チームスカイのメンバーとして2010年シーズンをスタートさせたクリス・フルーム(イギリス)は、5月のジロ・デ・イタリアに向けて調整を続ける。ジロではブラドレー・ウィギンズ(イギリス)とダリオダヴィデ・チオーニ(イタリア)をアシストする予定だ。

GPインスブリアに出場したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)GPインスブリアに出場したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Gregor Brown「まだチームと戦略の詳細について話していないけど、ジロでは逃げに乗るなどして、総合狙いのブラドレーとダリオをサポートしたい」。

ケニア生まれのフルームは2008年に祖父母の出身地であるイギリスに帰化。ケニア時代の2007年にはツアー・オブ・ジャパンの伊豆ステージで優勝を飾っている。

2009年ジロ・デ・イタリア 激坂サンルーカでジェランスに食らいつくクリス・フルーム(イギリス、当時バルロワールド)2009年ジロ・デ・イタリア 激坂サンルーカでジェランスに食らいつくクリス・フルーム(イギリス、当時バルロワールド) photo:Kei Tsujiここ数年はイタリアに住み、昨年バルロワールドのメンバーとしてジロ・デ・イタリアに初出場。サンルーカの激坂が登場した第14ステージで逃げに乗り、サイモン・ジェランス(オーストラリア)に敗れてステージ6位に入った。

昨年ジロ・デミッリアの名物坂として知られる長さ2100mの激坂サンルーカを上り切った際、フルームは「熱狂的な大歓声に包まれたトンネルのようだった。観客は名前を叫び、絶叫が耳元でこだました。初めて体感するフィーリングだったよ。背中も押されたけど、あれ以上押されたら失格になるところだった」。当時死闘を繰り広げたジェランスは現在チームスカイのチームメイトだ。

2009年ジロ・デ・イタリア 先頭で激坂を駆け上がるクリス・フルーム(イギリス、当時バルロワールド)とサイモン・ジェランス(オーストラリア、当時サーヴェロ)2009年ジロ・デ・イタリア 先頭で激坂を駆け上がるクリス・フルーム(イギリス、当時バルロワールド)とサイモン・ジェランス(オーストラリア、当時サーヴェロ) photo:Kei Tsuji2010年のジロは、5月8日から30日まで、3週間に渡って開催される。レース主催者RCSスポルトが昨年10月に明らかにしたルートには、ゾンコラン、プラン・デ・コロネス、モルティローロ、ガヴィアと言った名立たる峠が目白押し。特に最終週に厳しい山岳ステージが集約されている。

「今年の大会は勾配の厳しい山岳が多い。それに合わせてトレーニング内容も考えないといけない。勝負の鍵を握るであろう重要な峠は、春に試走する予定だよ」。

現在24歳のフルームは、2008年から2年間、クラウディオ・コルティ監督のバルロワールドで走った。2008年には史上初のケニア人としてツール・ド・フランスに出場。スポンサー撤退に伴うバルロワールドの解散により、イギリスの新生チームスカイに移った。

2009年ジロ・デ・イタリア クリス・フルーム(イギリス、当時バルロワールド)2009年ジロ・デ・イタリア クリス・フルーム(イギリス、当時バルロワールド) photo:Kei Tsuji

バルロワールドからチームスカイの移籍は、ただ単にプロコンチネンタルからプロツアーにクラスが昇格しただけではない。フルームはチームの手厚いサポートに驚いている。「このチームは居心地が良い。これまでのチームとは根本的に体制が違う。チームの雰囲気はやる気に満ちているし、スタッフもみんなプロフェッショナル。このチームが好きだ」。

「サポート体制に関しては大きな変化だ。バルロワールドは比較的保守的で、伝統的な考え方だった。それはそれで好きな人もいると思うけど、僕はロードレースを科学的に追求する近代的な考え方が好き。このチーム体制が自分向きだと思う」。

「僕のトレーナーはロッド・エリングワース。彼が僕のトレーニングプログラムを組んでくれている。もちろんバイクポジションから何から何まで、彼が指示を与えてくれるんだ」。フルームの言葉からは、デーヴィッド・ブレールスフォード監督の「小さな進歩も見逃さずに追求して行く」というポリシーが感じられる。

2010年ツアー・ダウンアンダー フルームはチームスカイのデビュー戦に出場2010年ツアー・ダウンアンダー フルームはチームスカイのデビュー戦に出場 photo:Kei Tsujiフルームとエリングワースは週に何度も意見を交わす。「トレーニングプログラムに沿っているか確認するのが目的。でも今はレースが始まったから、トレーニングよりもリカバリーや長期プログラムの遂行について話し合っている。ジロに向けて詳細なスケジュールを詰めて行きたい」。

フルームは2月末に開催されたGPインスブリアで、チームメイトのジョンリー・オーガスティン(南アフリカ)が逃げグループに乗れるようサポートした。しかしラスト15km地点で前方の選手が転倒し、避けきれずに落車してしまったと言う。

チームスカイのクリス・フルーム(イギリス)とダヴィデ・ヴィガーノ(イタリア)チームスカイのクリス・フルーム(イギリス)とダヴィデ・ヴィガーノ(イタリア) photo:Kei Tsuji幸いカラダに異常は見つからず、ジロに向けて順調な仕上がりを見せている。ツアー・ダウンアンダーでシーズンをスタートさせたフルームは、ツール・ド・オートヴァールの2ステージでトップ10フィニッシュ。「コンディションは上々だ。南アフリカの高地で冬の間トレーニングを積んだことが効いている。シーズン序盤からモチヴェーションは高いよ」。

フルームはバルロワールド時代に住んでいたロンバルディア州を離れ、チームスカイが拠点を置くトスカーナ州クアッラータ近くに引っ越した。フルーム曰く、トスカーナ州はトレーニング向きの理想的なルートが多く、トレーニングパートナーも見つけやすい。

「数日前はカヴ(マーク・カヴェンディッシュ)とトレーニングしたよ。でもスプリントの秘訣を教えてくれなかった。彼にスプリントで勝つのはもう少し先の話になりそうだ」。フルームは冗談混じりでそう語った。

フルームの次戦は3月3日開幕のブエルタ・ア・ムルシア(UCI2.1)だ。

text:Gregor Brown
photo:Gregor Brown, Kei Tsuji, Cor Vos
translation:Kei Tsuji



Gregor.Brown (グレゴー・ブラウン)

イタリア・レッコ在住のアメリカ人プロサイクリング・ジャーナリスト。2005、2006年ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランス、春のクラシック等で綾野 真(シクロワイアード編集長/フォトジャーナリスト)に帯同し、取材活動を行う。2007年よりサイクリングニュース(イギリス)の主筆ジャーナリストとして活躍後、フリーランスに。2009年12月よりシクロワイアード契約ジャーナリストとなる。今後、主にイタリア・英語圏プロサイクリングメディアに活動の舞台を移す。





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