危険度の高いパヴェステージで勝利を喜ぶ選手、マイヨジョーヌを守りながらも悔やむ選手、安堵した選手、リタイアに泣いた選手。様々な感情が入り乱れたツール・ド・フランス第9ステージの各選手の声をお届けします。


ステージ1位 ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、トレック・セガフレード)

天を指差してフィニッシュするジョン・デゲンコルプ(ドイツ、トレック・セガフレード)天を指差してフィニッシュするジョン・デゲンコルプ(ドイツ、トレック・セガフレード) photo:Luca Bettini
とてもファンタスティックなことが起こった。この勝利をうまく表現する言葉が見つからない。とにかく肩に重くのしかかっていたプレッシャーから解放された。パリ〜ルーベで勝ったのと同じ感情だ。

この勝利をずっと待ち続けていた。多くの人がもう自分は元の状態に戻れないと思っていたと思う。数ヶ月前のパリ〜ルーベでも落車して膝を負傷してしまい、4週間にわたってトレーニングできない状態になってしまった。少し自暴自棄になったけど、妻と家族の力を借りて自信を取り戻し、今日のステージで勝つために苦しいトレーニングを積んできた。

3人のスプリントになれば勝てると思っていた。今日の逃げは3年前のパリ〜ルーベのデジャブのようだったよ。この勝利でスプリントに向けての自信を取り戻すことができた。

この勝利を父の親友であるヨルグに捧げたい。彼は「第二の父」と言ってもいい存在で、自転車競技を始めた時からずっと支えてくれていて、ヨーロッパ各国を転戦する時にいつも付き添ってくれていた。そんな彼が昨年10月に仕事中の事故で亡くなってしまい、彼に勝利を捧げることを考えながらずっとトレーニングを積んできた。彼のことを思いながらフィニッシュラインを切った時、感情が溢れてきたよ。

チームメイトと歓喜のハグを繰り返すジョン・デゲンコルプ(ドイツ、トレック・セガフレード)チームメイトと歓喜のハグを繰り返すジョン・デゲンコルプ(ドイツ、トレック・セガフレード) photo:ASO

ステージ2位&マイヨジョーヌ グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)

セクター4シソワンを行くマイヨジョーヌのグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)セクター4シソワンを行くマイヨジョーヌのグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング) photo:Makoto.AYANO
最悪のスタートだった。リッチー(ポート)が落車でレースを去ってしまったので、チームは作戦を立て直す必要があった。その間もレースは進み続けていたし、立て直しが急務だった。

スプリントには自信があったけど、少し仕掛けるのが遅かった。このルーベでマイヨジョーヌを着て勝利することを夢見ていただけにとても残念。勝っていたらとても素敵な写真になっていたのに。

リッチーがいなくなった今、この先のステージでは自由が与えられることになると思う。火曜日の山岳ステージでマイヨジョーヌを着て逃げることだってできる。そして、このツールが終わるまでにステージ優勝したい。

ステージ3位 イヴ・ランパールト(ベルギー、クイックステップフロアーズ)

ステージ3位のイヴ・ランパールト(ベルギー、クイックステップフロアーズ)ステージ3位のイヴ・ランパールト(ベルギー、クイックステップフロアーズ) photo:Makoto.AYANO
暑さと砂埃にまみれた過酷な1日だった。パヴェのセクターが現れるたびに集団先頭に向けて激しいポジショニング。一回バイクを交換したけど概ねトラブルなくレースを進め、どこでアタックを仕掛けようかずっと探っていた。そしてヴァンアーヴェルマートとデゲンコルプという世界を代表するクラシックライダーとエスケープ。彼らと一緒に逃げグループを形成したことを誇りに思う。スプリントでは勝ち目がなかったけど、攻撃を仕掛ける力は残っていなかった。

ステージ5位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)

セクター4シソワンを行くパリ〜ルーベ2018王者ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)セクター4シソワンを行くパリ〜ルーベ2018王者ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Makoto.AYANO
ミスを犯してしまった。ずっと集団前方で展開していたのに、(ランパールトがアタックした)あのセクターだけ後ろに下がっていた。他の選手たちに徹底的にマークされていたし、一旦飛び出した彼らを追いかけるのは不可能だった。残り4kmを切ってからカウンターアタックを仕掛けたけど遅すぎた。選手全員がナーバスで、リッチーもリタイアしたし、とてもクレイジーな1日だった。

ステージ16位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)

メイン集団の先頭を走るゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)メイン集団の先頭を走るゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
パヴェセクターの入り口に向かってスプリントの繰り返し。そしてパヴェに入ってからはひたすら辛い。今日はスタートからフィニッシュまで、3時間30分にわたる全開走行だった。

ジャンニ(モスコン)が落車でいなくなって、続いてクウィアト(クウィアトコウスキー)も落車して、ルーク(ロウ)がパンクするという理想的な展開ではなかったけど、常に集団の良い位置で走れていたし、全体的には良い1日だったと言える。

ステージ19位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)

セクター4シソワンをメイン集団先頭でクリアするトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)セクター4シソワンをメイン集団先頭でクリアするトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) photo:Makoto.AYANO
勝者としてこのステージを終えたかったので残念。勝者といってもステージ優勝者ではなく総合ライバルたちからタイムを奪う勝者という意味。望み通りのステージとはいかなかった。今日はコース自体が過酷で、さらにずっと向かい風が吹いていたのでマイヨジョーヌ候補たちは互いを激しくマークし合っていた。とても脚の状態が良かっただけに、リードを奪えなくて残念だ。マイヨジョーヌ候補の中では自分が最も強かったと思う。

ステージ22位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)

落車したものの総合争いから遅れなかったクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)落車したものの総合争いから遅れなかったクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Makoto.AYANO
これまでもツールでパヴェを走ったことがあるので特別新しいものではなかった。3つか4つのパヴェセクターを終えたところで集団が割れたけど、まだフィニッシュまで距離があったので本格的に仕掛けるには早すぎた。自分とゲラント(トーマス)をずっと良い位置で走らせてくれたチームメイトたちに感謝したい。

本当の総合争いが始まる明後日からの山岳ステージが楽しみ。幸い明日は休息日なのでしっかりと身体を休めることができる。今日という危険な1日を終えることができてホッとしているけど、総合ライバルたちの中でリッチーが落車でリタイアしてしまった。友人が落車するのを見るのは辛い。

ステージ31位 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)

ハードなレースに持ち込むために力を使っていたチームもあったけど効果はあまりなかったと思う。もう少し良い走りができたとも思うけど、落車からの集団復帰に力を使ってタンクは空っぽだった。今日はモビスターがチームとしてよく機能していたと思う。彼らは常に一塊に集まって走っていた。

ステージ36位 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)

セクター9ベルセーを行くロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)セクター9ベルセーを行くロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) photo:Makoto.AYANO
最後までパニックになることなく落ち着いて走ったおかげで致命的なタイムを失わずに済んだ。とてもクレイジーな日だった。このスポーツの美しさを体現するようなステージ。メイン集団から45秒遅れたときはダメかと思ったけど、最終的に(ライバルから)7秒しか遅れなかったのは奇跡のようだ。

ステージ59位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)

チームメイトに助けられるもタイムを失ったリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)チームメイトに助けられるもタイムを失ったリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) photo:CorVos
レースには様々な障害物が登場する。勝つためにはそれらを乗り越えないといけない。本格的な山岳が一つも登場しておらず、平坦な9日間を終えたばかりなので、誰が山岳で調子が良いのかまだわからない。まだアルプスとピレネーの厳しい山岳が残っている。しっかりリカバリーしてフレッシュな状態で山岳ステージに挑まないといけない。明後日からは新しいツールが始まる。

マイヨアポワ着用 トムス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード)

石畳のレースを楽しめたし、バウケ(モレマ)は集団内でフィニッシュし、ジョン(デゲンコルプ)がステージ優勝。これ以上の成績を求めてはいけないような最高の1日になった。チームの強さを見せつけることができたよ。

2016年パリ〜ルーベ覇者マシュー・ヘイマン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)

チームスカイがペースを上げて攻撃を仕掛けたけど、そのたびに彼らの誰かが落車していた。アダム・イェーツがタイムを失うことなくフィニッシュしたのでホッとしている。リッチー(ポート)の落車リタイアはとても残念。彼らはこのツールのために何週間も何ヶ月も半年も、色んなことを犠牲にして調整を行っている。時に子供の出産に立ち会えないこともある。個人的にはレースを楽しめたけど、ツールにこういった石畳ステージが本当に必要なのか自分にはわからない。


鎖骨骨折によりリタイア リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)

7km地点で落車し、鎖骨を骨折したリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)7km地点で落車し、鎖骨を骨折したリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:CorVos
2年連続でツールをこんな形で終えてしまった。気づいたら地面に倒れ込んでいて、すぐに右肩に激痛が走った。9日間にわたって素晴らしい働きをしてくれたチームメイトたちに感謝している。ここまで良い形でレースを進めていただけに、パリまで走り続けることができずに残念。早く怪我から復活してレースに戻りたい。

text:Kei Tsuji in Roubaix, France