ツール・ド・フランス開幕まで6日を残した7月1日、主催者ASOが前年度覇者クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)の出場を認めないことを明らかにした。フランスのルモンド紙が伝えた。


クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
4度のツール・ド・フランス総合優勝者で、2017年のツールとブエルタ・ア・エスパーニャ、そして2018年のジロ・デ・イタリアで総合優勝したフルーム。史上最多タイの4連続グランツール制覇という大記録に挑む予定だったフルームがスタートラインに並ぶことができない可能性が出てきた。

問題となっているのは、初総合優勝した2017年ブエルタ第18ステージのレース後に採取された尿サンプルから、喘息薬サルブタモールのAAF(違反が疑われる分析結果)が検出されたこと。サルブタモールはWADA(世界アンチドーピング機構)の禁止薬物には指定されていないため、ドーピング違反とは認められず即時出場停止処分は受けていない。しかし基準値の2倍という高いサルブタモールの値が検出されたため、UCIがチームスカイとフルーム側に説明を求めるとともに長い時間をかけて審議を行っている。仮にドーピング違反が認められればフルームには出場停止処分とタイトル剥奪処分が与えられるが、最終的な判断が下るまでルール上はレース出場が可能な状態であり、倫理的な面から批判を受けながら出場した5月のジロでフルームは総合優勝を果たしている。

フランスのルモンド紙によると、主催者ASOはフルームの出場を認めない判断をチームスカイに通知した。「ASOとイベントのイメージや評判に悪影響を与えるチームや選手の出場を拒否もしくは排除する権利を有する」というASO独自の規則を適用。「フルームの総合優勝に脚注が付くようなジロ・デ・イタリアの二の舞は避けたい」と、長期化するUCIの審議にしびれを切らした形だ。大会ディレクターのクリスティアン・プリュドム氏はフランスのTVインタビューで「世界最大のレースの開幕までに判断が出されなかったのは嘆かわしいこと。黒か白か、陽性か陰性か、明確な答えが必要であり、現在の曖昧なルールには変更が必要だ」と語っている。

ASOからの通知を受けて、フルーム出場の正当性を唱えるチームスカイはフランス国立オリンピックスポーツ委員会に提訴した。7月3日に聴聞会を開いて審議を行い、7月4日には判断が下されるとしている。同委員会がフルームの出場を認めない判断を下した場合、チームスカイはCAS(スポーツ仲裁裁判所)に上訴する予定だが、裁定が7月7日のツール開幕に間に合うかどうかは明らかではない。

過去にもASOはチームや選手の出場を拒否した例はある。2008年にはASOが「ツール・ド・フランスと自転車界全体にダメージを与え、前年度に主催者の信頼を裏切った」としてアスタナの出場を拒否。その結果、アルベルト・コンタドール(スペイン)は大会連覇のチャンスを失っている。また、2009年には過去のコカイン陽性を引き合いに出し、ASOは「ツール・ド・フランスのイメージにそぐわない」としてトム・ボーネン(ベルギー)の出場を拒否した。その後の審議によりボーネンのツール出場は認められている。

ジロ総合優勝を果たしたクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)ジロ総合優勝を果たしたクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:LaPresse

text:Kei Tsuji

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