5月17〜20日に開催されたUCI-Uカテゴリーのロンド・ド・リザール。U23における世界トップクラスの選手たちが集ったこのレースの模様を、参加した石上優大、渡邉歩のコメントを交えながら、EQADSの山崎健一氏によるリポートでお送りする。



世界自転車競技連合UCI認定レースには、U23選手限定の「UCI-Uカテゴリー」というものが存在する。通常のUCIカテゴリーレースでは強豪エリート(23歳以上)選手にアシストとして使われてしまいかねないトップU23選手達だが、レースをU23選手に限定させる事により彼らをのびのびと走らせ、更なる成長と経験を促すのがその目的だ。若手選手をスカウトするチームや選手代理人にとっても、明確な実力差があるエリート選手の中で走られるよりも、U23選手の真のポテンシャルが見えやすくなり、重宝されている。

ロンド・ド・リザール2017を制したパヴェル・シヴァコフ(ロシア、BMCレーシング)。このレースをステップに、2018年はチームスカイへと移籍した。表彰台には往年の名選手、レイモン・プリドール氏の姿もロンド・ド・リザール2017を制したパヴェル・シヴァコフ(ロシア、BMCレーシング)。このレースをステップに、2018年はチームスカイへと移籍した。表彰台には往年の名選手、レイモン・プリドール氏の姿も photo: Ronde de l'Isard
U23選手視点から見ると、エリート世代に上がる前の「UCI-U」カテゴリーのうちに、プロチームから”Someone”(=見込みのあるヤツ)だと一目置かれる事が重要となる。さもないと、U23卒業後には更に強いエリート選手のアシストに従事する事を余儀なくされ、自らの結果を追えない名もなき選手に甘んじざるを得ず、キャリアの選択肢が徐々に閉ざされていくという現実がある。実際、世界のロード界ではU23世代のうちに”Someone”に成れずにエリート世代へと上がり、コンチネンタルチームで選手を継続した後にひっそりと引退する選手が多くいる。この世界の潮流に飲まれないためにも、世界のU23選手たちは必死でU23年代のうちに頭一つ飛び抜け、プロ入り切符を掴もうとする。

石上優大(EQADS/AVCAIX)石上優大(EQADS/AVCAIX) photo: Cyclisme Japon渡邉歩(EQADS/GSCブラニャック)渡邉歩(EQADS/GSCブラニャック) photo: Cyclisme Japon

今回この“サバイバルレース”に真っ向から挑んだ日本人は、EQADS準所属の石上優大と渡邉歩。それぞれフランスの名門チーム「AVCAIX」と「GSCブラニャック」へ派遣中の2人だ。『ロンド・ド・リザール(UCI2.2U)』は、ツール・ド・フランスを主催するASOが協力し、近未来の世界トップ選手を輩出すべく1977年から開催される伝統的なステージレース。過去にジロ・デ・イタリア2009&ブエルタ・ア・エスパーニャ2007総合優勝のデニス・メンショフや、現在チームスカイに所属するパヴェル・シヴァコフ、ケニー・エリッソンドらが総合優勝を果たしている。このレースでの好成績が将来のプロチーム契約に直結するとあって、本2018年大会ではロット・スーダル、AG2R、ディレクトエネルジーの育成チームや、アメリカ&ポルトガルU23ナショナルチームを含む26チーム、149人の近未来プロ候補選手が参加した。

レース情報
・レース名:ロンド・ド・リザール(UCI2.2U、全4ステージ、総距離586km)
・開催期間:2018年5月17日(木)〜20日(日)
・開催地:フランス南西部〜ピレネー山脈
・コースプロフィール:http://www.ronde-isard.fr/edition-2018/
・日本人出場選手:石上優大(EQADS/AVCAIX)、渡邉歩(EQADS/GSCブラニャック)



第1ステージ(5月17日、125.94km)

1996年生まれのイギリス人、スティ-ブン・ウィリアムス(SEGレーシングアカデミー)が頂上ゴールを制し、総合首位に立つ1996年生まれのイギリス人、スティ-ブン・ウィリアムス(SEGレーシングアカデミー)が頂上ゴールを制し、総合首位に立つ photo: Ronde de l'Isard
いきなり頂上ゴールが設定された第1ステージは、パレード区間から3回ほど落車が続いた後、レース序盤の比較的平坦区間にて11名の逃げが形成され、一時はメイン集団から3分40秒まで差が開く。渡邉歩はスプリント賞狙いの逃げを目標としており、逃げグループへの追走を試みるも、逃げに選手を乗せている強豪SEGレーシングやUno-Xらに潰される格好となった。14kmの登りが続く勝負所、ポルテ・ダスペ峠の入り口では1分35秒差にまで縮小。峠の頂上で逃げは11名から6名に減少し、メイン集団とのタイム差は更に57秒にまで縮む。

そのままレースは平均勾配7%x3.5kmの最終登坂に突入。先頭6名が協調体制を崩し、千切り合いを開始するとともに、後続メイン集団からはスティ-ブン・ウィリアムス(SEGレーシングアカデミー)が単独アタック。あっという間に先頭とのタイム差を詰め、ゴールまで2km強の地点で先頭を捕らえると、間髪入れずに単独アタック。そのままゴールまで逃げ切り、独走優勝を果たしてリーダージャージも手に入れた。圧倒的な力を魅せたステファンだが、英国チーム内ではまだ「世界選手権U23」や「ツール・ド・ラヴニール」のメンバーに選ばれたことがない。欧州強豪国の選手層の厚さを物語るエピソードだ。

1級山岳の残り1km地点で遅れた石上優大は、チームメイトのアシストに徹し64位でフィニッシュ。渡邉歩は上りでコンディションが上がらず、12分6秒遅れの121位でこの日を終えた。

第1ステージ オフィシャル・ハイライトムービー
第1ステージ リザルト(同・個人総合、平均時速 40.684km/h)
1位 WILLIAMS Stephen(イギリス、SEGレーシング) 3時間5分44秒
2位 MERTENS Julian(ベルギー、ロト・スーダルU23) +8秒
3位 ANTUNES Tiago (ポーランド、ALD)
64位 石上優大(EQADS/AVCAIX) +2分1秒
121位 渡邉歩 (EQADS/GSCブラニャック) +12分14秒  


第2ステージ(5月18日、154.3km)

リーダージャージを身に纏い、雄叫びを上げながら2ステージ連続優勝を果たすスティ-ブン・ウィリアムス(SEGレーシングアカデミー)リーダージャージを身に纏い、雄叫びを上げながら2ステージ連続優勝を果たすスティ-ブン・ウィリアムス(SEGレーシングアカデミー) photo: Ronde de l'Isard
総合リーダーのスティ-ブン・ウィリアムスを守りながら進むSEGレーシングアカデミー総合リーダーのスティ-ブン・ウィリアムスを守りながら進むSEGレーシングアカデミー photo: Ronde de l'Isard前半平坦で最後に9.6kmの頂上ゴールが設定されたこのステージは、スタート直後から道が細く入り組んだ区間のある小周回を2周してからライン区間へと向かう。この序盤の周回からアタック合戦が起こり、分裂、再合流が激しく繰り返された。

チームから逃げを課せられた渡邉歩は、「チーム地元にあるスプリントポイントを取って、あわよくばポイント賞に近づきたいと考えていた」と言い、3回ほど逃げを打つものの決まらず。レース開始から30分後、結果としてチームメイトが入った14名の逃げを行かせることとなり、逃げと集団のタイム差は、最大で1分50秒まで開いた。

しかし、レースリーダーのウィリアムスを擁するSEGレーシングが、逃げとのタイム差を強力にコントロール。更に逃げの協調を崩す使命を帯びたSEGレーシング選手1名が含まれている逃げグループ内は、徐々に悲観的な雰囲気に。それを打破すべく逃げグループからは更にアタックを仕掛ける選手もいるが、頂上ゴールのクライマックスへと近づくにつれ、SEGレーシングやヴァンデU(ディレクトエネルジーの育成チーム)らが本気で逃げを仕留めに掛かる。

ついにゴールまで10km弱の地点でレースは振り出しに戻り、再度SEGレーシングが総合リーダーのウィリアムスの為に先頭で集団を牽引する。一人、また一人とちぎれて先頭集団は絞られ、最後は総合リーダーのスティーブン・ウィリアムスが再度ステージ優勝。総合2位マルテンスとのタイム差を開くことに成功、このレースのボスが自分である事を強烈にアピールした。石上は登り始めてから2km程で集団から遅れ、「あとは自分の出し切れるペースで登った」と4分半遅れの41位でゴールした。

余談だが、ゴール地点となったグリエ・ネージュは、近隣サイクリストたちが「ツール・ド・フランスのステージゴール地点にしてほしい!」との嘆願を行っていることでも知られている。

第2ステージ オフィシャル・ハイライトムービー
第2ステージ リザルト(平均時速 40.646 km/h)
1位 WILLIAMS Stephen(イギリス、SEGレーシング) 3時間47分46秒 
2位 LEKNESSUND Andreas(ノルウェイ、UXT) +4秒
3位 PARET PEINTRE Aurélien(フランス、CCF) +7秒
43位 石上優大(EQADS/AVCAIX) +6分57秒
125位 渡邉歩 (EQADS/GSCブラニャック) +34分23秒  
個人総合(第2ステージ終了時点)
1位:WILLIAMS Stephen(イギリス、SEGレーシング) 6時間53分10秒
2位:MERTENS Julian(ベルギー、ロト・スーダルU23) +29秒
3位:PARET PEINTRE Aurélien(フランス、CCF) +31秒


第3ステージ(5月19日、153.4km)

集団スプリントを制したのは、1998年生まれのベラルーシ人、シャレイ・ショウシェンカ。写真右端に9位入賞した石上優大の姿も集団スプリントを制したのは、1998年生まれのベラルーシ人、シャレイ・ショウシェンカ。写真右端に9位入賞した石上優大の姿も photo: Ronde de l'Isard
全ステージ中、唯一山岳が組み込まれていないという事で、非山岳スペシャリストや総合を狙わないチームにとっては貴重な勝利のチャンスとなったステージ。

レース開始から殺気立つ雰囲気の中、アタック合戦が幾度となく繰り返され、リーダーチームであるSEGレーシングも集団を落ち着かせるべくコントロールするが、逃げたい選手が多過ぎるためお手上げ状態となった。アップダウンが激しく、後ろから脚がある選手が全開で追うものの、前もパワー全開で進んでおり、差が広がってゆく。この中で渡邉歩を含む40名ほどが後方に取り残されるも、60kmを過ぎたあたりでメイン集団へと復帰する。この逃げと吸収を繰り返したのち、ゴールまで約50kmを残した地点で、ようやく4名の逃げが形成された。

しかし唯一の非山岳ステージという事もあり、勝機を逃したくない石上優大らを含むメイン集団が、猛烈に逃げを追い詰める。ゴール前10km地点でレースは振り出しに戻り、メイン集団は石上を含む約50名に。渡邉はここから約1km続く上りでのペースアップについて行けず再び脱落。最後は大集団スプリントとなり、ベラルーシのシャウチェンカが僅差で優勝。石上もこれに加わり、タイム差なしの9位と健闘した。

近年のベラルーシは『ツール・ド・ラヴニール2017』で挙げた勝利を筆頭に、国際試合で頭角を現し始めている。ハードな山岳2連戦後のステージでゴールスプリントに参加した石上の成長ぶりも著しい。

第3ステージ オフィシャル・ハイライトムービー
第3ステージ リザルト(平均時速 40.927km/h)
1位 SHAUCHENKA Siarhei(ベラルーシ、AZU) 3時間44分53秒 
2位 MERTENS Julian(ベルギー、ロト・スーダルU23) +0秒
3位 CHAMPOUSSIN Clement(フランス、CCF)
9位 石上優大(EQADS/AVCAIX) +0秒
96位 渡邉歩 (EQADS/GSCブラニャック) +3分56秒 
個人総合(第3ステージ終了時点)
1位 WILLIAMS Stephen(イギリス、SEGレーシング 10時間38分03秒
2位 MERTENS Julian(ベルギー、ロト・スーダルU23) +23秒
3位 PARET PEINTRE Aurélien(フランス、CCF)


第4ステージ(5月20日、152.4km)

第4ステージを制したジーノ・メーダー(スイス、IAMサイクリング)第4ステージを制したジーノ・メーダー(スイス、IAMサイクリング) photo: Ronde de l'Isard
最終日となったこの日、3つの山岳を超えるレイアウトから比較的落ち着いた序盤の展開が予想されたが、最後のチャンスを狙う選手たちによるアタックが乱発、スタートから1時間後時点での平均速度は実に時速45kmに上った。そんな中、リーダーチームであるSEGレーシングは、総合を脅かす選手の逃げに警戒しながらリーダーのスティーブン・ウィリアムスを手堅く守りつつ走った。

後に総合成績とは関係のない選手約20名の逃げが容認されるも、引き続きSEGレーシングの掌握下でレースは進んだ。このまま安泰に総合成績は決着かと思いきや、ゴール前10km地点で総合首位のウィリアムスがパンクに見舞われるという波乱が起きる。この結果、28秒差で総合2位に付けるオレリアン・パレ=パントル(フランス、CCF)が先行する展開となる。

最終的には追い上げたウィリアムスがパレ=パントルの2秒後にゴールして事なきを得たが、2人の総合タイム差20秒という僅差でレースは幕を閉じた。ステージ優勝はIAMサイクリングのジーノ・メーダー(スイス)。レース途中に仕掛けて独走体制に入り、追いすがる集団を振り切って雨中のゴールに飛び込んだ。石上の最終リザルトは総合32位、渡邉はステージ途中でタイムアウト、DNFと言う結果となった。

第4ステージの上りを行く石上優大(EQADS/AVCAIX)第4ステージの上りを行く石上優大(EQADS/AVCAIX) photo: Cyclisme Japon第4ステージで遅れを喫し、単独で走る渡邉歩(EQADS/GSCブラニャック)第4ステージで遅れを喫し、単独で走る渡邉歩(EQADS/GSCブラニャック) photo: Cyclisme Japon

近い将来のプロ入りやそこでの活躍が予想される総合上位の3名。左から総合3位のジュリアン・マルテンス(ベルギー、ロット・スーダルU23)、総合優勝スティ-ブン・ウィリアムス(イギリス、SEGレーシング)、オレリアン・パレ=パントル(フランス、CCF)近い将来のプロ入りやそこでの活躍が予想される総合上位の3名。左から総合3位のジュリアン・マルテンス(ベルギー、ロット・スーダルU23)、総合優勝スティ-ブン・ウィリアムス(イギリス、SEGレーシング)、オレリアン・パレ=パントル(フランス、CCF) photo: Ronde de l'Isard
第4ステージ オフィシャル・ハイライトムービー
第4ステージ リザルト(平均時速 36.868km/h)
1位 MADER Gino(スイス、IAM U23) 4時間08分1秒
2位 PARET PEINTRE Aurélien(フランス、CCF) +3分26秒
3位 MERIGNAT Sofiane(フランス、BOFR) +3分26秒
34位 石上優大(EQADS/AVCAIX) +12分44秒
DNF 渡邉歩 (EQADS/GSCブラニャック) タイムアウト 
個人総合(平均時速 39.529km/h)
1位 WILLIAMS Stephen(イギリス、SEGレーシング) 14時間49分32秒
2位 PARET PEINTRE Aurélien(フランス、CCF) +20秒
3位 MERTENS Julian(ベルギー、ロト・スーダルU23) +23秒
32位 石上優大(EQADS/AVCAIX) +16分13秒


石上優大によるレース総括

自分自身にとっては、チェコのUCIネイションズカップU23レース「クルス・ド・ラペ(5/31-6/3)」と合わせ、シーズン前半(6月まで)の中で成績を出そうと目標にしていたレースの一つ。コースとの相性もよく、アンダー1年目から毎年出場している。ちなみに一昨年のアンダー1年目は第3ステージで棄権。昨年は何とか完走という結果だった。このレースのためにシーズンインから必要な練習を積んで備えてきた。もちろん他のレースも大事だが、このレースは特別である。理由はUCIネイションズカップU23シリーズレースと同様、U23カテゴリのトップの選手たちが多く出場するからだ。このレースで上位に食い込む選手は、1、2年後プロになっている。今年だとワールドツアーチーム「FDJ」とプロコンチーム「デルコ・マルセイユ」のスカウター等を見かけた。(他にもいた可能性あり=2016年はQuick Stepのスカウターもいた)

それだけプロチームからも注目されているレース。そのため各国ナショナルチームをはじめ、有名プロチームの育成チーム、名門クラブチームが毎年数多く参加しており、各選手のモチベーションも非常に高い。そのためレースのレベルはU23の世界トップクラスだ。毎年少しでも上位を狙って数%の勝利の可能性を信じ、多くのチームが前に逃げを送り込もうとする(いわゆる前待ちor逃げ切り狙い)。結果、逃げに乗りたい選手がレースリアルスタート前のパレード段階であっても集団前方に集中するため、落車が多発するのが恒例だ。第1ステージはパレード区間のみで3回も落車があり、その後も何でもないところで落車が多数起きていた。当然レース中の勝負どころでの位置取りは更にカオスで、前に行きたい選手が道路いっぱいに広がり、集団には殺伐とした緊張感が走る。

今回のレースは、ざっくり分けると第1、2、4ステージが山岳コース。第3ステージのみが平坦(正確にはかなり多くの起伏を含むアップダウンコース)になっている。第1、2ステージが終わった段階で総合から遅れている選手は、第3ステージの区間優勝&逃げ切り(総合ジャンプアップ)を狙っていた。

自分が特に狙っていたのは第3ステージ。この第3ステージで驚いたのがパレード開始のスタート地点だ。フランスのレーススタート地点には基本的にスタートアーチが設置されているのみで、明確なスタートラインなどは引かれていない。よって、スタート直後にすぐ逃げたい選手たちは、スタートアーチ下のより前方に位置取ろうとする。結果、一応は各リーダージャージの選手たちがスタートの先頭に並ぶ感じにはなるが、半分程度の選手がスタートアーチよりも前のほうに前のめりに陣取る。つまり、スタート前からどの選手も逃げを打つ気満々。全選手の並々ならぬ意気込みを感じ、自分も気をさらに引き締めた。

そのため、なかなか逃げが決まらない。リーダーチームからすれば、総合の関係のない選手を数人行かせてコントロールするのが一番無難だが、逃げたい選手が多すぎて、多い時だと20人以上の選手が逃げに行ってしまう。

各逃げは最初5人程度から始まって、次にリーダーチームが早い段階でコントロールをすべく横に並んで集団に蓋をかけるが、その蓋を掻い潜って逃げていく選手が続出。結果、それを繰り返していくうちに元々は少人数だった前の逃げが膨らみ、大集団の危険な逃げに代わってしまうため、リーダーチームも逃げを潰しに行かざるを得ない。第3ステージに関しては、何度も発言力が強いリーダーチームが「逃げは終わり!もうアタックするな!このままで行こう!」と合図している横を、ほかのチームがアタックしていくのを見た。

最終の第4ステージも同じで、レース中盤から始まる1級山岳までに少しでもアドバンテージを取ろうと、結局、最初の2級山岳までアタック合戦をやっていた。

つまり、プロに上がりたい世界中のU23選手達がなりふり構わずに勝利を狙うのがこのUCI-U(U23選手向け)レース。引き続き、このクラスでの勝利を挙げて、プロに上がれるように全力を尽くしていきたい。



渡邉歩によるレース総括

このレースを走るのは昨年に引き続き2度目。 U23選手限定のUCIレースになり、結果を残せばワールドツアーへの道がグッと近づくビッグレース。 その為参加するのはビッグチームが多く、U23カテゴリーのトップチーム、強者が集まる山岳レースだ。 ピレネー山脈を舞台に4日間のステージで行われるこのレースは自分やEQADSの拠点近くで行われる為、自分の中では「地元レース」 。

去年は第3ステージでリタイアとなり、最低限完走することがこのレースに対する目標だった。 今年は地元のフランスアマトップカテゴリーであるDN1チームでの参戦だ。自分とチームとしては「逃げに乗って存在をアピールする事」、「チームメイトのヤング賞獲得をアシスト」、「チャンスがあるステージでは勝ちを狙っていくこと」が4日間を通した目標だった。

第3ステージまで逃げを試みるもタイミングが合わず、自分ではなく予定外のチームメイトが乗る日や、後方集団に取り残されたチームメイトを引き戻す仕事などが発生。自分が狙えるステージでも全く歯が立たなく、極めつけは最終日の昨年のツール・ド・フランス第13ステージを辿るような難関コースでの、タイムアウト失格。プロになるならば最低限ここで上れなくては通用しない。苦手な上りでの耐久力が全く足りていないことを痛感させられた4日間になった。


text: Kenichi Yamazaki
edit: Yuichiro Hosoda
photo: Ronde de l'Isard, Cyclisme Japon

最新ニュース(全ジャンル)