ティレーノ〜アドリアティコ第3ステージの今大会最長丘陵コースで初山翔が逃げに乗ってチームメイトの山岳賞獲得をサポート。最大勾配20%の激坂フィニッシュでプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)が勝利した。


逃げグループを追いかけるメイン集団逃げグループを追いかけるメイン集団 photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
トスカーナ州からウンブリア州に向かうトスカーナ州からウンブリア州に向かう photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari晴れ渡る内陸部を6時間かけて東進晴れ渡る内陸部を6時間かけて東進 photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari

トスカーナ州からウンブリア州に向かう全長239kmの今大会最長ステージ。4つのGPMが設定されたコースの獲得標高差は3,300mに達し、最後は「イタリアの最も美しい村」に指定されているトレヴィにフィニッシュする。丘上都市トレヴィに向かう登りは最大勾配が20%に達する激坂で、残り1.5kmから先の平均勾配は11.5%。進むにつれて勾配が増すこの激坂を2回登ってフィニッシュを迎える。

スタートアタックを成功させたのは山岳賞ジャージを着るニコラ・バジョーリ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)と同賞2位のジャコポ・モスカ(イタリア、ウィリエール・トリエスティーナ)、そして初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ)ら5名。レース時間が6時間を超える長丁場だけに、初山ら5名のリードは10分近くまで拡大した。

中盤にかけて登場した3つのGPMでは、バジョーリが山岳ポイントを連取するとともに初山が2番手通過(第3GPMは3番手)してライバルたちのポイント獲得を阻止する。その結果、バジョーリはモスカと10ポイント差で山岳賞トップをキープ。初山は山岳賞3位に浮上した。

リーダーチームのBMCレーシングにボーラ・ハンスグローエやトレック・セガフレード、クイックステップフロアーズが加勢する形でメイン集団は徐々にペースアップ。集団内で落車したリーダージャージのパトリック・ベヴィン(ニュージーランド、BMCレーシング)は集団復帰したが、サイモン・ゲシュケ(ドイツ、サンウェブ)はリタイアを強いられている。

残り30km地点でタイム差4分、残り20km地点でタイム差2分。カウンターアタックを仕掛けたニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップフロアーズ)は先頭に届くことなく引き戻され、メイン集団は熾烈なポジション争いを経て1回目のトレヴィ登坂を開始する。先頭からは初山が遅れ、粘っていたバジョーリもフィニッシュまで12kmを残して吸収された。

逃げグループを形成する初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ)ら逃げグループを形成する初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ)ら photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
気温13度ほどの丘陵地帯を走る選手たち気温13度ほどの丘陵地帯を走る選手たち photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari山の上にあるいくつもの都市を横目に進む山の上にあるいくつもの都市を横目に進む photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
第3ステージ トレヴィの登りフィニッシュ詳細第3ステージ トレヴィの登りフィニッシュ詳細 photo:RCS Sport

最大勾配20%のこのトレヴィ1回目の登坂でメイン集団は50名に絞られた。もっとも多くの人数を揃えたチームスカイ(キリエンカ、プッチョ、クウィアトコウスキー、モスコン、フルーム、トーマス)が脱落選手の合流を許さないペースを作り、そのまま2回目のトレヴィ登坂を開始する。ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)がハイペースを刻む集団から、残り1.2km地点でプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)がアタックした。

軽快なダンシングで後続を引き離すログリッチェが独走で残り1kmアーチを通過。世界王者ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)がメイン集団から脱落する中、残り500mから再び勾配が増したところでグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)がアタックしたがいつものキレがない。

最大勾配20%の激坂区間が近づくとアダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)やストラーデビアンケ覇者ティシュ・ベノート(ベルギー、ロット・スーダル)がペースを上げて先頭ログリッチェを追ったものの、その背中が近づいてこない。激坂を先頭で登りきったログリッチェが、イェーツに3秒差、ベノートに6秒差をつけて勝利した。

20%の激坂区間をこなすプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)20%の激坂区間をこなすプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ) photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
先頭でフィニッシュに飛び込むプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)先頭でフィニッシュに飛び込むプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ) photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari

「これまで何度もスプリントで敗れていたので、早めに仕掛けて、フィニッシュまで追い込むことが得策だと思った。先頭で走り、先頭でフィニッシュすることはサイクリングの醍醐味だ」と語る元スキージャンパーのログリッチェが表彰台に飛び乗った。

第2ステージの残り7km地点で発生した落車に巻き込まれたため、イェーツとともに1分42秒のタイムを失っていたログリッチェ。「総合優勝を狙って出場したものの、チームTTでタイムを伸ばせず、昨日も落車でタイムを失っていた。総合成績を諦めなくてはならない状況だったので、目標をスイッチする必要があったんだ。2016年ジロの個人TT勝利と2017年ツールの山岳ステージ勝利に続いて、ビッグレースの登りフィニッシュで勝てたことを嬉しく思う」。

ログリッチェ、イェーツ、ベノートに続いて7秒差のステージ4位に入ったゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)が総合首位に浮上。ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ)やトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)らがタイムを失った一方で、リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)やミケル・ランダ(スペイン、モビスター)、ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)、クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)らはタイムロスを10秒に抑えている。

Velonの公開データによると、ログリッチェのラスト1km登坂タイムは2分59秒間491W。クウィアトコウスキーは3分05秒間454W、フルームは3分04秒間497Wだった。ログリッチェが残り1.2km地点でアタックした際には最大出力740Wで29秒間にわたって660Wを出力している。

青いリーダージャージに袖を通したトーマスは「今日総合リードを奪えるとは予想していなかった。チームは総合優勝のためにこのティレーノ〜アドリアティコに出場している。明日の山頂フィニッシュではチームとして成績を残したい。もし自分の調子が悪い場合はフルーミー(フルーム)が勝負することになる」とコメント。フルームは3秒差の総合3位につけている。

この日210km以上にわたって逃げ、バジョーリの山岳賞ジャージキープをサポートした初山は「自分がジャージを獲得したわけでも、上位入賞したわけでもないが、今のコンディションや自分のレベルを考えると今日は良いレースができたと思う。今日はバジョーリの山岳賞キープを第一の目標とし、さらに可能なら自分も逃げに乗るというオーダーだった。山岳賞を狙うライバルチームもあったが、バジョーリのポイント差を広げるために、監督の指示もあり、最初と2番目は自分がバジョーリに次いで2位通過した」とコメントする。「コンディションが確実に上がっている実感がある。明日からのステージはミーティング次第だが、またチャンスをみて逃げを狙っていきたい」。

翌日は4つのGPMが詰め込まれた今大会のクイーンステージで、フィニッシュ地点は標高1,335mのGPMサッソテットの頂上。平均7.1%/最大13%の勾配が全長11.75kmにわたって続くアペニン山脈の峠道でリーダージャージをかけた戦いが繰り広げられる。

表彰台に飛び乗るプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)表彰台に飛び乗るプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ) photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
総合首位に立ったゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)総合首位に立ったゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrariポイント賞トップに立ったジャコポ・モスカ(イタリア、ウィリエール・トリエスティーナ)ポイント賞トップに立ったジャコポ・モスカ(イタリア、ウィリエール・トリエスティーナ) photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari
山岳賞ジャージを守ったニコラ・バジョーリ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)山岳賞ジャージを守ったニコラ・バジョーリ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrariヤングライダー賞トップに立ったハイメ・ロソン(スペイン、モビスター)ヤングライダー賞トップに立ったハイメ・ロソン(スペイン、モビスター) photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari

ティレーノ〜アドリアティコ2018第3ステージ結果
1位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ) 6:17:23
2位 アダム・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 0:00:03
3位 ティシュ・ベノート(ベルギー、ロット・スーダル) 0:00:06
4位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) 0:00:07
5位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) 0:00:10
6位 ミケル・ランダ(スペイン、モビスター)
7位 ジャンニ・モスコン(イタリア、チームスカイ)
8位 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)
9位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)
10位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)
12位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)
15位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 0:00:16
18位 グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
20位 ファビオ・アル(イタリア、UAEチームエミレーツ) 0:00:24
21位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)
24位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 0:00:34
26位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) 0:00:36
116位 初山翔(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ) 0:10:33
個人総合成績
1位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) 10:52:22
2位 グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
3位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) 0:00:03
4位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング) 0:00:08
5位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) 0:00:09
6位 ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)
7位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) 0:00:19
8位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ) 0:00:30
9位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) 0:00:33
10位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) 0:00:39
ポイント賞
1位 ジャコポ・モスカ(イタリア、ウィリエール・トリエスティーナ) 18pts
2位 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ) 12pts
3位 マルセル・キッテル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン) 12pts
山岳賞
1位 ニコラ・バジョーリ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ) 20pts
2位 ジャコポ・モスカ(イタリア、ウィリエール・トリエスティーナ) 10pts
3位 初山翔(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ) 8pts
ヤングライダー賞
1位 ハイメ・ロソン(スペイン、モビスター) 10:53:06
2位 ティシュ・ベノート(ベルギー、ロット・スーダル)
3位 ジャンニ・モスコン(イタリア、チームスカイ) 0:00:16
チーム総合成績
1位 チームスカイ 31:52:16
2位 クイックステップフロアーズ 0:01:05
3位 モビスター 0:01:37
text:Kei Tsuji
photo:LaPresse - D'Alberto / Ferrari