3月7日に開催されたブエルタ・ア・ムルシア最終ステージで、テオ・ボス(オランダ、サーヴェロ・テストチーム)のスプリント力が炸裂。トラック世界選手権で5つの金メダルを獲得しているトラックスターが最終スプリントを制した。

総合優勝を飾ったフランティセク・ラボン(チェコ、チームHTC・コロンビア)総合優勝を飾ったフランティセク・ラボン(チェコ、チームHTC・コロンビア) photo:Cor Vos州都ムルシアにゴールするムルシア一周レース最終ステージ。短めの121kmのステージには2級山岳が設定されているが、ゴールの50km手前はフラットだ。

レースは43km地点でフィリップ・ダイグナン(アイルランド、サーヴェロ・テストチーム)ら3名の逃げが決まり、最大2分37秒のリードでエスケープ。メイン集団はポイント賞リーダーのグレーム・ブラウン(オーストラリア)で最終スプリントを穫りたいラボバンクがコントロールした。

2級山岳でも総合成績に影響を及ぼすような動きは見られず、終始スプリンターチームが主導権を握る形で終盤へ。先頭3名も健闘したが、ゴール4km手前で吸収。大集団によるスプリント勝負で、ラスト300mからスプリントを開始したボスがブラウンを抑えて勝利した。

ボスは過去にトラック世界選手権で5つの金メダルを獲得している言わずと知れたトラックスター。ボスは「今日のステージ最大の難関は、中盤に設定された2級山岳。予想通り(ブラウン擁する)ラボバンク勢が上りで集団ペースアップを図ったけど、チームメイトのおかげで集団内で上りをやり過ごせたんだ。ダイグナンが逃げに乗ったことで、チームは集団コントロールに加わらずに済んだし、ゴール前ではデニフィルが完璧な位置まで僕を引き上げてくれた。チームメイトの動きは完璧だった」と、2月末のクラシカ・デ・アルメリアに次ぐ今シーズン2勝目を喜んだ。

ボスの持ち味はやはりそのスピードだ。「最後は僕向きのハイスピードなゴールスプリント。今日は1週間で一番調子の良さを感じていた。ブラウンが僕の番手についていたので、常に彼の動きに警戒していた。ラスト300mでスプリントを始めると、同じくしてブラウンもスプリント開始。それを確認してもう一段加速すると、もう彼は後ろに下がるしかなかった」。ボスは着実にロードレースのスプリント勝負に順応している。

総合順位に変動はなく、チームメイトに守られて走ったフランティセク・ラボン(チェコ、チームHTC・コロンビア)が総合優勝を決めた。グランツールで総合優勝候補に挙げられるメンショフ、ウィギンズ、クレーデン、そしてアームストロングのようなビッグネームを下しての価値ある総合優勝。現チェコTTチャンピオンにとって、初めてのステージレース制覇だ。

レース展開はレース公式サイト、選手コメントはサーヴェロ公式サイトより。

ブエルタ・ア・ムルシア2010第5ステージ結果
1位 テオ・ボス(オランダ、サーヴェロ・テストチーム)         2h43'35"
2位 グレーム・ブラウン(オーストラリア、ラボバンク)
3位 ダニエル・ショルン(オーストリア、チームネットアップ)
4位 ヴァレンティン・イグリンスキー(カザフスタン、アスタナ)
5位 ヘニング・ボム(ドイツ、ドイツチーム)
6位 ラッセル・ダウニング(イギリス、チームスカイ)
7位 ロジェ・クルーゲ(ドイツ、チームミルラム)
8位 アンドレアス・シーリンガー(ドイツ、チームネットアップ)
9位 マヌエル・アントン(スペイン、スペインチーム)
10位 イアン・ウィルキルソン(イギリス、エンデューラ・レーシング)

個人総合成績
1位 フランティセク・ラボン(チェコ、チームHTC・コロンビア)     16h01'24"
2位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)                +38"
3位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)            +53"
4位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)          +57"
5位 ホセ・フフレ(スペイン、アスタナ)                  +1'21"
6位 スタフ・クレメント(オランダ、ラボバンク)              +1'23"
7位 ランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)
8位 ピーター・ウェーニング(オランダ、ラボバンク)            +1'41"
9位 ルーク・ロバーツ(オーストラリア、チームミルラム)          +1'42"
10位 トマス・マルチンスキ(ポーランド、 CCCポルサット・ポルコウィチェ) +1'59"

山岳賞
リエーヴェ・ヴェストラ(オランダ、ヴァカンソレイユ)

ポイント賞
グレーム・ブラウン(オーストラリア、ラボバンク)

チーム総合成績
ラボバンク

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos