スイスのハイエンドサイクルアパレルブランド、アソスがビブショーツをフルモデルチェンジ。5年ぶりの新世代としてデビューしたS9シリーズの中核モデル、Equipe RSを紹介しよう。



アソス Equipe RS S9アソス Equipe RS S9 (c)ダイアテック
サイクリングアパレルの最高峰として、常に名が挙げられるアソス。そのラインアップの中でも特に定評があるのが、スポーツサイクリングに欠かせないビブショーツだろう。ショーツはアソスに限る、と多くのベテランサイクリストが言うのを聞いたことがある人もいるだろう。レースシーンにおいても、BMCレーシングをサポートし、多くの戦績を残してきた。

パッドをフローティングさせることで密着感を追及したGolden gateテクノロジーをはじめとした革新的な設計が盛り込まれ、「ゲームチェンジャー」としてデビューしたS7シリーズから5年。更なる軽さ、エアロダイナミクス、軽量性、そして快適性を目指してフルモデルチェンジを果たしたのがS9シリーズだ。

アソス EQUIPE RS Bib Shorts S9アソス EQUIPE RS Bib Shorts S9 (C)ダイアテック
4グレードに分かれていたS7からラインアップが整理され、S9では最上級モデルのAvantGrade、レース志向のライダーへ向けたPROF SERIES、ロングライドなどに向くLONG DISTANCEという3グレードと男女別の計6シリーズが用意されることに。そこに気温別のCLIMACODEによって、最適なアウトフィットを選ぶことができるようになった。

今回、一足早くお披露目されたのはミドルグレードに位置付けられるPROF SERIESのEquipe RS。唯一、前世代から名前を引き継ぐレーシングフィットモデルであり、年間を通してレースやトレーニングに勤しむシリアスライダーのために開発されたモデルとなる。

アソス Equipe RS S9  ミドルグレードに位置付けられるPROF SERIESアソス Equipe RS S9  ミドルグレードに位置付けられるPROF SERIES (c)ダイアテック
アソスが今回のモデルチェンジで追求したのはパッドの安定感。S7のコンセプトを更に推し進めることで、異次元のコンフォート性能を新型ビブショーツに与えることに成功した。

そのために用いられたキーとなるテクノロジーが"A-LOCK Engineering"。5つの技術的要素からなるこの革新的な設計によって、フィット感、快適性、ライドパフォーマンスを向上させた。それではA-LOCKを構成する5つの要素を見ていこう。

BUTTERFLY PATTERN

S9を構成するパーツ BUTTERFLY PATTERNと呼ばれる2枚のパネルがS9を構成するパーツ BUTTERFLY PATTERNと呼ばれる2枚のパネルが (c)ダイアテック
アソスがこの新世代ショーツを開発するにあたって、最初に試作したデザインに与えられた唯一の目標がパネル枚数を"2枚"に抑えることだったという。S7でアソスが示した少ないパネルによる包み込むようなフィット感、そして縫い目の削減による快適性の向上というコンセプトを更に推し進める最新のカッティングパターンが、BUTTERFLY PATTERNだ。

まさに蝶のような形に切り出された大きなメインパネルは、ウェストから腿にかけて脚を完全に包み込み、均一なホールド感を与えてくれる。このパターンの採用により、前作から縫い目を30%削減し、驚くほどの快適性を実現すると同時に軽量化にも貢献している。

A-FRAME STRAP

左が新世代のS9のA-FRAME STRAP 右が前世代のS7のバックビブパネル左が新世代のS9のA-FRAME STRAP 右が前世代のS7のバックビブパネル (c)ダイアテック
前作S7から外観上で最も大きく変化を遂げたのがビブストラップだ。前作では背面はメッシュパネルとなっていたが、今作ではA-FRAMEと呼ばれる1本のストラップを折り返した構造を採用する。

A-FRAMEストラップはXジャンクションを介して2本のフロントビブストラップへと接続される。フロントビブは新たなカーボン混繊素材を使用しており、優れた速乾性と抗菌性を発揮する。一方、バックビブはフロントよりも伸縮性が低い素材を採用することで、リアバックへ効率的にテンションを掛けることができるような配置となる。

安定感を狙って背面にメッシュパネルを配置していた前作に対し、同等のフィット感を持ちつつも、より放熱効率が高く、肩へとかかる負担を軽減する構造となっている。

ROLLBAR

ジャージの裾から除くROLLBAR 下部はergoboxへと接合されるジャージの裾から除くROLLBAR 下部はergoboxへと接合される (c)ダイアテック
たとえアソスのロゴが配されておらずとも一目でわかるだろうアイコニックな部分が、このROLLBARと名付けられたバックビブの取り付け方式。その名の通り、レーシングカーなどに用いられるスタビライザー/アンチロールバーにインスピレーションを受けたコンセプトだ。

ショーツの上部と後述するERGOBOXの2か所へ接続されるバックビブによって、しっかりとテンションを生み出すことで、どんなライディングポジションでもパッドを正しい位置に固定すると同時に、腰の動きをサポートする役割を持っている。

ROLLBARはビブに対して生地をたるませておくことで、着用時に適切なコンプレッションを与える構造ROLLBARはビブに対して生地をたるませておくことで、着用時に適切なコンプレッションを与える構造
ERGOBOX

2か所のバックビブとの接合部の内、下側に位置する正方形のエリアがERGOBOX。中心に向かって線形にテンションがかかっていたS7のカッティングパターンに対し、このERGOBOXとA-FRAMEストラップは、面でパッド後部にテンションを掛けることでパッドが傾かず、更なる安定感と負荷の分散を実現した。

この構造によってS7のバックスタビライザーを廃することが可能となり、至上命題であった2枚のパネルを実現することができたという。

S9 パッド

S9パッド 今回はバサルト(玄武岩)をモチーフにしたカラーだS9パッド 今回はバサルト(玄武岩)をモチーフにしたカラーだ (c)ダイアテック
S7で大きな進化を果たしたパッドが、更なるアップデートを加えられた。軽く通気性に優れる8mm厚の3Dワッフル構造やパッド中央部を縫製しないことで肌との密着度を高めるGolden Gateテクノロジーなど、既にパフォーマンスを実証済みのテクノロジーはそのままに、よりパフォーマンスを高めることに。

ターコイズのS5,アメジストのS7と、これまでアソスのパッドは貴石をモチーフにしたカラーを与えられてきたが、S9に採用されたのはバサルト、つまり玄武岩をモチーフにした色。これは、ファブリックの持つもともとの色をそのまま活かした結果なのだという。

そんなバサルトカラーのファブリックは、これまでよりも柔らかなタッチと優れた反発性によって、高い快適性を持っている。パッド前部に設けられた通気口が拡大し、不快な蒸れ感を更に低減。主要エリアのサイズを縮小することで、より軽く脚を動かしやすいようなスリム化が行われている。また、パッド後部の中央にホリゾンタルスタビライザーと呼ばれるステッチが施され、体重がかかった時にパッドが広がり、左右への位置ズレを抑え込む設計へと進化した。

アソス Equipe RS S9アソス Equipe RS S9 (c)ダイアテック
これら5つのテクノロジーから構成される"A-LOCK Engineering"によって、S9は異次元のフィット感を手に入れた。また、細やかな部分にも手が入れられ、更なる使い勝手の良さも獲得している。

その一つが、裾のグリッパーだ。一般的なショーツではシリコン製のグリッパーが配されているものだが、皮膚の弱い人はかぶれてしまったり、跡が残ってしまうという悩みを抱えていた。アソスは、ライクラ素材にもともと織り込まれているシリコン繊維を外に出すことでグリッパーとしている。これにより、余計な重量を増やすことなく裾のずり上がりを防止することを可能としたほか、縫い代を外側に置くことでより快適な履き心地を実現している。

ライクラが本来持つシリコン繊維を露出させることでグリッパーにしているライクラが本来持つシリコン繊維を露出させることでグリッパーにしている (c)ダイアテック
また、ベースモデルとなるEquipe RSに加え、平織のウォーヴェンテキスタイルとなるTYPE.701ファブリックを使用した上位モデルEquipe RSRも用意される。強いコンプレッション性能を持つこの素材を採用することでROLLBAR構造を省略することが可能となり、160g(RSは180g)とより軽く仕上がることが特徴だ。

編集部では一足先にこの最新ショーツを試す機会に恵まれた。何度かのロングライドやレースなどに参加し、感じたこの新世代の性能をお伝えしよう。

※2019年2月発売予定

アソス EQUIPE RSR Bib Shorts S9アソス EQUIPE RSR Bib Shorts S9 (C)ダイアテック


― 編集部インプレッション

まず、申し上げておかないといけないことがある。実は筆者、ビブショーツにそんなにこだわりがある方では無かった。そうそうにフィットするサドルを見つけられたからだろうか、パッドも昔の薄いもので問題を感じたことがなかったし、いわゆる普通のビブショーツを特に何の疑問も持たずに使ってきた。

なので、「やっぱりショーツはアソスでしょう!」なんていう、先輩ライダー諸氏の言葉に対しても、内心「訳知り顔で語ってるけど、ちゃんと乗れてないだけか、昔のイメージを引きずりすぎてるだけじゃないの?」と、斜に構えていたのである。そんなだから、これまでアソスのビブを使ったことは無かった。

新作ビブショーツを試す機会を得た新作ビブショーツを試す機会を得た (c)ダイアテック
さて、そんな私がアソスの新作発表会を取材することに。来日したマーカス氏から一通りのプレゼンテーションを受けたのち、テストライドもあるということで、人生で初めてアソスのショーツに足を通した瞬間、過去の自分を殴りつけたくなった。

これまで履いてきたどのショーツよりもハリのある生地が脚を包みこむ感覚は、それだけで今まで考えを改めさせるに十分。ビブを肩に通せば内腿を巻き込むようにテンションが加わり、さらにフィット感が高まる。しっかりと厚みのあるパッドながら、ごろつき感もなく自転車にまたがる前からアソスのアソスたる所以を予感させられる。

マトリックスパワータグの佐野淳也選手先導の下、那須のテストライドコースへ走り出す。前傾姿勢をとった瞬間、すべてがあるべき場所に収まった。さっそく現れる長い下りでクラウチングポジションをとる。深く体を折りたたんでも、ビブが肩に食い込んだり、どこかが突っ張るような不快感はゼロ。

平坦区間でトレインを組むと、前走者のROLLBARがジャージの裾から見えている。ペダリングの動きに合わせて伸縮しており、腰の動きをサポートしている様子が視覚的にもわかる。

登りのダンシングでもビブがずれるようなことは一切なかった登りのダンシングでもビブがずれるようなことは一切なかった (c)ダイアテック
アップダウン区間で幾度かアタックとペースアップ。サドルの前後でポジションを変えるときも、パッドがずれるようなことは無く、必死にダンシングして、力尽きてサドルへ戻るときにショーツがサドル先端に引っかかるようなことも無い。ノーストレスで走りに集中することが出来るのは、A-LOCKシステムによってしっかりとショーツにテンションがかけられており、体への密着度が高いからこそ。

ヒルクライムでは、淡々とシッティング。テストライドの時期は夏で、かなりの高気温。生地自体はしっかりとした肌触りで安心感があるのだけれど、その印象に反して放熱性はかなり高い。しっかり分厚いパッドを採用したショーツにありがちな蒸れ感はかなり少なく、パッドに開けられた通気孔がしっかりと仕事をしていることを実感する。

このテストライド後に、前作S7との違いを確かめるべく、サンプルをお借りして比較する機会にも恵まれた。S7もとても快適でハイレベルなショーツであることは間違いない。ただ、S9に比べると、幾つかの点で粗が見える部分もある。

やはり大きいのは背面のメッシュパネルの有無だろう。メッシュパネルを廃したS9はクーリング性能という面で一段階上を行く。履き比べると、A-LOCKシステムがもたらす違和感の無さが際立つ。

s9のグリッパーは肌が弱い筆者でもトラブルなく使うことができたs9のグリッパーは肌が弱い筆者でもトラブルなく使うことができた (c)ダイアテック
S7ではパッドを中央から持ち上げるような感覚で、極端に言うならば左右のパッドが広がっていくよう。一方S9は、左右のパッドがそのまま上に引っ張り上げられ、身体にフィットするような感覚だ。また、ショーツ全体のコンプレッションのかかり方にも違いがある。中央で左右に分かれるパネリングのS7に比べると、S9はまさに身体に巻き付くように密着する。

また、パッドに関していえば、基本的なクッション性などには大きな違いは感じられないが、S9は前面にカップが設けられており、より蒸れづらく収まりが良い。また、シリコングリッパーが原因でよく痒みを感じるため、裾を折り返すことが多い私が真夏の耐久レースでずっと着用したままでも一切トラブルはなかった。

このEquipe RSが来てからというもの、完全にヘビーローテーションとなっており、洗濯中というだけでライドへのモチベーションが下がるほど。サイクリングショーツへの評価軸を完全に書き換えられてしまった、幸せな犠牲者がここに一人。そして、他の自転車仲間にこう言うのだ。「やっぱりショーツはアソスじゃないと」。

アソス Equipe RS S9
ファブリック:Type .441
CLIMACODE:SUMMER 1/3
サイズ:XS–S–M–L–XL–XLG
価格:28,600円(税抜)

アソス Equipe RSR S9
ファブリック:Type.701
CLIMACODE:SUMMER 1/3
サイズ:XS–S–M–L–XL–XLG
価格:42,000円(税抜)

※2019年2月発売予定

text:Naoki.Yasuoka
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