaki.TAKAGI最有力候補はブリッツェン辻
会場にいた誰もが優勝最有力候補としたのは辻善光(宇都宮ブリッツェン)だ。09年スクラッチの全日本チャンピオンなど、トラックレースでも活躍する辻の高いスピード能力は誰もが知るところ。今季から同じく高い能力を持つ中村誠とともに同チームへ加入し、本人もチームも目標は一つに決まっている。

対する今日の有力チームは鹿屋体大 BLUE SKYだ。国立鹿屋体育大学が実業団登録して参加、このレースには伊藤雅和、野口正則、高宮正嗣の3人がもちろん予選通過して決勝に出場。スプリントに優れる野口が有力と見られた。

シマノレーシングは畑中と平塚吉光の2人で出場。純粋なスプリンター不在の、数的不利な状況での参加だ。


TR決勝 スタートから25分、菅洋介(GRUPPO ACQUA TAMA)が吸収されるTR決勝 スタートから25分、菅洋介(GRUPPO ACQUA TAMA)が吸収される photo:Hideaki.TAKAGI予選は2組、各組上位20名が決勝進出できる。チームプレーのためには一人でも多く通過させたいところ。
毎周1位通過するか、あるいはゴールで上位に入らねばならない。折からの強風で単独逃げはよほど強力な選手でないと成功せず、多くはゴールでの着順に切り替えて臨んだ。ここでブリッツェンは参加7人全員が予選を通過させ、第一関門突破だ。

強風下のTR決勝
TRの決勝時刻14時頃には朝からの強風がさらに強さを増し、突風時は立っているのも難しいほど。もちろんレースは予定通り行われる。1周2.2kmを60分プラス2周、実際は合計20周44kmで行われた。

スタートから各チームのアタックがかかる。4周目に菅洋介(GRUPPO ACQUA TAMA)がアタック、そのまま4周回逃げ続ける。同チームも決勝に6人乗せており有力だ。ちなみに大塚潤も今季から加入だ。


TR決勝 11周目、アタックした伊藤雅和(鹿屋体大 BLUE SKY)と追う中村誠(宇都宮ブリッツェン)TR決勝 11周目、アタックした伊藤雅和(鹿屋体大 BLUE SKY)と追う中村誠(宇都宮ブリッツェン) photo:Hideaki.TAKAGIその菅が吸収されると各チームのアタック合戦がここから40分過ぎまで続く。よく動くのは伊藤雅和、平塚、ブリッツェンの柿沼章・中村・長沼隆行・斉藤翔太・小坂光・若杉厚仁、リー・ロジャース(FUJI-CYCLINGTIME.COM TR)、チームブリヂストン・アンカーの相川将・普久原奨・三瀧光誠、MASSA-FOCUS-OUTDOORPRODUCTSの伊藤翔吾・中里聡史・丸山厚・江下健太郎、向山浩司(GRUPPO ACQUA TAMA)らだ。

集団が落ち着いたのは40分経過後、リー・ロジャースの単独での逃げができてからだ。リーは予選でも逃げを見せ、積極的に展開する。

しかしその逃げもラスト3周で中村誠につかまるとレースは振り出しに。ここで一気にアタックをかけたのは畑中。どのチームにも動く隙を与えず単独で逃げ、差を広げていく。ラスト1周でその差は20秒。1周3分のコースで20秒は致命的だ。


TR決勝 ラスト1周、畑中を追うメイン集団TR決勝 ラスト1周、畑中を追うメイン集団 photo:Hideaki.TAKAGI完全に2位狙いとなったメイン集団を置き去りにして畑中が優勝。メイン集団は16秒差で野口、辻の順にゴール。

畑中が力でねじ伏せた勝利だ。新加入の平塚もよく動き畑中を好アシスト。
対するブリッツェンは、中盤のアタック合戦と終盤の追走の主役を演じラスト2周での余力がなかった。中村をメカトラブルで途中欠いたことも響いた。2位狙いとなった集団でも全員がマーク、辻は先行したが3位になった。しかし中村のアタックの切れは予選・決勝を通じて素晴らしく、辻の活躍とともに今年が大いに期待できるのは明るい材料だ。

大きな存在感を見せたのが鹿屋勢だ。予選・決勝ともにアタックをかけまくり他チームを翻弄。自らが追走する場面はほとんどなく、常に先にアタックを仕掛ける積極さは評価できる。


TR決勝 畑中勇介(シマノレーシング)が優勝TR決勝 畑中勇介(シマノレーシング)が優勝 photo:Hideaki.TAKAGI畑中勇介のコメント
「自分でびっくりするくらいの結果です。花粉症で練習量は少ないのですが調子はいいです。量より質の練習です。結構つらい練習ですけど。レースはブリッツェンが多かったのでうちが最初から攻めていくのは難しかった。レースを作るほうではなく、危険な逃げだけは作らないようにと平塚選手と話しながら動きました。次は伊吹山ですが、今までヒルクライムレースは出ていなかったのでちょっと楽しみです」


豊岡英子圧勝のFR
女子は一発決勝で行われた。国内女子のトップ選手は遠征・合宿が続いたが、その中で豊岡英子(パナソニックレディース)が参加。1周目に突風のため転倒したが持ち直し、3人体制の向かい風ゴールを制して優勝。今年もロード、シクロクロス、トラックと活躍が期待できる。


FR決勝 豊岡英子(パナソニックレディース)が優勝FR決勝 豊岡英子(パナソニックレディース)が優勝 photo:Hideaki.TAKAGIブリヂストン勢主導のBR-1
BR-1の注目はブリヂストン・エスポワールだ。金子友也、嶌田義明、平井栄一、清水太己に加え、高校卒業して加入の寺崎武郎、秋丸湧哉、椿大志が参加。西日本チャレンジではまさかの敗北を喫しておりその走りが注目された。
スタート後、そのBS勢を中心にアタックが繰り返される。小渡健悟(Tacurino.net)も加わり、数人の逃げができては吸収されを繰り返す。
中盤に嶌田のアタックをきっかけに平井、小渡さらに椿が追いつき4人の逃げが成功。その後椿が下って嶌田・平井と小渡の対決に。ラスト2周でアタックした嶌田がそのまま逃げ切り優勝。


BR-1決勝 逃げる3人BR-1決勝 逃げる3人 photo:Hideaki.TAKAGIそのブリヂストン・エスポワールを率いる久保信人ロードコーチはこう語る。
「絶対勝たないといけないレースでプレッシャーもかなりあった。みんな攻撃的ないい走りだった。西日本チャレンジの失敗を繰り返さないようにと。自分達がレースを作る、自分達で脚を使ってチャンスを作る、これができたと思います」
TRの結果については
「アンカーは3人で不利だったが、個人的にうれしかったのは、今まで怪我の影響で苦労してきた三瀧が最終周回に畑中を追ったアタックができたことです」と語る。

また「あとエスポワールは現状BR-1登録だが、できることならばTRで走らせたいという希望があります。力量も十分だが現在の規定では走れない。お互いにとってプラスの話だと思うのでなにかいい方法があれば、と考えています」とも。


ER決勝 相川茂徳(エルニーニョ・ケンボク)が優勝ER決勝 相川茂徳(エルニーニョ・ケンボク)が優勝 photo:Hideaki.TAKAGI結果
TR
1位 畑中勇介(シマノレーシング)1時間06分16秒
2位 野口正則(鹿屋体大BLUE SKY)+16秒
3位 辻善光(宇都宮ブリッツェン)         
4位 平塚吉光(シマノレーシング)         
5位 相川将(チームブリヂストン・アンカー)    
6位 辻本翔太(パールイズミ・スミタ・ラバネロ)
7位 向山浩司(GRUPPO ACQUA TAMA)         
8位 渥美守弘(スワコレーシングチームTR)
9位 中田真琴(TEAM NIPPO)           
10位 伊藤翔吾(MASSA-FOCUS-OUTDOOR PRODUCTS) 

FR
1位 豊岡英子(パナソニックレディース)37分38秒
2位 高橋奈美(JBCF J-FEMININ)
3位 堀友紀代(Ready Go JAPAN)+4秒

BR-1
1位 嶌田義明(ブリヂストン・エスポワール)48分48秒
2位 平井栄一(ブリヂストン・エスポワール)+20秒
3位 小渡健悟(Tacurino.net)+25秒
4位 辻貴光(CIELVO NARA PRO CYCLINGTEAM)+52秒
5位 井上人志(クラブシルベスト)
6位 水野貴行(かぶちゃん農園・ボンシャンス飯田)

ER
1位 相川茂徳(エルニーニョ・ケンボク)37分16秒
2位 橋本健(イナーメ・アイランド信濃山形)+01秒
3位 青木峻二(Racing CUBE)
4位 加地邦彦(なるしまフレンド)
5位 増田輝之(FAST LANE Racing)
6位 代田和明(VOLCAオードビーBOMA・UVEX)


photo&text:高木秀彰