いよいよ1月30日、シクロクロス世界選手権がチェコのターボルで開幕する。日本から7名の精鋭が参戦する世界一決定戦は、氷と雪が支配する過酷なコンディションで行なわれる。コースの特徴や注目選手をピックアップしておこう。

雪と氷の過酷なコンディション

雪の降り積もったチェコ・ターボルの会場雪の降り積もったチェコ・ターボルの会場 photo:Sonoko Tanakaレースの開催地ターボルは、チェコの首都プラハの南80kmに位置し、南ボヘミア州に属する人口4万人弱の街だ。シクロクロス世界選手権がチェコで開催されるのは、チェコスロバキア時代から数えて4回目。2001年には同じターボルで開催されている。

現在ヨーロッパは寒波に見舞われており、当然東欧のチェコも例外ではない。天気予報によると、エリートレースが開催される1月31日(日)のターボルの最高気温はマイナス6度、最低気温マイナス12度。降り積もった雪が氷へと姿を変える過酷なコンディションである。

コースは1周3.3kmで、ワールドカップでも使用されるコースとは若干レイアウトが変更されている。普段経験しないような雪&氷のコンディションが、思わぬ展開をもらたす可能性は大だ。

地元チェコの英雄スティバルが強豪ベルギーを打ち破るか

昨年の表彰台、左から2位ゼネク・スティバル(チェコ)、優勝ニールス・アルベール(ベルギー)、3位スヴェン・ネイス(ベルギー)昨年の表彰台、左から2位ゼネク・スティバル(チェコ)、優勝ニールス・アルベール(ベルギー)、3位スヴェン・ネイス(ベルギー) photo:CorVosロードレース界においてチェコは小国に過ぎないが、シクロクロス界では強豪国の一つだ。チェコは1991年にラドミール・シムネクが初の世界チャンピオンに輝いている。しかしそれ以降、チェコの前には常にベルギーやオランダの壁が立ちはだかった。

地元チェコの期待を一身に背負うのが、24歳の若手ゼネク・スティバル(テレネット・フィデア)だ。スティバルは2006年のシクロクロス世界選手権U23で優勝を果たしているが、エリートレースでは2年連続で2位に甘んじている。

チェコ人として初めてワールドカップ年間王者に輝いたゼネク・スティバル(チェコ、テレネット・フィデア)チェコ人として初めてワールドカップ年間王者に輝いたゼネク・スティバル(チェコ、テレネット・フィデア) photo:Cor Vosスティバルは今シーズンのワールドカップで3勝を飾り、チェコ人として初のワールドカップ年間王者に。地元の利を活かした走りで、悲願のアルカンシェル獲得を目指す。

断トツの選手層を誇り、毎年優勝候補がズラリと揃うのがベルギー。これまで25回世界選手権制覇を成し遂げているベルギーは、プロレース200勝以上を誇るスヴェン・ネイス(ランドバウクレジット)と現世界チャンピオンのニールス・アルベール(BKCPパワープラス)の二枚看板を擁する。

競り合うスヴェン・ネイス(ベルギー、ランドバウクレジット)とニールス・アルベール(ベルギー、BKCPパワープラス)競り合うスヴェン・ネイス(ベルギー、ランドバウクレジット)とニールス・アルベール(ベルギー、BKCPパワープラス) photo:Cor Vosネイスは現役の選手の中で最多勝利数を誇る33歳のベテラン。2004年〜2005年シーズンにシクロクロス世界選手権、ワールドカップ、スーパープレステージ、GvAトロフィーで優勝を飾るというグランドスラムを史上初めて達成している。

世界選手権では2008年以降2年連続で銅メダルに輝いており、今年は7回目のベルギーチャンピオンに輝いた。悪路での走行には定評があり、雪と氷の過酷なコンディション下ではその力が遺憾なく発揮されるだろう。

アルベールは今シーズンのワールドカップで4勝を飾っており、1週間前のオランダ・ホーヘルハイデ大会でも優勝。連覇を狙う23歳の新鋭は乗りに乗っている。

この三強に立ち向かうのが、エンリコ・フランツォーイ(イタリア)やフランシス・ムレー(フランス)、そしてジョナサン・ページ(アメリカ)と言ったアウトサイダーたち。2008年に世界チャンピオンに輝いたラース・ボーム(オランダ)は、ロードに専念するために欠場する。ボームに代わって、2年ぶり6度目の世界タイトル獲得を目指すオランダを率いるのはヘルベン・デクネクト(オランダ)だ。

日本からは全日本選手権8連覇中の辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)がエントリー。辻浦は早い時期にヨーロッパに渡り、ワールドカップを転戦。日本最強のシクロクロスライダーが再び世界に挑む。


日本から合計6名が出場するU23とエリート女子

昨年スプリントを制したマリアンヌ・フォス(オランダ)昨年スプリントを制したマリアンヌ・フォス(オランダ) photo:CorVosU23カテゴリーにおいても、ベルギーの選手層は相変わらず厚い。そんなベルギーのキャプテンを担うのが21歳のトム・メーウセン。今シーズンのワールドカップU23で2勝して年間王者に輝いたメーウセンは、ベルギー選手権でもエリートに混ざって3位に入る実力の持ち主だ。

エリート女子は今シーズンのワールドカップで何度も競り合ったマリアンヌ・フォス(オランダ)、ダフニー・ファンデンブラント(オランダ)、ケイティ・コンプトン(アメリカ)が三強と言ったところ。ディフェンディングチャンピオンのフォスは、ロードレースやトラックのポイントレースでも世界チャンピオンに輝いている。

U23には日本からは竹之内悠(チームユーラシア・ムセウバイクス)と小坂光(宇都宮ブリッツェン)の2名が出場。エリート女子には豊岡英子(パナソニック・レディース)、森田正美(チームブリヂストン・アンカー)、志村みち子(ラヴニールあづみの)、福本千佳(Ready Go JAPAN)の4名が出場予定だ。

日本人選手のレース前の様子は、現地入りした田中苑子カメラマンの現地レポートにて。

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Sonoko Tanaka

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