ティレニア海からアドリア海まで
第4ステージ・コースプロフィール第4ステージ・コースプロフィール photo:www.gazzetta.it今年で開催44回目を迎えるティレーノ〜アドリアティコは、その名の通りティレニア海からアドリア海まで、イタリア半島を西から東に横断するステージレース。海を求めて半島を渡ることから「Corsa dei Due Mari(二つの海)」とも呼ばれる。

第44回大会は、歴史上初めてトスカーナ州をスタートする。序盤はスプリンター向きの平坦ステージが用意されているが、ゴール手前に低い山岳ポイントが登場するのがティレーノの特徴だ。さながらミラノ〜サンレモの予行演習と言ったところか。

第6ステージ・コースプロフィール第6ステージ・コースプロフィール photo:www.gazzetta.itアドリア海に近づく第4ステージから本格的な山岳が始まる。最大勾配21%のモンテルポーネは2年連続の登場。この上りは昨年歩いて上る選手も続出したほどの難所だ。この難関モンテルポーネにゴールする第4ステージで、第1回山岳バトルが勃発する。

第5ステージは、マチェラータのアップダウンコースで行なわれる30kmの個人タイムトライアル。ここで総合争いはある程度フィックスされ、大会最難関&大会最長の第6ステージに挑むこととなる。

海沿いのチヴィタノーヴァ・マルケをスタートする第6ステージは、内陸部の山岳地帯を文字通り駆け巡る。235kmのコースはアップダウンの連続で、ゴールの43km手前には標高1455mのサッソ・テット峠が登場。ここで総合争いは最終決着がつけられる。最終日はお馴染みサンベネデット・トロントの平坦ステージだ。


注目選手 ピックアップ
ジロ・デ・イタリアに向けて調整を続けるイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)ジロ・デ・イタリアに向けて調整を続けるイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) photo:Cor Vos歴史あるステージレースのパリ〜ニースと併催とあって、優れたステージレーサーはみなフランスで格闘中かと思いきや、今年はグランツールの総合争いに顔を見せるような選手がイタリアンレースに多くエントリーしている。

2007年のティレーノを制したアンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)を筆頭に、06年総合優勝のトーマス・デッケル(オランダ、サイレンス・ロット)ら、世界トップクラスのステージレーサーが多く出場する。

2007年大会総合優勝者のアンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)2007年大会総合優勝者のアンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ) photo:Cor Vos過去にジロ・デ・イタリア総合優勝経験のあるイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)、ダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)、ジルベルト・シモーニ(イタリア、ディキジョヴァンニ)、ステファノ・ガルゼッリ(イタリア、アックア・エ・サポーネ)といったイタリアのスター選手もエントリーリスト入りしている。

バッソをアシストするのはニーバリやペッリツォッティといった、自身も優れたステージレーサー。まるで5月のジロ・デ・イタリアの予行練習と言わんばかりだ。

ジルベルト・シモーニとダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ)のベテランコンビジルベルト・シモーニとダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ)のベテランコンビ photo:Cor Vosディキジョヴァンニはシモーニ、レベッリン、ベルトリーニという春先に好調の「渋い」ベテラントリオを揃え、強力な布陣を敷く。レベッリンは連覇のかかったパリ〜ニースをチーム不出場により欠場。モチベーション高くティレーノに挑むはずだ。

マルツィオ・ブルセギン(イタリア、ランプレ)やホアキン・ロドリゲス(スペイン、ケースデパーニュ)といった堅実なステージレーサーが虎視眈々と狙う一方で、昨年のツールの新人賞アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)や、新人賞のかかったパリ〜ニースを捨ててティレーノを選んだロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)と言った若手選手の活躍も期待できそうだ。

モンテパスキ・エロイカを制したトーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア)モンテパスキ・エロイカを制したトーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア) photo:Cor Vos今年エロイカを制したばかりで好調のトーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン、チームコロンビア)は、「短いステージレースが得意」と語る北欧の貴公子。昨年総合3位のロヴクヴィストは密かに表彰台の真ん中を狙う。

しかし、1週間の中級ステージレースであるティレーノでは純粋なステージレーサーだけが勝機に恵まれるだけではない。昨年、タイムトライルで勝利しリーダーの座につき、総合優勝をさらったファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)の例だけでなく、04年のベッティーニ、03年のポッツァートなど春先を見据えるクラシックレーサーにも総合優勝の可能性はある。

昨年頂点に君臨したファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)昨年頂点に君臨したファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク) photo:Cor VosTTスペシャリストにして春のクラシックレーサーでもある分類不能なスイスの馬車馬・カンチェラーラには注目が集まる。昨年はエロイカで勝ち、ティレーノで勝ち、そしてミラノ〜サンレモで勝つという離れ業をやってのけたカンチェラーラ。カリフォルニアでは初日のプロローグを制しながら、発熱により2日目にリタイアした。

アルカンシェルを着てイタリアを走るのはアレッサンドロ・バッラン(イタリア、ランプレ)。北のクラシックに向けての調整レースとなるだろうが、注目度の高さはピカイチだ。

クールネ〜ブリュッセル〜クールネで優勝したトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)クールネ〜ブリュッセル〜クールネで優勝したトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ) photo:Cor Vos北のクラシックという点ではトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)を忘れるわけにはいかない。ミラノ〜サンレモを狙うスプリンターたちと互角以上に渡り合えれば、北で強いボーネンが見られるだろう。

しかし総合優勝とはまた別に、ティレーノから4日後のミラノ〜サンレモを狙うスプリンターたちも要注目だ。今年のメンバーはツール・ド・フランスのそれにも劣らない充実ぶり。世界トップクラスのスプリント勝負が見られるだろう。

シーズン序盤から勝利数を重ねるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)シーズン序盤から勝利数を重ねるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア) photo:CorVos今年はカタールとカルフォルニアで計4勝をあげ、好調の昨シーズンの勢いをそのままにイタリアに乗り込むのは目下世界最強とも言われるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア)。ゴール前の細かい上りをうまくこなせれば、多くのステージで勝利を狙うことができるだろう。

ミラノ〜サンレモ、そして5月のジロを見据えるイタリアンスプリンターも勢揃いだ。筆頭はアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、LPRブレークス)とダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)。

復活した「アレ・ジェット」ことアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、LPRブレークス)復活した「アレ・ジェット」ことアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、LPRブレークス) photo:Cor Vosグランツールで勝ちまくった04〜05年と比べると近年、勢いを失った感は否めないペタッキだが、悲願のサンレモ2勝目に向けてティレーノを走る。ペタッキの後の世代としてイタリアを代表するスプリンターのベンナーティも、やはりサンレモに向けてコンディションをあげたいところだ。

シーズン序盤から好調なのはトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)だ。今年セミクラシックで勝利したフースホフトは05年のサンレモで3位に入っており、今年もサンレモへ向けティレーノで激しいスプリントを展開するに違いない。

新チームでも揺るぎないスプリントを見せ既に2勝を挙げているロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)、ステージ3勝を挙げダウンアンダー総合優勝のアラン・デーヴィス(オーストラリア、クイックステップ)、新チームヴァカンソレイユのエーススプリンターを務めるバーデン・クックらオージー勢も勝利を狙う。

その他、ランカウィでステージ4勝をあげたマッティア・ガヴァッツィ(イタリア、ディキジョヴァンニ)、ミルラムのエースであるゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)や、マキュアンの不調時には自信が狙うことになるだろうダニーロ・ナポリターノ(イタリア)など、有力スプリンターを挙げ出すと枚挙に暇が無い。