8月10日に開催されたツール・ド・ポローニュ第7ステージで、逆転を狙って終盤に攻撃を成功させたサイモン・イェーツがステージ優勝。一時的にイェーツにリードを奪われながらも首位を守り抜いたミカル・クウィアトコウスキーが初の総合優勝に輝いた。


未舗装区間を走るミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)未舗装区間を走るミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) photo:Tour de Pologne
ツール・ド・ポローニュ2018第7ステージツール・ド・ポローニュ2018第7ステージ photo:Tour de Pologneツール・ド・ポローニュ2018第7ステージツール・ド・ポローニュ2018第7ステージ photo:Tour de Pologne

第75回ツール・ド・ポローニュ最終日、ポーランド南部の山岳地帯は雨に見舞われた。7日間の大会を締めくくる最終ステージは、3つの1級山岳が設定された68km周回コースを2周する難関山岳コース。つまり全長は136kmで、6つの1級山岳が登場し、獲得標高差は2,900mに達する。そして最後はフィニッシュ地点ブコビナに向かう高低差200m/最大11%の登りが待っている。

総合優勝者を導き出す3時間半の戦いは、アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ)やロマン・クロイツィゲル(チェコ、ミッチェルトン・スコット)、ヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAEチームエミレーツ)ら18名が逃げグループを形成する展開でスタート。この中に選手を送り込めなかったCCCスプランディ・ポルコウィチェが山岳賞ジャージを守るためしばらく追走したものの届かず、ステージ序盤から1級山岳を5連続で先頭通過したパトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)が山岳賞獲得を果たしている。

2周目に入るとチームスカイの集団牽引によって逃げグループのリードは縮小し、ロットNLユンボも集団ペースアップに加わってこの日最後の1級山岳シャナブコビナ(最大22%)に突入する。先頭で諦めずに逃げ続けたコンティは、激坂区間をハイペースで駆け上がるメイン集団に吸収された。

前日に続いてこの日も総合3位ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)がアタックを繰り返したが、チームスカイのアシスト体制を崩壊させるには至らない。すると総合9位のサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)が残り10km地点で単独アタックに成功。総合で39秒しか遅れていないイェーツが、メイン集団に39秒差をつけて独走した。

逃げに選手を送り損ねたCCCスプランディ・ポルコウィチェ逃げに選手を送り損ねたCCCスプランディ・ポルコウィチェ photo:Tour de Pologne
チームスカイが序盤からメイン集団を牽引チームスカイが序盤からメイン集団を牽引 photo:Tour de Pologne
未舗装区間をこなすミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)未舗装区間をこなすミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) photo:Tour de Pologne
観客が詰めかけた山岳に挑む逃げグループ観客が詰めかけた山岳に挑む逃げグループ photo:Tour de Pologne
チームスカイはパヴェル・シヴァコフとセルジオルイス・エナオを投入してイェーツを追いかけたが、タイム差を思うように縮めることができない。ステージ優勝者にはボーナスタイム10秒が与えられるため、イェーツが29秒以上クウィアトコウスキーを引き離してフィニッシュすれば総合逆転が起こる展開。残り4km地点で犬がコースに侵入した影響でメイン集団の隊列が崩れ、落車した総合5位セルゲイ・チェルネトスキー(ロシア、アスタナ)が集団から脱落した。

フィニッシュまでの登りで再びベネットが動くと、アシストを失ったクウィアトコウスキーがこれを封じ込める。クウィアトコウスキーが自ら精鋭集団を率いて先頭イェーツを追いかけ、ベネットやティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)も追走に加わった。

先頭イェーツはリード失いながらも逃げ切り、追いすがるピノとダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)に12秒差、クウィアトコウスキーやベネットを含む追走グループに14秒差をつけてフィニッシュ。イェーツとピノがそれぞれ総合2位と総合3位に浮上し、リードを守り抜いたクウィアトコウスキーが総合優勝を射止めた。

独走でフィニッシュに向かうサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)独走でフィニッシュに向かうサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:Tour de Pologne
独走でフィニッシュするサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)独走でフィニッシュするサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:Tour de Pologne
「地元のポーランドで総合優勝するという夢を達成して、素晴らしい気持ちに包まれている」。表彰台でイエロージャージに袖を通したクウィアトコウスキーは大会初制覇を喜ぶ。今シーズンはティレーノ〜アドリアティコに続くUCIワールドツアーレース総合優勝。

クウィアトコウスキーは2012年大会で総合2位に入っているが、それ以降は思うような走りができずにいた。「毎年このポーランドで結果を残したいと思っていたけど、いつもツール・ド・フランスの疲労の影響でパフォーマンスを発揮できずにいた。今回もライバルたちが総攻撃を仕掛ける厳しい展開だったけど、自分も積極的に動くことでイエロージャージをキープ。沿道から飛ぶ叫び声に後押しされて、強力なチームメイトの力を得てこうして勝利を手にすることができた」。

「数日遅れの誕生記念になったよ」と語るのは総合2位でレースを終えたイェーツ。「このレースはステージ距離が短いので自分の調子を探りにくいけど、毎日調子は上向きだった。今日は正しいタイミングでアタックして、逃げ切ることができて本当に良かったよ」と語るイェーツや、総合1位クウィアトコウスキー、総合3位ピノ、総合4位ベネット、総合5位ディラン・トゥーンス(ベルギー、BMCレーシング)は揃ってブエルタに出場する予定だ。

総合優勝を飾ったミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)総合優勝を飾ったミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) photo:Tour de Pologne

ツール・ド・ポローニュ2018第7ステージ
1位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 3:37:17
2位 ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) 0:00:12
3位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)
4位 サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) 0:00:14
5位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)
6位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)
7位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、バーレーン・メリダ)
8位 リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター) 0:00:16
9位 ゲオルク・プライドラー(オーストリア、グルパマFDJ)
10位 ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)
DNF 別府史之(日本、トレック・セガフレード)
個人総合成績
1位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) 0:23:54
2位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 0:00:15
3位 ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) 0:00:20
4位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) 0:00:24
5位 ディラン・トゥーンス(ベルギー、BMCレーシング) 0:00:27
6位 ゲオルク・プライドラー(オーストリア、グルパマFDJ) 0:00:31
7位 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 0:00:32
8位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ) 0:00:40
9位 サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) 0:00:42
10位 ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ) 0:00:44
ポイント賞
1位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) 73pts
2位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 66pts
3位 ディラン・トゥーンス(ベルギー、BMCレーシング) 63pts
山岳賞
1位 パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ) 74pts
2位 ルーカス・オウシアン(ポーランド、CCCスプランディ・ポルコウィチェ) 57pts
3位 ヤン・トラトニク(スロベニア、CCCスプランディ・ポルコウィチェ) 50pts
チーム総合成績
1位 アージェードゥーゼール 73:19:02
2位 アスタナ 0:00:47
3位 チームスカイ 0:03:28
text:Kei Tsuji
photo:Tour de Pologne