残り17km地点で「本能的に」アタックを仕掛け、ライバルたちを置き去りにしたサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)。マリアローザを着ながら怒涛のステージ3勝目を飾ったイェーツが、総合ライバルたちとのタイム差を2分台に乗せることに成功した。

天候が思わしくないドロミテの山岳地帯を走る天候が思わしくないドロミテの山岳地帯を走る photo:LaPresse
5月20日(日)第15ステージ トルメッツォ〜サッパーダ 1765月20日(日)第15ステージ トルメッツォ〜サッパーダ 176 photo:RCS Sport5月20日(日)第15ステージ トルメッツォ〜サッパーダ 176km ☆☆☆☆5月20日(日)第15ステージ トルメッツォ〜サッパーダ 176km ☆☆☆☆ photo:RCS Sport

大会2週目を締めくくるのはオーストリアとの国境にまたがるドロミテ山塊を走る4つ星山岳ステージ。スタート後すぐに登りが始まり、そこから標高1,300m〜1800mの4つの峠に挑む。

まずは3級山岳マウリア峠と2級山岳トレクローチ峠をクリアし、終盤にかけて勾配のある2級山岳サンタントニオ峠と2級山岳コスタリッソーイオが連続して登場する。フィニッシュ地点サッパーダの手前10kmは登り基調で、カテゴリー山岳ではないものの3〜8%ほどの勾配が続く。休息日を前にした獲得標高差4,000mのドロミテ山岳ステージは、天候の悪さとハイスピードな展開によって過酷なものになった。

標高1,300mの3級山岳マウリア峠に向かって、スタートから延々と繰り返された逃げ形成のためのアタック。チームスカイやサンウェブ、モビスターまでもが加わったアタック合戦は3級山岳マウリア峠の頂上を越えてもなお続き、ハイスピードな展開によってメイン集団からは早くの脱落者が続出する。悪天候も影響し、イゴール・アントン(スペイン、ディメンションデータ)やニコラス・ロッシュ(アイルランド、BMCレーシング)、ロイック・ヴリーヘン(ベルギー、BMCレーシング)、マヌエル・センニ(イタリア、バルディアーニCSF)がリタイアを選択している。

スタートから1時間半が経過してようやく、力づくでメイン集団を引き離し始めたのは21名。逃げグループの中で総合成績が最も良いのは総合26位/21分27秒差のファウスト・マスナダ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)。

ミッチェルトン・スコット率いるメイン集団に対して最大3分のタイム差をつけながら、逃げグループは2つのスプリントポイントをゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップフロアーズ)とダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)を先頭に通過していく。2連続で2番手通過したサーシャ・モードロ(イタリア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)は合計8ポイントを稼いでいる。

続く標高1,805mの2級山岳トレクローチ峠(全長8km/標高差580m/平均勾配7.3%/最大勾配12%)の登りが始まると逃げグループの中でセレクションがスタート。EFエデュケーションファースト・ドラパックのペースメイクによって1分後方にまで迫ったメイン集団は40名前後まで人数を減らし、そこから総合12位/5分26秒差のマイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト・ドラパック)がカウンターアタックを仕掛けて単独追走を開始した。
スピードを落とさずに逃げグループを追走するメイン集団スピードを落とさずに逃げグループを追走するメイン集団 photo:Kei Tsuji
トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)をマークするサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)をマークするサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:LaPresse
サンウェブがペースアップする集団の前方に位置するサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)サンウェブがペースアップする集団の前方に位置するサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:LaPresse
先頭グループ内で2級山岳トレクローチ峠をクリアしたのはジュリオ・チッコーネ(イタリア、バルディアーニCSF)、ミカエル・シュレル(フランス、アージェードゥーゼール)、ダイエル・キンタナ(コロンビア、モビスター)、ニコ・デンツ(ドイツ、アージェードゥーゼール)の4名。

登りを快調に進んだウッズは逃げグループから遅れた選手たちを追い抜きながら先を急いだものの、下りでペースを上げることができずにメイン集団に引き戻される。先頭では下りを攻めたアージェードゥーゼールの2人が抜け出すシーンも見られたが、キンタナが食らいつき、一時は遅れたチッコーネとジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ)が合流。こうしてシュレル、デンツ、キンタナ、チッコーネ、ヴィスコンティの5名がメイン集団に対して2分20秒のリードを保ちながら残り40kmを切り、2級山岳サンタントニオ峠(全長8.4km/標高差625m/平均勾配7.5%/最大勾配15%)の登坂を開始した。

ヘアピンコーナーが続く登りで先頭はチッコーネとデンツの2人に絞られ、チッコーネを先頭に2級山岳サンタントニオ峠をクリアする。サンウェブの牽引によって30秒後方にまで迫ったメイン集団からは、総合13位のファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)が脱落。チームメイトのアシストを受けながらもイタリアンチャンピオンのペースは一向に上がらず、この日だけで19分以上遅れたアルは総合争いから完全に脱落した。

下り区間でチッコーネを千切ったデンツがこの日最後のカテゴリー山岳である2級山岳コスタリッソーイオ(全長3.8km/標高差336m/平均勾配9%/最大勾配14%)の登坂を開始したのもつかの間、ジャック・ヘイグ(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)率いるメイン集団が逃げを吸収。下りでポジションを下げていたクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)はこの2級山岳コスタリッソーイオの登り口で早くも脱落してしまう。

すると、最大勾配が14%に達するこの2級山岳でマリアローザのサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)が動いた。1回目のアタックにはミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)らがすかさず反応したが、2回目のアタックには誰も反応できない。フィニッシュラインまで17.3kmを残して、イェーツの独走が始まった。
残り18kmを切ったところでアタックするサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)残り18kmを切ったところでアタックするサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:LaPresse
先行するサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)と、追うライバルたち先行するサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)と、追うライバルたち photo:Kei Tsuji
ラスト17kmを独走するサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)ラスト17kmを独走するサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:LaPresse
2級山岳コスタリッソーイオを駆け上がるティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)ら2級山岳コスタリッソーイオを駆け上がるティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)ら photo:Kei Tsuji
独走に持ち込んだイェーツは、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)、ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)、リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)、トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)で構成された追走グループから18秒リード、そしてフルームを含む追走グループから1分のリードで2級山岳を登りきる。

協調体制を築くことができない追走グループは主にデュムランが牽引したもののペースが上がらない。コースが再び上昇を開始してもイェーツのペースは落ちず、残り6km地点でそのリードは44秒まで拡大する。残り4km地点でカラパス追走グループの中からアタックするとデュムランが脱落。ポッツォヴィーヴォ、カラパス、ピノ、ロペスの4名が懸命に先頭イェーツを追ったがタイム差は縮まらない。一旦脱落したデュムランは粘りの走りで追走グループに戻った。

最後までリードを失うことなく独走で逃げ切ったイェーツ。後続に41秒差をつけたイェーツが独走勝利を決めた。41秒遅れの追走グループはスプリントを繰り広げ、ロペス、デュムラン、ポッツォヴィーヴォ、カラパス、ピノの順でフィニッシュ。ワウト・プールス(オランダ、チームスカイ)にアシストされながらも1分32秒遅れたフルームが総合5位から総合7位にダウンしている。
独走でフィニッシュするサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)独走でフィニッシュするサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:LaPresse
41秒遅れの追走グループはミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)先頭41秒遅れの追走グループはミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)先頭 photo:LaPresse
完全に総合争いから脱落したファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)完全に総合争いから脱落したファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ) photo:LaPresse
マリアローザを着て第9ステージと第11ステージに続く今大会ステージ3勝目を飾ったイェーツ。「アタックは本能的に生まれた。登り始めの時点で集団がばらけていたので、ジャック・ヘイグにペースアップを指示して、そこからアタックしたんだ。1回目はライバルたちにマークされたけど、2回目の全開アタックが決まった」と、勝利につながる残り17km地点でのアタックを振り返る。

「昨日も今日もとても厳しいステージで、誰もが疲れ切っていたと思う。自分も疲れていたけど、同時に、トム・デュムランから少しでもタイム差を奪いたいというモチベーションがあった。全力を尽くして、情熱とともに走ったんだ。総合優勝するためにジロにやってきたけど、ステージ3勝は予想外の成績。素晴らしい成績であり、うまく言葉が出てこない。でも総合リードが十分なのかどうかまだ分からないし、自分がマリアローザの最有力候補なのかもまだ分からない」。総合2位デュムランとの総合タイム差は1分24秒から2分11秒まで拡大している。

マリアローザのリードを2分の大台に乗せたイェーツは、同時に山岳賞のリード拡大にも成功している。第9ステージ以降山岳ポイントを獲得できていないエステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)に代わって、この日の逃げで30ポイントを稼いだチッコーネが山岳賞2位に浮上。第16ステージでチッコーネはマリアッズーラを着用する。
ステージ3勝目を飾ったサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)ステージ3勝目を飾ったサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:LaPresse
マリアローザのリードを2分11秒まで広げたサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)マリアローザのリードを2分11秒まで広げたサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:LaPresse
ジロ・デ・イタリア2018第15ステージ結果
1位サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)4:37:56
2位ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)0:00:41
3位トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)
4位ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)
5位リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)
6位ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)
7位アレクサンドル・ジェニエス(フランス、アージェードゥーゼール)0:01:20
8位ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)
9位ペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ)
10位サム・オーメン(オランダ、サンウェブ)
11位セバスティアン・ライヒェンバッハ(スイス、グルパマFDJ)
12位ミケル・ニエベ(スペイン、ミッチェルトン・スコット)
13位パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)
14位ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)
15位ベン・オコーナー(オーストラリア、ディメンションデータ)
16位ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)
17位クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)0:01:32
69位ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)0:19:31
マリアローザ 個人総合成績
1位サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)65:57:37
2位トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)0:02:11
3位ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)0:02:28
4位ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)0:02:37
5位ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)0:04:27
6位リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)0:04:47
7位クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)0:04:52
8位ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)0:05:34
9位ペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナ)0:05:59
10位パトリック・コンラッド(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)0:06:13
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ)237pts
2位サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)197pts
3位サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)113pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)91pts
2位ジュリオ・チッコーネ(イタリア、バルディアーニCSF)52pts
3位エステバン・チャベス(コロンビア、ミッチェルトン・スコット)47pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)66:02:04
2位リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)0:00:20
3位ベン・オコーナー(オーストラリア、ディメンションデータ)0:02:45
チーム総合成績
1位チームスカイ198:16:59
2位ミッチェルトン・スコット0:04:27
3位アスタナ0:05:00
text:Kei.Tsuji
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